第2部 秋の調査編 ― 祟りの空き地
久しぶりの再会です。第2部として、また少しずつ書き始めて行く予定です。
秋も深まり、空気がひんやりと澄みわたる頃。青空大学オカルト研究会では、恒例となった「地域貢献活動」の一環として、新たな課題に取り組んでいた。
大学周辺の荒れ地の清掃と浄化活動——。
問題の空き地は長らく放置され、草木は人の背丈ほどに伸び、不法投棄されたゴミが散乱していた。だが問題はそれだけではなかった。
夜になると、「誰もいないのに子どもの笑い声が聞こえる」「灯りがゆらめく」「犬が吠えて近寄らない」——そんな噂が、近隣で広まりつつあったのだ。
「なんか、ただの清掃活動じゃ済まなそうだな」
祐一の言葉に、星川が苦笑いを浮かべた。
「そう言うなよ。ボランティアだし、地域との関係づくりも大事だって部長が」
その部長である河餅は、電話を切ると真剣な顔で部員たちを見回した。
「今の依頼、正式に受ける。現地調査と浄化、同時進行で行うぞ」
「また現地調査ですか」岡田副部長がため息をつく。
「ただの草刈りじゃないってことらしいな」小川も続いた。
だが、その瞳にはどこか、再びあの夏を思わせる緊張の色があった。
***重い空気***
翌日、祐一たちは道具を手に、大学近くの空き地へと向かった。
古びたブロック塀に囲まれた一角は、思っていたより広かった。計測すると長さは五十メートル以上。五メートルを超える雑木が伸び、地面は雑草の海のように覆われていた。
風が吹くたび、枯れ草の間で何かが擦れるような音がした。
「……なんか、重くない?」広末が小声で言う。
「うん、空気の流れが淀んでる」祐一も同意した。
「まずは、簡単な浄化を行いましょう」
松井あゆみが土地の周りに塩を撒き始める。岡田副部長が方位磁針を取り出すと、針が微妙に揺れて止まらない。
「磁場も乱れてる……これは普通の場所じゃないね」
河餅部長たちは、鎌や剪定ばさみで草を刈り取りながら土地の中心へと進んでいった。
突然、河餅が立ち止まった。
「……あそこ、見て」
皆が振り返ると、雑草の間に丸く地面が露出している一角があった。そこだけ草が生えていない。しかも、中心に古びた石が埋まっている。
「……地鎮の石?」星川がつぶやいた。
祐一はしゃがみ込み、手のひらをかざした。冷たい。だが、それだけではない。
——何かが、下からこちらを見ている。
「今回の調査は、これで一旦終えよう」
河餅部長がデジタルカメラに石を収めた後、一行は引き上げた。
***消えた記録***
その夜、祐一は大学の資料室で、町の土地登記と古地図を調べていた。すると、空き地に関する記録だけが十年前で途切れていることに気づく。
「この空き地……もとは寮の跡地だった?」
岡田副部長と共に調べると、さらに奇妙な事実が浮かび上がった。十年前の秋、その寮で火災事故が起き、学生一名が行方不明になっていたのだ。
「……やっぱり、ただの土地じゃない」
資料を閉じる祐一の背後で、風がふっと揺れた。
後日、オカルト研究会は正式な活動を開始した。
まずは草刈りと雑木の除去を少しずつ進めながら、河餅部長の指揮のもと、護符を配置し、祈祷の陣を組んでいく。
夕暮れ、空が茜色に染まる中、祐一は再びあの石の前に立った。
「……ここが、彼の"帰れなかった場所"なんだな」
静かに手を合わせる。その瞬間、秋風が強く吹き、枯葉が渦を巻いた。
桜が護符を掲げ、柔らかく呟いた。
「どうか、安らかに——」
光が広がり、空き地全体を包み込む。重かった空気が、少しずつ、温かさを取り戻していく。
***風の記憶***
清掃活動が終わり、空き地はすっかり明るくなった。近隣の人々が「ありがとう」と頭を下げる中、祐一たちは微笑みを返した。
「次の活動は、もっと平和だといいね」広末が笑う。
「いや、たぶんまた"何か"来るだろ」祐一が答える。
桜は小さく笑いながら、空を見上げた。
——そこに吹く秋風は、もう冷たくなかった。
今回は、しっとりとした話になりました。
久しぶりの物語再開なので、少しずつ物語が進んで行く予定です。




