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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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封印の裏口と目覚める影

春香たち分かれた後、祐一たちは、施設内の調査と浄化の為、裏口へと向かっていた。


 一方、祐一たちは春香たちと二手に分かれた後、

施設の裏手にある古びた裏口の前へとたどり着いていた。


 風はなく、虫の声も木々のざわめきも途絶えていた。

張り詰めたような空気に、皆が自然と口をつぐんでいた。


 「ここか……」と、寮がぽつりとつぶやく。


 鉄製の扉は錆びつき、赤茶けた斑点がいたる所に浮かんでいた。取っ手の周囲には、何かが爪で引っかいたような不規則な傷跡が幾重にも重なっている。


 祐一はそっと手をかざし、目を閉じて気配を探る。


「……結界、もう機能してない。以前来た時の封印、完全に崩れてる」


その言葉に、広末が顔をしかめ、肌をさするように腕を抱いた。


「なんか……中から冷たい風、吹いてませんか? ゾワッとする」


「いや、気のせいじゃない」寮が目を細める。「中と外で、空間の位相がズレてる。……この扉の向こうは、この現実世界と違う空間と混ざり合っている」


広末は緊張しながらも、後ろに下がらず扉の前に立った。


「ここから入るんですよね?」


 祐一は黙って頷き、左手でお守りを握りしめながら、右手でゆっくりと取っ手を回す。


 ――ギィ……。


軋むような音が、まるで空気そのものを切り裂いたかのように周囲に響いた。


開いた扉の隙間から覗くのは、濃密な闇。埃とカビが混じった、息苦しい空気が外へと這い出してくる。


「……行こう。中の様子を探る」


祐一の低い声に、皆が一斉に気を引き締めた。


「以前来た時、ここで札を貼ったんですが、帰ろうとしたら扉が開かなくなって……閉じ込められたんです」と祐一が寮に説明する。


 寮はうなずきつつ、目を閉じて周囲の霊的な気配を感じ取ろうとしていた。


 「ひとまず、奥に進もう」


寮を先頭に、メンバーは縦一列で建物内へと足を踏み入れる。


広末は肩をすくめながらも、祐一のすぐ後ろに続いた。背後では峯川が声をかける。


「大丈夫だ。お前の前後は俺たちが守ってる」


「はい、先輩……」広末の声は震えていたが、それでも確かに前を見据えていた。


しばらく進むと、かつて訪れた時と同じ分かれ道へとたどり着いた。


「ここは……前に来たとき、進まなかった通路です」


 祐一が指さす通路は、どこか異様な雰囲気を放っていた。


「確かに禍々しい気配があるな……」と寮が眉をひそめる。


 橘美紀が通路の奥をじっと見つめながら口を開いた。


 「もしかして……何か、ポータルのような裂け目が開いているのかも」


 「こんなに強い気配、普通の建物じゃあり得ないわ」と陽菜も言葉を続ける。


 「行ってみよう」


 一行は通路を進んだ。その先は広間になっていた。


 そこは、空気の密度が違った。まるで別世界のように重く、冷たい。


 寮がすぐに警告を発した。


 「気をつけろ……ここには何体もいる!」


 次の瞬間、天井や床、壁の隙間から黒い影が這い出してきた。目も口もない、のっぺらぼうのような存在。それが嘲笑うかのように揺らめきながら、彼らを取り囲んでいく。


 「来るわ!」


 橘美紀が手を広げ、掌から赤い光を放つ。瞬時に朱雀の霊が召喚され、炎を纏った羽ばたきで悪霊たちを薙ぎ払う。


 「霊光弾、展開!」


 陽菜も古代魔法を使い、空中に多数の霊光の玉を浮かべ、連続で多数の光の玉を放つ。黒い影たちは一瞬にして光に包まれ次々と、浄化されていった。


「すごい。これが魔法の力・・・」と広末は見入っていた。


 しかし――終わりではなかった。


 その奥、さらに深い通路の先から、何か別の存在の気配が近づいて来る。


 祐一も魔法を放ち、1体ずつ浄化し寮と橘美紀も次々と悪霊たちを浄化していった。


 悪霊の数が減り、次第にその場は静まって行った。


 「奥へ続いてる……先があるわ」広末が息を詰めてつぶやいた。


 進んだ先は、かつて厨房だった場所だった。湿ったタイル、剥がれた壁、そして……そこに染みついた記憶が感じ取れた。


 「……悲鳴が、聞こえる気がする」広末がぽつりとつぶやいた。


 「この空間自体が、過去の怨念を吸い込んでる」寮が壁に残る紙片や血のような染みを見つめる。


 「ここで何か……異常な儀式が行われていた形跡を感じるわ」陽菜が話す。


 と、その時――


 通路の奥から、女のすすり泣く声が確かに聞こえた。


 同時に、男の呻き声がそれに重なる。


 「今の……聞こえましたか?」広末が青ざめた顔で尋ねる。


 全員が無言で頷いた。


 「何かが、まだ続いている。儀式も、苦しみも、……そして、その存在も」祐一が呟いた。


そして次の瞬間、通路の先――深い闇の中に、白いドレスを着た女性が姿を現し消えた。



「……居る!」


 その存在は、瞬きの間に祐一たちの前へと現れた。冷気が全身を包み、心臓がきしむような恐怖に襲われる。


 「この場所には、ただの霊ではない何かが封じられている」橘美紀が呟いた。



***残された哀しみと現れた悪魔***

 

一行が、北東の部屋へ入ると、空気が一変した。


 「……ここ、いる」広末が立ち止まり、冷気に包まれた室内を見渡す。


 中央に、ひとりの女の霊が立っていた。

 白いワンピース姿で、髪は乱れ、顔は涙で濡れている。その両腕には、赤黒い鎖のような霊的拘束が巻きついていた。


「……助けて……あの声が……やめて……」


 その声はか細く、しかし強い執念を感じさせた。


「哀しみの記憶が染みついてる……この霊、犠牲者だ」橘が静かに言う。


「苦しんでいる。浄化してあげよう」祐一が札を取り出し、結界を張る。


 橘美紀が、祈りの言葉とともに術式を展開すると、白い光が霊を優しく包み込んだ。霊は驚いたように瞬きをし、口元にかすかな微笑を浮かべた――


 だが、その瞬間、部屋の天井が揺れ、闇が裂けた。


 「来るぞ――!」


 祐一が叫ぶより早く、黒い影が霊の浄化の光を突き破って現れた。


***悪魔の襲撃***


 現れたのは、異形の存在だった。

 山羊のような頭、赤く光る眼、ねじれた角、爛れた皮膚――


その姿は明らかに、あの下の階のポータルと同じ“異界”の存在だ。


「悪魔……っ!」


祐一が咄嗟に魔法陣を描き、攻撃魔法を放つ。


だが、魔法は効かず消滅した。


 「……効かない!?」


 悪魔が祐一に目を向け、低く笑うような気配を放ったその時――


 「白虎顕現――裁断せよ、神の牙!」


 橘美紀が鋭く詠唱し、白い虎の霊獣が閃光とともに現れた。


 白虎は咆哮を上げ、悪魔の胸元へ飛びかかる。


 悪魔が叫び声を上げ、白虎の牙が深く突き刺さり、光が闇を喰らう。



 悪魔は断末魔を残して霧のように消えていった。


***奥の間に潜む穴***


 「倒した……の?」広末が震える声で尋ねた。


 「いや、やつはこの場にいた存在の一部に過ぎない」寮が厳しい表情で答えた。


 奥の部屋――そこには、黒い空間の歪みが口を開けていた。


 「ポータル……ここが、本当の発生源」


 「ここから悪魔たちが流れ込んでいたのね……」陽菜が表情を引き締めた。


 「私と陽菜で、封印を行う。祐一と寮は周囲の警戒を」橘美紀が的確に指示を出す。


***封印の儀***


 橘美紀と陽菜が、結界の札を四方に配置し、それぞれが祝詞と浄化の呪文を重ねていく。


 祐一と寮は、その周囲を守るように立ち、出現しそうな霊や悪意の気配を警戒する。


 ポータルの中では、まだうごめく何かが不気味に動いていた。


 「……陽菜さん、もう少し、力を……!」


 「分かってる、美紀さん」


 二人の力が結集し、最後の封印札がポータルの中心に打ち込まれた瞬間――


 光が広がり、闇が引き裂かれた。


 「封印、完了!」


 ポータルが音もなく消滅し、室内の空気が一気に清らかさを取り戻した。


 「ふぅ……やっと終わった……」


 広末が額の汗を拭いながら、少し笑った。


 「これで、この施設も、大丈夫……よね?」


 だが、その安堵の声に答えたのは、峯川だった。


 「いや……やっと1階の浄化が済んだだけさ」


 その言葉に、全員の背筋が再び引き締まった。


 まだ上の階がある。まだ見ぬ元凶が、残されているかもしれない。

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