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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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静寂の公園に響く足音 ― 西町青空公園調査の始まり ―

 祐一たちは、ゴールデンウィークが明け、平日に戻り大学生活に戻っていた。

そんな折、峯川が、祐一に新しい情報を持ち込む事になる。

 ゴールデンウィークが明け、キャンパスには再び初夏の陽射しが差し込んでいた。

木々の若葉は力強く生い茂り、通学路を歩く学生たちは、どこか休暇の余韻を残しながらも、それぞれの学び舎へと足を運んでいた。


 そんな中、大学の片隅にある文化系サークル棟の一室では静かに、しかし熱を帯びた会話が交わされていた。

 

 そこは、青空大学オカルト研究会。本物の心霊現象や降霊術を追い、時に危険な場所へと足を踏み入れたこともあった、由緒正しき(?)サークルであった。


  しかし、今は違った形の活動へと移行しつつあった。

 昨年起きた一連の心霊騒動を経て卒業した沢田部長の意思を継いだ河餅かわもち新部長の方針は、安全第一の活動へと大きく舵を切っていた。


 あくまで研究は理論や文献に基づき、現地調査も身近な場所に留め、安全が確かめられているところ以外には出向かない。それが、現在のオカルト研究会のスタンスとなっていた。


 「……でもさ、やっぱり現地に行かなきゃ、何もわからないってこともあるんだよな」そう呟いたのは、2年生の田中祐一ゆういちだった。


 彼は1年生のとき、数々の不可解な現象と対峙し、霊的存在のリアリティを知った数少ないメンバーの一人だった。今は表向きは、部の方針に従いながらも、心の奥には、未だ燃え残る「真実を知りたい」という強い思いがあった。


 その言葉に、そっとファイルを差し出したのは、同じく2年の峯川みねかわだった。

 短く刈り上げた黒髪に、理知的な目元。普段は物静かだが、観察力と洞察力には定評のある青年である。


 「祐一、これ……見てくれないか」と、自然を装い差し出す。


 「OK」と、祐一が受け取った。


 手渡された資料には、「西町青空公園」と大きくタイトルが印字されていた。

 それは、青空市の郊外に位置する、さほど有名ではない小さな公園を紹介する地元広報誌のコピーだった。


 「……ただの公園?に見えるけど」祐一が怪訝な顔をする。


 「そう見えるよな。でも、この場所……昔あった娯楽施設の跡地のルート上にあるんだ」


 「娯楽施設……って、あのゴールデンウィークの時の……?」と、声を潜めて祐一が答える。


 峯川も声を潜めながら「そう。直接の関連は不明だけど、いくつかの目撃情報が、この公園の周辺に集中してるんだ」


 ファイルをめくると、手書きの地図や、地元住民の話をもとにした簡易な聞き取りメモが綴られていた。


  夜になると、誰もいないはずのブランコが揺れている

  犬の散歩中、子どもらしき声が聞こえた

  公園の端にある林の奥に、誰かが立っているように見えた——。


 小さな出来事ではあるが、それらが一つの場所に集まっているとなると、話は別だった。

 確かに、大規模な被害報告は無く何でもなさそうだったが気配や違和感といった類の証言が重なる場所には、時に境界が存在することも考えられた。


 「おもしろそうじゃないか」

 興味を示して近づいていた小川啓二おがわ・けいじがニヤリと笑った。

彼も祐一と同じ考えを持っており、これまで多くの霊的現象を見てきた一人だった。こういった地味な異常にこそ、本質が潜んでいると感じ取っていた。


 「まあ、やってみる価値はあるんじゃないかな。被害も出てないし」と、賛同する。


 「だったら、さっそく河餅部長に掛け合ってみようか」

 そう言って峯川は、革部長の元に向かった。

調査概要、資料、想定されるリスク、そして新入生の合宿研修としての応用性——。


 ***調査活動の決定***


 数時間後、部室では河餅部長を囲んでのミーティングが開かれていた。

 「ふむ……なるほど、興味深いね」

 穏やかな口調で、部長は資料をめくる。すでに彼の中でも、計画は具体的なイメージとなって組み立てられていた。


 「ちょうど新入生研修の場を探していたところだったし、調査と合宿を兼ねるにはちょうど良さそうだ」と、おおむね良好の反応を取った。



 「現地の治安状況は問題ないし、公園も市が管理しているなら安全面も悪くないわね」そう口を挟んだのは、副部長の岡田めぐみだった。冷静で、ネットリサーチの達人である。

 彼女もネット上で独自に情報を収集し、現地の安全性や風評を確認していた。


 一谷も賛同の声を挙げる。

「霊的被害がないってのも、ポイント高いね」——。


 「よし、決定しよう」河餅部長は言った。

 「西町青空公園にて、新入生強化合宿を兼ねた現地調査を行う。日程は5日間。主な活動は、公園周辺の霊的現象の観測、定点カメラによる記録、風水調査、地質確認、そして日中の清掃活動。夜間は輪番での見回りと記録だ」


 「了解!」と、峯川と祐一が応じた。


 こうして、準備は本格化した。

 

 オカルト研究会のメンバーには、新入生四人が新たに加わっていた。

 一人目は、怪談と呪術に詳しいオカルトマニアの佐藤一さとう・はじめ

 二人目は、ドローンによる地形調査を趣味とする冒険家肌の織田隆おだ・たかし

 三人目は、チャネリングやヒーリングに興味を持つスピリチュアル志向の広末摩耶ひろすえ・まや

 四人目は、神社仏閣を好み、一眼カメラを常に持ち歩く鮎川美奈あゆかわ・みな

 それぞれが個性を持ちつつ、未知なる合宿調査への期待を胸に、準備を進めていた。


 そして、当日——。


 2台の車に分乗し、部員たちは西町青空公園へと出発した。

 到着すると、すぐにテント設営、機材の搬入、食材の仕分けに取りかかった。

 峯川と一谷が監視カメラを、公園の四隅と林の手前に設置。

 松井あゆみと星川は風水羅盤を手に、公園内の「気の流れ」を調べ歩いた。

 河餅部長、岡田副部長、小川啓二、広末、鮎川はメインテントの設営と仮設テーブルの準備を進める。


 午後になる頃には、ひととおりの設営が完了していた。

 林の手前には警戒用の結界を張り、録音装置と音感センサーを設置。小川が唱えた簡易結界術は、目に見えないが、空気の流れが変わったような錯覚を覚えた。


 日が傾き、オレンジ色の光が公園を包み始める。

 鳥の声が遠ざかり、夜の気配が静かに忍び寄る。


 「さて……ここからが本番だな」

 祐一が、林の方を見ながら静かに呟いた。


 公園の奥——林のさらに向こうには、誰も知らない何かが、じっとこちらの様子を窺っていた。

 購読、ありがとうございました。新しい展開に進む予感へと物語は進んで行きます。

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