秘密裡の心霊スポット調査活動
祐一たちは、ゴールデンウィーク初日、つばき壮に集合し、噂の心霊スポットへ向かう事を決意していた。河餅部長達には内緒で活動だった。
ゴールデンウィーク初日。祐一たちは、河餅部長には内緒で心霊スポットの調査を計画していた。
集まったのは、祐一の所属するオカルト研究会の仲間たち──峯川、小川啓二、松井あゆみ、そして春香。午前9時、つばき荘の前に全員が集合していた。
「今日は、心霊スポットと噂されている廃施設の探索だ。準備はいいか?」
峯川の問いかけに、皆が頷く。
「よし、出発だ」
彼の運転するミニバンに乗り込み、一行は目的地へと向かった。
車内では、期待と不安が入り混じった空気が流れていた。
祐一が尋ねる。
「いくら無人の廃墟でも、ちゃんと許可は取ってあるんだよね?」
「もちろん。トラブルを避けるのが第一。無断で入るのは論外だ。オカルト研究会として、正式に調査の許可を取ってあるよ」
峯川は落ち着いた口調で答えた。
続いて、小川が語る。
「安全第一は分かるけど、慎重すぎても前に進めない。未知の世界に踏み込むには、それなりの覚悟が必要だ」
「霊的な世界は、人知を超えた領域。恐れてばかりじゃ何も掴めない。自らの足で踏み込んでこそ、真実に近づけるんだ」
そう続け、小川は真剣な表情で前を見据える。
松井あゆみが静かに語る。
「私は小さい頃から霊を感じることがあった。避けることもできたけど、いずれ向き合わなきゃいけないときが来る。だから今のうちに、経験を積んでおきたいの」
祐一もまた、想いを口にする。
「危険を避けることも大切だけど、それだけじゃ問題は解決しない。実際に現場に足を運んでこそ、対応力が身につくと思う」
それぞれの思いが交差するなか、春香が静かに言った。
「最終的に進む道を選ぶのは自分自身。皆さんの考え方、それぞれに意味があると思います」
峯川は頷きながら言った。
「確かに、部長に黙って来るのは問題かもしれない。でも、ここに来た皆は、部長の意見だけが正解じゃないと考えているから、参加したんだろう」
祐一も続ける。
「たとえ研究会の方針に反していても、僕はこの行動が間違いだとは思わないんだ」
松井が力強く言った。
「逃げても、いつかは向き合わなきゃいけないなら、今のうちにやっておいた方がいいと思う」
そうして、一行は目的の心霊スポットへと向かった。
***廃施設への到着***
1時間後、彼らは青空市の外れにある廃施設へ到着した。かつては娯楽施設として賑わっていたが、20年以上前に閉鎖され、現在はすっかり廃墟となっている。
「思っていたより広い場所ね」
松井が周囲を見渡しながら呟く。
「今ではすっかり人影もないな」
峯川も同意する。
不思議そうに小川が問う。
「でも、どうしてここが心霊スポットなんだろう?」
祐一が調べた情報によれば、施設は大型ショッピングモールの出現により客足が激減し、閉鎖に追い込まれたらしい。ただ、それだけで心霊スポットと噂されるのは不自然だ。
「その程度で噂が立つものかしら」
松井が首をかしげる。
「まあ、それを確かめるのが今回の目的ってわけだ。まずは外から調査しよう」
峯川が笑みを浮かべて言った。
施設の外周を回ってみると、長年の放置による荒れた様子が広がっていた。枯れ草が茂り、割れた窓ガラス、風に揺れる錆びた看板──寂れた雰囲気はあるものの、特に異常な気配は感じられなかった。
「次は中に入ってみよう。裏口のドアから入れるらしい」
峯川がそう言ってドアノブを回すと、鍵はかかっておらず、あっさりと開いた。
中に入った瞬間、松井が顔をしかめる。
「中は…なんだか重い感じがする。誰かに見られているみたい」
春香も警戒を強める。
「何かいるかもしれません。慎重に進みましょう」
「ここからは細心の注意を払っていこう」
祐一が峯川に声をかける。
「了解。浄化スプレーを撒いて、霊符をドアの内外に貼っておこう」
峯川が答える。
小川が補足する。
「出口の確保も大事だ。入口周辺をしっかり清めてから中に進もう」
彼らは入口を清め、ドアを開けたままにしておくことで、閉じ込められるリスクを回避した。
ネット上の情報では、そのように記されていたが、廃墟となった後に心霊現象が相次いだという噂も存在した。
たとえば、夜になると誰もいないはずの施設内から笑い声や足音が聞こえる、廃墟の窓から誰かがこちらを覗いているといった体験談が書き込まれていた。
「そんな話、ただの作り話だと思いたいけど……」
と小川が苦笑いを浮かべた。
「でも実際に、心霊現象を体験したって投稿がいくつもあるのよね。場所の雰囲気からして、まんざら作り話でもないようね……」
と松井が静かに呟いた。
一行は慎重に足を進め、施設の奥、かつてメインホールだったと思われる広い空間へとたどり着いた。天井の一部が崩れ、外からの光が差し込んでいる。荒れ果てた床には、倒れた椅子や壊れたテーブルが散乱していた。
「ここが……かつて人で賑わっていた場所とは信じられないな」
と峯川がつぶやいた。
そのとき――。
「……聞こえた?」
松井が、ふいに立ち止まり、耳を澄ませる。
「え? 何が?」峯川が目を見開いて辺りを見渡す。
「今……子どもの笑い声みたいなのが聞こえたわ……」
一瞬、場の空気が凍りつく。
「聞こえました。確かに、誰かの声でした……」春香が小さくうなずいた。
「これは……マズいな。全員、一旦戻ろう」峯川が即座に判断を下した。
「霊感が強い者にしか反応が出ない場合もある。無理に進めば、誰かが体調を崩す可能性もあるからな」
一同は峯川の指示に従い、慎重に来た道を引き返し始めた。
しかし、元の通路を戻ろうとしたとき、裏口のドアが――いつの間にか、閉まっていた。
「……誰か、閉めたのか?」
小川が不審そうにドアに手をかける。
「いや、誰も触ってないはず……」
と祐一が答える。
ドアを開けようとしたが、なぜかびくともしない。外側から鍵がかかったように動かないのだ。
「これは……閉じ込められた……?」
一瞬、全員の顔が強張る。
「落ち着け。非常口が他にもあったはずだ。そちらから出られるか確認しよう」
峯川が冷静に呼びかける。
一行は再び施設内を調査し、別の出口を探すことにした。廊下を曲がり、物音に注意を払いながら進んでいく。
そのとき――
「キャッ……!」
松井が何かにつまずいて転びそうになる。
「大丈夫か?」
祐一が駆け寄ると、松井の目の前には、古びたぬいぐるみが落ちていた。
「これは……子どもの遊び道具?」
しかし、そのぬいぐるみは、埃一つなく、まるで最近誰かが置いたかのように綺麗だった。
「さっきの笑い声……これと関係あるのかもしれないな」
と小川が呟く。
次第に、空気が重くなっていくのを誰もが感じていた。
「みんな、気を付けよう。これから先、本格的に何かが現れる可能性がある。呪文や霊符の準備を万全に」祐一が緊張を含んだ声で告げた。
一行は、ぬいぐるみの近くに簡易的な結界を張り、その場を慎重に離れることにした。
「こんな現象が続くなら、ただの噂じゃ済まされないな」祐一がポツリと呟いた。
出口を探し続ける彼らの前に、次第に明らかになるこの施設の過去と、何かの存在とは――。
購読、ありがとうございました。久しぶりの更新になりました。ゴールデンウィーク中は、色々と庭の草むしりや畑の草刈りと、そっちで忙しかったです。ゴールデンウィークもあっという間に過ぎた感じです。
物語としては、ゴールデンウィーク初日なので、なんとなくゴールデンウィーク期間に戻った感じになると思います。




