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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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春休みの小さな決意

 祐一は春休みになりスクーターを入手した。

これで、遠くへの移動も可能になり、新しい冒険が待ち受けている様に感じられていた。

*** 春の空気と小さなエンジン音 ***


 春休み、柔らかな風が街を包む季節になった。


 大学の講義も一段落し、祐一の新たな日課が始まっていた。

それは、最近購入した中古のスクーターに乗って街を巡ることだった。


 小回りが利き、気になった場所にふらりと立ち寄れる——

そんな自由さが、祐一の探究心を刺激していた。


 祐一は時々、青空商店街に立ち寄りショップ巡りの後、食事をする事が定番コースになっていた。


「今日の昼ご飯はラーメンにしよう」と、最近、オープンしたラーメン屋に入って行った。


 青空商店街は、かつての賑わいを取り戻しており飲食店も次々とオープンするようになっていた。


 ラーメーン屋を出た後、祐一は青空大学のイベントブースの前を通り掛かると相変わらず盛況だった。


 「祐一君、久しぶり」と声がして振り返ると、さくらが立っていた。

「久しぶりだね。さくらさん。最近は色々と活動が忙しくて」と答えた。


 さくらは興味深そうに「スクーター買ったんだ。それで最近、出かける事が増えたんだね。私もスクーターに乗ろうかな」


祐一「行動範囲がぐっと広がって便利になったよ」と答えた。


さくらは「へぇ〜、いいなあ」と返す。


 しばらく雑談後、さくらと別れると、再びスクーターに乗って春香のいるお寺へと向かった。


 お寺で写経を行った後、霊力を高める修行を行う。


 静かな本堂で心を落ち着け霊力を高めるお経を唱える。


 しばらく時間が過ぎ春香が声を上げる。

「今日はここまで。お疲れ様。心も研ぎ澄まされ霊力も高まってきましたね。」


 祐一「春香さん、ありがとうございます。でも、まだまだです」と、

お礼を言った後、つばき壮へと帰宅した。


 こうした活動の中、祐一の心の中には「次の一歩」への思いが徐々に膨らんでいた。


 (……そろそろ、小山さんの地域の再調査してみようか)


 以前、寮たちと共に浄化活動を行った場所だったが、

まだ完全に浄化しきれていない所がある事が気になり、再び浄化を行いたいと祐一は感じていた。


***祐一の決心***


 一週間前、つばき壮の玄関先で、寮と顔を合わせたときの事を思い出していた。

「お、スクーターを買ったのか?」そう言いながら、寮は微笑んだ。


「はい。これで少しずつ、調査範囲も広げられるかなって」

祐一が少し誇らしげに答えると、寮はふと遠くを見ながら言った。


「僕が大学時代の時は軽バンに乗って色々な所を走り回っていたよ」

「へー、寮さんも学生時代は色々な所を回っていたんですね……」祐一は興味深く尋ねる。


「まぁね、ただ最初に買った新車は……ある心霊スポットのトンネル調査に出かけて、突然地震が起きてしまってね。命からがら、トンネル内から出てみると、丁度、停めてあった車の所に落ちて来た岩が直撃して廃車になってしまったんだ」


「えぇ!?そんな事があったんですか?」祐一は思わず言葉を失ったが、寮はさらりと笑っていた。


「あの時はショックだったけど、命が助かった分、運が良かったと思うよ」その言葉は軽やかでありながら、どこか重みを持っていた。


 時々、寮から聞かされる心霊スポット巡りの思い出話に刺激され

祐一も出来る範囲内で浄化活動を行う決心が固まっていた。


***再び、訪れる心霊スポット***


 翌朝、祐一は準備を整え、スクーターに乗りキーを回した。


 春の陽光の中、小さなエンジン音が静かに鳴り響く。


「行こう。今度は僕が、自分の足で確かめに行く番だ」


 目的地は、小山さんの住む町の再調査、静かな覚悟が灯っていた。


祐一はスクーターに乗り、かつての霊的異変が続いていた場所を再び向かっていた。


 初めに向かったのは、以前、再生の儀を行った神社だった。

相変わらず荒れたままだったが、鳥居をくぐった瞬間、祐一は空気の変化に気づいた。

 かつて漂っていたどこか重苦しい気配は跡形もなく、境内には清浄な気が静かに流れていた。


「……すごい。以前と比べて神社の気が、変化している」

祐一はそう呟きながら、神社の中を簡単に掃除を行って整えた。


 拝殿の前で手を合わせ深く一礼する。心の中で、この地域を守っている神様に感謝した。


「今度、サークル活動で神社の清掃活動を行うのも良さそうだ……」神社から出てスクーターの前に戻ると池へと向かった。池に着くと以前の重苦しい雰囲気から穏やかな気配へと変化していた。


  水面には春の陽射しが反射し、釣りを楽しむ人々の姿もちらほらと見えた。

 

 遠くから、子どもの笑い声が、微かに風に乗って聞こえてきた。


 その様子に「ここも、大丈夫みたいだ」と呟く。


***残る黒い影***


 そして次にスクーターを走らせながら、小山さんの住む町内の周囲を巡回する事にした。民家や小道、公園の脇など、見落としがちな場所にも目を配りながら慎重に走って回った。


 「特別、変な感じの所はなさそうだな」


 ——その時だった。


 ふと視線の端に雑草に覆われた古い空き地が目に写った。


「……あれ?」スクーターをゆっくり停め、祐一はその場所を見つめた。


 どこか妙な、ざわついた感覚が祐一の中で広がった。

周囲には人の気配もなく、不自然なまでに静かすぎる空気が漂っている。


 何か霊的な気配が感じられた。

「……確認してみよう。念のために」


 祐一はリュックを開き、浄化スプレーとエネルギーグッズを取り出す。


*** 空き地のざわめき 〜静寂の中の異変〜 ***


 祐一は空き地の前に立ち、手のひらで空気の流れを感じるようにゆっくりと目を閉じた。


「……やっぱり、ここは何か変な感じがする」


 祐一は浄化グッズの水晶を敷地の四隅に並べ、敷地内のエリアの浄化と結界を張った。

その後、霊的な存在を浄化する準備を行う。


 「この地に留まるもの、迷えるものよ、道を見つけ、安らかに還れ……」静かな声で祈りを捧げながら、周囲に浄化スプレーを吹きかけ、お経を唱えはじめる。


 しばらく時間が過ぎ、お経を唱え終わった後、


 ザザ……ッ。風もないのにざわりとした音が響いた。


 祐一は再び、お経を唱え浄霊を行う。祐一の周囲から霊的な光が広がり辺りを包み込んで行く。


 その瞬間、空き地の奥の地面がぼんやりと滲むようにゆがんだ。

 そこには、人の形をかすかに留めた影のようなものが浮かび上がる。


 声にならない呻き。

 しかし、攻撃性は感じられなかった。むしろ、それは——迷っているようだった。


 「……苦しかったんだ。ここから、動けなかったんだな」


 祐一は、お守りを胸元に握りしめ、ゆっくりと語りかける。

「……大丈夫だ。安らぎを取り戻そう。君のいるべき場所へ、還るんだ」



 祈りの言葉とともに、写経をした紙を空き地の中央にそっと置くと、影のような存在は淡い光に包まれていった。その後、静かに霧のように消え空気がふっと軽くなった。遠くで鳥の声が聞こえて来る。


 「……天に帰ったんだ」祐一は結界を解すた後、静かに胸をなでおろした。


 その後、スクーターの元へ戻り、もう一度空き地を振り返った。


 そこには、ただの空き地に戻っていた。何も霊的な気配は感じられなくなっていた。

 春の陽射しに包まれた、何の変哲もない空き地が、ただ、そこにあるだけだった。


 「……よし、これで1つ解決だ」そう呟いた後、祐一は再びスクーターにまたがる。


*** 廃屋の気配 ***


 空き地の浄化を終えた後、気になる場所が残っていた。


 「確か、この近くに廃屋があったはずだ」事前に調べていた場所を確認する。


 スマホを取り出しグーグルマップで位置を確認した後、再びスクーター走らせる。


 細い裏道を進んで行くと住宅地の外れにある場所が見えて来る。


 木々に半ば埋もれるようにして、古びた民家の跡が静かに佇んでいた。


 「……ここだ」祐一はスクーターを停め、辺りを見渡す。


 古びた廃屋は、まるで時間から取り残されたように静まり返っている。

朽ちかけた屋根、つたに覆われた外壁、割れた窓から覗く内部の闇は、ただの空き家とは思えない異様な気を放っていた。


 祐一は敷地の隅にスクーターを停めた後、リュックから浄化グッズを取り出す。

さっき行った空き地の浄霊経験から、ここも霊的な存在が居る事を感じていた。


 「……よし、結界を張ろう」祐一は土地の四隅に浄化グッズの水晶を設置して行く。

次に建物の玄関前に結界用の魔方陣シートを広げ、その中に入る。


 「……迷えるものよ、ここに留まることなく……安らかな道へと還れ……」と、静かにお経を唱え始める。すると、祐一の声に呼応するように、廃屋の空気が歪みはじめて行く。


 途中でお経を唱える事を辞め「さっきと違う……」と呟いた。


 異変に気づいた時には、辺りの空気が急激に冷え込み、

建物の奥から黒い影がうごめくように現れ始めていた。しかも一体、二体……ではなかった。


 三、四、五……次々と現れる影に「こんなに霊が出るなんて……多すぎるっ!」と驚きを隠せなかった。

 

 祐一が気づいた時には、すでに多くの悪霊に取り囲まれていた。


 悪霊の陰からは、うめき声のような、苦しみとも怒りともつかぬ気配が、彼の身体を締めつける。



 「……このままじゃダメだ……!」結界の魔方陣の回りには、既に数多くの悪霊が取り囲みつつあった。


 祐一は、急いで浄化用の霊府を地面に置き、お経を唱える。


 霊府からは強力な霊光が広がり悪霊が怯んだ。


 「今だ!」その隙に祐一は、素早くスクーターに駆け戻るとエンジンをかけ急発進する。

後方からは黒い影がまた、迫って来る気配を背中に感じながらも、急いで廃屋から離れて行った。


 しばらくしてから、後ろを確認すると道路を滑るようにして複数の黒い影が付いて来るのが確認できた。一般的な霊とは明らかに違う執念と怨念が混ざったような存在に感じられた。


 「地縛霊だけじゃなかったんだ」祐一は、スクーターを停め後ろから迫って来る悪霊に向かって「光よ——闇を祓え!」と唱えると同時に手から放たれた魔法の光弾が、黒い影に命中し浄化されていった。


 影は断末魔のような声を残して消え去っていった。一体、また一体と十体近くの悪霊を次々に浄化していったが、次々と現れて来る悪霊に圧倒されて行った。


  「……っ、これじゃ持たない!」祐一は、急いで一枚の霊府を取り出した。それは式神の霊府だった。「朱雀——今、力を貸してくれ!」霊府を空へ投げ放つと炎をまとった朱雀が現れた。


 「行けっ、浄化してくれ!」朱雀は鳴き声とともに宙を旋回し、迫る悪霊たちに向かって朱雀が炎の翼を広げ、悪霊の列に火柱が走り浄化の炎で焼き尽くして行った。祐一はその間に再びスクーターに乗り走らせる。廃屋から30分以上走り離れて行く。幹線道路を越え、川沿いの橋を渡り、隣町に差し掛かった所で再びミラーを見て確認すると、もう黒い影は追って来ていなかった。


 「……ふぅ……助かった……」祐一はスクーターを停め、深て溜息をついた。気づくと春風が頬を撫で、どこか懐かしい鳥のさえずりが耳に戻ってきていた。


 「……あの廃墟が心霊スポットになっていたとは、思ってなかったな、、、まだ、僕の力では、早かったのかも知れないな。でも……1人で何とかここまで出来たのは、成長している証拠かも知れない」


 静かに祐一は景色を眺めながら呟いた。


 ご購読、ありがとうございました。今回は、

祐一が初めて1人で浄化活動を行った話になりました。


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