蘇る神社の力
祐一たちは小山さんの住まいの浄化を済ませ一息ついていた。次の目的に向かって・・・
*** 封じられた地と忘れられた神社 ***
小山さんがコーヒーとお菓子を出し
「ありがとうございます。これで安心できます」と、お礼を述べた。
一息ついた頃、寮が小山さんに穏やかに尋ねた。
「小山さん、この近くに、心霊スポットとして噂されているトンネルがあるんですが……ご存知ですか?」小山さんは少し表情を曇らせて頷いた。
「はい……たまに、若い人たちが肝試しに行ってるって話は聞きます。でも、あのあたり……昔から気味が悪いって近所では有名なんですよ。正直、迷惑に思ってる方もいます」
「事故に遭った人の話もあるって、聞いたことがあります。あまり近づかない方が良い場所だと、私も思っていて……」
寮は真剣な面持ちで頷きつつ、さらに尋ねた。
「他にも、このあたりで“何かおかしい”とか、“不思議なことがある”って場所は、ありませんか?」
小山さんは少し考え、ためらうように言った。
「……あの、少し離れた場所に池があります。見た目はきれいな池なんですけど……釣りに行った人が足を滑らせて落ちたり、気分が悪くなったって話もあります。地元の人たちは、あまり近寄らない場所ですね」
その言葉を聞いて、國府田が手にしていたタブレットに目を落とし、地図を表示させた。
彼女の指が画面上を滑り、トンネル、池、そして今いる古民家の位置を確認する。
「……位置的に、この三点はゆるやかに線で繋がっていますね。もしかして、これは……」
「“霊道”の影響かもしれない」
寮が地図を覗き込みながら呟いた。
「地脈と霊的な流れが交差する場所……この家は、ちょうどその交差点に建っているのかもしれません」
「小山さん、もう一つだけお尋ねしてもいいですか? この近くに、神社はありますか?」
そう尋ねると、小山さんは思い出すように頷いた。
「……ええ、あります。でも、ずっと前から参拝者もほとんどいなくて、今はもう寂れてしまってます。鳥居も傾いていて、草も生い茂って……地元の人も、あまり立ち寄らなくなっているそうです」
その話を聞いた美紀が目を細めて呟く。
「神社の役目を果たせていない可能性もありますね……もしかしたら、結界の力が失われているのかも」
國府田は再びマップを操作し、神社の位置を割り出した。
「この家からも、トンネルや池の流れからも、少し外れているけど……霊道の“出口”のような位置ですね。もしここを整えられれば、流れが落ち着くかもしれません」
祐一がゆっくりと頷き、真剣な表情で口を開いた。
「……神社を整備すれば、この辺りの気の流れを変えられるかもしれません。放っておかれた土地に、再び祈りが戻れば、少しずつ変わっていく可能性はあります」
「よし、次はその神社を見に行ってみよう」
寮が立ち上がり、全員の次の調査に向かう準備を整える。
小山さんは小さく頷きながら、言葉を添えた。
「……ありがとうございます。ここに来ていただいて、本当によかったです」
*** 忘れられた神域へ ***
一通りの浄化と調査を終えた後——
祐一たちは、小山さんの古民家を後にしようとしていた。
國府田が玄関先で軽く会釈しながら言葉をかける。
「また何かあったら、すぐに連絡してください。対応しますから」
小山さんは深々と頭を下げた。
「……本当に、ありがとうございました。皆さんが来てくれて、少し安心できました」
祐一たちは静かに頷き車へと乗り込む。そして、次なる目的地へと向かった。
***神社の入り口へ***
祐一は車内でこれまでの事を話し合った。
「やっぱり、心霊スポットのトンネルを浄化する事が大切かも知れません」
寮は車のハンドルを握りながら答える「ああ、トンネルを浄化してしまえばひとまず解決しそうだな。だが、それだけが原因でも無い気もしているんだ」
國府田「確かにトンネルだけでしたら、小山さんの自宅で生じる心霊現象とは別問題になりそうですね」と同意する。
橘美紀「他にも池や周囲の土地の状態も気になるわ」と疑問を感じている事を話した。
祐一も「実際に小山さんの敷地内から出ると、やっぱり重い気の流れを感じられます」
しばらく走った後、寮は車を停めた。そこは山の麓にある小さな空き地だった。舗装もされておらず、人が通れる程度の細道が続いていた。そこから先は徒歩で登るしかなかった。
寮が車から降り準備を整えながら「ここから先は徒歩で登って行くしかなさそうだ。美紀、車の回りに結界を張ってくれ。國府田、神社の入り口の両側に浄化グッズを設置してくれ」と指示を出す。
祐一は浄化スプレーを手に持ち慎重に周囲を見渡した。出発の準備を終えた一行は落葉が積もる山道を慎重に登っていった。枯れた竹のざわめきが、風に揺れてカサカサと音を立てていた。
その途中、祐一がぽつりと口を開いた。
「……池の調査も気になりますね。あの場所も、何かありそうな感じがします」
「そうだな。でも、まずは神社だ」寮が前を歩きながら振り返る。
「神社の状態を確かめて、可能であれば浄化もしてみよう。もし、神気がきちんと流れ始めれば……トンネルや池のエネルギーにも良い影響を与える可能性がある」
「龍脈のエネルギーが滞っているのかもしれませんね」
國府田が地図アプリで標高と地形を確認しながらつぶやく。
「エネルギーの流れが塞がれた状態だと悪い気は、そこに溜まりやすくなります。まるで濁った水が流れを失って腐っていくみたいにね」
「この地域一帯が……ケガレチになっているのかも」
祐一の言葉に、全員が一瞬だけ立ち止まり、空気がぴんと張り詰めた。
古来よりケガレチとは、死や不浄、怨念といった負の気が濃く集まる場所とされている。
もし神社がその中心で機能を失っているのなら、周辺の地に悪影響を及ぼしている可能性は十分にあった。
「……行って確かめよう」
寮の低く引き締まった声に、三人は頷き、再び歩き始めた。
重く沈んだ気配を打ち払うように、山道の先に向かって行く。
鳥居が見えてきたとき、四人の背筋に冷たい風が吹き抜けるのを感じた。
***神社の浄化***
神社の鳥居は、もはや「門」としての役目を果たしていなかった。片方の柱は地に倒れ、もう片方は斜めに傾き、蔦に巻かれながらもかろうじて立っている。社殿へ続く参道も草に覆われ、かつてここに祈りがあった痕跡は、わずかな石段と朽ちた狛犬に残るのみだった。
祐一は足を踏み入れるなり、空気の異様な重たさに眉をひそめた。
「……ここが神社……本当に、長い間、忘れられていたんですね」
寮は黙って頷き、鳥居の根元にそっと手を触れた。
「國府田、浄化グッズを」
「はい、今……」
國府田がリュックから結界用の霊符と浄化水のボトルを取り出し、寮に手渡す。寮はそれを丁寧に鳥居の両端に置き、呪文を小声で唱えながら空気を整えていった。
「……この程度では、効果は薄いかもしれないな」
その言葉に、祐一が続く。
「けれど、少しずつでも……始めないと、何も変わらない気がします」
橘美紀は社殿の前に立ち、静かに両手を合わせた。
「この場所、本来は強い神気に守られていたはず。何らかの理由で力が封じられている……あるいは、忘れられたことで力が眠ってしまったのかもしれません」
その時、國府田がふと立ち止まり、地面に目をやった。
「……これ。もしかして、封印?」
彼女の指先が指す先には、地面の土の間に埋もれるようにして、古びた木札が埋められていた。かすかに文字が見える。
『瘴気、此処に集うを封ず』
「……これは、瘴気を封じるための結界符……? でも、こんな形で放置されていたら……」
寮が真剣な面持ちで頷いた。
「結界が完全に破られてはいないが、かなり弱っている。たぶん、霊道の流れが変化して、この場所に気が滞っているんだ」
祐一は春香から学んだ浄霊のお経を思い出し、静かに唱え始めた。
「清らかなるもの、道を整え、迷える者に安らぎを……」
お経の音に応じるように、社殿の奥で風がざわめいた。倒れた木々の間から日差しが差し込み、一筋の光が古びた賽銭箱に落ちる。
美紀は小さな式神を飛ばし、社殿周囲の気の流れを整え始めた。
「式神が……反応してる。まだ、ここに力は残っている。ちゃんと目覚めさせれば、きっと……」
寮は小さく息を吐いた。
「この神社を再び神域として機能させるには、時間がかかりそうだ。でも、今の我々にできる限りの浄化と結界の再生をやっておこう」
「……はい!」祐一が力強く答えた。
四人はそれぞれの神社の浄化と再生の儀式の準備を始めた。
祐一は春香から渡された霊香を焚き、再び神気の流れが呼び起こす準備を行った。
「ここに神気を呼び起こし給え」
國府田は御神体の磐座の回りに清酒と塩を撒き清める。
「緑山神社の神、再び現れ給え」
橘美紀は、神社全体の浄化を行う為に式神の青龍、白虎、朱雀、玄武を召喚し四方の浄化と結界を張る。
「青龍、白虎、朱雀、玄武、四神集え、清め給え守り給え」
神社の周囲から神気が集まり始めて行くのが感じられた。
「寮さん、お願いします」と祐一が合図を送る。
「よし、霊光弾最大出力、行け!」
寮は霊光弾を磐座に放ち再び磐座は再び神気が宿り輝き蘇って行くのが感じられた。それと同時に風が吹き、竹林が揺れるたびに、空気の重さが少しずつ軽くなっていくのが感じられた。
そのとき、國府田がふと呟いた。
「……聞こえましたか?」
「……何を?」美紀が振り返る。
「……声。『ありがとう』って……」
全員が静かに目を閉じ、しばし耳を澄ます。
確かに聞こえた。優しく、微かな声が、風に乗って四人の胸に届いた。
「……やっぱり、この場所には、まだ……守ろうとする存在がいるんだ」祐一はそっと手を合わせた。
神社は、ゆっくりと、しかし確実に息を吹き返しはじめていた——。
購読、ありがとうございました。
神社に再び神気が戻り、この地域の再生に希望の光が差しました。次回をお楽しみに




