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墓地調査の夜 火の玉との遭遇

 祐一は、つばき壮と周辺を整え、パワースポットに出かけ、平穏な毎日を過ごしていたある日、オカルト研究部にある調査の依頼が舞い込む事になった。

つばき荘とその周辺は、祐一と桜が行った風水調整のおかげで一時的に穏やかな環境を取り戻していた。しかし、その静けさは長くは続かなかった。桜と訪れたパワースポット巡りの後から、祐一はどこか気になる不安感を抱えていた。


「つばき荘自体は落ち着いたけど、完全に解決した感じじゃないな……」

そんな考えが頭をよぎる中、祐一の元に青空大学オカルト研究部の沢田部長から連絡が入った。「山中の墓地で火の玉や幽霊の目撃情報が頻発しているらしい。地元の住民が困っているから調査をお願いしたい」との内容だった。



 沢田部長は熱意を込めてメンバーに呼びかけた。「今回の依頼は、地元の住民からの相談だ。これまでの知識と経験を活かして、しっかりと調査しよう!」


**準備と現地到着***


部員6名は2台の車に分乗し、山道を登って調査地に到着した。


山中の墓地に到着したメンバーたちを迎えたのは、ひっそりとした静寂と冷たい風。古びた石碑や朽ちた木々が周囲に散らばり、昼間でも不気味さを感じさせる光景だった。


「ここ、本当に誰も来ていないんですかね?」河餅は辺りを見回しながら、どこか落ち着かない様子で話す。


 一谷は資料を見つめながら冷静に言った。

「最近、この近辺で光の目撃例が増えているようです。夜になると特に……」


祐一は深呼吸をし、背筋を伸ばしながらカメラや機材の設置を手伝った。

「ここがどんな場所なのか、調査で明らかにしたいですね」


「昼間でも何だか不気味だね」と機材を運ぶ河餅がつぶやくと沢田部長は注意深く答えた。「僕達には特別な霊能力は無いから、安全を最優先して行動しよう」


 車から降りて準備を始めた。1台は後部ハッチを開けバックテントを設置し、テーブルと椅子を並べ交代でモニタリングを行う体制が整えられた。また、祐一は美紀からもらったお札を車内に貼り、車の周囲には盛り塩で結界を張った。香炉から魔除けのお香の煙が立ち昇り、独特の香りが場を和らげた。


 部長はお守りをメンバーに手渡し「気休めかもしれないが、少しでも安心できるように」と声をかけ、広場にオープンテントを設置しテーブルと椅子を準備し、そこで簡単な食時を取りながらミーティングを行った。


 女性部員の岡田めぐみがコーヒーを煎れながら「私たちは、準備が整った後、深夜の交代時間まで休みます。沢田部長たちは眠気覚ましにコーヒーをどうぞ」と勧めた。


吉村が「ここがキャンプ場だったら楽しいけど、墓地の心霊スポットの近くでの食事とはね」と笑い、場をなごます。


 河餅は笑顔を浮かべながら資料を手に取った。「僕たちオカルト研究会にはぴったりの調査対象ですね。心霊現象を直接観察できるなんて、こんなチャンスはそうそうないですよ!」


 一方、一谷は冷静な声で提案する。

「でも慎重に進めましょう。特に火の玉は物理現象の可能性もありますから、映像やデータをきっちり押さえることが大事です。」


 河餅は彼の言葉にうなずきながらも、

「一谷君らしいけど、こういう現象って映像だけじゃなく、その場の雰囲気が重要なんだよ」と意見を重ねる。二人の性格の違いが浮き彫りになり、他のメンバーも興味深そうに耳を傾けていた。


 一谷「調査と言ってもグループ全員で6名の調査ですから、慎重に行いましょう」と、慎重な態度を取った。食事も終わり一息ついた後、噂のお墓に全員で行きカメラや機材を設置した。


 祐一は周囲を見渡しながら「確かに不気味な感じですが特別、何も感じませんね」と、話す。


 再び、車を停めている広場に戻り、モニタリングを始める。



***火の玉の出現***


 夜が深まり、午後10時を過ぎた頃、モニターに異変が映った。墓地中央に光る球体が現れ、ゆっくりと浮遊しながらカメラの方へ近づいてきた。他のカメラでは、何か影の様な物が映り込んだ。


 モニターには突如光る球体が現れた。その動きは自然発火や反射光のそれとは異なり、滑らかに漂いながら徐々にカメラに近づいてくる。祐一の額には自然と汗がにじむ。


「これ、本当にただの火の玉なのか……?」河餅の声が震えていた。

一谷はモニターを凝視しながら言った。「ここまで規則的に動くのは、単なる自然現象とは思えないですね。少し異常です」


 光の球体はさらに複数に分かれ、

車の方へ移動を始めた。窓越しに揺れる光に、メンバー全員が息を詰める。



「これが火の玉…?」河餅はモニターを凝視しながら声を漏らした。その光はふわりと揺れ、次第に広がるように動いている。


 一谷が冷静な声で補足する。「火の玉の正体については色々な説があるんです。リンの化合物が自然発火したものとか、虫や動物の目に反射した光だとか……」


 祐一は首を振りながら反論した。「でも、あれは違う。自然発火にしては動きが滑らかすぎるし、虫の反射光にしては、あまりにも明る過ぎです」


 一谷は考え込むように目を細め、

「確かに、これはちょっと普通じゃないかもしれませんね」とつぶやいた。


 火の玉はさらに車の方へと近づき、

ゆっくりと取り囲むように動き始めた。その異様な動きに、車内の緊張感は一層高まった。



しばらくすると、火の玉が墓地から離れ車を停めている広場の方にゆっくりと移動して来る。



球体は複数に増え、車へと向かい始めた。部長は冷静に指示を出す。

「全員、車内に避難だ。車から出ないこと!鍵をロックして魔除けのお香を」


 祐一が、他の車とテントで休んでいるメンバーを起こし全員、1台の車に避難した。


 すると、

火の玉は車を取り囲むように漂い始めた。窓越しに揺れる光に、車内の緊張感は高まるばかりだった。


***車内での緊迫した時間***


 深夜1時頃、奇妙な音が聞こえ始めた。窓を叩くような音、タイヤの周囲を擦る音が断続的に響く。祐一はモニターを注視しながら「火の玉が車の周りを旋回しています…」と報告した。


 

 部長は再び指示を出す。「絶対に外に出るな。静かに、祈りを続けよう。」メンバーたちは怯えながらも互いに手を握りしめ、耐えるしかなかった。


 バックテント内では魔除けのお香が焚かれ、香りがわずかな安心感をもたらしていた。


***夜明けと安堵***


 午前4時過ぎ、火の玉は次第に薄れ、霧散していった。しかし、それと同時に車の近くから聞こえていたタイヤを擦るような音もピタリと止まった。祐一はモニターを確認しながら、何かに気付いたように呟いた。「おかしい……火の玉が消えた瞬間、墓地中央の石碑から微かに光が漏れているように見える。」


一谷がすぐに記録用のメモを取りながら応じた。「光? もしかして、石碑自体が火の玉の発生源に関係している?」


 部長は眉をひそめながら慎重に指示を出した。「それなら次回は、その石碑を中心に調査しよう。十分な準備を整えてからだ。」


 その場はひとまず撤収することになったが、石碑の謎が新たな伏線として残された。


 夜明けの気配とともに、周囲の冷気が和らぎ始める。「どうやら終わったみたいだな…」沢田部長が静かに言うと、部員たちは疲れた顔ながらも互いに微笑み合った。沢田部長は続けて「機材を回収後、ただちに、ここを離れよう。データは後で分析しよう」と告げた。


 部員たち全員で機材の撤去と回収を済ませると、直ぐに山を降りる事にした。


 ***帰路とさらなる調査の計画***


 山を下りる途中、祐一は墓地中央にあった石碑を思い出した。

「あの石碑に何か秘密があるかもしれません。山田さんに相談しましょう」


部長はその提案に同意し、オカルト研究会は、

次の調査の準備を始めることを決めた。だが、霊的な安全対策を徹底するという条件付であった。


こうして、一夜の緊迫した体験を経た部員たちは、一旦引き上げる事になった。


***山田さんからの報告***


 オカルト研究会は、青空大学に戻り、

カメラに映った映像や体験の資料をまとめて、依頼があった周辺地域の人々に報告した。


 沢田部長、河餅、一谷が説明会を開き報告した。


 住民からは「やっぱり祟りでは....」との声も挙がった。

沢田部長は「今の所、原因は判明していません。科学的現象の可能性も考えられますが、原因究明までには及んでいません」と、報告した。


 その後、オカルト研究会の先輩で霊能者として活動されている山田さんに相談した。

山田「君たちが調査に出向いた所は、かなり霊的に悪い感じがしたよ。残念だけど、今の僕一人では、解決が難しそうだ」と答える。


 沢田部長「山田さんの力でも、難しいのですか。。。何か対策はありますか?」と、尋ねると

山田は腕を組み。「残念ながら、今の僕一人では、とても浄化や封印を行うのは厳しいだろうね」と答えた。


 こうして墓地の調査は一旦、休止となった。



 ***美紀への相談***


 祐一は、山田先輩の言葉にどこか釈然としない気持ちを抱きながら、つばき荘の自室に戻った。カメラに映った映像や音声データをもう一度確認し、何か見落としている手がかりがないか慎重に調べた。しかし、特筆すべき新たな発見はなかった。


「これ以上、自分たちだけではどうにもならないかもしれない……」

そう考えた祐一は、頼れる存在である橘美紀に相談することを決めた。高校時代からの縁があり、陰陽師としての経験も持つ彼女なら、状況を打破するための知恵を貸してくれるかもしれない。


***美紀との連絡***


翌日、祐一は美紀に電話をかけ、状況を説明した。

「つばき荘の件もだけど、今回の墓地調査ではさらに厄介なことに直面したんだ。火の玉が現れたり、カメラには奇妙な影が映っていたり……。山田先輩も手に負えない状況でさ……」


美紀は少し考え込んだ後、祐一にこう提案した。

「それなら、一度会って詳しく話してくれない? 直接状況を聞いたほうが対策を考えやすいわ。今週末、時間が取れるから、駅前の喫茶店で会いましょう」


祐一は美紀の提案を快諾し、録画データや山田先輩からの報告内容をまとめて持参することにした。


***再会と状況説明***


週末、駅前の喫茶店で美紀と再会した祐一は、墓地調査での出来事を詳細に説明した。火の玉が現れた様子、車内での緊張感、そして住民からの「祟り」という噂についても触れた。美紀は真剣な表情でメモを取りながら祐一の話を聞いていた。


「確かに、そこまでの現象が起きているとなると、霊的な要因が絡んでいる可能性が高いわね。特に火の玉が複数現れて移動しているっていうのは、自然現象だけでは説明がつかない場合もあるのよ」


 祐一が頷きながら、さらに尋ねた。「僕たちが現場で行った浄化や結界作りでは、不十分だったってことですか?」


美紀はコーヒーに口をつけながら答えた。

「そうね。墓地という場所自体が強い『陰の気』を持つ場所だから、簡易的な浄化ではその場しのぎにしかならないわ。それに、祐一君たちが見た火の玉や影の正体が何なのか、まず突き止める必要があるわ」


***追加の調査提案***


「まず、その墓地や周辺の歴史をもっと詳しく調べるべきよ」

美紀はそう言うと、続けて提案した。

「古い地図や地元の伝承を探して、そこにどんな背景があるのか確認してみて。あと、あの墓地中央にあった石碑、あれはきっと何か意味があるはずよ」


祐一は頷きながらメモを取った。

「確かに、あの石碑は気になりました。山田先輩も同じことを言っていましたし、調査の中心に据えるべきかもしれませんね」


「それと、私からもう一つ。」美紀はバッグから小さな袋を取り出し、中から数枚の霊符とクリスタルを手渡した。

「これは少し特殊な霊符で、強い結界を張るときに使うの。あと、クリスタルは場所の気を安定させるのに役立つわ。今度調査に行く時に役に立つかもしれないわ」


祐一は感謝の言葉を述べ、受け取った霊符とクリスタルを大切にしまった。

「ありがとうございます、美紀さん。次の調査ではこれを活用してみます」


***桜との対話***

祐一はつばき荘に戻り、桜に墓地での出来事を報告した。しかし、桜の表情は曇ったままだった。


「祐一君、確かにその現象は興味深いけど、非科学的な結論を出すのは早すぎると思うの」

祐一は必死に反論する。「でも、あれを見たら、ただの自然現象とは思えないんだ。火の玉だけじゃなく、石碑から漏れる光も……何かあるはずだよ」

桜はため息をつき、厳しい口調で言った。「そういう思い込みが、新たな問題を生むこともあるんじゃない? 私は証拠がない限り、信じないわ」


 祐一は言葉を飲み込み、

ただ黙って桜の視線を受け止めた。二人の間に埋まらない溝が広がっていくようだった。



 「でも、このまま放っておけないんだ。現地の人たちも困っているし、僕たちにできることがあるなら、やるべきだと思うんだ。」祐一の言葉には強い決意が込められていた。


桜はため息をつきながらも、どこか心配そうな顔で付け加えた。

「それが本当に解決に繋がるならいいけどね。でも、私はやっぱり非科学的なことに振り回されるのは嫌いだわ」


祐一と桜の会話はどこか平行線をたどりながらも、次なる調査への準備は着実に進んでいくのだった。


***次なる試練***


 美紀からのアドバイスにより、祐一は墓地中央の石碑に特別な意味があると確信した。

「石碑の光と火の玉……必ず関連があるはずだ」美紀から渡された霊符やクリスタルを手にし次の調査に挑む決意を固めた。


 オカルト研究部の他のメンバーも再び一致団結する。


 沢田部長は地図を広げながら提案した。「次回は石碑を中心に、周辺の地層や歴史も調査しよう。住民の聞き取り調査も追加して、謎を解明する手がかりを増やすんだ」



こうして、祐一たちは新たな試練に立ち向かうべく、次の調査への準備を進めていった。未知への恐れと期待を胸に――物語はさらなる展開を迎えようとしていた。


 一方、桜は祐一たちの調査活動に疑問を持っていた。

「でも、やっぱり迷信を追いかけているように見えるのよね……私は慎重に見守ることにするわ」

 ご購読、ありがとうございました。話が続いて行くので連載物は、一度始めると、終わるまでが大変と、思う所もあります。

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