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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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再生への兆し・青空商店街の試み

 はじめは、あまり乗り気でなかった青空商店街復興の為の調査活動を受けたオカルト研究会だったが、

より復興の為の対策について、メンバー全員、一丸となって行った。

 青空商店街は、かつては多くの人々が行き交い、地域の暮らしを支える賑やかな場所だった。しかし時代の流れとともに徐々に人の足は遠のき、今では全体で約100店舗あるうち、半数以上がシャッターを閉じたままとなっていた。色あせた看板、埃をかぶったショーウィンドウ。昼間でさえも、どこか冷えた風が吹き抜けるような寂しさが漂っていた。


 祐一たちオカルト研究会の面々が商店街を歩いていると、ふと沢田部長がつぶやいた。

「……ここ、100店舗もあるのに、半分以上閉まってるなんてな。1、2店舗が開いたくらいじゃ、焼け石に水だよ」

声は低く、どこか無力さを帯びていた。


祐一はその言葉に、一瞬うつむいたが、やがて顔を上げて答えた。

「それでも……僕たちにできることがあるなら、やってみましょう。たとえば、椿壮のカフェの人気メニューを出張販売してみるとか。あのケーキとコーヒーなら、絶対に足を止めてくれる人が増えて行くと思います」


その真剣な言葉に、周囲のメンバーも少しずつ表情を引き締めた。

「なるほど……あのカフェのケーキ、実は僕も好きなんだよな」と、星川が照れくさそうに話す。


 松井あゆみも同意し「私もつばき壮のケーキや和菓子、大好きです。祐一君が時々、オカルト研究会の部室に持って来てくれるのを楽しみにしています」他のメンバーも同意した。


 そうした小さな希望の芽から始まり、祐一たちは本田会長に商店街再活性化の提案を持ちかけた。会長は彼らの熱意に心を打たれ、空き店舗の一部を学生たちの活動拠点として改装・使用することを許可してくれた。会長の背中を押したのは、「この場所を、もう一度笑顔が戻る場所にしたい」という若者たちの純粋な想いだった。


 それをきっかけに、青空大学の学生たちは空き店舗を利用して、週末限定の学習塾や健康体操クラブ、趣味の絵画教室、手作り工房などを開くようになった。教える側も学ぶ側も学生という、柔らかで親しみやすい雰囲気が人を呼び、地域の親子や高齢者たちが少しずつ足を運ぶようになった。


 さらに、オカルト研究会の面々もこれまでの活動を振り返る展示イベントや、かつての心霊現象の調査記録などを公開するブースを設けた。訪れた人々は、その非日常の世界に引き込まれ、目を輝かせながら話を聞いていた。


 また、商店街の広場では青空大学の音楽部による演奏会や演劇部のパフォーマンスが定期的に行われるようになり、週末のたびに多くの人々が集まるようになっていった。その賑わいに引かれるように、空き店舗の前にはフリーマーケットや地元屋台の出店も増え、少しずつ、かつての活気が戻り始めていた。


祐一はその流れに加え、地域の霊的エネルギーの調整も重要だと感じていた。

「場の気を整えれば、もっと、人が自然と集まるようになるはずだ」


夕暮れのつばき壮、祐一は寮がいつもの編集の仕事を終えて帰ってくる時間を見計らい、玄関の前で掃除を行いながら待っていた。背後では西日が窓から差し込み、カーテンをオレンジ色に染めている。


 やがて、手に重そうな資料を抱えて帰宅する寮の姿が見えた。

祐一は立ち上がり、一礼して声をかけた。


「寮さん、お帰りなさい。少しお時間いいですか?」


「ただいま、祐一。ん、どうした?」


 祐一は少し緊張した面持ちで、青空商店街の再生プロジェクトについて話し始めた。学生たちの活動、少しずつ芽生え始めた地域との絆、そしてその根底にある“場の気”の問題について。寮は黙って話を聞きながら、頷いたり眉をわずかにひそめたりしていた。


「それでですね。商店街にある青空神社で、浄化の儀式を行えたらと思うんです。場のエネルギーを整えて、地域全体を後押しできたらって……寮さん、お願いできませんか?」


 少しの沈黙のあと、寮は肩をすくめながら笑った。


「面白いじゃないか。僕たちの浄化儀式が地域活性に役立つなんてな。ただし――条件がある」


「えっ?」


「僕の携わっている雑誌の次号の記事として、その様子を載せること。写真も、儀式のレポートもバッチリ頼むぞ」


 冗談めかしながらも、その目は本気だった。祐一は一瞬だけ考え、すぐに深く頭を下げた。


「もちろん、ありがとうございます!」


 ***青空神社の儀式***


 週末の早朝。空がかすかに明るくなり始めた頃、青空神社には静かな緊張感が漂っていた。


 境内には、すでに寮、橘美紀、陽菜、春香の四人が揃っていた。皆それぞれ、白を基調とした儀式用の衣装を身につけており、朝露に濡れた石段を静かに踏みしめていた。


 鳥居の向こうには、オカルト研究会のメンバーたちが見守っている。息をひそめるように、その時を待っていた。


 儀式の最初の段階――「場の清め」が始まった。寮と陽菜は神社の四方に分かれ、手にした木杯から日本酒を少量ずつ撒いていく。地面にしみ込むその一滴一滴に、静かな祈りが込められていた。


「大地の穢れを鎮め、風と水を整える……」寮が小声で唱えると、風がわずかに方向を変えたように感じた。


 その間に、美紀は神職装束を身にまとい、本殿の前に立っていた。彼女の姿は、まるでどこか別の時代から現れたように神々しく、朝霧に包まれながらも芯のある存在感を放っていた。


「――鈴の音をもって、神々にお伝えいたします」


 美紀が手にした鈴を静かに鳴らす。その澄んだ音が霧の中に吸い込まれ、次第に境内全体に波紋のように広がっていった。やがて、彼女の祈祷が始まった。


「天地の理よ、清き風となりて此処に満ちたまえ……」


 その声は透明で、まっすぐだった。見えない力が流れ、空気がゆっくりと変化していくのを、誰もが肌で感じていた。鳥のさえずりさえ止み、世界が静寂に包まれる。太陽が雲の隙間から差し込み、一瞬、美紀の周囲が淡く金色に輝いたように見えた。


 春香は手にした塩を時計回りに撒き、陽菜は小さな太鼓をリズミカルに打ち鳴らしていた。その音はまるで心臓の鼓動のように、空間に生命を吹き込んでいた。


 儀式がクライマックスに差しかかると、ふいに風が強く吹いた。祐一たちがいる場所にもその風が届き、木々の枝がざわめいた。


 その瞬間、ひとりの学生がぽつりとつぶやいた。


「……今、何かが動いた気がした」


 それは錯覚ではなかった。祐一もまた、足元から何か温かいものが沸き上がるのを感じていた。恐怖ではなく、むしろ安心感。目には見えないけれど、確かに“場”が変わったのだ。


***浄化の儀式の後***


 儀式のあと、参加者たちはそれぞれ無言のまま深く一礼した。誰もが神聖なものに触れたことを直感で理解していた。


 寮はゆっくりと立ち上がり、祐一に向かって小さく微笑んだ。


「これで……商店街の風も、少しは変わるかもな」


 祐一は頷いた。その目は、これからの商店街に差し込む“希望”の光を確かに見据えていた。



数日後。商店街を歩く人々からこんな声が上がり始めた。

「この辺、なんだか空気が軽くなったみたい」

「最近、ちょっと面白い店が増えてるって聞いたわよ」


椿壮のケーキや和菓子も人気を博し、祐一が提案した廃村の復興支援による農産物の出店や、由香の週末限定・占いサロンの開店なども実現していった。


沢田部長は再び商店街を見渡しながら、以前とは違う声色でつぶやいた。

「……気がつけば、焦点が手に来る人の流れが増えている。これって、ちょっと、面白いかもな」


そして祐一もまた、仲間たちの背中を見ながら、心の奥で思う。

――たしかに、奇跡は一夜では起きない。でも、小さな灯りをともすことで、誰かの心に火をつけることはできるんだ。


再生への歩みはまだ始まったばかり。だが、確かな希望が、そこにはあった。



 ご購読、ありがとうございました。さらなる復興の為の調査や活動に進むのか?

お楽しみ。

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