アパート周辺の探索と浄化活動
田中祐一は、つばき壮の周辺の地理風水を調べ、改善する事を決意した。桜も半信半疑であったが、気になって一緒に付き合う事にした。
祐一はこれまでに集めた情報を整理し、つばき荘周辺の環境を改善する計画を立てた。T字路、踏切、病院、お寺、それぞれの場所に対応する方法を考え、それを行動に移すことにした。
「次は周辺の気の流れを整える番だね」と祐一はノートを見つめながら言った。
桜は「またその気の流れの話?」と苦笑しつつも、祐一の真剣な態度に根負けして付き合うことを決めた。「まあ、祐一君の考えが本当に効果があるのかあまり期待してないけどね」と言いながら一緒に出かける準備を始めた。
***T字路での試み***
二人が最初に向かったのは、つばき荘の裏側にあるT字路だった。祐一は風水の知識を生かし、「石敢當」を取り寄せて突き当たりに設置することを提案した。
「これで悪い気がここで止まるはずだよ」と祐一は自信たっぷりに説明した。
「それ、本当に意味があるの?」桜は半ば呆れた表情で尋ねた。「ただの石を置いただけで何かが変わるなら、誰も苦労しないと思うけど?」
「風水はそういうものなんだよ。信じるかどうかは別として、試してみる価値はある」と祐一は真剣に答えた。
石を設置した後も特に変化は感じられなかったが、祐一は満足そうだった。一方、桜はその様子を見て、「これで終わりなら楽でいいわね」と皮肉を言いながら歩き出した。
次の地点に向かうまで、祐一は石敢當の事について話した。
「石敢當は沖縄県にもあるそうなんだ。魔除けの意味もあるみたいなんだ。他にもシーサーとか。日本では神社に狛犬があったり、鬼瓦など色々と魔除けについて歴史があるんだ」
桜「祐一君って、けっこう歴史や文化に詳しいんだ」と、感心した様子だった。
(でも、非科学的な所まで詳しすぎる)と、呟いた。
祐一は「何?」と尋ねるが桜は「こっちの話です。さあ、先を急ぎましょう」と答えた。
***踏切での調査***
次に二人は、つばき荘から少し離れた踏切を訪れた。地元住民の間で「不気味な場所」として噂されているこの踏切は、以前事故が起きた場所でもあった。
「夜になると、カンカンという音が鳴ったり、誰もいないのに人影が見えるって話があるらしい」と祐一は資料を読み上げながら語った。
祐一は持参した浄化スプレーを踏切の周辺に撒き、お香を焚いて空間を清める作業を始めた。桜は少し離れた場所で腕を組みながらその様子を見守っていた。その次に祐一は水晶の入った浄化グッズを踏切の両脇に埋設した。
「ねえ、これで事故がなくなるって保証があるわけ?」桜が尋ねる。
「保証なんてないけど、少なくともこの場所の気を整える手助けにはなると思うんだ」と祐一は答えた。
その時、踏切近くに置かれた古びた地蔵に気づいた祐一は、その地蔵を掃除し、手を合わせた。桜もそれに倣ったが、「これが何になるの?」と小声で呟いた。
***病院とお寺の探索***
その後、祐一と桜は病院とお寺が隣接するエリアに向かった。祐一はこの場所について「陰の気が強い」と風水的な解釈を語った。
「病院は病気や死のエネルギーが集まる場所だし、お寺は霊を鎮めるための場所だからね。風水ではこういう場所が近くにあるのは良くないとされているんだ」と祐一は真剣な顔で説明した。
桜は腕を組みながら溜息をついた。「そうやって何でも陰の気とか風水とかで片付けるけど、具体的な証拠なんて何もないでしょ?」
「証拠がなくても、こういう場所が人に影響を与えることはあるんだよ」と祐一は反論し、病院とお寺の周囲にも浄化スプレーを撒いて回り浄化グッズを埋設した。
「これで周辺の風水の整えは完了だ」と、話し、つばき壮に帰る事にした。
桜は来た道を戻って行くと、なんとなく、雰囲気が違っている様に感じられた。
確かに「心理的達成感や満足感は、あるかもしれないわね」と、祐一に話した。
祐一「気持ちの問題と言われてしまうとそれ迄だけど、まったくのデタラメでも無いと僕は考えているんだ。実際に、大富豪の家や発展している街も風水を取り入れて作られている話もあるんだ」と、風水について語りながらつばき壮に戻った。
***つばき荘に戻って***
探索を終えた祐一と桜は、つばき荘に戻り、祐一はノートを広げ、今日集めた情報をまとめ始めた。
「これで周辺の気の流れが少しでも良くなればいいんだけど」と祐一は呟いた。
しかし、桜はその様子を見ながらため息をついた。「祐一君、正直に言うけど、これって全部自己満足じゃない? 科学的な根拠もないし、効果があるかどうかも分からないのに、ただ時間を無駄にしてるだけだと思うの」
祐一はその言葉に少しショックを受けた。「でも、何もしないよりはいいと思わない? 実際にこうやって行動することで、少しでも安心できる人がいるかもしれないし」
桜は首を振った。「私はそうは思わない。安心っていうのは、合理的な根拠があって初めて成り立つものよ。迷信に頼っても、本当の解決にはならないわ」
祐一は反論しようとしたが、桜の言葉に思わず言葉を詰まらせた。彼女の言うことにも一理あると思ったが、自分の信じる道を否定されたようで、複雑な気持ちが渦巻いた。
その後も二人は口論を続けたが、平行線のまま終わった。桜は最後に一言だけ残して、祐一の部屋を後にした。「やっぱり、非合理だし、非科学的ね。私はそういう考え方には賛成できない」
祐一は桜の背中を見送りながら、ため息をついた。「でも、僕は僕のやり方でやるしかないんだよな……」
部屋に戻り、祐一はノートを閉じた。これからどうすれば良いのか、自分のやり方を信じるべきか、それとも桜の意見に耳を傾けるべきか、答えはまだ見つからなかった。
***改善されたつばき壮の回り***
その後、つばき壮の回りも以前と比べ落ち着き穏やかな空気に変化し
周辺のトラブルや事故も少なくなり、不思議と気持ちの良い雰囲気に変化して行った。
相変わらず祐一はオカルト研究に没頭し今日もつばき壮の玄関の掃除を行っていた。
桜「今日も、掃除頑張っているね。運気がどうとかは別として綺麗な事に悪い事は無いわ」と、話す。
祐一は一通り掃除を終えると「今度、近くにある神社に行って見ようと思っているんだ。パワースポットと言われているんだ。桜さんも、一緒に行かないかな?」と誘った。
桜は「パワースポット?」と、訝しながらも、尋ねる。
桜は祐一の提案を少し考えた後、ため息をついて答えた。「パワースポットかぁ… 本当にそんなところがあるのか、よくわからないけど、まあ、気になるなら付き合ってあげる」
祐一は桜の答えに少し戸惑ったが、すぐに明るい表情を浮かべた。「ありがとう! じゃあ、今度の週末にでも行こうか。」
桜はちょっとした無関心さを見せながらも「まあ、もし行くなら、ちゃんと信じる理由でも教えてよね。私は別に興味ないけど。」
「もちろん!」祐一は嬉しそうに答えた。「風水やエネルギーの流れを調べてみるんだ。桜さんもきっと納得するような何かが見つかるかもしれないよ」
桜は少し目を細めた。「どうかな。信じるってことができればいいけど、そんなに簡単じゃないわよ」
祐一は彼女の言葉にうなずきながらも、自分の信じる道を進むことに決めていた。桜との考え方の違いはあったが、これからも一緒に色々なことを試してみたいと思っていた。
*** パワースポットへ***
週末が近づき、二人は神社へと足を運んだ。その神社は、近隣の人々が「パワースポット」として崇めている場所だった。境内に入ると、桜は周囲を警戒するように見回しながらも、祐一に合わせて歩き始めた。
「ここがそのパワースポット?」桜が軽く尋ねると、祐一はうなずいて言った。「そうだよ、エネルギーの流れが良いって言われている場所なんだ」
桜は無言で足を踏み入れた。鳥居をくぐると、そこには穏やかな雰囲気とともに、どこか厳かな空気が漂っていた。祐一は目を閉じて深呼吸をし、手を合わせながら静かに心を落ち着けた。桜も何となく心が静まるのを感じて、無意識に呼吸を整えていた。
しばらくして、祐一は桜に向かって微笑んだ。「気の流れ、少しは感じる?」
桜は少しだけ考えてから答えた。「正直、よくわからないけど…なんとなく、空気が違う気がする」
「それが、風水やエネルギーの流れなんだよ。感じ取れる人もいれば、そうでない人もいるけど、こうして足を運んでみることに意味があるんだ」
桜はその言葉を聞きながら、心の中で少しだけ納得したような気がした。理屈では説明できないけれど、何かが違うと感じたその瞬間、祐一が進んでいる道に対して、少しだけ理解を示す気持ちが芽生えた。
「それにしても…」桜は少し照れたように言った。「こんな風に一緒に来るのも意外と悪くないかもね」
祐一は嬉しそうに笑った。「ありがとう。これからも一緒に色々な場所に出かけてみよう」
その後、二人は神社を後にして、歩きながら話を続けた。桜の心には、祐一の信じるものが少しずつ響き始めていた。それがすぐに何か大きな変化を生むわけではないにしても、この日、二人の間に小さな一歩が踏み出されたことを感じていた。
つばき荘に帰り着いた頃には、夜の帳が下りていた。桜は少し疲れた様子でベッドに横たわりながらも、どこか心地よい安堵感を覚えていた。祐一も同じようにリラックスした表情を浮かべ、明日への期待を抱きながら静かな夜を過ぎて行った。
まだ祐一の大学オカルト探求の道は始まったばかりでもあった。
これからも色々な不思議現象や謎、冒険が待っている。
購読、ありがとうございました。今回で、ひと段落ついた感じになります。12月の執筆活動は、余裕が無いので、やっぱり落ち着いて書ける時に書いた方が良いと思う所もあります。また、落ち着いた時や暇が出来た知己に書いて行く予定です。