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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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挫折と再起 オカルト研究会の新たな挑戦

 祐一たちは、心霊スポットの調査で自分たちの魔法や知識、能力が無力だった事に自信を喪失していた。

そんな彼らを見守っていた沢田部長が、祐一たちにアドバイスを行う事になる。

 冷たい秋風が大学の窓を揺らし、オカルト研究会の部室にわずかな木の葉を運び込んだ。それはまるで、祐一たちの心に吹き荒れた嵐の残り香のようだった。夕暮れ時の斜光が部室の床に長い影を落とし、その影は部員たちの心の暗部を映し出すかのように揺らめいていた。


 祐一は窓辺に立ち、落ち葉の舞う中庭を見つめていた。まだ若く緑を残す葉の間に、すでに茶色く色づいた葉が混じっている。季節の変わり目のように、彼らの活動も今、大きな転換点を迎えていた。

先日の廃寺での調査。その記憶は、まだ生々しく彼らの心に刻まれていた。

古びた廃寺の境内に一歩を踏み入れた時から、ただならぬ気配を感じていた。しかし、それは彼らの予想をはるかに超えるものだった。次々と現れる黒い影。それは人の形をしていながら、どこか歪んでいて、見る者の心を凍らせるような不気味さを漂わせていた。


 祐一が呪文を唱え魔法を放ったが黒い影には、ほとんど効果が無かった。また、必死に放った霊符も、次々と現れる悪霊の数に圧されてしまった。場を清める強力な浄化スプレーも、あまり効果を発揮しなかった。


 圧倒的な負のエネルギーに押し込まれ危機にさらされた所では結局、陽菜や美紀、由香の力に頼るしかなかった。三人の実力者たちが現れなければ、事態はさらに悪化していたかもしれない。その時の無力感は、まだ祐一たちの心に重くのしかかっていた。

「……僕たちは、何もできなかった。」


 祐一の呟きが、重く沈んだ空気の中に響いた。夕暮れの光が彼の横顔を照らし、深い憂いの色を浮かび上がらせている。彼の隣では、松井あゆみが静かに頷いた。


「確かに、私たちだけでは、あの状況を打開することはできなかったわ……」

彼女の声には、自分を責めるような響きが混じっていた。普段は明るく活発なあゆみだが、この数日間は珍しく物思いに沈んでいることが多かった。


峯川拓也が腕を組み、悔しそうに唇を噛む。彼は部室の机に置かれた古い魔導書を見つめながら、これまでの修行を振り返っているようだった。

「……正直、凹むよな。僕たち、全員で力を合わせれば、何とかなるって思ってた。でも、結局、陽菜さんたちに助けられただけだった」


 その言葉には、単なる敗北感以上のものが込められていた。彼らは入学以来、真摯にオカルト研究に取り組んできた。魔法の修行も、霊符の作成も、決して手を抜いたことはない。それでも、本当の実力者たちの前では、まったく歯が立たなかった。


 星川悠斗は羅盤を指でなぞりながら、難しい顔をしていた。彼は風水の専門家として、場の気の流れを読むことを得意としていた。しかし、今回の事件では、その知識すら役に立たなかった。

「風水も……本来は"いかに危険な場所を避けるか"が大切なんだ。なのに、僕は"何とかできるはず"って過信してしまった……」


 その自責の念は、部室の空気をさらに重くしていた。窓の外では、風が強まり、より多くの落ち葉が舞い始めていた。


 宮村優子がアミュレットを見つめながら呟く。

「私も、もっと力があれば……って思う。陽菜さんや美紀さん、由香さんみたいに成長したいな。だから、由香さんに占いを教えてもらうことにしたの」

優子の声には、悔しさの中にも、わずかな希望が混じっていた。確かに、今回の失敗は痛手だった。しかし、それは同時に、新たな学びのチャンスでもある。


 部室の中で、それぞれが心の中に渦巻く悔しさを噛み締めていた。誰もが、自分の無力さと向き合っていた。しかし、その沈黙は永遠には続かなかった。


「……お前ら、自信喪失か?」

唐突に響いたのは、沢田部長の声だった。彼は部室の入り口にもたれかかり、楽しげな笑みを浮かべていた。その表情には、どこか意味ありげな色が浮かんでいた。

「ま、いい経験になったじゃないか。」

峯川が苦笑しながら応じる。その笑顔は、まだぎこちなかった。

「いやぁ、今回の調査では、さすがに自信なくしましたよ……。」

祐一も、やれやれとため息をつく。窓際から離れ、部長の方を向く。


 「付け焼刃程度の魔法じゃ、まったく歯が立たなかったですね……。」


「だからこそ、だ。」

沢田部長はゆっくりと部室に入り、机の上に手を置いた。その仕草には、何か重要な話をする時特有の重みがあった。


「お前ら、何もできなかったんじゃない。自分たちの限界を知ることができたんだ。そこがスタートラインだろ?」


 彼の言葉に、一同はハッとした。部室の空気が、少しずつ変わり始める。

「そもそもな、オカルト研究会ってのは、"超常現象を暴く"ことが目的だった。だけど、最近のお前たちは、超常現象と"戦う"ことばかり考えてたんじゃないか?」

その指摘は、まるで雷に打たれたかのように、部員たちの心に響いた。祐一たちは顔を見合わせた。確かに、最近は力をつけることばかりに気を取られていた。


「……確かに。」

松井あゆみがぽつりと呟く。彼女の表情が、少しずつ明るさを取り戻し始めていた。

「本来なら、どう対処するかを考える前に、その現象がどういうものなのかを正しく見極めるべきだったかもしれません……。」


「そういうことだ。」沢田部長は満足そうに頷く。夕暮れの光が、彼の眼鏡に反射して輝いた。


 「戦うばかりがオカルト研究じゃない。例えば、星川が言ったように、風水は"危険な場所を避ける"のが本質なんだろ?だったら、お前たちがやるべきことは"危険な場所の見極め"だって考えられるじゃないか。」


 その言葉に、星川の目が輝きを取り戻した。彼は羅盤を握り直し、新たな可能性を見出したかのように身を乗り出す。

「……そうか……! 風水を使って、"負のエネルギーが強い場所"を特定すれば、危険を回避できるかもしれない!」


沢田部長はニヤリと笑う。その表情には、部員たちの気づきを待っていたような満足感が浮かんでいた。

「そういうことだ。戦うだけが全てじゃない。"研究"という基本を忘れるなよ?」

部室に、再び活気が戻ってきた。夕暮れの光も、いつの間にか温かみを帯びているように感じられた。


 宮村優子が、笑顔を取り戻しながら言う。アミュレットを大切そうに胸に抱きながら、彼女の目には新たな決意の色が浮かんでいた。

「それなら、私は占いで"異常が発生しそうな場所"を予測することができるかも!」

峯川も、腕を組んで考え込む。彼の表情からは、先ほどまでの暗さが消えていた。

「確かに、僕たちはこれまで魔法の訓練にばかり目を向けてた。でも、結局、陽菜さんたちには及ばなかった。だったら、戦うよりも"どう対応するか"を重視した方がいいのかも……。」

祐一が、静かに拳を握りしめた。窓の外では、風が少し穏やかになっていた。


 「そうですね。……まずは、自分たちのいる大学の環境を調査してみませんか?」

部員たちが、興味深げに祐一を見つめた。彼の提案は、新たな道筋を示すものだった。

「大学のどこに負のエネルギーが集まりやすいのか、風水や占い、魔法の知識を使って探る。もし何か異変が起こる場所があるなら、先に対策を立てることで、未然に防ぐことができるかもしれない。」

「なるほど、それなら今の僕たちにもできそうだ!」峯川が頷く。その声には、新たな希望が込められていた。


 「よし、それなら次は大学のエネルギー調査をやるぞ!」星川も意気込む。彼は早くも羅盤を取り出し、計測の準備を始めていた。

沢田部長は満足そうに腕を組み、頷いた。夕暮れの光が、彼の穏やかな表情を照らしている。

「いいだろう。そのくらいの目標なら、今のお前たちにぴったりだな。」

こうして、祐一たちは新たな挑戦へと踏み出した。廃寺での失敗を教訓に、次なるステップへ。それは、単なる戦いではなく——「本来のオカルト研究」としての、新たな調査の始まりだった。

部室の窓から差し込む夕陽は、今や温かな金色の光となって部屋を包んでいた。落ち葉は相変わらず舞っているが、その様子も、もはや寂しげには見えない。むしろ、新たな季節の訪れを告げるものとして、希望に満ちて見えた。


 オカルト研究会の次なる舞台は、彼らが毎日過ごす大学。この場所には、どんな秘密が隠されているのだろうか。普段何気なく通り過ぎている場所にも、意外な力が眠っているかもしれない。

夕暮れの部室で、部員たちはそれぞれの役割を確認し合い、調査の計画を立て始めていた。星川は風水の理論を説明し、宮村は占いのカードを並べ、松井は古い地図を広げる。


 そして祐一は、彼らの姿を見つめながら、確かな手応えを感じていた。確かに、彼らはまだ未熟かもしれない。しかし、それぞれが持つ知識と技術を正しく活かせば、きっと新しい発見があるはずだ。

物語は、新たな局面へと進み始める——。


 部室の窓を揺らす風は、もはや冷たくはなかった。それは、これから始まる冒険への期待を運ぶ、爽やかな風となっていた。


 購読、ありがとうございました。寮に憧れ霊能者、魔法使いを目指そうとした祐一たちも、今回の体験から再び、自分たちを見つめ直し、自分たちに出来る事に目を向ける事になります。

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