ゴールデンウィークの帰省と美紀との再会
祐一は、心霊現象の調査やつばき壮の風水活動など行い、学生生活を続けていた。
そういった中、ゴールデンウィークを迎えようとしており、休日を利用し帰省し、高校時代の同級生であり今はオカルト編集者であり、陰陽師でもある橘 美紀と会う約束をしていた。
田中祐一は、大学生活にもようやく慣れ始めたころ、ゴールデンウィークを迎えた。この休暇を利用して、久しぶりに実家へ帰省することに決めた。祐一にはいくつかの目的があった。つばき荘での不思議な出来事や大学でのオカルト研究会での経験を振り返り、実家に保管しているオカルト関連の資料や書籍を調べ直すこと。そして、霊的な問題解決の糸口を探ることだった。
もう一つの重要な目的は、高校時代の同級生で陰陽師であり、現在はオカルト専門誌の編集者としても活躍している橘美紀に会うことだった。美紀は、つばき荘の怪奇現象について相談するのに適任の人物だった。祐一は、つばき荘での経験を話し、アドバイスを受けるつもりだった。
***再会の約束***
祐一が実家で資料を整理していると、美紀から連絡が入った。
「編集部が終わった後、夕方なら時間が取れるよ。駅前の喫茶店で会わない?」
祐一はこの誘いを快諾し、準備を進めた。ノートと資料を手に取り、自転車に乗って駅前の喫茶店へと向かった。
夕方、喫茶店に到着すると、美紀が笑顔で手を振って迎えてくれた。祐一は、久しぶりの再会に胸を躍らせた。彼女の洗練された雰囲気は以前にも増して輝いており、祐一は彼女が仕事を通じてさらに成長していることを感じ取った。
「久しぶり、美紀さん!」
祐一は席に着くなり笑顔で声をかけた。「最近のお仕事はどうですか? 陰陽師としての活動も相変わらず忙しいんですか?」
美紀は軽く笑いながら答えた。「今は編集の仕事がメインだから、陰陽師として動くのは時々かな。でも、それが良い気分転換になっているわ。それより、田中君はどう? 大学生活には慣れた?」
祐一はここぞとばかりに、大学での出来事を話し始めた。つばき荘での怪奇現象、用水路の調査、オカルト研究会の活動、そして同じアパートに住む桜とのやりとり。彼の話に美紀は興味津々で、時折質問を挟みながらじっくりと耳を傾けた。
***つばき荘の霊的問題***
祐一の話をひととおり聞き終えた美紀は、考え込むような仕草を見せた。しばらくして、つばき荘の話題に触れると、その表情がやや引き締まった。
「つばき荘ね……話を聞く限り、何か霊道が通っている可能性があるわ。特に、空気が重いとか、怪奇現象が複数の部屋で起きているっていう点が気になる。」
美紀は慎重に言葉を選びながら話した。
「霊道……それってなんですか?」祐一は戸惑いを隠せずに尋ねた。
「霊道っていうのは、霊的なエネルギーや存在が移動するための通り道みたいなもの。古い建物や歴史のある場所でよく見られるわ。特に事故や事件が起きた場所の近くでは、その影響を受けやすいの。」
祐一は身を乗り出して質問を重ねた。「それをどうにかする方法ってあるんですか? 例えば、封じたり浄化したり……」
美紀は真剣な表情で答えた。「簡単な掃除や盛り塩、風水で気の流れを整えることも効果はあるけれど、霊道そのものを完全に浄化して封印するのは、一般の人には難しいわ。強い霊的な力と専門知識が必要になることがあるから」
祐一は少し肩を落とした。「やっぱり、僕がやっていることじゃ限界がありますね……」
***美紀からの贈り物***
そんな祐一の様子を見て、美紀はバッグからいくつかのアイテムを取り出した。それは、浄化スプレー、浄化用のお香、霊符10枚、そしてクリスタルが埋め込まれた小型のグッズだった。
「これを使ってみたらどうかしら?」
美紀はそれぞれのアイテムの使い方を丁寧に説明した。
「浄化スプレーは、建物全体の気を清めるのに最適よ。特に霊的な存在がいると感じる場所に撒いてみて。お香は邪気を払う効果があるから、定期的に焚くと良いわ。霊符は、つばき荘の玄関や四隅に貼って。霊的なエネルギーの流れを制御する助けになるはずよ。」
祐一は目を輝かせながら感謝を伝えた。「ありがとうございます、美紀さん! でも、このクリスタルが入ったグッズは何に使うんですか?」
美紀は笑顔で答えた。「それはアパートの四隅に埋めて。土地の波動を高める力があるの。簡単に言うと、その土地全体を清めて安定させる役割があるわ」
さらに、美紀はもう一つアドバイスを加えた。「浄化を行う時は、必ず集中して祈りを込めること。気持ちが込められると、その分だけ効果も強まるから」
祐一は真剣にその言葉を受け止め、帰り際に改めて感謝の気持ちを伝えた。「本当にありがとうございます。また何かあったら相談させてください!」
「もちろんよ。困ったことがあればいつでも連絡してね。」
美紀は手を振りながら去っていった。
***帰路と新たな決意***
数日後、祐一は再び大学生活に戻るため電車に乗った。車窓から流れる景色を眺めながら、美紀との会話やつばき荘での出来事を思い返していた。
「つばき荘をもっと居心地の良い場所にするんだ。美紀さんの教えを活かして、アパート全体を浄化しよう」祐一は新たな決意を胸に抱きながら、大学のある街へと戻っていった。
***つばき荘での浄化作業***
大学へ戻った祐一は早速、美紀からもらったアイテムを使ってつばき荘の浄化作業を始めた。まず霊符をアパートの玄関と四隅に貼り、次にクリスタルのグッズを指定された場所に埋めた。そして、浄化スプレーをアパート内の廊下全体に撒き、最後に玄関の中でお香を焚いて邪気を払った。
「これで霊道が少しでも封じられるといいんだけど……」
祐一は慎重に手順を守りながら作業を進めた。
アパートの空気は以前よりも軽くなったように感じられた。
「これでつばき荘の住人も、少しは安心して過ごせるかな?」
祐一は、つばき荘に流れる空気の変化を感じていた。
***つばき荘の変化***
美紀から教えられた浄化の方法をすべて実行した祐一は、いつものようにアパートの玄関前を掃除していた。箒で埃を集めながら、ふと空を見上げると、雲間から日差しが差し込み、どこか清々しい気分になった。
その時、ちょうど帰宅してきた桜がアパートの門をくぐりながら声をかけてきた。
「あれ?なんか、アパートが明るくなった気がするわね。空気も前と違って軽い感じがするし……祐一君、何かしたの?」彼女は不思議そうに周囲を見渡している。
祐一は軽く微笑みながら、箒を持ったまま肩をすくめた。
「まあね。企業秘密ってことで」
軽く流すように答えたが、内心では自分の努力が報われた気がして、少し誇らしさを感じていた。
桜はそんな祐一の態度に半ば呆れたように笑いながらも、「変なことしてないでしょうね?」と軽口を叩きながらアパートに入っていった。
***穏やかな日常の始まり***
それからのつばき荘は、確かに雰囲気が変わり始めた。以前のような重苦しい空気は消え去り、住人たちの表情もどこか穏やかになった。廊下に響いていた不気味な足音や、夜中に聞こえていたすすり泣きのような音も聞こえなくなっていた。
アパートの庭に植えた花も元気に咲き始め、廊下を通るたびに、どこか心地よい風が吹き抜けるような感覚がする。祐一は毎日、掃除を続けながら、少しずつアパートの住人たちと顔を合わせるようになった。
「最近、このアパート、なんか良い感じじゃない?」
隣の部屋に住む主婦が微笑みながら祐一に声をかけてきた。
「田中君が掃除をしてくれてるおかげかな?」
そう言って感謝の言葉をかけられると、祐一は少し照れくさそうに「まあ、日課みたいなもんです」と答えた。
***桜の興味と疑問***
ある日、桜が祐一の部屋を訪ねてきた。ドアをノックしながら、
「ちょっと話してもいい?」と声をかけてきた。
「どうしたの?」
祐一が部屋に迎え入れると、桜は部屋の中を興味深そうに見渡しながら話し始めた。
「祐一君、最近のこのアパートの変化、偶然だとは思えないのよね。本当に何かしたんじゃない?」
祐一は困ったように笑いながら、テーブルに飲み物を置いた。
「まあ、ちょっとだけ風水的なことを試してみたんだよ。それと、霊符とか浄化スプレーとかもね」
桜は目を細めてじっと祐一を見つめた。
「やっぱり何かやってたのね。でも、どうしてそんなことに詳しいの? 大学でオカルト研究してるだけじゃないでしょ?」
祐一は美紀の話や高校時代のオカルト部の活動について簡単に説明した。そして、美紀が渡してくれた浄化グッズや霊符についても話した。
「そんなものが本当に効果があるんだ?」桜は半信半疑だったが、ふと窓の外を見て言葉を続けた。「でも、確かに最近このアパート、空気が軽くなった気がするわ。不思議ね。」
***次なる兆し***
その夜、祐一は部屋でノートを広げ、美紀から教わった内容を改めて見返していた。浄化作業はひとまず成功したようだったが、アパートの建物内は改善されたみたいだったがアパート周辺の雰囲気は、以前と変わらず何か重い感じだった。完全に安全な場所にするには、まだ何かが足りない気がしていた。
「アパート内は安全になったみたいだけど、、、霊道が完全に封じられたわけじゃない……」
祐一はそんな考えを抱きつつ、もう少し調査が必要だと感じていた。
すると、ふと建物の外から物音が聞こえた。何かが建物の外を通り過ぎて行くような気配を感じた――だが以前とは違い、不気味さは感じなかった。祐一はそっと窓を開け外を見渡したが、誰もいなかった。
「これって、まだ何かあるのかもしれない……」
祐一はそう感じながら、改めて次の対策について考えようと決意していた。
***新たな試練の予感***
次の日、桜と大学へ向かう途中、祐一は彼女にふとこう言った。
「桜さん、この間、アパートの変化について話したじゃない? あれ、もしかしたらまだ完全には解決してないかも」
桜は驚いた表情を見せた。「どういうこと?」
「霊道がある場所は封じても別の場所に影響が出ることがあるらしいんだ。僕たちが気付いてないだけで、まだ何かが残っているかもしれない」桜は少し考え込んでから、「また何かするつもり?」と尋ねた。
「うん。でも今回はもっと慎重に調べるつもりだよ。」祐一は真剣な表情で答えた。
桜はため息をつきながらも、どこか安心したような笑みを浮かべた。「じゃあ、私も手伝うわ。現実的な視点でサポートしてあげる」祐一と桜は、つばき荘をさらに安全で穏やかな場所にするため、新たな調査を始めることを決意した。
***つばき荘周辺の探索開始***
祐一は、つばき荘の内部の浄化を終えた後も、まだ何か引っかかる感覚を拭いきれなかった。特に、つばき荘の裏側やその周辺から漂う不穏な気配が気になり始めた。桜も「探索を手伝う」と言い、二人でつばき荘周辺の地理や特徴を詳しく調べていくことにした。
***裏側のT字路と突き当り***
まず二人が向かったのは、つばき荘の裏側にある狭い道路だ。そこは古くからの住宅地で、車がやっと通れるほどの狭い道が入り組んでいた。道はどんどん奥へと続いており、最終的にT字路の突き当りに行き着く。祐一はT字路で立ち止まり、何かを感じ取るように周囲を見回した。「ここ、ちょっと気になるな……。風水的に、こういうT字路って良くない場所なんだよね」丁度、つばき壮の裏側がT字路の突き当りになっていた。
桜は腕を組みながら反論する。「それって迷信じゃない? T字路がどうとか言われても、科学的な根拠なんてないでしょう」
「いや、実際にT字路の突き当たりって、気の流れがぶつかる場所なんだよ。風水では『路冲殺』って言って殺気がたまる場所って言われてるんだ」
祐一は熱心に説明するが、桜は呆れた表情で肩をすくめた。「縁起担ぎにしか聞こえないけどね」
それでも祐一は「気のせいだとしても、何か変な感じがする」と、その場の写真を撮り、ノートに詳細をメモした。
***踏切と線路の話***
次に二人は、つばき荘から少し離れた場所にある踏切を訪れた。この踏切は、つばき荘に住む住人たちの間でも「不気味な場所」として噂されている場所だった。祐一はその理由を探るべく、地元の住人に聞き込みを行うことにした。
「この踏切ですか? ええ、以前、事故があったんですよ。若い女性がここで……」
祐一と桜に話してくれたのは、近くに住む老夫婦だった。彼らの話によれば、事故以来、踏切の近くで足音や声が聞こえるという噂があるらしい。
「夜になるとね、踏切が鳴ってないのに『カンカン』って音が聞こえたり、誰もいないのに人影が見えることがあるって聞くよ」老夫婦はそう語った。
「……これって、ちょっと気になる話だね。」祐一はメモを取りながらつぶやく。
桜は腕を組み、「ただの偶然かもしれないし、事故があった場所ならそういう噂が広がるのも仕方ないわ」と冷静に答えた。
***病院とお寺、陰の気の強い地域***
さらに探索を進める中で、祐一たちは近くに病院とお寺が隣接しているエリアがあることを知った。古くから地元の人々が通うこの病院は評判が良いものの、過去には病院の裏でいくつかの事件があったこともわかった。さらに、お寺は長い歴史を持つが、地元の伝承では「悪い霊を封じるための結界」が張られている場所だという話もあった。
「病院やお寺って、風水的には『陰の気』が強い場所って言われてるんだよね。病院は病気のエネルギーが集まるし、お寺は成仏できない霊が留まることもあるらしいし。」祐一は資料を見ながら説明する。
桜は苦笑しつつ、「縁起担ぎの話を真に受けてるの?」と半ば呆れた様子だ。「風水って、そういう場所が悪いとか決めつけるけど、根拠がないことが多いのよね。」
祐一は笑いながら答えた。「確かにそうかもしれない。でも、こうやって見て回ると、妙に納得しちゃうんだよな。なんか、不思議な場所ばかりだし、つばき壮からも2階からお寺と病院が見えるからね」
***気の流れの悪さ***
簡単な探索を終えた二人はつばき荘に戻り、祐一は集めた情報をノートにまとめ始めた。T字路や踏切、病院やお寺、これらの要素が風水的に「気の流れ」を悪くしている要因だと考えた祐一は、つばき荘がその影響を受けている可能性が高いと推測した。
「つばき荘の立地自体、気の流れがあまり良くない場所にあるみたいだね。」祐一がノートを見ながら言うと、桜はその考えに疑問を呈した。
「でも、気の流れとか陰の気とかって、結局は心理的な影響に過ぎないんじゃない? 本当に悪い影響があるなら、もっと具体的な証拠が出るはずよ」桜はそう話しながらも、祐一の熱意には一目置いている様子だった。
***次の計画***
祐一は、これまでの情報を元にして、つばき荘周辺のさらなる浄化を行う計画を立てることにした。
「まずは、つばき荘の周りにあるT字路や踏切、病院とお寺の近くのお清めと浄化を行ってみよう。それから気の流れを整えるために、新しい風水アイテムを探してみよう」
桜は祐一の話を聞きながら「また風水?」と軽く笑ったが「まあ、やるなら徹底的にね」と応援の言葉をかけた。
つばき荘だけでなく、その周辺を安全で穏やかな場所にするための祐一と桜の捜索活動は、まだまだ続いていく。
購読、ありがとうございました。年末に向けてのんびりモード中ですが、ある程度、書ける所まで書いて置きます。