住宅の噂と2階の調査
古井戸跡とお墓の供養と浄化も終わり住宅の空気が軽くなって行った。メンバーたちも、色々な心霊問題の謎と究明と対策を行い、改善している事に自信を深めていた。
夕方、星川と峯川が調査を終えて戻ってきた。リビングにはすでに祐一、橘美紀、寮、陽菜、春香、そして松井あゆみが集まっており暖かな食事がテーブルに並んでいた。外の暗さと対照的に、リビングには微かな安堵感が漂っている。しかし、その裏にはまだ解決しきれていない不安が潜んでいた。
「さて、これで全員揃ったな。」寮がが箸を置いて話を切り出す。「庭で見つけたお墓と古井戸跡の浄化と封印は、一応、成功したと言える。井戸跡の霊道から現れていた黒い影も消えたし、これで霊的な影響は大きく緩和されたはずだ。」
「お疲れ様です。」峯川が礼を言いながら椅子に腰を下ろした。「僕たちも今日、いろいろと聞き込みをしてきたんだけど……この家の評判、かなり悪いよ」
「どういうことですか?」橘美紀が興味深そうに顔を上げる。
星川が手元のメモを取り出しながら話し始めた。「この家、近所では『幽霊屋敷』って呼ばれてるみたいなんだ。ここに住んだ人たちはみんな、引っ越してしばらくしてから何かしらの不幸に見舞われてるって話だよ」
「不幸って?」松井あゆみが不安そうに尋ねる。
「例えば、事故で亡くなったとか、原因不明の病気で体調を崩したとか……。あるいは、精神的に追い詰められて家族がバラバラになった話もあったみたいだ。」峯川が静かに答える。その言葉にリビングの空気が一瞬重くなる。
「それだけじゃない。」星川が続ける。「近所の住人の話では、夜中に2階の窓から人影が見えることがあるらしい。だけど、その時間に家の中には誰もいないはずだって」
「2階……。」祐一が小さく呟く。これまで調査の中心は庭や1階に集中していたが、2階にはあまり注意を向けていなかった。
「さらに聞いた話なんだけど、この家が建つ前の土地に何があったのか、誰も正確には知らないらしい。古い墓地があったって話もあるし、処刑場だったって噂もある。でも、確かな情報は出てこない。」星川が言葉を選びながら説明する。
「この土地自体に根深い問題があるのかもしれないわね。」陽菜が呟いた。「さっきの封印で霊道は塞いだけど、もし土地全体に負のエネルギーが染みついているなら、それを解消するにはもっと大掛かりな浄化が必要かもしれない。」
「そうだな。」寮が頷く。「浄化といっても、一度やれば終わりじゃない。この家が抱えている問題は思った以上に根深いようだ。」
橘美紀が静かに言葉を繋ぐ。「でも、一つずつ手を打てば、必ず道は開けるはずよ。次は2階の調査に集中するのがいいと思うわ。何か見落としている手がかりがあるかもしれない。」
***2階への調査***
夕食を終えた後、一同はすぐに2階の調査に取り掛かることにした。祐一を先頭に、橘美紀、星川、峯川が階段を上る。一谷と松井あゆみ、寮、春香、陽菜はリビングに待機していた。
「この家に来た時から2階にも違和感を感じていたけど……何が原因なのかしら」
橘美紀が霊視を始めながら言う。
2階にはいくつかの部屋があったが、その一つの部屋の扉が微かに開いていることに気付いた。
祐一「この部屋、気になるね」と低い声で言った。
祐一が扉をゆっくりと開けると、冷たい空気が一気に流れ込んできた。中に入ると、部屋の壁には黒い染みのようなものが浮かび上がっており、不気味な雰囲気を醸し出していた。
「この部屋……何かいるわね」橘美紀が目を閉じ、霊視を深めた。そしてすぐに目を見開き、口を開いた。「やっぱり……ここには複数の霊が残っているみたい。それも、ただ迷っているだけじゃなくて、何か強い執念を持っている」
「執念?」星川が眉をひそめる。「それってどういう……?」
「おそらく、この部屋で何かがあったんだわ」美紀が壁に触れながら呟く。「この染みが気になる……」
祐一が壁の近くを調べると、その部分の壁紙が少し剥がれかけているのに気付いた。「ここ、調べてみる価値がありそうだ」
祐一と峯川が慎重に壁紙を剥がしていくと、そこから古い血のような赤黒い跡が現れた。そしてその横には、文字のようなものが薄く刻まれていた。
「これ……文字か?」峯川が息を呑む。
橘美紀がその刻まれた文字を指でなぞり、呟いた。「……『祟』……そう書かれてる。」
その瞬間、部屋の中の空気が一気に重くなり、全員の背筋に冷たいものが走った。
「この家で何が起きたのか……まだ分からないことだらけだな。」祐一が低い声で言った。
***さらなる謎と今後の課題***
2階の調査を終え、全員がリビングに戻ると、一谷が待っていた。彼は日記を指差しながら言った。「こっちも大きな手がかりが出てきたよ。昔、この家に住んでいた住人が書いたものだ。あの部屋が『祟りの間』だって噂されていたらしい。」
「『祟りの間』……?」祐一が呟いた。
「どうやら、何十年も前、この部屋で誰かが亡くなったらしい。それが何らかの原因で、この家全体に影響を与えているのかもしれない」
「つまり、この家の問題はまだ終わっていないってことだ」寮がため息をつきながら呟く。
「これからも時間がかかりそうだけど出来る期間内に一つずつ解決していこう」祐一が全員を見渡し、静かに言った。「この土地の秘密を解き明かすまでは、終われない。」
リビングの窓の外では、冷たい夜風が木々を揺らしていた。
土地に眠る負のエネルギーの正体を解き明かすべく、彼らは次の行動に向けて決意を固めていた。
***新たなる課題***
夜も更け、リビングに集まったメンバーたちは、2階の調査や新たに発見した「祟りの間」にまつわる情報を整理していた。それぞれが手元の資料や発見した痕跡について話し合いながら、少しずつこの家の謎に迫っていこうとしていた。
時計の針が午後11時を指した頃、リビングの中央に置かれた照明が突然、点滅する。
「……なに?」松井あゆみが怯えた声を上げた。彼女の声をきっかけに、全員の視線が一斉に照明に向けられた。
「故障か?」星川が周囲を見回しながら呟いた。
「何かが近づいてる。」橘美紀が険しい表情で立ち上がり、霊符を手に持った。
その時、リビングの隅に置かれていた小さな棚が突然、ガタガタと音を立てて揺れ出した。中に入っていたガラスのコップが一つ、床に転がり落ちて粉々に割れる音が響く。
「やばいな、また来たか……」寮が緊張した面持ちで言った。
寮が即座に指示を飛ばす。「全員、落ち着け!リビングの中心に集まって、護符を使って場を守るぞ!」
***霊の出現と祟りの間との繋がり***
全員がリビングの中央に集まり、橘美紀と春香がそれぞれ護符を掲げて結界を張る準備を始めた。その瞬間、リビングの隅にうっすらと黒い影が現れ始めた。
「また黒い影……?」祐一が眉をひそめながらその影を見つめる。
「いえ……違うわ」美紀が呟く。「これは、あの祟りの間から来ているものよ。あの部屋に霊道があるのかも知れないわ。」
黒い影は徐々に形を成し、やがて歪んだ顔のような輪郭を持ち始めた。それは低い呻き声のような音を発しながら、祐一たちに近づこうとする。
「来るぞ!」寮が声を上げると同時に、陽菜が霊光弾を放つ。
黒い影は、霊光弾に包まれて浄化されて行った。
影は一度消えたかに見えたが、再び現れた。今度はリビングの中央に向かって渦巻くように迫ってくる。
「まだ何か繋がりがあるようね」橘美紀が汗を滲ませながら叫ぶ。
寮が即座に判断を下した。「この影を完全に断ち切るには、祟りの間をもう一度調べて封印するしかない!祐一君、陽菜、春香、一緒に来てくれ!美紀は、ここでみんなを守ってくれ!」
***再び祟りの間へ***
祐一、寮、陽菜、春香は急いで2階へと向かい祟りの間のドアを開ける。部屋の中は重苦しい空気に包まれていた。
「ここが本当に元凶なのか……?」祐一が浄化スプレーを握りしめながら呟いた。
黒い影が壁から次々と現れる。寮が素早く霊光弾を放ち、黒い影は浄化された。
寮が陽菜と春香に向かって、指示を出す。「陽菜、春香、霊道を封印しよう」
陽菜が「分かったわ」と春香が「分かりました」と同時に返事をし、霊道の封印を行う。
霊道が閉じられ、黒い影も消滅し、再び、静寂さを取り戻した。
祐一は、部屋の中を調べると、クローゼットの奥に木箱が見つかり慎重に取り出す。
箱を開けると、中には一対の古びた人形が入っていた。その人形はどこか不気味で顔が焦げたような跡があり、異様な雰囲気を放っていた。
「これは……呪いの道具か?」寮が春香に尋ねる。
春香が静かに霊視を行い「はい。これは、何か呪術に使われている様です」と答える。
陽菜が手をかざして呟いた。「この人形が……負のエネルギーを引き寄せているわ。人形を通じて影響を及ぼしている」
「どうすれば良いのでしょうか?」祐一が尋ねると春香が「供養して燃やすします。このままでは、再び、悪霊達を引き寄せてしまいます」と答える。
***人形の供養と燃焼***
リビングに戻った一行は、人形の供養と浄化の準備を始める事にした。
庭に出て陽菜と春香、橘美紀が中心となり祈りを捧げながらお焚き上げを始める。
「これで霊的な繋がりを断ち切れる……はずよ。」陽菜が静かに呟き、人形に浄化の呪文を唱える。
「これで終わるといいんだけど……」祐一が人形に目を向けながら呟く。
火がつけられると、人形は不気味な音を立てながら燃え上がった。その炎が高く立ち上がると同時に、庭全体に清らかな風が吹き抜けた。
「これで……終わったの?」松井あゆみが呟く。
橘美紀が空を見上げ、静かに言った。「祟りの間も、この家を縛っていた霊道も、これで完全に断たれたはずよ」
***さらなる静けさと次の行動***
家の中は以前よりも穏やかな空気に包まれていた。一連の儀式が終わり、一同はリビングで安堵の息を吐く。
「やっと、一息つけそうです」祐一がそう言うと、寮が頷きながら応じた。「でも、まだ油断はできない。この土地全体の負のエネルギーが完全に消えたわけじゃない」
「もうしばらく調査は続けるべきだな。」一谷が言葉を添えた。
「でも、ひとまず今夜はゆっくり休もう」峯川が返す。
***帰還に向けて***
それから3日が過ぎ、特に目立った怪異も起こらないまま、オカルト研究会の調査期日は終わりを迎えた。静かに晴れた朝、メンバーは荷物をまとめ、青空不動産の担当者・谷口と再び向き合っていた。
「これまでの調査、本当にありがとうございました。」谷口が深々と頭を下げた。「おかげで、これまで漠然としていた問題が少し整理できたように思います。」
祐一がノートを差し出しながら答えた。「こちらに、今回の調査で分かったことと改善策をまとめています。まだ全てが解決したわけではありませんが、これを基に、今後の対策を進めてください」
ノートには、チームメンバーそれぞれの視点で記した内容が細かく書き込まれていた。
祐一と峯川は、住まいの風水改善策を提案。具体的には、玄関の向きや塀の配置、庭の植栽などの配置替えが含まれていた。
一谷は、科学的な観点から家の改築ポイントを列挙し、湿気や老朽化が霊的影響を助長している可能性を示唆していた。峯川は周辺住民への聞き取り調査をもとに、この土地に根付く噂や風評を整理。土地自体の歴史的背景についても簡単なレポートを作成していた。
寮と橘美紀は、これまでに遭遇した霊的な現象と、それに基づいた浄化の手順を細かく記録。特に井戸跡と「祟りの間」の封印についての詳細が、谷口にとって重要な参考資料となるはずだった。
谷口はノートを受け取り「これだけの情報があれば、今後の対策に役立てられそうです。本当にありがとうございます」
松井あゆみも静かに微笑みながら、「ここに来た時は怖さでいっぱいでしたけど、皆さんがいてくださったおかげで今は少し安心しています」と感謝の意を述べた。
橘美紀が松井あゆみに向き直り、優しく語りかけた。「これからも気になることがあれば、必ず相談してくださいね。一人で抱え込むのが一番危険ですから」
松井あゆみは小さく頷き、「はい。橘さん、本当にありがとうございました」と再び礼を言った。
***帰り道の余韻***
研究会の一行は荷物を車に積み込み、住宅を後にした。車の中は久々に穏やかな雰囲気に包まれていたが、それぞれが胸の中で複雑な思いを抱えていた。
「こうして見ると、本当に静かな土地だよな」峯川が窓の外を眺めながら言う。
「でも静けさの奥には、まだ何かが潜んでいる気がする。土地の闇を完全に浄化するのは、やはり難しいか」祐一がぼんやりと前を見据える。「でも、これで少しは住む人が安心できるなら、今回の調査も無駄じゃなかったはずだ」
一谷が「一度に全てを解決するのは難しいね。でも、問題を一つずつ整理し、次に繋げる。それが僕たちの役目だと思う」
その言葉に全員が頷き、車は静かに町を離れていった。
***最後の一抹の不安***
誰もいなくなった家は、静寂の中に佇んでいた。
風が庭を吹き抜け、揺れる木々の音だけが響く。リビングのテーブルには、オカルト研究会のメンバーが置いていったお札が整然と貼られており、家全体が守られているように見えた。
しかし、2階の「祟りの間」のクローゼットの奥――
そこに置かれた空の木箱が、かすかに震えていることに、誰も気づいていなかった――。
ご購読、ありがとうございました。今回で住宅編は終了になります。完全に解決してない事で再び、オカルト研究会のメンバーたちが再調査に訪れる日が来るかも知れません。




