祐一の新たなる精神修行
祐一は、霊山から帰還後、メンタルの弱さを実感していた。もっと精神面を鍛えないと再び霊山に行くことは無理だと。
霊山から戻った祐一は、己の力不足と心の弱さを痛感していた。
「やっぱり、本当に悪霊に出くわすと、ビビッてしまう……。もっと心を強くしないと」とつぶやき、いつものようにつばき壮の近くにあるお寺を訪れた。
***住職の教え***
お寺の住職に、霊山での出来事を詳細に語った後、祐一は真剣な表情で尋ねた。
「住職、僕はもっと心を強くしたいです。どうすれば良いでしょうか?」
住職はその話を聞き、柔らかく微笑んだ。
「なるほど、それは大変な体験をされましたね。まずお伝えしたいのは、怖いものを怖いと認めることも、人間として大事なことだということです。」
祐一は首を振りながら答えた。
「でも、怖さで身動きが取れなくなると、仲間を守ることができません。それでは意味がないんです。」
住職は深く頷き、話を続けた。
「確かにその通りですね。祐一さん、恐怖そのものを無理に消そうとするのではなく、恐怖を抱えたままどう行動するかを学ぶことが重要です。そのためには、まず心を落ち着ける訓練を始めてみませんか?」
そう言いながら住職は座禅を勧めた。そして穏やかな声で説明を続ける。
「座禅や呼吸法を取り入れることで、心の動きを観察し、落ち着かせる練習ができます。例えば、恐怖を感じたときでも、一度深く息を吸い、吐き出すことで心の乱れを整えられます。これが冷静な判断をするための基盤となります。」
祐一はその場で深呼吸を試してみた。ゆっくりとした呼吸の中で、ほんの少し心が軽くなるのを感じた。
住職はさらに続けた。
「次に必要なのは『イメージトレーニング』です。危険な場面での自分を想像し、どのように動くべきかを具体的に描いてみましょう。繰り返すことで、実際の場面で自然と身体が反応するようになります。そして最後に、仲間を思う気持ちを大切にしてください。自分一人のためでなく、誰かを守るための力は、恐怖を乗り越える大きな助けになります。」
祐一は深く頭を下げた。
「ありがとうございます、住職。教えていただいたことを日々実践してみます。」
住職は頷き、祐一に微笑みかけた。
「その意志があれば、きっと道は開けますよ。応援しています。」
祐一は新たな決意を胸にお寺を後にした。恐怖を克服するための一歩を踏み出したのだ。
***オカルト研究会での会話***
大学のオカルト研究会に顔を出すと、部長の沢田がすぐに声をかけてきた。
「やっぱり霊山に行くのをやめたのかい?それが正しい判断だよ。危険な場所は素直に危険だと認めるのが一番だ。」
祐一は首を横に振りながら答えた。
「いえ、行きました。でも、2日目で活動が休止になってしまいました。」
そう言いながら、霊山での出来事を語り始めた。悪霊との遭遇、恐怖で動けなくなった自分、仲間との協力。そして最終的に活動が中断された理由を、正直に伝えた。
話を聞いた沢田部長は、信じられないといった顔をした。
「本当に行ったのか……。それで、活動休止の原因は?」
祐一は深く息を吸い、正直に答えた。
「悪霊が原因の一つですが、リーダーがメンバーの安全を優先してくれた結果です。それは正しい判断だったと思います。」
部室は静まり返り、
誰もが真剣な表情で祐一を見つめていた。沢田部長は腕を組み、慎重に言葉を選びながら言った。
「君は怖い状況に立ち向かい、そこから多くを学んだようだね。心を強くするための努力も続けているのなら、これからもきっと成長できる。僕らオカルト研究会としても、協力を惜しまないよ。」
他のメンバーもそれに同調し、祐一を応援する言葉を次々と口にした。
中には、住職から聞いた座禅や呼吸法、イメージトレーニングに興味を示した。
その後、研究会では精神を鍛える取り組みとして新たに座禅を取り入れやることになった。メンバーたちは、それぞれの方法で精神的な強さを養うことを目指し、少しずつ自信をつけていった。
祐一は仲間たちと共に進む力を得て、心の中に新たな希望を抱いていた。
***精神修行の成果***
大学から戻った祐一はつばき荘の掃除を日課として行っていた。
すると、急に「わっ!!」と、大きな声がした。
祐一は、平静を保ち、後ろを振り向くと、桜が立っていた。
桜は、少し残念そうに、「びっくりしないの?」と、訪ね、祐一は、「この程度の事で驚いていたら悪霊や幽霊を見たら耐えられないよ」と、笑って答える。
桜は、祐一の答えに少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに興味深そうな笑みを浮かべた。
「へえ、なんだか少し頼もしくなったんじゃない?霊山に行った時は、ずいぶん大変そうだったのに。」
祐一は雑巾を絞りながら肩をすくめた。
「あの時は本当に情けなかったよ。でも、お寺で住職に教えてもらったことを実践してるから、少しは心が強くなった気がする。」
桜は小首をかしげて尋ねた。
「住職って?どんなことを教えてもらったの?」
祐一は掃除を一旦やめて、桜の方を向いた。
「座禅とか呼吸法だよ。あとは、イメージトレーニングも。怖い状況を頭の中で何度もシミュレーションして、自分がどう動くべきかを考えるんだ。これをやると、不思議と少しずつ平常心を保てるようになる。」
桜は感心した様子で頷き、祐一に少し近づいた。
「それって面白そうね。私も試してみようかな。でも……イメージトレーニングって、どうやるの?悪霊とか幽霊を想像するの?」
祐一は笑いながら返した。
「まあ、そんな感じかな。自分が怖がらずに対処してる姿を思い描くんだよ。例えば、桜がいきなり『わっ!!』って驚かせるのを想像して、それでも冷静に対応する、とか。」
桜は肩をすくめて笑った。
「じゃあ、さっきの私の『わっ!!』もいい練習になったわけね。でも、今度はもっと怖がらせる作戦を考えないとね!」
祐一は苦笑しながら、「怖がらせる練習台にはなりたくないけどな」と答えた。
その夜、祐一が部屋で座禅を組みながら呼吸法の練習をしていると、ふと廊下の方から気配を感じた。
「……桜か?」
祐一が声をかけても返事はない。しかし、廊下を覗くと、誰もいない。不思議に思いながらも、部屋に戻ろうとしたその時、廊下の奥からかすかに何かが動く音が聞こえた。
祐一は心を落ち着けるために深呼吸をし、ゆっくりとその音の方へ歩み寄った。
「……誰かいるのか?」
すると、突然暗闇の中からぼんやりとした人影が現れた。祐一は一瞬身構えたが、すぐに呼吸を整え、心を冷静に保った。
「もし幽霊でも悪霊でも、冷静に対応するだけだ……!」
しかし、その人影が近づいてくると、見覚えのある姿に気づく。
「え?桜?」
桜は薄暗い廊下の中で立ち止まり、悪戯っぽく笑った。
「ちょっとびっくりさせようと思ったのに、やっぱり全然驚かないのね……。」
祐一は額に手を当ててため息をついた。
「もう、勘弁してくれよ。でも、これもまた練習になるからいいか。」
桜は少し頬を膨らませて言った。
「私の努力をそんな風に言わないでよ!次はもっと本気で驚かせてみせるんだから!」
祐一は笑いながら廊下を歩き、桜とともに部屋へ戻った。
少しずつ、彼の心の中に広がる平静と成長は、仲間たちの支えの中で確実に形を成し始めていた。
***次のステップ***
週末、祐一は再びお寺を訪れ、これまでの成果を住職に報告した。
「住職、教えていただいた座禅や呼吸法、そしてイメージトレーニングを続けてみました。少しずつですが、心が以前よりも穏やかになった気がします。」
住職はその言葉に満足げに微笑み、祐一を見つめた。
「それは素晴らしい進歩ですね。次の段階として、新たな方法をお教えしましょう。その名は『クンバハカ』という技法です。」
祐一は興味深そうに身を乗り出した。
「クンバハカ……ですか?」
住職は静かに頷きながら説明を始めた。
「これは、心と体をさらに強く結びつけるための方法です。やり方は簡単ですが、日々の鍛錬が必要です。まず、肩の力を抜き、リラックスしてください。そしてお尻を締め、お腹の下、丹田に意識を集中させて気を込めます。この状態を保つことで、緊張した場面でも心が揺らぎにくくなるのです。」
祐一は真剣な表情で聞き入った。
「なるほど……体の使い方が重要なんですね。早速試してみます。」
住職はさらに、祐一に一冊の教典を手渡した。表紙には古風な文字が刻まれている。
「これは『魔浄化の教典』です。この教典の中に記されたお経を毎日唱えることで、心身が浄化され、魔を遠ざける力を得るとされています。祈りを通して、心の中の迷いも徐々に晴れていくでしょう。」
祐一は教典を両手で受け取り、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます、住職。これも日課にして、心をさらに鍛えていきます。」
住職は優しい笑顔で頷いた。
「焦らずに、少しずつ積み重ねていけばよいのです。継続こそが力となります。」
お寺を後にした祐一は、その日からクンバハカの練習と教典の読経を日課に加えた。肩の力を抜き、お尻を締める動作に最初は苦労したものの、丹田に意識を向ける感覚を掴むと、徐々に自然に行えるようになっていった。
また、教典を開き、静かにお経を唱える時間は祐一にとって
心を落ち着ける貴重な時間となった。毎日少しずつ、彼の心は穏やかさと力強さを増していくのを感じた。
***邪気浄化の成果***
ある夜、練習を終えた祐一は、窓の外を眺めながら呟いた。
「これが本当に悪霊や魔を払う力になるのなら、もう少し自信が持てるかもしれない……。」
静かな夜風が彼の決意を包むように吹き抜けていった。
祐一の新たな挑戦は、確実に彼を成長へと導いていた。
祐一は、住職に教えられた教えを日々の生活に取り入れ、練習を重ねていた。その一環として、夜にはつばき荘から散歩に出るのが習慣となっていた。ある晩、いつものように踏切を抜け、病院とお寺の前を通り過ぎようとしたとき、突如として不穏な気配に襲われた。
何か黒い影が、遠くからゆっくりとこちらに近づいてくる。冷たい空気が辺りに漂い、祐一は一瞬緊張したが、すぐに深呼吸をして心を落ち着けた。そして、住職から譲り受けた「魔浄化の教典」のお経を心の中で静かに唱え始めた。
しばらく経つと、不思議なことに黒い影は薄れ、やがて完全に消え去った。空気も澄み渡り、重苦しさは跡形もなく消えていた。祐一は胸を撫で下ろしながら、同時に自分の力で邪気を払い、不穏な状況を乗り越えたことに小さな自信を感じた。
翌日、祐一は早速お寺を訪れ、昨夜の出来事を住職に報告した。
「住職、昨夜、不気味な黒い影に遭遇しました。でも、お経を唱え続けていたら、それが消えて、不穏な空気も晴れたんです。」
住職は祐一の話を聞き、穏やかに微笑みながら頷いた。
「なるほど、それは良い体験をしましたね。少しずつ祐一さんの努力が実を結び始めている証拠でしょう。しかし……。」
住職の表情が少し引き締まる。
「その力に過信してはいけません。邪気を払えたのは確かに素晴らしいですが、それは日々の精進があってこそ成り立つものです。これからも練習を怠らず、さらに心と体を鍛えていくことが大切です。」
祐一はその言葉を真摯に受け止め、静かに頷いた。
「はい、住職。慢心せず、これからも日々の修行を続けていきます。」
住職は優しく微笑み、祐一の決意を見守るように言葉を添えた。
「その心構えが何よりも重要です。これからも祐一さんが成長していくのを楽しみにしていますよ。」
祐一は感謝の意を込めて深く頭を下げた。
その背中には、自信と謙虚さが共存する新たな決意が滲み出ていた。
購読、ありがとうございました。祐一は、少しずつですが成長しています。




