集会所の出来事
一方、帰還したメンバーたちは集会所である異変が起ころうとしていた。
***集会所への帰還***
祐一と亜里沙が海林と一緒に行った後、残ったメンバーは拠点の集会所に戻ることにした。
峯川の運転する車に、小川と東都大学のメンバーが乗り込む。
「……疲れたな」
峯川が、ハンドルを握りながら呟く。
「ああ……」
小川も、深く息を吐いた。
「あの黒い影……マジでヤバかったな」
「祐一がいなかったら、亜里沙さんたち……」
言葉が、途切れる。
想像したくない結末が、頭をよぎった。
車は、静かな道を走る。
夕闇が、だんだんと濃くなっていく。
***集会所の様子***
集会所まで戻ると、特別、何もなかったようだった。
建物は無事で、窓も扉も壊れていない。
結界の札も、ちゃんと貼られたままだ。
「……ホッとした」
峯川が、車を降りながら呟く。
集会所の中では、待機していた松井と星川、そして東都大学のメンバーが出迎えた。
「お帰りなさい」
松井が、明るく声をかける。
だが、すぐに気づいた。
「……あれ?」
星川も、首を傾げる。
「部長たちは?」祐一と亜里沙の姿がなかった。
峯川と小川が、顔を見合わせる。
「実は……」
峯川が、これまでの事情を話し始めた。
海岸での調査。
供養碑の浄化。
そして――黒い影の襲撃。
祐一の霊光弾による救出。
最後に、海林という青年との出会い。
「……それで、部長と亜里沙さんは、新地区の方に行ったんだ」
「そう、だったのね……」
松井が、ホッと胸を撫で下ろした。
「まさか、何かあったのかと思ったわ」
「私も」
星川も頷く。
「二人とも無事で良かった」
東都大学のメンバーも、同じ反応だった。
「亜里沙さん、大丈夫なんですね……」
「ええ。新しい集会所のある地区で、今夜は泊まるそうだ」
小川が答えた。
「そっちの方が安全だしな」
***夕食の準備***
「ひとまず、食事にしよう」
松井が、キッチンへ向かう。
「お腹空いたでしょ?」
「ああ、助かる」
峯川が笑う。
メンバーたちは、テーブルに集まった。
簡単な夕食――カレーライスと味噌汁。
温かい湯気が、部屋に広がる。
「いただきます」
全員で手を合わせる。
***今日の報告***
食事をしながら、それぞれが今日一日の報告をした。
「こっちは……」
星川が口を開く。
「引き続き、集会所と周辺の掃除と浄化活動を行ったよ」
「結界の確認もした」
松井が続ける。
「今のところ、異常はなし」
「それと、周辺で小さな祠を二つ見つけた」
一年生の山田が報告する。
「どちらも、倒れてたから……修復しておきました」
「お疲れ様」
峯川が頷く。
「こっちは……」
峯川と小川が、海岸で起きた出来事を詳しく話した。
供養碑の荒廃。
不自然な漂着物。
そして――黒い影の襲撃。
「……マジかよ」
星川が、箸を止めた。
「昼間なのに、そんなに強い霊が……」
「ああ」
小川が頷く。
「部長の霊光弾がなかったら、やられてた」
「祐一……そんな力、使えたんだ」
松井が驚く。
「俺も初めて見た」
峯川が言う。
「すげぇ光だった。黒い影が、一瞬で消えたんだ」
***通信の遮断***
「そういえば……」
小川が、スマホを取り出した。
「部長に電話してみるか」
発信ボタンを押す。
しばらく待つ。
だが――。
「……繋がらない」
「え?」
峯川も、自分のスマホを確認する。
「圏外……?」
「こっちも」
松井が言う。
「さっきまで電波あったのに」
東都大学のメンバーも、同様だった。
「私のも、ダメです」
「無線は?」
星川が、無線機を手に取る。
スイッチを入れる。
――ザザッ……。
雑音すら、入らない。
「……これも、ダメだ」
部屋の空気が、一気に重くなった。
***不安の広がり***
「ヤバイ……」
峯川が、顔を青ざめさせる。
「部長たち、大丈夫か?」
「連絡取れないって……」
松井も、不安そうに呟く。
「何かあったんじゃ……」
「いや、待て」
小川が、冷静に言った。
「焦るな」
「でも……」
「今は、ここに留まっておこう」
小川は、窓の外を見た。
すでに、真っ暗になっている。
「夜道を行くのは危険すぎる」
「それに……」
小川の表情が、険しくなる。
「今晩は、何かヤバイ気もする」
「何か……?」
「海辺で見た、黒い影が気になる」
小川は、腕を組んだ。
「あれ、まだいるかもしれない」
「いや、他にもいるかもしれない」
「……確かに」峯川も頷く。
「あの影、尋常じゃなかったからな」
***警戒態勢***
「じゃあ、決まりね」松井が立ち上がる。
「今夜は、ここで警戒態勢」
「部長たちとは、明日の朝、連絡を取る」
「賛成だ」星川も頷く。
「結界も張ってあるし、ここなら安全だ」
「じゃあ、見張りの当番を決めよう」小川が提案する。
「二時間交代で」
「了解」
全員が頷いた。
夕食を終え、それぞれが準備に取り掛かる。
護符の確認。
懐中電灯の準備。
緊急時の避難ルートの確認。
全員が、真剣な表情で動いている。
***夜の始まり***
午後八時。
集会所の明かりが、暗闇の中で灯っている。
最初の見張りは、峯川と星川。
二人は、窓際に立ち、外を見張っていた。
「……静かだな」
峯川が呟く。
「ああ」
星川も頷く。
「静かすぎて、逆に怖いくらいだ」
風が、木々を揺らす音。
遠くで波が打つ音。
それ以外、何も聞こえない。
「……来るかな」
「分からない」
峯川が答える。
「でも、来ても大丈夫なように準備はできてる」
「そうだな」
二人は、窓の外を見つめ続けた。
暗闇の向こう。
何かが、蠢いているような――。
そんな気配が、じわじわと迫ってくるような気がした。
だが、まだ何も見えない。
ただ――。
胸の奥に、小さな不安が残っていた。
――本当に、大丈夫なのか。
――部長たちは、無事なのか。
答えは、まだ出ない。
長い夜が、始まったばかりだった。
***深夜の異変***
深夜二時。
見張りのメンバー達も、疲労が溜まっていた。
椅子に座ったまま、居眠りをする者も現れていた。
集会所の外、小川は、テントの中で仮眠をとっていた。
寝袋に包まり、静かな寝息を立てている。
だが、その眠りは、長くは続かなかった。
***重い気配***
ふと、小川の目が開いた。
何かに、起こされたような感覚。
体を起こす。
テントの中は暗い。
外からは、風の音だけが聞こえる。
「……ん?」
小川は、眉をひそめた。
何かが、おかしい。
空気が――重い。
まるで、目に見えない何かが、テントの周りを取り囲んでいるような。
そんな、圧迫感。
「気のせい……か?」
そう思った、その時――。
――キィィィィン!
激しい耳鳴りが、頭の中に響いた。
「うっ……!」
小川は、両手で耳を押さえる。
痛い。
頭が割れそうなほど、激しい音。
高音の、金属的な音が、脳髄を揺さぶる。
「な、何だ……これ……!」
***集会所での異変***
同じ頃。
集会所の中でも、異変が起きていた。
松井あゆみが、突然立ち上がった。
「っ……!」
手で耳を押さえる。
顔が歪む。
「松井さん?」
隣にいた一年生が、驚く。
「どうしたんですか?」
「耳鳴り……」
松井が、苦しそうに呟く。
「すごい……耳鳴りが……」
広末も、同じ症状だった。
「私も……!」
彼女は、外へ飛び出した。
小川のテントへ向かう。
「小川君! 小川君!」
テントの入口を叩く。
「何?」
小川が、テントから這い出てくる。
顔色が悪い。
「耳鳴りがする……!」
広末が叫ぶ。
「すごく、激しい音が……!」
「俺も……」
小川が頷く。
「さっきから、頭の中で鳴ってる……」
***症状の拡大***
集会所の中では、次々とメンバーが症状を訴えていた。
「うう……頭が……」
「耳が……痛い……」
特に、霊感の強いメンバーは、症状が酷かった。
松井は、壁に手をついて体を支えている。
広末も、膝をついている。
東都大学のメンバーも、何人かが苦しんでいた。
「佐々木さん!」
「大丈夫……です……」
佐々木が、額に手を当てる。
冷や汗が、流れていた。
一方で――。
一年生たちは、比較的症状が軽かった。
「先輩……大丈夫ですか?」
山田が、松井を支える。
「ああ……何とか……」
「俺たちは、そこまでじゃないです」
別の一年生も言う。
「少し耳鳴りがする程度で……」
***星川の指示***
「みんな、大丈夫か!」
星川が、大きな声で呼びかけた。
彼も額に手を当てているが、まだ動ける。
「一年生たちは、比較的軽いみたいだな」
「はい!」
山田たちが答える。
「よし」
星川は、素早く指示を出した。
「魔よけのお香を焚いてくれ!」
「了解!」
一年生たちが、香炉を取り出す。
線香に火をつける。
白い煙が、立ち昇り始めた。
「外にいるメンバーを、集会所の中に入れろ!」
星川が叫ぶ。
「全員、中に避難だ!」
***緊急避難***
一年生たちが、外へ飛び出す。
「小川先輩! 広末先輩!」
「中に入ってください!」
「ああ……」
小川が、ふらつきながら立ち上がる。
広末を支え、集会所へと向かう。
他にも、外で見張りをしていたメンバーが次々と中へ入ってくる。
全員、耳を押さえている。
「よし、全員入ったな!」
星川が確認する。
「玄関のドアを閉めろ!」
バタン!
重い音を立てて、ドアが閉まった。
***結界の強化***
「結界の札を、内側から貼れ!」
星川が指示を出す。
一年生たちが、ドアの内側に護符を貼っていく。
東西南北。
窓にも、扉にも。
一枚、また一枚。
「小川、大丈夫か!」
星川が、床に座り込んでいる小川に声をかける。
「ああ……何とか……」
小川が、震える手を上げる。
「プロテクションの魔法……唱える……」
「無理するな!」
「いや……やる……」
小川は、両手を前に突き出した。
目を閉じ、呪文を唱え始める。
「――我、光の守護を求む」
「――この場を、邪悪より護りたまえ」
声は震えているが、言葉ははっきりしている。
「――プロテクション……」
その瞬間。
部屋全体が、淡い光に包まれた。
金色の、薄い膜のような光。
それが、集会所全体を覆っていく。
***東都大学の警戒***
東都大学のメンバー達も、警戒態勢を取っていた。
「数珠を握って!」
佐々木が叫ぶ。
「結界を補強するわ!」
彼女たちも、それぞれ呪文を唱え始める。
部屋の四隅に立ち、手を合わせる。
「――南無阿弥陀仏……」
「――南無阿弥陀仏……」
念仏の声が、重なっていく。
お香の煙と、光の膜と、念仏の声。
それらが一つになり、集会所を守っている。
***耳鳴りの変化***
数分後。
耳鳴りが、少しずつ弱まっていった。
「……あれ?」
松井が、顔を上げる。
「音が……小さくなってる……」
「本当だ……」
広末も、耳から手を離す。
「まだ、少し残ってるけど……」
「耐えられるレベルになった」
他のメンバーも、同じようだった。
「……効いてるのか」
峯川が呟く。
「結界と、魔法と、お香が……」
「ああ」
星川が頷く。
「何とか、防げてる」
だが――。
完全に消えたわけではない。
まだ、耳の奥で小さく鳴り続けている。
そして、空気の重さも残っている。
「……まだ、外にいるな」
小川が、窓の方を見る。
「何かが……」
全員が、窓の外を見た。
暗闇。
何も見えない。
だが――。
確かに、何かがいる。
集会所の周りを、取り囲んでいる。
その気配が、ひしひしと伝わってきた。
「……今夜は、長くなりそうだな」
星川が、拳を握る。
「全員、油断するな」
「結界が破られたら、終わりだ」
「了解」
メンバーたちが、頷く。
そして――。
長い、長い夜の戦いが、始まった。
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