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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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さらなる調査活動に向けて

山と川の調査を終えたメンバー達が岩の空き地に帰還した。次の調査に向けて。

***拠点での合流***


 祐一たちが結界の境界を越えて空き地に足を踏み入れると、待機していたメンバーたちが一斉に駆け寄ってきた。「部長! 遅かったですね、何かあったんですか?」

 一年生の岡村が心配そうな声に、祐一は疲れた表情で苦笑した。


「まーね」それだけ言うと、祐一は周囲を見渡した。テントが整然と並び、中央ではバーベキューの準備が進んでいる。ソーラーライトが淡い光を放ち始め、お香の煙が静かに立ち昇っている。

「ひとまず、ここで今日はキャンプだ。食事の準備は整ったかい?」


「はい! あとは火をつけるだけです」一年生の岡村が元気よく答えた。だが、その視線は祐一たちの疲労した様子を心配そうに追っていた。

 

 広末摩耶が歩み寄ってきた「田中部長……山で、何かありましたね」祐一は頷いた。

「ああ。詳しい話は、食事をしながらにしよう。そっちも、何かあったんだろう?」

「……ええ」広末は川の方角を一瞥した。「こちらも、簡単には済みそうもないわ」

 

 星川が手を叩いて、全員の注意を引いた。「よし、じゃあまずは腹ごしらえだ。情報交換は、その後でゆっくりやろう」その言葉に、張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。

 

 山田が炭に火をつけ、やがて赤い炎が夜の闇に揺らめき始める。

 網の上に肉や野菜が並べられ、じゅうじゅうと音を立て始めた。香ばしい匂いが立ち込める。

 普通のキャンプなら、ここで歓声が上がるところだ。

 だが、メンバーたちの表情には、疲労と緊張がまだ残っていた。

「……とりあえず、食べよう」祐一が皿を手に取ると、他のメンバーもそれに続いた。

 

 焚き火の光が、彼らの顔を静かに照らしていた。


 中村真理が順番にスープを皿に入れて行く。

「お腹がいっぱいになれば、気持ちも和らいでいくわ」と話す。


***情報共有***


 焚き火を囲んで食事を取りながら、祐一は山での出来事を語り始めた。

「下山中、悪霊に囲まれたんだ。数が多くて、三十分以上は悪霊と対峙が続いたんだ」


星川が続けて「途中で埋設した浄化グッズのおかげで、それでも力が弱っていたみたいだ。動きも鈍かったから、何とか対処できた」


 1年生の岡村が「やっぱりこの山に悪霊が潜んでいるんですね」と青ざめた。

 一方、1年生の山田は「僕も一緒に参加したかったです。それだけの悪霊と対峙する事はめったにない機会です」と答える。


 小川が「山田くんは霊的な事に対して興味が強そうだけど慎重な事も大切だ」と話した。


 話は続き、「最終的には、橘さんと春香さんの札を使って突破できたんだ」祐一が炭火を見つめながら答える「あの札がなければ、助からなかったかもしれない」

 

松井あゆみが小さくため息をつく。

「悪霊の追撃は、この岩の結界のお陰ね。境界線で止まったみたい。ここまでは入れないみたい」

 一年生たちが、息を呑んで聞いていた。


 祐一の報告が終わると、今度は広末が口を開いた。

「私たちの調査も……少し危険な感じがしたわ」

 鮎川、思い出すように語った。

「上流に、古い石積みがあったの。多分、人工的に誰かが意図的に積み上げた物の様ね。何かを祀っていたのか、ここの岩の封印と同じ可能性も考えられるわね」

「その後、水の中に……人の顔のようなものが見えたんだ」織田が答える。「だけど撮影しようとしたんだけど、、、カメラには映らなかったの」鮎川が答える。


 広末が焚き火の向こうを見据える。

「それから急いで帰還する事にしたの、その時、川辺から水音が何度もしたの。水の中を、並走してくるような感じだった……帰る間、塩を撒いてお清めとお祓いをしたけど、それでも、ずっと後をついてきたわ」

「でも、この拠点の近くまで来ると、その気配が消えたの」鮎川が付け加えた。


 「春香さんの結界が、本当に効いているみたいだ」織田が話を締めくくった。


 しばらく、焚き火の爆ぜる音だけが響いた。峯川が腕を組み、考え込むように言った。

「……山も重要だが、河川の調査も本格的に行う必要がありそうだ」

 星川も頷いた。

「山の悪霊のことも気になるけど、今回の調査活動でかなり浄化できたから、多少は良くなっているはずだ。次は河川の調査と浄化に重点を置くのも必要だ。河川の風水も調べておきたい」

 

 小川が焚き火の炎を見つめながら続けた。

「河川にあった石積みが気になる。その場所を調べると何か分かるかも知れない」

 

祐一は静かに頷く。

「明日は河川の石積み周辺の調査に僕も参加する」

「山はどうします……?」一年生の山田が尋ねる。

「今日の調査活動で一定のエリアといくらかの悪霊を浄化したから少しは安心だ」星川が答える。


「明日は河川にある石積みの謎を調べよう。この山の問題とも関連しそうだし」祐一が話をまとめる。


 焚き火の光が、メンバーたちの真剣な表情を照らしていた。

その後、夜は深まり、結界の外の山と河川では何かが静かに蠢いているような気配が感じられるようだった。


***明日の方針***


 祐一は、空き地の近くに泊めてある軽バンに戻り車中泊の準備を進めていた。他のメンバーもそれぞれキャンプの準備に入っていた。


 他の1年生のメンバーは焚き火の周りで、それぞれが思い思いに体を休めていた。

 

 少し離れた場所に張ってあるテントの中で、峯川、小川、星川の三人が小声で話し合っていた。

「山の調査も、かなり難航しそうだな」峯川が切り出した。その表情は、今日の戦闘を思い返すように険しかった。

「ああ……」小川も深く息を吐いて同意する。「あれだけの悪霊が出てくるとは予想外だった。数も、執拗さも。この調子だと、山全体の浄化は難しそうだ」

 

 星川が腕を組み、低い声で続ける。

「岩の結界の外近くに登った山根に埋設したジョゥ化グッズの近くであれだから……もっと先に進むとなると、かなり厳しそうだね」


 峯川が視線を空き地の境界に向けながら、

「次に行く時、山に設営した拠点は、どうなっているんだ?あの結界が保たれていれば安心できるが……」


 「確かにあの場所を強化して、調査の拠点にしないと、もっと先に進む事は難しそうだ」小川が頷く。


「浄化グッズを埋設したエリアが崩れたら撤退すらできなくなる可能性もあった」星川が焚き火の方を一瞥してから、静かに言った。


「あのまま、頂上に登っていたらどうなっていたか……分からないぜ」

 

三人の間に、重い沈黙が落ちた。

 峯川がふっと笑みを浮かべる。

「今回は田中部長の判断が正しかったということだ。引き際を見極めるのも、調査の一部だ」

「確かに」小川が同意する。「無理に進んでいたら、全滅していたかもしれない」

 星川も頷いた。


「明日の河川調査も、慎重にいこう。山と同じように、何かが潜んでいる可能性も高い。今度は水に関係した存在だ」

「ああ。水場の霊は、山の霊とはまた違う厄介さがある」峯川が真剣な表情で言う。「河に引きずり込まれたら、助かるのは難しい」


「だから準備をしっかり整えよう」小川が腰に下げた魔法のワンドを確認した。


 夜は深まり、岩のある空き地の外では風が木々を揺らしていた。

 


***河川の石積み調査***

 

 翌朝、拠点のテントから這い出したメンバーたちは、手早く朝食を済ませ、装備を整えた。

 今日の調査は、昨日の山の調査メンバー全員と河川メンバーが合流しての行動になった。


 今回は祐一達、山の調査メンバーが参加する事で河川の調査は心強かった。


 一年生の中村真理が少しだけ安堵の表情を見せる。

「この調査が終了すれば、いくらか安心できそうね」

 


 祐一は全員の装備を確認してから、広末に視線を向けた。

「広末さん、案内を頼むよ」

「はい、田中部長」広末を先頭に、一行は河川沿いの道を進んでいった。

 

 朝の光が川面に反射し、きらきらと輝いていた。河のせせらぎの音は穏やかで、昨日の重苦しさは幾分和らいでいるようにも感じられた。

 

 だが、祐一は警戒を緩めなかった。上流に向かうにつれ、空気が冷えていくのを感じられた。

 十五分ほど歩いたところで、広末が足を止める。「ここです」

 川岸の一角。苔に覆われた石が、不自然なほど整然と積み上げられていた。

 祐一と星川が近づき、石積みをじっくりと観察した。

「これは……」星川が呟く。

「何かの封印、浄化、鎮めようとして作られたもののようだね」

 

 祐一も頷いた。

「古い。相当昔に、誰かがここに祀ったんだろうね。空き地の岩と同じかもしれない」


 峯川が周囲を見渡した。

「この場所、地形的にも意味がありそうだぜ。水の流れが変わる地点に近い」

「水に関係する何かを……鎮めるために作られたのかもしれない」小川が静かに言った。

 祐一はバッグから香炉とお香を取り出した。

「まずは、この場を清めよう」星川と峯川も同様に準備を整える。

 

 祐一が香炉に火を点けると、白い煙が細く立ち昇り、川風に流されていく。

 そして、祐一は静かにお経を唱え始めた。星川、峯川、小川も続いた。


 低く、厳かな声が、川のせせらぎと混じり合いながら、石積みの周囲に響いていく。

 広末、鮎川、織田は少し離れた場所で静かに見守っていた。

 お経の声は途切れることなく続き、やがて祐一が最後の一節を唱え終えた。

 

  その瞬間――。

 石積みの場が、ふわりと軽くなったように感じられた。

 重く淀んでいた空気が、静かに流れ始める。

「……清められた」星川が小さく息を吐く。


 「少なくとも、この場は静まったようだ」祐一は石積みに向かって一礼すると、ゆっくりと立ち上がった。

「これで、この祠は本来の役割が少しは取り戻せたはずだ」

 

 広末が近づいてくる。「昨日感じた、あの重苦しさが……消えている」


「ああ」祐一が頷いた。


「だけど、これで終わりじゃない気がする。この祠では無理だったから、あの岩が祀られたんだと思う。


 峯川が川面を見つめた。

「昨日、水の中に顔が見えたんだったな」

「はい」織田が答える。「確かに、こちらを見上げていました」

 小川がワンドを手に、慎重に水辺に近づく。

「今は……気配は感じない。でも、完全に消えたわけじゃないかもしれない」

 祐一は周囲を見渡した。

 清められた石積み、静かに流れる川、木々の間を抜ける風。

 この場所には、まだ語られていない何かがある。

 それを解き明かすことが、この山全体の謎を理解する鍵になるはずだった。


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