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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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山の登山調査

祐一達は、岩の広場に集まり、山の調査を行う準備を進めていた。

***調査チーム編成***


 岩のある空き地には、オカルト研究会のメンバーたちが集まっていた。

朝の光が木々の間から差し込み、整備された空き地を照らしている。

「よし、それじゃあ最終確認だ」祐一が、全員の前に立った。

 

参加メンバーたちは、それぞれリュックを背負い、調査道具を準備している。

真剣な表情で、祐一の指示を待っていた。

「山の調査チームは、僕と峯川くん、松井さん、小川くん、星川くん、それと佐藤くんの六名だ」

「はい」指名されたメンバーたちが頷く。


「河川の調査チームは、広末、鮎川、織田の三名」

「了解です」広末摩耶が、落ち着いた声で答えた。

「一年生は、この空き地で待機。テントを張って、調査拠点にする」

「分かりました!」一年生のリーダーが元気よく返事をした。

 

 祐一は、地図を広げて全員に見せた。

「由美さんの家も、水の確保や休憩場所として利用させてもらう」

地図上に、空き地、山、河川、そして由美の家の位置が記されている。

「何かあったら、すぐに連絡を取り合おう。無理は絶対は、しない事」


「了解」全員が声を揃えた。

 一年生たちは、すでにテントの設営を始めていた。

青いテントが、空き地の端に広げられていく。

傍らには、クーラーボックスや応急処置キット、通信機器などが並べられていた。


「由美さん、水の補給、お願いしてもいいですか?」一年生の一人が、由美に声をかける。

「はい、大丈夫です。何かあったら、いつでも家に来てください」由美が微笑んで答える。


「ありがとうございます」空き地は調査拠点として整えていった。

「じゃあ、行こうか」峯川が、リュックを背負い直す。


「気をつけてください」由美が、心配そうに声をかける。

「ありがとう、由美さん」祐一が微笑んで答える。「無事に戻ってくる」


***山への登山開始***

 

 六名は、空き地の奥から山へと入っていった。

供養を終えた岩に一礼してから、木々の間へと足を踏み入れる。

「……道がないな」

峯川が、草木をかき分けながら呟いた。


「完全に手つかずだ。地元の人が登らないって言ってたからね」祐一が答える。

 足元には、枯れ葉や小枝が積もっていた。


 人が通った形跡は、まったくない。六名は、慎重に、一歩一歩進んでいった。

「こういう山は、道迷いしやすいから気をつけよう」

小川が、周囲を見回しながら言った「星川、方角は大丈夫か?」


「今の所、大丈夫」星川が羅盤を確認する「山頂の方向はこっちだ。ただ……」


「ただ?」

「なんか、針の動きが微妙に不安定なんだ」

「磁場が乱れているのか?」小川が話を続ける「この山は強い霊的エネルギーがあるから仕方ないか」

 

五分ほど登ったところで、星川が立ち止まった。

「ここで、最初の浄化グッズを埋設しよう」星川が、リュックから水晶の玉を取り出した。

透明で美しい、数センチの水晶玉だった。「これを埋設して行こう」

「どういう効果があるんだ?」峯川が尋ねる。


「場を整える方法として有効と言われている」星川が説明する。

「この山全体のエネルギーの流れを、少しずつ正常化させるパワーがあるんだ」

「なるほど……」

 星川は、木の根元に小さな穴を掘り、水晶を埋めた。そして、羅盤で方角を確認する。

「よし、これで一つ目だ」

「僕も手伝います」佐藤が星川に話す。

「じゃあ、佐藤は僕と一緒に、定期的に埋設していこう」

「了解です」六名は、引き続き登山を続ける。


 数十メートル程度進む水晶を埋設していった。


木の根元、岩の隙間、地面の窪み。様々な場所に、埋設して進んで行った。


***異様な静寂***


 三十分ほど登ったところで、峯川が立ち止まる。

「……なあ」

「どうしたんだ?」祐一が尋ねる。

「静かすぎないか?」その言葉に、全員が耳を澄ませた。


確かに、異様なほど静かだった。鳥の声も、虫の音も聞こえない。風すら、ほとんど吹いていない。


「言われてみれば……」小川が周囲を見回す。

「この時期なら、もっと生き物の気配があるはずだ」

「風も……ほとんど吹いてないわ」松井あゆみが、木の葉を見上げた。

葉は、ほとんど動いていない。

まるで、時間が止まっているかのようだった。


「松井さん、何か感じる?」祐一が尋ねた。

「……うーん」あゆみは目を閉じ、しばらく集中してから答えた。


「はっきりとは分からないけど……重苦しい気配を感じるわ」

「重苦しい?」

「ええ。まるで、何かが……息を潜めているような」あゆみが目を開けた。

「この山には、確かに何かあるわ」その言葉に、一瞬沈黙したように感じられた。

木々が、微かに揺れた気がした。


しかし、風は吹いていない。「……この程度の浄化グッズを埋設する程度で、うまくいくのか?」

峯川が、不安そうに尋ねる。


手に持った水晶を見つめながら「正直、分からない」星川が答える。

「でも、他に有効な対策がないから、仕方ない」


「そうだな……」峯川が頷いた。

「よし進もう」祐一が決断する。「ただし、慎重に」


***警告の文字***


 さらに十分ほど登ったところで、星川が立ち止まった。

「待て。これを見てくれ」星川が、太い木の幹を指差している。

 幹には、何かが刻まれていた。風化して薄くなっているが、確かに文字。

人の手で彫られた跡。

「……『登るな』?」峯川が読み上げた。「これ、誰が彫ったんだ?」


「かなり古いな」星川が、文字の彫られた部分を確認する。

苔が生え、木の成長によって文字が歪んでいる。

「少なくとも、数十年以上は経っていそうだ」

「他にもある」祐一が周囲の木々を見回した。

「こっちは『戻れ』、あっちは『禁足地』……」

 同じような警告文が、複数の木に刻まれていた。


 まるで、この山に入る者を拒むように。

「地元の人が彫ったのか?」峯川が呟く。

「おそらく、そうだろう」小川が頷く「この山に人が入らないように、警告を残したんだろう」

「それだけ、危険ってことか……」峯川が答える。


 松井あゆみが、文字の彫られた木に手を伸ばした。そっと、幹に触れる。

「……っ」

触れた瞬間、松井あゆみの表情が変わった。

「松井さん?」祐一が心配そうに声をかける。

「大丈夫……」松井あゆみは手を離す。


「でも、この文字には強い念が込められている」

「念?」

「ええ。ただの警告じゃない。これは……祈りに近い」松井あゆみが静かに言った。

「誰かが、必死で人々をこの山から遠ざけようとした、必死で……」


祐一が文字を見つめる。「何かから守ろうとしたのだろうか」

 

 また、風もないのに、木の葉が微かに揺れた気がした。

「とりあえず、ここも浄化しておこう」星川が提案する。


「賛成だ」祐一がバッグから浄化スプレーを取り出す。

「この辺りを清めておけば安心だ」祐一が浄化スプレーを周囲に吹きかける。


 続いて星川と佐藤が水晶玉を周辺に埋設する。

「少しずつだけど、山の重い気を浄化していこう」

「こっちは僕がします」佐藤が木のモネとに水晶玉を埋設し「これで、少しは、清められる筈です」

「ああ」星川が答える。


***石碑の発見***


 さらに十分ほど登ると、少し開けた場所に出た。

「……あれは」峯川が、前方を指差した。

 木々の間に、古びた石碑が見えた。

苔に覆われ、長年の風雨に晒されたことが分かる。

「石碑?こんなところに?」

五人は、石碑に近づいた。

 石碑は、人の背丈ほどの高さがあった。

表面には、びっしりと文字が刻まれている。

しかし、風化が激しく、読み取るのは困難だった。

「読めるか?」祐一が小川に尋ねる。

「待って……」小川が、苔を払いながら文字を読んでいく。

目を凝らし、慎重に一文字ずつ確認する。

「風化が激しいな。断片的にしか読めない」

「何が書いてある?」

「えーと……『この地……災厄……封印……』」

小川が慎重に読み上げる。「『……山頂……二度と……』」

「封印……?」峯川が眉をひそめた。

「由美さんのお母さんが言ってた人柱の事か」祐一が呟く。


 星川が羅盤を石碑に近づけた。針が、激しく揺れ始める。

「うわ……」

「どうしたんだ?」

「針が、めちゃくちゃに動いてる」星川が驚いたように答える。

「この石碑の周囲、エネルギーの乱れが激しい」松井あゆみも、石碑に近づく。

ただし、触れることはせず、少し離れて目を閉じる。

深く、集中した「……」しばらくの沈黙が流れる。


「……悲しみ」あゆみが目を開けた。

その声が震えていた。「この石碑には、深い悲しみが染み込んでいるわ」

「悲しみ?……」祐一が呟く。


「ええ。そして、それと……恨み」あゆみが石碑を見つめ「今もここに残っている」

 

全員が、息を呑んだ。石碑が、急に重く、暗く見えた。

「……ここも清めよう」祐一が静かに話す。


 祐一がお経を唱え、線香を焚く。日本酒と水を供える。

峯川は浄化スプレーを取り出し石碑の周囲に、シュッシュッと吹きかけて清める。

「この地に眠る魂よ、どうか安らかに……」小さく祈りを捧げた。

 

 お経を唱え終わった後「先に行こう」と祐一が指示を出す。

「山頂まで、まだ距離がある」


***緩やかな斜面へ***


 石碑を過ぎてから、六名はさらに慎重に登り続けた。

水晶玉を埋設し、進んで行く。


 空き地を出発してから2時間が経過していた。


「……少し緩やかになったな」峯川が、周囲を見回す。

 これまでの急斜面とは違い、比較的平らな場所が広がっていた。


木々に囲まれ、少し開けており地面も、比較的平坦だった。


「ここを、臨時の調査拠点にしよう」祐一が提案する。

「丁度、良い場所だ」小川が頷く。「ここなら、休憩もできるし、装備の確認もしやすい」


「よし、じゃあ簡易テントを張ろう」祐一はリュックからブルーシートを取り出す。

木と木の間にロープを張り、シートを広げ簡易的な屋根ができた。

「次は地面に、シートを魔方陣シートを敷こう」佐藤が魔方陣の描かれたシートを地面に敷いた。


「これで、少し休めるね」松井あゆみが、ほっとした口調で話す。


 峯川が、木に背を預けて座る「ふう……」息を整えながら、水筒を取り出した。

「次は、結界だ」小川が、結界石を取り出した。

手のひらサイズの石を魔方陣シートの4方に設置した。


「これで、ある程度は安心できる」小川が満足そうに頷く。

 

星川が、LEDランプを取り出しブルーシートの屋根の隅に吊り下げた。

「明かりも確保しておこう」スイッチを入れると、白い光が、周囲をぼんやりと照らす。

「おお、いい感じだ」峯川が、周囲を見回す。

ブルーシートの屋根、地面のシート、結界石、そしてLEDランプ。


 簡易的ではあったが、確かに拠点らしくなっていた。

「ささやかな秘密基地だな」峯川が笑った。

「確かにそうですね」佐藤も微笑んだ。


星川は少し不安そうな表情を浮かべ

「さすがに、ここが拠点というのも……孤立無援な感じです」星川が呟いた。

「確かに、そうだけど、ないよりはマシだ」小川が答えた。


 祐一が、これまでのルートを簡易的に記した地図を眺めながら

「ここから、空き地の拠点まで結構距離があるから、何かあっても、すぐには助けが来ない」


 松井あゆみが、静かに「そうね。ここが、山の中で唯一の安全地帯かもね」あゆみが周囲を見渡す。

「魔方陣シートと結界石のおかげで、ここに居ると安心できるね」


「そうだね」祐一が頷く。

「じゃあ、ここを山の調査の起点にして、さらに山周辺の調査を進めて行こう」


***今後の方針***


 六名は、シートの上に集まった。

簡単な休憩を取りながら、今後の方針を話し合う。

「さて……」祐一が口を開いた「ここからが問題だ」

地図を広げ、現在地を確認する。赤いマーカーで、拠点の位置を記した。

「山頂まで、あとどれくらいだ?」


「羅盤で見る限り……」星川が確認する。


針の揺れを見ながら、慎重に方角を定める。「あと二十分くらいかな」

「あと少しだ。意外と近いな」峯川が呟いた。


「うん」祐一が頷き「それで、提案だけど……」全員のメンバーの顔を見回す。

「このまま、浄化グッズを埋設して進むか?それとも一気に、頂上を目指すか?どうする?」

 

全員が、考え込む。重要な決断だった。

「僕は……」星川が口を開く「このまま慎重に進む方がいいと思う」

「理由は?」


「浄化グッズを定期的な距離で埋設することで、全体の重い気を清められる。

それと、帰りのルートの安全も確保できると思う」星川が地図を指差した。

「それに風水的に見てエネルギーの流れを整えながら進む方がこれからの調査もしやすくなる。

山頂に登っても、まだ別のエリアも残っているからね」


「なるほど……」確かに、一理ある。

 

 今度は、峯川が手を挙げた。

「俺は、一気に頂上を目指す方がいいと思う」

「どうしてだい」祐一が驚いたように尋ねる。


「だって、考えてみろよ」峯川が答える。

「ゆっくり進んでたら、日が暮れちまう。山の中で夜を迎えるのは、絶対にやばい」

「確かに……」

時刻を確認すると、既に午後一時を過ぎていた。


 小川が頷いた。

「俺も、一気に頂上を目指す方がいいと思う」

「小川君もかい?」

「ああ。理由は峯川と同じだ。時間的な問題もあるし……」小川が周囲を見回す。

「この山、時間が経つほど、気配が重くなってる気がする」


「気のせいじゃないわ」松井あゆみが頷いた。

「私も感じてる。この山は、夕方になると、さらに危険になりそう。特に午後を過ぎてから気配が変わってきているわ」あゆみの言葉には、確信があった。

 

その時、あゆみが別の提案をした。「……あのね」

祐一が静かに尋ねる「どうしたんだい?」

「私は、一旦、この周辺の浄化を行ってから、山を下りた方がいいと思う」

「山を下りる?」祐一が眉をひそめる。

「ええ」あゆみが真剣な表情で続ける。

「山頂には、確かに強い気配がある。でも、私たちだけで対処できるかどうか分からないわ……」

あゆみが言葉を選ぶ。

「今日は、情報収集と周辺の浄化だけにして、山頂の調査は、春香さんや寮さんと一緒に来た時にする方が安全だと思うの」

「……」祐一は、考え込んだ。

 

三つの提案。

慎重に進む。

一気に頂上を目指す。

今日は撤退する。


どれも、一理あった。

どれも、間違っていない。

「佐藤くんは、どう思う?」

祐一が尋ねる。

「えっと……」佐藤が考え込んだ後、「正直、どれも正しいと思います」と答える。


「……そうだね」祐一が頷いた。

「みんなの意見、全部理解できる」

 祐一は、もう一度地図を見つめた。山頂まで、あと少し。

しかし、その先に何が待っているのか分からない。

そして、本当に今日、山頂に到達すべきなのか「……決めよう」祐一が、顔を上げた。


「今日は……」祐一が深呼吸をする。

「拠点周辺の調査と浄化グッズの埋設、それと、この調査拠点の強化を行った後、山を下りよう」

「撤退するのか?」峯川が尋ねる。


「いや、完全な撤退じゃない」祐一が首を横に振る。

「考えてみれば、頂上が必ずしもゴール地点とも限らないからね」

「どういうことだ?」小川が尋ねる。

「この山全体を浄化するには、複数回に分けて作業する必要がありそうだ」祐一が説明する。

「だとしたら、ここまでのルートをある程度整備しておく方が、次回以降の活動がスムーズに行える」


「なるほどね……」星川が納得したように頷いた「確かに、その通りだな」


松井あゆみも賛成した「この拠点を強化しておけば、次回、春香さんたちと来た時にも使えるわ」


「そういうことだ」祐一が微笑んだ。

「無理して山頂を目指すより、確実に足場を固めよう」

「了解」全員が頷いた。

「じゃあ、作業開始だ」


***拠点の強化作業***


 六名は、それぞれの役割分担を決めた。

「じゃあ、俺と佐藤で、カメラを設置する」

峯川が、リュックから小型カメラを取り出した。

黒い、手のひらサイズのカメラ。

「これを木に固定すれば、拠点の監視ができる」

「いいアイデアだね」祐一が頷く。

「次回来た時に、この場所で何が起きたか確認できる」

 峯川と佐藤は、木の幹にカメラを取り付け始めた。

拠点を見渡せる位置に、二台。

一台は拠点全体を、もう一台は山頂方向を映すように。

「これで完璧だ」佐藤が、カメラの角度を調整する。

「バッテリーは?」祐一が尋ねる。


「一週間は持つ」峯川が答えた。

「動体検知機能もあるから、何か動くものがあれば自動で録画される」

 

「この辺りに結界を張り周囲を強化しておこう」小川が、魔力を込めたパワーストーンを並べて

魔法の文字を描いた。「この魔法の文字で周囲に強力な結界を張れるんだ」悪霊は近付けない。


 祐一が、よし、山を下ろう。と合図した。



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