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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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123/139

山根にある空き地の調査

 春香のお寺で写経を行ってからしばらく経った頃、さくらからある相談を持ち掛けられた

***相談***


 春香のお寺で写経を行ってからしばらく経った頃、

つばき壮の裏庭カフェで祐一がお茶を飲んでいた。


「ねえ、祐一くん」さくらが話しかけて来た。「実は、相談があるんだけど……」

「相談?」

「うん。私の同級生の大原由美ちゃんからなんだけどさ」さくらが説明し始める。

「由美ちゃんの家の近くに、空き地があるらしいんだけど……」

「空き地?」

「うん。元々は畑だったみたいなんだけど、今は誰の所有地かも分からなくて」

さくらが続ける。


 「その空き地から、なんとなく不穏な空気……不気味な空気が流れてるらしいの」

「不穏な空気か……」祐一が真剣な表情になる。

「由美ちゃんは、その空き地の近くを通学路として毎日自転車で通ってるんだけど……」

「毎日、通っているんだ……」

「うん。それで、最近すごく不安を感じているって」さくらが心配そうに言う。

「近所の人たちも、その道を通るのが怖いって言ってるらしいの」


「何かあるのかも……」祐一が考え込む。

「それで、祐一くんに問題を解決できないかって……」

「分かった調べてみよう」祐一が頷く「一度、その場所を見に行ってみよう」

「本当!?」

「それから詳しく話を由美さんから聞かせてもらわないと」


***由美の家へ***


翌日、祐一の軽バンが、山の麓へ向かっていた。

「由美ちゃんの家、この辺だ」さくらがカーナビを確認する。

「ああ。小高い山の側だって言ってたね」「うん。あ、あそこ、橋を渡って」さくらが指差す。

車が1台通れる小さな橋を渡って少し進むと住宅が見えた。

家の前にある向かいの空き地に車を停め、玄関に前に行く。


 「こんにちは」さくらがインターフォンを押し話しかける。

少し経ってから玄関から、一人の女子学生が出てきた。大原由美だった。

「さくらちゃん、それに……」

「紹介するね。田中祐一くん。オカルト研究会の会長で、こういう問題に詳しいの」

「初めまして。大原由美です」由美が頭を下げる。「よろしくお願いします」

「初めまして。田中祐一です」祐一も頭を下げ「まず、詳しく状況を聞かせてもらえますか?」


「はい。中へどうぞ」由美が二人を家に招き入れる。

リビングで、由美が説明を始めた。

「その空き地は、ここから徒歩で五分くらいの所にあります」

由美が説明する。「元々は、畑だったみたいなんですけど……」


「今は?」


「誰の所有地かも分からなくなってて、完全に放置されてるんです」由美が続ける「雑草も雑木も伸び放題で……」


「それで、不穏な空気を感じると」


「はい……」由美が不安そうに頷く。

「特に夕方になると、あの辺りの空気が重くなるんです」

「夕方に……」祐一がメモを取る。

「近所の人たちも、同じように感じてるんですか?」

「はい。特にお年寄りの方々が、あそこを通るのは良くないって……」

「なるほど……」祐一が考える。

「それで、その場所の整備とお清めと調査を、僕に依頼したいということですね」

「はい! お願いできますか?」由美が真剣な表情で言う。

「分かりました。引き受けます」祐一が頷いた。

「まずは、現場を見に行こう」


***現場調査***


三人は、空き地へ向かった。


徒歩で五分程進むと、「……あそこです」由美が指差す。

確かに、空き地があった。


「これは……」祐一が驚く。完全にジャングルと化していた。


雑草が人の背丈以上に伸び、雑木が鬱蒼と茂っている。

「ひどい状態だね……」さくらが呟いた。


祐一が、空き地に近づく。「……」確かに重い感じがし、不穏な気配が漂っていた。


「祐一くん……」さくらが不安そうに言う「何か、感じる?」


「うん……」祐一が頷く「確かに、普通じゃない感じだ」祐一が周囲を見渡す。

「まず、この雑草と雑木を伐採しないと、調査もできないな」

「伐採……?」

「うん。これだけ茂ってると、中の状態が分からない」祐一が乗って来た軽バンに戻り道具を取ってくる。


***伐採作業***


 のこぎりと枝切りハサミ、鎌を取り出し、空き地に戻って来た。

「じゃあ、始めようか」祐一が軍手を付けて空き地に入っていった。

「私も手伝います!」由美が声を掛ける。「私も」と、さくらも続いた。


「ありがとう。じゃあ、枝切りハサミで雑草を刈ってくれる?」

「はい」三人で作業を始める。

祐一は、のこぎりで雑木を切り倒していく。ギコギコギコ……

一本。二本。

さくらと由美は、枝切りハサミで枝と雑草を刈っていくのを手伝う。

ザクザクザク……


「うわあ……」さくらが驚く「すごい量だね」

「本当に……そうね」由美も汗を拭く。

一時間。二時間。

「……ふう」祐一が額の汗を拭う。「一旦、休憩しよう」

「うん……」三人は、祐一の軽バンへ戻る。

祐一がクーラーボックスからドリングを取り出す。「お茶を」

「ありがとうございます」由美が受け取る。「元々、畑だったみたいだけど……」


 さくらが空き地を見ながら言う。「本当にジャングルになってるね」

「本当にそうですね……」由美が疲れた様子で答える。「思ってる以上にです……」


「うん。でも、少しは開けてきたよ」祐一が答える。確かに、入口付近はかなり開けていた。

雑木も何本か伐採し、視界が少し良くなっている。

「このペースで行けば、今日中にある程度は目途が付きそうだ」

「本当ですか?」

「うん。午後も頑張ろう」祐一が立ち上がった「休憩は終わり。続けよう」

「はい!」三人は、再び作業に戻った。


***岩の発見***


休憩しながら作業を続けて午後四時を過ぎた。


「……やっと、奥まで見えてきた」祐一が呟く。

空き地の大部分が、開けてきた。切り倒した雑木や刈った雑草は、端に積み上げてある。

「祐一くん」さくらが声をかける。

「奥に、何かある」

「え?」祐一が奥を見ると、大きな塊が見えた。

「行ってみよう」三人が草をかき分けて近づくと数メートルの岩があった。

「岩……?」由美が驚く。

「こんなものが、あったなんて……」

祐一が岩に近づくと、何か文字が、刻まれている様だった。

「『供養……』」祐一が読む。「供養?」

「ああ……これは」祐一が周囲を見渡した。「もしかして、ここは昔……」


その時、風が通り抜け一瞬冷たく感じられたなった。「!」三人が身を固めた。

「祐一くん……」さくらが震える声で言う。

「何か……感じる……」祐一が話す。


この石碑の周りを見渡し「……やっぱり」祐一が呟いた。「この空き地、ただの空き地じゃないかもしれないね」


祐一が由美を見て「大原さん、この土地の歴史、何か知ってますか?」

「え……いえ、私は……」由美が戸惑う。

「でも、母が知ってるかもしれません」「なるほど……」祐一が考え込んだ。


「今日はここまでにしよう」

「え?」

「まず、この土地の事を調べてみる必要がある」祐一が真剣な表情で話す。

「それから、本格的な浄化を行おう」


「分かりました……」三人は、一旦、空き地を後にした。



祐一は振り返り、岩をもう一度見つめた「……何かの封印かもしれない」祐一は心の中で呟いた。


 空き地には、夕日が差し込んでいた。

そして、岩が、静かにそこに佇んでいた。


***由美の母からの話***


 その夜、三人は由美の家に泊まることになった。

夕食の後、リビングでお茶を飲みながら、祐一は由美の母親に例の空き地について尋ねる。


「実は、あの空き地のことで少し調べていまして……昔のことをご存じでしたら、教えていただけますか?」


由美の母親は、少し懐かしそうに目を細めた。「ああ、あそこね。ずいぶん昔だけど……」

「もともとは、おばあさんが一人で畑をやっていたのよ」


「おばあさんが?」さくらが身を乗り出す。


「ええ。とても働き者でね。季節ごとに野菜を作っては、近所にも分けてくれていたわ」

「でも、そのおばあちゃんが亡くなってから、手入れする人がいなくなってしまって……」


由美が静かに言った。「それで、荒れ地になっちゃったんですね……」


「そうなの」母親は頷く。

「娘さんはお嫁に行って、ずっと遠くで暮らしているから、畑もそのまま」

「この辺りも高齢化が進んでいてね。他にも草むらや荒れ地は増えているの。だから、特別珍しいことでもないのよ」


祐一はメモを取りながら、ふと顔を上げた。


「そのおばあさんの事は分かりますか?」


 母親は少し考えてから答える。

「名前は……確か、みよさんだったかしら」

「おじいさんの方は、近くの神社で神主をしていたって聞いたことがあるわ」


「ありがとうございます」祐一は、その内容を丁寧にノートに書き留めた。


***車中泊***


 祐一は、車に戻り車中泊の準備を始めた。さくらは、由美の家に泊まる事になった。


 軽バンの後部座席を倒してシートを広げ、簡易的な寝床を作った。車内灯の明かりの下、スマホとノートパソコンを並べて情報を整理していく。

「供養……封印……」祐一が呟きながら、地域の歴史について検索を続ける。

この地域の古い記録を調べていくと、いくつか気になる情報が見つかった。

「……江戸時代後期に、この辺りで疫病が流行したという記録がある」

祐一がノートに書き込む。

「それと……明治時代に山崩れがあって、何人か亡くなったらしい」

スマホの画面を見つめながら、祐一は考えを巡らせる。

「みよさんのおじいさんが神主だったということは……」

祐一が地域の神社について調べ始める。

「この近くの神社は……山王神社か」

祐一は、翌日その神社を訪ねることを決めた。

そして、もう一つ気になることがあった。

「あの岩の周りだけ、妙に草木の生え方が違っていた……」

祐一が今日撮影した写真を確認する。

確かに、岩の周囲だけ、植生が異なっているように見えた。

「何かのエネルギーが、集中しているのか……それとも、逆に避けているのか……」

その時、ふと車の外が静かすぎることに気づいた。

虫の声も、風の音も、何も聞こえない。

「……」祐一が窓の外を見ると、空き地の方から、かすかな光が見えた気がした。

「気のせい……か?」

祐一は、しばらく窓の外を見つめていたが、やがてカーテンを閉め、作業に戻った。

翌朝、早めに山王神社を訪ねて、神主さんから話を聞こう。

そして、あの岩についてもっと詳しく調べる必要がある。

祐一は、そう決めると、ノートパソコンを閉じた。

車内は、静かな暗闇に包まれていった。


***翌朝・山王神社へ***


翌朝七時。祐一が目を覚ますと、朝日が車内を照らしていた。

「……よし」祐一が身支度を整え、軽バンから降りる。

由美の家の方を見ると、すでに朝の準備をしているようだった。

祐一は、玄関のインターフォンを押す。

「おはようございます」由美が出てきた。

「おはようございます。今から、山王神社に行ってきます」

「山王神社に?」

「ええ。あの岩について、何か分かるかもしれないので」

「分かりました。気をつけて」

祐一は、軽バンで山王神社へ向かった。

ナビによると、ここから車で十分ほどの場所にあるらしい。

山道を登っていくと、森の中に小さな神社が見えてきた。

「……ここか」

祐一は、車を停めて、神社の境内に入る。

古びた石段を上がると、本殿が見えた。

「すみません」祐一が声をかける。

しばらくすると、六十代くらいの神主が出てきた。

「はい、どうされました?」

「初めまして。田中祐一と申します」祐一が頭を下げる。

「実は、この辺りの土地の歴史について、お聞きしたいことがあるのですが……」

神主は、祐一を境内の休憩所に案内した。

「それで、何をお知りになりたいので?」

「実は……」祐一が、昨日発見した岩のことを説明する。

神主は、祐一の話を聞きながら、何度か頷いていた。

「ああ……あの場所ですか」神主が深いため息をついた。

「実は、私もあの岩のことは知っています」

「ご存じなんですか!?」

「ええ……」神主が重い口を開いた。

「あれは、供養塔なんです」


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