表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/139

公園の探索

 祐一とさくは、公園を探索する事にした。

***静寂の理由***


祐一は慎重に木々の間を進んだ。


足元の枯れ葉が、カサリと音を立てる。それ以外は、やはり何も聞こえない。


「……誰か、いますか?」


祐一が声をかける。


返事はない。


木々の向こうに見えたのは——古びた看板だった。

祐一がそれに近づく。看板には、かすれた文字で何か書かれている。


「『森の公園……建設……昭和五十八年……』」


祐一が看板の文字を読み上げる。


昭和五十八年。今から四十年以上前だ。


「こんなに古い公園だったのか……」


祐一が周囲を見回すと、確かに遊具も街灯も古い。だが、不思議なほど手入れされている。


錆びてはいるが、壊れてはいない。


「誰が、管理してるんだ……?」


その時——


「祐一くーん!」さくらの声が響く。


祐一が振り返り、急いで駐車場へ戻る。

「さくらさん、何かあったの?」


「あのね……」さくらが、公園の入口にある掲示板を指差す。


「これ、見て」


祐一が掲示板に近づくとそこには、色褪せた紙が一枚、貼られていた。


『この公園は、地域住民の憩いの場として建設されましたが、平成十二年の土砂崩れにより、村への道が閉鎖されました。現在、この公園へ続く道は、この山道のみとなっております』


祐一が、はっとする。


「土砂崩れ……村への道が……」


「それって……」さくらが不安そうに言う。


「この公園、もう使われてないってこと?」


「いや、待って」祐一が掲示板の下の方を見る。


そこには、新しい紙が貼られていた。


『現在、この公園は○○市により管理されています。月に一度、職員が巡回しております』


「月に一度……」祐一が呟く。


「だから、設備は整ってるけど、誰もいないのか」


さくらが頷く。


「そっか……元々は、村の人たちが使ってた公園なんだね」


「ああ。でも、村への道が使えなくなって……」


祐一が周囲を見渡す。


この静けさの理由が、少しずつ分かってきた。


この公園は、忘れられた場所なのだ。


かつては子供たちの笑い声が響いていたであろう場所。


今は、ただ静寂だけが支配している。


「……なんだか、切ないね」さくらが呟く。


「うん……」祐一も同意する。


二人は、しばらく黙って公園を眺めていた。


その時——


ザアアアッ


突然、風が吹いた。


木々が大きく揺れる。


「!」


さくらが祐一にしがみつく。


しかし——


風が止むと、また静寂が戻った。


「……ただの、風か」


祐一が安堵の息を吐く。

「そろそろ、帰ろうか」


祐一が時計を確認する。午後三時を過ぎていた。


「うん」さくらが頷く。


二人は軽バンに乗り込んだ。


***繰り返す道***


祐一がエンジンをかけ、カーナビを確認する。


「よし、帰路を設定して……」


画面を操作し、つばき壮への経路を表示させる。


「じゃあ、帰ろう」


車は、ゆっくりと動き出した。


来た道を戻る。山道を慎重に下りていく。


「ふう、やっと帰れるね」さくらが安堵の声を上げる。


「今日は色々あったけど、無事に……」


十分ほど走った時だった。


「……あれ?」祐一が眉をひそめる。


「どうしたの?」


「なんか……見覚えのある景色だな」


そして——


「……嘘だろ」


祐一の目の前に、見慣れた光景が広がった。


森の公園の駐車場。


「え……?」


さくらが目を丸くする。


「戻って……きちゃった?」


車は、またあの公園の前に停まった。


祐一が時計を確認する。


「午後四時三十分……」


「でも、私たち、確かに下りてたよね?」


さくらが混乱した様子で言う。


「ああ……」


祐一がカーナビを確認する。


画面には、確かに正しい経路が表示されている。


「おかしい……ナビの指示通りに走ったはずなのに……」


祐一が深呼吸をする。


「もう一度、やってみよう」


「う、うん……」


祐一がもう一度、カーナビを設定し直す。


「今度こそ、帰れるはずだ」


車は再び動き出した。


山道を下る。


木々の間を抜ける。


今度は、さらに慎重に道を確認しながら。


「……大丈夫、だよね?」


さくらが不安そうに尋ねる。


「ああ。今度は、ちゃんと注意して……」


三十分。


一時間。


二人は、確かに山道を下り続けていた。


祐一が時計を見る。


「午後六時……もうすぐ日が暮れる」


「ねえ、祐一くん……」


さくらが震える声で言う。


「あれ……」


前方に見えてきた光景。


またしても——


森の公園の前に行きついた。


「……そんな」


祐一が車を停める。


二人とも、言葉を失った。


同じ場所に、三度目。


「どうして……」


さくらが呟く。


祐一が周囲を見渡す。


日は、どんどん傾いていく。


空が、オレンジ色に染まり始めていた。


「……仕方ない」祐一が静かに言う。


「え?」


「今日は、ここで車中泊をしよう」


「車中泊……?」


さくらが不安そうに祐一を見る。


「ああ。もう日が暮れる。暗い山道を走るのは危険だ」


祐一が冷静に判断する。


「それに……何度やっても、ここに戻ってくる。なら、無理に出ようとしない方がいい」


「でも……」


「大丈夫。車には、毛布も水も食料もある。ポータブル電源もあるから大丈夫」

「それに……」祐一が公園を見渡す。


「この場所が、何か僕たちに伝えたいことがあるのかもしれない」


さくらが、ゆっくりと頷く。


「……分かった。祐一くんが、一緒にいてくれるなら」


「大丈夫、この車の中に居ればね」


祐一が微笑む。


空は、だんだんと暗くなっていく。


森の公園に、夜が訪れようとしていた。


そして——


二人の、長い夜が始まろうとしていた。


***夜の準備***



「じゃあ、車中泊の準備をしようか」


祐一が後部座席を倒し始める。


軽バンの利点は、こういう時に発揮される。


座席をフラットにすると、ちょうど二人が横になれるスペースができた。


「まず、照明から」


祐一がLEDランタンを取り出す。


一つ、二つ、三つ。


車内の天井や側面のフックに、ランタンを吊るしていく。


「こうすると、全体が明るくなるから」


柔らかい光が、車内を優しく照らし始める。


「わあ……」さくらが少し安心した様子を見せる。


「次は、カーテンと目隠し」祐一が窓にカーテンを引いていく。


運転席、助手席、後部座席の窓。


すべてをカーテンと目隠しで覆う。


「これで、外から見えなくなる」


「うん……」


さくらが頷く。


外の暗闇が、カーテンで遮られた。


車内だけが、明るい空間になった。


「じゃあ、寝床を作ろう」


祐一がマットを取り出す。


フラットにした後部座席に、マットを敷いていく。


「これで、固さも和らぐ」


そして、寝袋を二つ取り出す。


「祐一くん、本当に色々準備してるんだね」


さくらが感心したように言う。

「まあ、万が一のためにね」祐一が苦笑する。


「本当に使うとは思わなかったけど」


寝袋を並べて置く。


車内は、まるで小さなキャンプ場のようになった。


「音楽も、かけようか」


祐一がモバイルバッテリーを取り出し、MP3プレーヤーを接続する。


スイッチを入れると、静かな音楽が流れ始めた。


「……静かすぎるのも、落ち着かないからね」


穏やかなメロディが、車内に響く。


「あ、そうだ」


祐一がスマホを取り出す。


「一応、寮さんに連絡を……」


画面を確認する。「……あれ?」


祐一が眉をひそめる。


「どうしたの?」


「スマホ……繋がらない」


画面には「圏外」の文字。


「え……」


さくらも自分のスマホを確認する。


「私も……圏外になってる」


二人は顔を見合わせる。


「この場所、電波が届かないのか……」


祐一が呟く。


「じゃあ、連絡できないの?」


「ああ……仕方ない。明日、ここを出られたら連絡しよう」


祐一がスマホをしまう。


ポータブル電源を確認する。


バッテリー残量は、まだ十分にある。


「電源は大丈夫。これなら一晩は持つ」


「夕食を作ろう。お腹も空いてきたからね」


「うん……」


祐一がペットボトルの水を電気ポットに入れお湯を沸かし、鍋に入れてレトルトカレーを温め始める。


「こういう時のために、ちゃんとしたレトルト食品も積んでるんだ」


「すごいね」


やがて、カレーが温まった。


二人は車内で、静かに夕食を取る。


食事を終えると、祐一は荷物の中からクッキーを取り出した。


「甘いものも、あるよ」バタークッキーの香りが広がる。


「美味しそうね」さくらが目を輝かせる。


「コーヒーも淹れようか」祐一が再び電気ポットでお湯を沸かす。


インスタントコーヒーを二つのカップに入れ、お湯を注ぐ。


「はい、どうぞ」


「ありがとう」さくらがカップを受け取った。


車内には、静かに音楽が流れている。


祐一は、バッグの中から文庫本を何冊か取り出し

「好きなのがあれば読むと、気晴らしになるし」と、さくらに渡した。


 「ありがとう、スマホが使えないから読書もいいわね」と、一冊の本を選ぶ。


ランタンの光の下、文庫本を二人はそれぞれ本を開いた。


時折、ページをめくる音だけが響く。


「……ねえ、祐一くん」


しばらくして、さくらが本を閉じて言う。


「なんだか、落ち着いてきた」


「読書に集中すると気が紛れるからね」祐一も本を置く。



「うん……」さくらが小さく笑う。


「スマホが無くても、意外と大丈夫なのかも」

二人は、温かいコーヒーを飲みながら、穏やかな時間を過ごした。


窓の外は、完全に暗くなっていた。


「そろそろ、寝る準備をしようか」


「うん」


二人は寝袋に入る準備を始めた。


「あ、でもその前に……」


祐一が立ち上がる。


「トイレ、大丈夫? 公園のトイレ、使えるはずだから」


「あ……うん、行っておくね」


さくらが頷く。


「じゃあ、一緒に行こう。一人じゃ危ないし」


祐一がLEDランタンを一つ持って、車を降りる。


さくらも後に続く。


公園の街灯が、薄暗い光を放っている。


二人でトイレへ向かう。


「ちゃんと、水も出るね」


「ああ。管理されてるだけあるね」


用を済ませ、車に戻る。


「さて、今度こそ寝よう」


二人は寝袋に入った。


ランタンを一つだけ残して、他は消す。


「おやすみ、祐一くん」


「おやすみ、さくらさん」


車内に、静寂が訪れる。


MP3プレーヤーの音楽も、いつの間にか止まっていた。


祐一は、暗闇の中で目を閉じる。


明日、また帰る道を試してみよう。


きっと、今度は帰れるはずだ。


そう思いながら——


祐一は、ゆっくりと眠りについた。


***夜明けと探索***


翌朝。


祐一が目を覚ましたのは、鳥の声だった。


「……ん?」


目を開ける。


車内は、朝の光に包まれていた。


カーテンの隙間から、優しい光が差し込んでいる。


「鳥の声……?」


祐一が身を起こす。


隣で、さくらもゆっくりと目を覚ます。


「おはよう、祐一くん……」


「おはよう。よく眠れた?」


「うん……意外と」


さくらが小さく笑う。


「外、聞こえる?」


「ああ……」


二人は、耳を澄ます。


鳥の声。風の音。木々の葉が揺れる音。


昨日の夜とは、まったく違う。


「……生き返ったみたい」


さくらが呟く。


「この公園」


祐一がカーテンを開ける。


朝日が、公園を明るく照らしている。


緑が、鮮やかに輝いている。


「すごい……」


さくらが感嘆の声を上げる。


「昨日とは、全然違う」


「ああ……」祐一も頷く。


二人は車を降りた。


朝の空気が、清々しい。


公園全体が、生命力に満ちているように感じられた。


「朝ご飯、食べようか」


祐一が提案する。


「うん」


再び電気ポットでお湯を沸かし、インスタントのスープとパンを食べる。


「さて……」


祐一が周囲を見渡す。


「明るくなったし、この公園をもう少し探索してみようか」


「え、帰らないの?」


「一応、探索してから帰ろう。昨日見つけた掲示板の情報だけじゃ、まだ分からないことがある」


祐一が真剣な表情で言う。


「分かった。じゃあ、一緒に見て回ろう」


二人は公園の奥へと歩き出した。


遊具のある広場を抜け、さらに奥へ。


木々の間を進んでいく。


「こっちに、道がある」


祐一が指差す。


細い山道が、さらに奥へと続いている。


「行ってみよう」


五分ほど歩いただろうか。


突然、視界が開けた。


「……あれ」


そこには、小さな神社があった。


「神社……?」


さくらが驚く。


鳥居は古びているが、しっかりと立っている。


石段を登ると、小さな社殿があった。


「公園の奥に、神社があったんだ……」


祐一が呟く。


社殿の前には、小さな賽銭箱。


そして、社殿の横には、古びた石碑が立っていた。


「何か、書いてある」


祐一が石碑に近づく。


かすれた文字を、注意深く読む。


「『村の守り神……子供たちの……安全を……』」


「村の守り神……」


さくらが繰り返す。


「そうか……」


祐一が理解する。


「この神社が、もともとここにあったんだ」


「それで、公園が作られたのかな?」


「多分……村の人たちが、この神社の近くに、子供たちが遊べる場所を作ったんだろう」


祐一が周囲を見渡す。


「でも、土砂崩れで村への道が閉ざされて……」


「それで、誰も来なくなった……」


二人は、しばらく黙っていた。


風が、優しく吹く。


木々が、ざわざわと揺れる。


「……お詣りしよう」


祐一が提案する。


「うん」


二人は社殿の前に立ち、手を合わせる。


祐一は心の中で呟いた。


『僕たちは、この場所を忘れません。また、来ます』


さくらも、同じように祈っていた。


風が、また吹いた。


今度は、とても温かい風だった。


まるで、「ありがとう」と言われているような——


そんな、優しい風だった。


***再びのループ***


神社から公園へ戻る。


「さて、そろそろ帰ろう」祐一が時計を確認する。


午前九時。


「うん」


二人は車に乗り込んだ。


「今度こそ、帰れるといいね」


さくらが言う。


「ああ。きっと大丈夫だ」祐一がエンジンをかける。


カーナビを設定し、つばき壮への経路を表示させる。


「じゃあ、出発しよう」


車は、ゆっくりと動き出した。


山道を下りていく。


木々の間を抜ける。


「……今度は、大丈夫そうだね」


さくらが安堵の声を上げる。


十分。


二十分。


順調に進んでいる。


「よし、もうすぐ舗装道路に……」


その時——


「……え?」


前方の景色が、見覚えのあるものに変わった。


「嘘……」


さくらが呟く。


そこには、また、森の公園の駐車場があった。


「……またか」


祐一が、深いため息をつく。


時計を見る。


午前十時。


「どうして……」さくらが困惑する。


「分からない……」祐一がハンドルを握りしめる。


「でも、まだ諦めない。もう一度、試してみよう」


祐一が再びカーナビを設定する。


「今度は、違うルートで」


車は、また動き出した。


しかし、一時間後。


午前十一時。


「……また、戻ってきた」


三度目の、森の公園。


祐一は、車を停めた。


「……どうなってるんだ」


さくらが不安そうに祐一を見る。


「祐一くん……」


「大丈夫」


祐一が、さくらの手を握る。


「きっと、何か理由があるはずだ」


祐一が車を降りる。


公園を見渡す。


朝の清々しさは、まだ残っている。


「……もしかして」


祐一が呟く。


「僕たちは、まだここでやるべきことがあるのかもしれない」


「やるべきこと……?」


「ああ。この公園が、何か僕たちに伝えたいことがあるんだ」


祐一が、さっき見つけた神社の方を見る。


「もう一度、あの神社に行ってみよう」


「うん」


二人は、再び公園の奥へと向かった。


山道を歩き、神社へ。


そして社殿の前に立った時。


祐一は、何かに気づいた。


「……待って」


祐一が社殿の横を見る。


「昨日、気づかなかった……」


そこには、もう一つ、小さな石碑があった。


草に隠れて、見えなかったのだ。


 購読、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ