青空神社への小旅行
祐一は、つばき壮の裏庭カフェでさくらと話していた。
つばき壮の裏庭カフェで放課後祐一とさくらはお茶を飲んでいた。
穏やかな空気が二人のテーブルを包み込んでいた。
「ねえ、祐一くん」 さくらが、ふと思いついたように話す。
「神社のお詣りで、どこか気軽に行ける所はないかな?」
「神社?」 祐一が顔を上げる。
「うん。最近、色々あったからちょっと、お詣りして気分転換したいなって」 さくらが笑顔で話す。
「つばき壮の近くにも神社はあるけど……ドライブで行ける所がいいな。祐一くんの車に乗って行ける所」
「ドライブか」
祐一がスマホを取り出し、地図アプリを開く。 「ちょっと待って、調べてみる」
数分後。
「あった。車で二十分ほど先に、青空神社っていうのがあるみたいだ」
「青空神社?」 「ああ。小さめの神社みたいだけど、景色が良いって評判らしいよ」 祐一が画面を見せる。 「わあ、素敵! 行こう、行こう!」 さくらが目を輝かせた。
「じゃあ、次の休日に行ってみようか」 祐一が話す
「やった、楽しみにしている」 さくらが笑顔で答える。
***青空神社へ***
休日の午前10時に祐一の軽バンが、つばき壮を出発した。
助手席のさくらが、窓の外を楽しそうに眺めている。
「いい天気ね」
「ああ、ドライブ日和だね」 車内には、
FMトランスミッター経由のMP3プレイヤーから軽快な音楽が流れている。
さくらが車内を色々見渡しながら「祐一くんの車、やっぱり快適だね」と話す。
「まあ、色々工夫してるからね」 祐一が答えた。
「後ろには、ポータブル電源もあるし」 「ポータブル電源?」 「電気ポットに繋いでお湯を沸かしたり、ホットプレートに繋いで簡単な調理もできるんだ」 「へえ、すごい」 さくらが後部座席を覗き込む。
「電源があるから色々な小型家電をつなぐことが出来るんだ」と、祐一が補足する。
さくらは感心した様子で「本当に移動する部屋みたい」と答えた。
二人の会話が、穏やかに続く。 街を抜け、郊外へ。緑が多くなってくる。 「もうすぐ着くよ」 祐一がナビを確認する。 青空神社 青空神社は、小高い丘の上にあった。 駐車場に車を停め、二人は参道を歩く。 「わあ……」 さくらが感嘆の声を上げる。 石段を登ると、視界が開ける。青い空が、どこまでも広がっている。 「青空神社って、この景色から名付けられたのかな」 祐一が呟く。
「きっとそうだよ。すごく、開放的」 境内は静かで、参拝客も数人しかいない。 本殿は小さいが、丁寧に手入れされている様子だった。 「お詣りしよう」 二人は本殿の前に立ち、手を合わせる。
祐一は、オカルト研究会の活動が順調に進むように。 さくらは、大切な人たちが無事でいられるように。 それぞれの願いを、静かに祈った。 参拝を終え、境内を散策する。
「おみくじ、引いてみる?」 さくらが提案する。 「いいね」 二人でおみくじを引く。 「私、中吉だった!」 「僕は、小吉」 「何て書いてある?」 「『焦らず、一歩ずつ進め』だって」 祐一が苦笑する。
「なんか、寮さんに言われたことと同じだな」
「ふふ、神様も同じこと言ってるんだね」 さくらが笑う。
御朱印をいただき、境内を一周する。 「良い神社だったね」 「ああ。また来たいな」 二人は、清々しい気持ちで神社を後にした。 帰路 ― 予想外の道 青空神社を出て、車に戻った。
「さて、帰ろうか」 祐一がエンジンをかけようとした時、さくらが話す。 「ねえ、祐一くん。まだ時間あるし、他の所にも行きたいな」
「他の所?」
「うん。せっかくだし、もう少しドライブしたい」 さくらが地図アプリを見る。
「あ、この辺に公園があるみたい。『森の公園』って」
「森の公園?」 祐一がナビを確認する。 「本当だ。ここから十分くらいみたいだね」 「行ってみよう!」 「分かった」 祐一がナビに目的地を設定し、車を出す。 しばらくは順調だった。
***森の公園へ...***
しかし—— 「あれ……」 祐一が眉をひそめる。
「どうしたの?」
「なんか、道が細くなってきた」 確かに、舗装された道路から、だんだんと山道へ入っていく。 「カーナビは、こっちって言ってるんだけど……」
「大丈夫?」
「多分……」 車は山の中へ、どんどん進んでいく。
木々が鬱蒼と茂り、周囲が暗くなってくる。
「祐一くん……」 さくらが不安そうに言う。 「本当に、この道で合ってる?」
「ナビの指示に従ってるんだけど……」 十分、十五分。 道は、ますます狭く、険しくなっていく。
「おかしいな……」 そして—— 突然、視界が開けた。 山奥の公園 「……着いた?」 そこには、確かに公園があった。 しかし、予想していたものとは、まったく違った。 広場、ベンチ、遊具。そして、トイレと水道もある。街灯も設置されている。 設備は整っている。
だが「誰も、いない……」 さくらが呟く。
公園には、人の気配がまったくなかった。 祐一の軽バンだけが停まっていた。
「こんな山の奥に、なんで公園が……」 祐一が車を降りる。
さくらも、恐る恐る降りてくる。 周囲を見回す。 確かに、公園の設備は整っている。トイレも水道もある。街灯もちゃんと立っていた。
「でも静か過ぎるね……」
鳥の声も、虫の音も、聞こえない。
風が、木々を揺らす音だけが不気味に響く。
「祐一くん……」 さくらが祐一の腕をつかむ。
「なんだか、不気味な感じがする……」
「ああ……」 祐一も同意する。
この場所には、何か違和感が感じられた。 明確な霊気ではない。でも、確かに、何かがおかしい。 祐一が時計を確認する。 「午後二時か……」 「どうする?」 「一旦、ここで休憩を兼ねて、食事を取ろうか」 祐一が提案する。
「え、ここで?」
「ああ。昼ご飯もまだだし、お腹も空いた。それに……」 祐一が周囲を見渡す。
「この場所のこと、少し調べたい」
「調べる……?」
「うん。なんでこんな山奥に公園があるのか。しかも、誰もいない」 祐一が真剣な表情に話す。
「何か、理由があるはずだ」 さくらが頷く。 「分かった。じゃあ、お弁当、買ってきてないけど……」 「大丈夫。非常食がある」 祐一が軽バンの後部を開ける。 「いつも、車に積んでるんだ」 レトルト食品、缶詰、カップ麺。それに、ポータブル電源と電気ポット。
「じゃあ、ここで食事にしよう」
周囲は、相変わらず静かだった。
不気味なほど、静かだった。
祐一がポータブル電源に湯沸かしポットを繋ぎ、お湯を沸かし始める。
「この公園……何か、あると思う?」 さくらが小声で尋ねる。
「分からない。でも……気になるんだ」 祐一が周囲を見回す。
お湯が沸き、カップ麺を作る。
ベンチに二人は座り静かに食事を始めた。風が吹く。 木々が揺れる。
「……ねえ、祐一くん」 さくらが震える声で言う。
「あそこ……」 さくらが指差す先。 公園の奥、木々の向こう。 何かが、動いた気がした。 祐一が立ち上がる。
「さくらさん、車の中に戻って」
「え、でも……」
「大丈夫。ちょっと、確認してくるだけだから」 祐一が、ゆっくりと歩き出す。
この公園に、何があるのか。 そして、なぜ自分たちは、ここへ導かれたのか。
祐一は、その答えを見つけなければならない。 静かな、山奥の公園。 そこで、祐一とさくらの、新たな調査が始まろうとしていた。
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