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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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111/139

異変の始まりと終焉へ

祐一たちは廃村からの一時的な退避を行い、村の外にある小屋で異変を見守る事にしていた。


***異変に備えて***


 寮たちが小屋で休んでいる頃、祐一は軽バンの中で眠っていた。ハードな作業の疲れもあり、祐一は深い眠りに落ちていた。


午後7時過ぎ、小川が祐一を起こしに来た。


「田中部長、そろそろ起きてください」車のドアを軽く叩きながら声を掛ける。


祐一が音に気付いて目を覚ました。ドアを開けて尋ねる。


「何か起きたのか?」


「今のところ何も起きていません。ただ、そろそろ深夜に備えた準備を」


小川が小屋の方を指差す。


休んでいた新入生たちも目を覚まし、深夜に備え始めていた。


「部長、モニターはどこに設置しますか?」


「小屋の中で一番奥の場所に」祐一が指示を出す。


 重いモニター機材が、

慎重に小屋の中へ運び込まれていく。小屋に入ると寮たちも配線やカメラの接続確認を進めていた。


***モニタリング体制の確立***


小屋の奥には、複数のモニターが並べられていた。


神社周辺、村の中心部、拠点の廃屋、村の出入り口——各ポイントにカメラが設置され、映像がリアルタイムでモニターに映し出されている。


「映像、すべて正常だ」


寮が確認する。


「音声も拾えています」


國府田が続けた。


橘美紀は、結界の状態を示す専用の装置を見つめていた。


「結界は……まだ保たれているわ。ただし、神社周辺の結界が、何か異変の数値を示しています」


祐一はモニターを見つめた。静まり返った村。暗闇の中に、設置されたわずかな明かりだけが浮かんでいた。


「今のところ、何も起きていない」


だが、その静けさが逆に不気味さを増していた。


午後9時、バンで仮眠を取っていた峯川が小屋の中に入ってきた。


「廃村に異常はないか?」


祐一がマットで横になりながら答える。


「今のところ、異常は起きてないみたいだ」


***五月五日——深夜零時***


時間はゆっくりと過ぎていった。


小屋の中では、交代で見張りが続けられている。新入生の何人かは、疲れて寝袋の中で眠っていた。


祐一、寮、小川、星川、橘美紀——主要メンバーは、モニターの前で待機していた。


時計の針が、深夜零時を指そうとしている。


「……もうすぐだ」


寮が呟く。


11時59分。


全員が息を呑んで時計を見つめた。


そして——


深夜零時を過ぎた、その瞬間。


***異変——地獄の門が開く***


モニターの映像が、一瞬、激しくノイズに包まれた。


そして——


映し出された光景に、全員が言葉を失った。


廃村全体が、異空間に包み込まれていった。不気味な光が村の中心から外へ向かって広がっていく。紫と黒が混ざり合ったような、この世のものとは思えない光。


それと共に——


亡者や悪霊が、村一帯を覆い始めた。


人の形をした影。だが、それは生者ではない。透けた身体、虚ろな目、歪んだ表情——


「バカな……」寮が驚愕の声を上げた。


「そんなことって……」橘美紀も言葉を失っている。


モニターに映る村は、もはや現実の光景ではなかった。


そして——


数分と持たずに、すべての結界が完全に消滅した。


神社周辺に張られた結界、村の出入り口の結界、拠点に残した結界。すべてが、まるで紙が燃えるように崩れ去っていった。


「結界が……全部、消えた」星川が青ざめた顔で呟いた。


さらに——


悪魔が次々と現れ始めた。


人型ではない。巨大な翼を持つもの、無数の目を持つもの、炎をまとったもの。それらが村の中を徘徊し始める。「これは……古代悪魔……」寮が震える声で呟いた。


「古代悪魔……?」祐一が聞き返す。


だが、寮は答えられなかった。ただ、モニターを凝視している。


「全員、小屋に避難だ!」祐一が大声で指示を出した。


外で呆然と立ち尽くしていた他のメンバーも、廃村の辺りが異空間の光に包まれる光景を目の当たりにしていた。


峯川が震える声で言う「あれ……本当に起きてるのか……?」


「夢じゃないよな……?」新入生の一人が半泣きで呟く。


村はまるで地獄世界のようだった。世界の終末のような光景だった。炎が上がり、亡者が蠢き、悪魔が咆哮する。それが、たった数分の間に、静かだった村を飲み込んでしまった。


***最後の防衛線***


「ヤバイ……」寮が小屋の中で呟いた。


「古代悪魔には、僕たちの霊術はほぼ無力だ」


その言葉に、全員が息を呑んだ。


「無力って……」峯川が信じられないという表情で聞き返す。


「じゃあ、どうすればいいんだ!?」


「どうします? 寮さん……」橘美紀が冷静さを保ちながら尋ねた。


寮は一瞬だけ目を閉じた。そして、決意を固めたように目を開く。


「美紀、小屋の周囲に結界を」


「分かりました」橘美紀は即座に動き出した。


「それと、國府田」寮が続ける。


「魔法の書を持ってきてくれ」


「魔法の書……?」


國府田が一瞬だけ戸惑う「分かりました!」


國府田は寮のカバンから古代魔法の書を取り出した。分厚い、革装丁の古書。表紙には見慣れない文字が刻まれている。


「寮さん、これです」


寮が魔法の書を受け取ると、慎重にページをめくり始めた。古い紙の匂いがわずかに漂う。


「これから、最後の言葉を唱える……」寮は深く息を吸った。


「詠唱が終わるまで、全員、踏ん張ってくれ」


その言葉に、祐一が頷いた。「分かりました。みんな、結界の維持に集中するんだ!」


小川、星川、松井、広末——全員がそれぞれの持ち場につく。


橘美紀は小屋の外で陰陽の印を結んでいた。


「青龍、白虎、朱雀、玄武——」


美紀の声が夜の空気を震わせる。

「この地に結界を張り、邪悪なるものを遮断せん!」


小屋の周囲に、淡い光の壁が現れ始めた。


だが——


村から放たれる異空間の光は、さらに強まっている。まるで、こちらへ向かって広がってくるかのように。


「早く……早く詠唱を!」國府田が焦りの声を上げる。


寮は魔法の書を両手で掲げた。


そして——


低く、しかし明瞭な声で、詠唱を始めた。


その間——モニターを見ていた國府田が声を上げた。


「まずいわ……!」


画面には、村の外れから飛び出してくる影が映っていた。


下級悪魔だ。

人間ほどの大きさで、コウモリのような翼を持ち、鋭い爪を備えた異形の存在。それが小屋の方へ向かって飛んできている。


「数が……増えてる!」峯川がモニターを指差す。


一体、二体、三体——次々と、下級悪魔が村から飛び出してくる。


***迎撃開始***


「美紀さん!」國府田が叫んだ。


「分かってます!」橘美紀は小屋の外へ飛び出した。祐一と小川も、すぐに後へ続いた。


「魔法陣の中に入って!」美紀が指示を出す。


地面にあらかじめ敷かれていた六芒星の魔法陣シート——あらかじめ準備していた結界の中心だ。


祐一と小川はすぐに魔法陣の中へ入り、迎撃態勢を整えた。


空を見上げる。


下級悪魔の一体が、小屋に気づいて接近してくる。不気味な羽ばたき音。鋭い牙を剥き出しにした顔。


距離は、あと50メートル。


「青龍召喚!」橘美紀が力強く唱えた。


瞬間——


空気が激しく震え、青白い光が爆発的に広がった。東方を守護する霊獣、青龍が現れた。長大な身体、鋭い爪、威厳ある顔つき。龍の咆哮が夜の空気を震わせる。


青龍は一瞬で下級悪魔へ突進した。


 爪が一閃すると、

下級悪魔は光に包まれて消滅した。跡形もなく。


「やりました! 美紀さん!」祐一が声を掛ける。


だが、喜びの声も束の間。さらに、次々と下級悪魔が現れ始めた。


5体、10体、15体と青龍は次々と下級悪魔を浄化していく。だが、倒しても倒しても次が現れる。


「キリがない……!」


 小川が焦りの声を上げる。

次第に数を増していく悪魔たち。青龍だけでは抑えきれなくなりつつあった。


「俺も行く!」小川がワンドを構えた。


「炎よ、邪悪なるものを焼き払え、ファイアボルト!」


炎の弾丸が下級悪魔へ向かって放たれた。


命中し、悪魔の身体が炎に包まれていった。


だが・・・・「効いていない……?」


下級悪魔は軽いダメージを受けただけで、まだ飛んでいる。倒すことはできなかった。


「くそっ……魔法が通じない!」小川が歯噛みする。


「部長、春香さんの札を!」


祐一が懐から札を取り出した。春香が作った特別なお札だ。


「えいっ!」祐一が札を投げた。


札は空中で光を放ち——


強力な光に包まれ、下級悪魔が次々と消滅した。青龍の浄化と同じように、跡形もなく。


「効いた……!」だが、祐一の顔には安堵の色はなかった。


「でも……これまであった悪霊とは桁違いだ」


悪霊なら、もっと簡単に浄化できた。だが、下級悪魔は明らかに格が違う。強力な札でなければ、倒すことすらできない。


***総力戦***


10分が過ぎていた。戦いは激しさを増していた。


「俺たちも加勢する!」

峯川が小屋から飛び出してきた。松井あゆみと星川も続く。


「浄化スプレーを!」


松井が大きなスプレーボトルを構え、接近してくる下級悪魔に向かって霧状の浄化液を撒いた。


「ギャアアアッ!」


下級悪魔が苦しげに叫び、一時的に後退する。


「効いてる! でも、完全には倒せない!」


星川が魔法を唱える。


「風よ、邪なるものを吹き払え——ウィンドブラスト!」

強風が巻き起こり、数体の下級悪魔を吹き飛ばした。だが、すぐに体勢を立て直して再び襲いかかってくる。


「時間稼ぎにはなる! このまま続けるんだ!」峯川が叫ぶ。


祐一も次々と札を投げ続けた。


「札は……あと何枚残っている?」


小川が尋ねる。


「15枚……いや、10枚だ」祐一が答えた。


「このままじゃ足りない……絶対に足りない……!」


 モニターには、まだ無数の下級悪魔が映っていた。

そして、村の中心部には——さらに巨大な影が蠢いていた。


時間は刻々と過ぎていった。


祐一の札も残り5枚、3枚、2枚——


「最後の札だ!」祐一が叫び、最後の札を投げた。


光が爆発し、複数の下級悪魔が消滅する。


だが、、、「まだ来る……!」


小川が絶望的な声を上げる。


祐一も、もはや手段がなくなった。魔法を唱えるしかない。


「氷よ、邪悪なるものを封じ込めろ——アイスバインド!」


氷の鎖が下級悪魔を縛り付ける。動きは止まった——だが、数秒後には氷を破壊して再び襲いかかってくる。


「一時的に倒れても……すぐに起き上がる……!」峯川が悲鳴に近い声を上げた。


浄化スプレーも底を尽きかけている。

青龍も、次第に光が弱まり始めていた。


「もう……限界か……」祐一が膝をついた。


全員が疲労困憊していた。


魔力も、体力も、すべてが尽きようとしていた。


そして、村の中心部から、巨大な影が動き始めた。


モニターに映るその姿は、人型ではない。巨大な翼、無数の触手、燃え盛る炎。


古代悪魔の上位種が、ついに姿を現そうとしていた。


「あれが……来たら……」


橘美紀が震える声で呟く。


「もう、終わりだ……」


全員が絶望の色を浮かべた。


その時、


***聖なる光***


小屋の中から、強力な霊光が広がり始めた。


「これは……!」


橘美紀が驚きの声を上げる。


光は小屋全体を包み込み、さらに外へと広がっていく。


淡い白色の光——


それは、神聖で、圧倒的な力を秘めていた。


「寮さんの詠唱が……完成したわ!」國府田が叫んだ。


光はどんどん広がっていく。


廃村全体を包み込み——


地域全体を包み込み——


すべてが、強力な光に包まれた。


「ギャアアアアアアッ!」


下級悪魔たちが断末魔の叫びを上げる。


光に触れた瞬間、次々と消滅していく。


村をさまよっていた亡者たちも——


異空間を作り出していた邪悪な力も——


すべてが浄化されていく。


そして、村の中心部で姿を現そうとしていた巨大な悪魔が完全な姿を現す前に光に包まれ、消滅していった。


「ギギギ……ガアアアアアッ!」


最後の咆哮を上げ跡形もなく消え去った。


光は数分間、村全体を照らし続けた。


そしてゆっくりと収束していった。


辺りは、再び静寂に包まれた。


だが、先ほどまでの不気味な静けさとは違う。


穏やかで、清浄な静けさだった。


「終わった……?」祐一が呟く。


モニターを確認する。


村の映像には異空間の光は消えていた。


悪魔の姿も、亡者の姿も、何も映っていない。


ただ、静かな廃村が、そこにあった。


「やった……やったんだ……!」


小川が叫んだ。


「寮さんが……やってくれた……!」


全員が、小屋の中へ駆け込んだ。


そこには魔法の書を手にしたまま、倒れ込んでいる寮の姿があった。


「寮さん!」橘美紀が駆け寄る。


「大丈夫……ただ、魔力を使い果たしただけだ……」


寮が弱々しく微笑む。


「詠唱は……成功した……」その言葉に、全員が安堵の表情を浮かべた。


祐一は、小屋の外を見つめた。


夜空には、星が輝いている。


廃村には、もう何の異変も起きていなかった。


長い、長い夜がようやく終わろうとしていた。

購読、ありがとうございました。

なんとか、廃村の調査編の山場を越える事が出来ました^^

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