廃村調査記録 ― 三日目
引き続き、オカルト研究会新入生たちと、寮は廃村での活動を続けていた。
*** 朝の集合***
三日目の朝、澄んだ空気の中、メンバーたちが中庭に集まった。前夜はゆっくりと休むことができ、全員の表情に疲れは見えない。
祐一が今日の予定を説明する。
「今日は、第二拠点の整備を始める。まず照明器具の追加設置を行っていこう」
ゆっくりとメンバーを見渡した後、続けた。
「その後、午後から村の周辺調査を開始する。以上だ」
峯川が補足する。
「照明班と窓補修班に分かれて作業しよう。新入生たちも、だいぶ作業に慣れてきたからな」
新入生たちが、意欲的に頷いた。
*** 午前の作業 ― 第二拠点の整備***
第一班は、祐一、峯川、田村、岡村、佐藤で照明設置を担当する。
「第二拠点の玄関の外と中にLEDランタンを設置する」
峯川が指示を出すと、田村が確認した。
「廊下と居間、風呂場にも設置します」
「ソーラーパネルの設置とポータブル電源に繋ぐことも忘れないでおこう」
佐藤が続ける。
祐一が軽トラックの荷台から脚立を持ってきて、居間の天井を指差しながら言った。
「ここは、天井のフックに吊るす形で設置しよう」
「固定はしっかりとね」
岡村と佐藤が協力して、ランタンを吊り下げていく。
「これで、夜の作業もできるようになりますね」
佐藤が話すと、祐一が答えた。
「ああ、この部屋で報告書を書いたり、ミーティングをしたりするのにも便利だ」
*** 窓補修班***
一方、第二班は松井あゆみ、宮田、中村真理、林、高橋で窓の補修を始めていた。
「この窓枠、かなり緩んでいるわね」
宮田が確認すると、松井あゆみが指示を出す。
「釘を打ち直して、隙間にはコーキング材を詰めましょう」
林と中村真理が協力して、窓枠を固定していく。
「少しずつ、家が生き返ってくる感じだ」
林が楽しそうに話すと、松井あゆみが微笑んだ。
「そうね。これで、窓の戸締りも隙間風も防げるわ。人の手が入れば、建物は応えてくれるのよ」
高橋が資材を運び込み、窓を順番に補修していく。作業の音が、静かな廃村に響いていた。
***小川の不安***
その頃、小川は母屋で修繕資材の整理を行っていた。
「次の補給で運んでくる資材のリストを作らないとな……」
床板、補強材、塗料、防水シート。必要なものをノートに書き出していく。
小川はペンを止めて、少し考え込んだ。昨夜、気になって占ったタロットの結果が頭をよぎる。
「悪魔のカード……逆位置とはいえ、気になるな」
山小屋で悪霊に襲われた時のことを思い出す。あの時の恐怖、そして何とか撃退できた時の安堵。あれ以来、小川は調査に出る前には必ずタロットで占うようにしていた。
今回の占いでは「悪魔」のカードが出た。それも、襲撃や脅威を示唆する配置で。
「なんだか胸騒ぎがするんだよな……」
小川は決心して、ノートに書き加えた。
「追加で浄化スプレー、魔方陣シート、浄化グッズ、アミュレット、魔よけのお香……念のため、多めに用意しておこう。それと由香さんにも連絡を」
窓の外を見ると、作業をする仲間たちの姿が見えた。(何事もなければいい。でも、山小屋の教訓がある。備えあれば憂いなし、だ。)
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昼前には、オカルト研究会のメンバーの手により、照明器具の設置と窓の補修が完了した。
「よし、これで第二拠点の環境がかなり良くなったぜ」
峯川が満足そうに話すと、祐一が応えた。
「これは、一年生のメンバーのおかげだ。ありがとう」
メンバー全員、達成感を味わっていた。
***同時刻 ― 村の中心部の調査***
同じ頃、寮、國府田、橘の三人は、村の中心部をさらに詳しく調査していた。前回訪れた公民館と小学校の周辺を、より丁寧に記録していく。
朽ちた木材の湿った匂い、足元で踏みしめる雑草の感触。かつては賑わっていたであろう場所が、今は静寂に包まれている。
「この辺りが、村の商店街だったようだな」
寮が古い看板を見上げる。
「よろず雑貨店、理髪店……生活に必要なものは一通り揃っていたようね」
國府田がメモを取った。
***よろず雑貨店での発見***
橘美紀が、よろず雑貨店に置かれている帳簿を発見する。
「中に、古い帳簿が残っているわ」
三人で帳簿を確認すると、平成十六年までの記録が残されていた。
「平成十六年……廃村の前年だ」
寮が呟く。
「この年まで、お店は営業していたんですね」
國府田が感慨深げに言うと、橘がページをめくった。
「売上も、決して悪くないわね。むしろ、この年の春頃までは、普通に営業していた感じがする」
「それなのに……」
寮が考え込む。
「それなのに、急に村が無人になった。やはり、何かがあったんだ」
三人は、さらに調査を続けた。
***診療所跡での重要な手がかり***
村の中心部から少し離れた場所に、小さな診療所の跡があった。
「ここが、村唯一の医療施設だったみたいね」
橘が言う。
診療所の中には、古いカルテや薬品の記録が残されていた。國府田が記録を慎重に確認していく。
「最後の診療記録は……」
國府田の声が、わずかに震えた。
「平成十七年の五月五日」
「その後、ぱったりと記録が途絶えている」
「五月五日……」
寮が呟き、橘と顔を見合わせる。
「神社の壁に書かれていた『平成十七年 春』と、時期が一致するわ」
三人は、診療所の薄暗い室内で立ち尽くした。風が吹き込み、古い書類が音を立てる。
「これは……偶然じゃない」
寮が静かに言った。
「五月五日を境に、この村で何かが起きた。それも、急激に」
國府田が記録を見直す。
「四月までは普通に患者さんが来ていたのに、五月五日を最後に、誰も来なくなっている」
「まるで、その日を境に村人全員が消えたみたいね」
橘が不安そうに呟いた。
三人は、重要な手がかりを掴んだことを確信した。同時に、この村の謎がより深まったことも感じていた。
***昼食時間***
正午、拠点に戻った全員が中庭で昼食の準備を整えていた。
「午前中の作業は、予定より早く完了したから、午後からは拠点周辺の調査を始めよう」
祐一が全員に声をかける。
昼食のメニューは魚のフライとドレッシングサラダ、みそ汁、ご飯。メンバー全員でこれまでの活動と体験を話し合っていた。
「これで第二拠点の照明は完璧だ」
峯川が満足そうに言う。
「窓の補修もね。これで第二拠点の部屋も使えるわね」
松井あゆみが続けた。
「今後、調査拠点として考えると、ソーラーパネルの設置、建物周辺の整備など、まだまだ資材が足りないな」
小川が計画のノートを広げながら話す。
「少人数だったら、僕の軽バンとテントで一週間は十分活動できるんだけどね」
祐一が話すと、峯川が付け加えた。
「それだったら、俺のバンがあれば三週間は滞在可能だぜ」
小川が箸を置いて、少し真剣な表情で話す。
「前の山小屋みたいなことがなければ良いんだが……」
一年生の中村真理が尋ねる。
「小川先輩、山小屋のことって、何があったんですか?」
小川と祐一が一瞬、視線を交わす。祐一が答えた。
「まあ、ちょっとしたトラブルがあったんだ。ここは、今のところ大丈夫そうだから気にしないで……」
その時、寮たちが戻ってきた。三人の表情は、どこか緊張していた。
「寮さん、昼の調査はどうでしたか?」
祐一が尋ねると、寮が答える。
「興味深い記録をいくつか見つけた」
一拍置いて、付け加えた。
「かなり重要な発見だ。詳しくは、また夜に話そう」
「こちら側も、順調です。昼から廃屋周辺調査を始めます」
祐一が答えたが、寮たちの様子が気になった。
***午後の周辺調査活動***
午後、祐一たちは、拠点にしている廃屋を中心に村周辺の調査活動を始めた。拠点から半径百メートルほどの範囲を、三つのグループに分かれて調査する。
- **第一グループ**:祐一、田村、中村真理
- **第二グループ**:峯川、岡村、佐藤
- **第三グループ**:松井あゆみ、宮田、林、高橋
小川は拠点に残り、物資の管理と記録作業を担当することになった。
「それと、僕は残って拠点と第二拠点の浄化と結界の強化を行っておく」
小川が言うと、祐一が頷いた。
「そうだね。頼むよ。念には念を入れておいてくれ」
小川の表情を見て、祐一も何かを感じ取ったようだった。
***東側の調査***
祐一のグループは、拠点の東側を調査する。午後の日差しが、廃屋の壁に長い影を落としている。
「この辺りの廃屋も、記録していこう」
祐一が地図に印をつけると、田村が一軒の家を確認した。
「この家、まだしっかりしていますね。屋根も壁も、それほど傷んでいない」
中村真理が窓を覗いて確認する。ガラスの向こうに、時が止まったような室内が見えた。
「中も、比較的綺麗です。将来的に、こういった家も整備できると良いですね」
祐一が頷く。
「ああ。この村を、ちょっとした宿泊施設や観光地として復興できれば理想的だね」
*** 西側の調査***
峯川のグループは、西側を調査していた。こちらは建物の老朽化がより進んでいる。
「こっちの方は、少し建物が古いな」
峯川が確認する。
「でも、使えそうな資材もありますね」
岡村が言うと、峯川が応えた。
「ああ。古い木材とか、瓦とか、修繕に使えるかもしれない。無駄にはしたくないからな」
***南側の調査***
松井あゆみのグループは、南側を調査する。
「この辺りは、畑だった場所みたいね」
宮田が草に覆われた土地を見渡す。かつては耕されていたであろう土地が、今は自然に還りつつあった。
「石垣が残っているわ」
林が指摘すると、松井あゆみが推測した。
「段々畑だったのかもしれないわね。この村の人たちは、ここで農作業をしていて、今は誰もいないけど、かつては生活の場だったのね」
宮田がカメラのシャッターを切る。記録として、そして何より、ここに生きた人々の痕跡を残すために。
三つのグループは、約二時間かけて周辺を調査し、記録を取っていった。
***同時刻 ― 神社の調査***
同じ頃、寮、國府田、橘は、村の地図を頼りに奥地へと向かっていた。
「地図によると、この先に神社があるはずなんだが」
寮が確認する。
「かなり奥まった場所ですね」
國府田が周囲を見渡す。木々が生い茂り、道は草に覆われている。
「村の守り神を祀る神社だから、村の中心から少し離れた場所にあるのかもしれないわ」
橘が推測した。
草に覆われた参道を進む。足元で草木が音を立て、鳥のさえずりが遠くで聞こえる。
「この参道、かつては村人が頻繁に通っていたんでしょうね」
國府田が呟いた。
しばらく進むと、朽ちかけた鳥居が見えてきた。赤い塗装は剥げ落ち、木材が風雨に晒されて灰色に変色している。
「見えたわ」
橘が指差す。
三人は鳥居の前で立ち止まり、周囲を確認する。境内は静まり返り、風が木々を揺らす音だけが聞こえる。
「今日は、外観だけ確認して、詳細な調査は明日以降にしよう」
寮が判断した。
「境内に入るのは、もう少し準備が必要だ。特に、午前中の発見を考えると……慎重にいこう」
三人は鳥居を写真に収め、神社の位置を地図に記録した。
「明日、改めて調査に来ましょう」
國府田が提案すると、寮が頷いた。
「ああ。今日は、ここまでだ」
## 夕方、拠点へ帰還
午後四時頃、全員が拠点に戻ってきた。
「お疲れ様!」
「今日も順調に進んだね」
祐一が全員を集めて、今日の成果を確認する。
「午前中の整備作業で、第二拠点の照明と窓の補修が完了しました」
「午後の周辺調査で、拠点周辺の建物の状態もチェック完了だ」
峯川が補足する。
「明日以降も、範囲を広げて調査を続けよう」
寮も報告した。
「僕たちは、村の中心地点で重要な記録を発見した。それと、神社の位置も確認したところだ。明日、本格的に神社の調査と取材を予定している」
祐一が頷いた。
「明日も引き続き頑張っていこう」
*** 夜***
母屋で夕食を済ませ、二軒に分かれて風呂に入った後、第二拠点の照明が明るく灯り、快適な夜を迎える。
「照明があると、全然違うな」
田村が嬉しそうに言う。
「ああ。これで夜もゆっくり過ごせるね」
岡村が同意した。
祐一は軽バンの中で、今日の記録をまとめていた。
「三日目、順調に進んでいる……寮さんたちが明日、神社を調査する……」
ペンを走らせながら、祐一は少し考え込む。
「神社か……何か見つかるだろうか」
窓の外を見ると、星空が広がっていた。夜風が涼しく、虫の音が聞こえる。
静かな、廃村の夜。
明日への期待と、少しの不安を胸に、祐一は眠りについた。
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