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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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深夜に起きた怪奇現象

 祐一達、オカルト研究会のメンバーは、小屋に戻り霊的な存在による襲撃に備える準備を行っていた。

***深夜の備え***


 午後十一時を過ぎ、小川が佐藤を起こす「佐藤君、そろそろ起きてくれ」


佐藤が寝ぼけながら、目をこすって答える「もう、朝ですか?」


 「コーヒーとガムがある。それで目を覚ますんだ」テーブルの上にはコーヒーポットと眠気覚ましのミントガムが置かれていた。


小川は二階に繋がる階段を登り、屋根裏の部屋に声をかける。

「全員、起きてください」


その声に、松井、宮田、広末が起き、階段を降りてくる。

「午後十一時過ぎか……」

松井が時計を見て呟く。

宮田と広末は、ポシェットに入れてある浄化スプレーを確認する。


「念のため、コートも着ておくこと」小川が真剣な表情で話す。

「緊急で外に脱出する可能性もある。最悪、車に乗って山から下りる可能性も考えておこう」


 松井が自信を持って答える。

「もし悪霊が襲ってくるとしても、あの岩の場所と結界を突破して、ここまで来る事は無いわね」

「そうですよ、小川先輩。この小屋の周りも、小屋の中にも強力なお守りとお札もあるから、慎重すぎると思います」広末も同意する。


 しかし佐藤が、真剣な表情で口を開いた。

「でも、先輩。以前、田中部長から寮さんの話を伺ったことがあります」


 全員の視線が佐藤に集まった。

「その頃、ある山小屋で深夜、何千ともいう悪霊に襲撃されたことがあるそうです。その時、寮さんたちが次々と悪霊を浄化し続けて、ギリギリ助かったとのことです」

その言葉に、部屋の空気が一変した。


「……何千」宮田が小さく呟く。

「それって、本当なの?」広末の声が震えた。


 小川が深く頷いた「ああ、聞いたことがある。寮さんは、かつて最前線で戦っていた方だ。その経験があるからこそ、田中部長も今回の調査にあれほど慎重なんだ」


 松井が表情を引き締める。「……分かったわ。油断は禁物ね」

「全員、魔方陣の近くにいてください。何かあったら、すぐにそこへ」

小川の指示に、全員が頷いた。

五人は一階の食堂に集まり、魔方陣を囲むように位置取った。コーヒーを飲みながら、それぞれが警戒を続ける。


 窓を叩く風の音が、一層激しくなっていた。


***深夜の時間***


 深夜零時を回り、眠くならないように音楽をかける。

陽気な音楽にメンバーの気持ちが和らぐ。


「そうだ、何かゲームをするのはどうですか?」広末が提案した。

「暇つぶしにいいかもね」佐藤が答える。

トランプを始め、いくらか時間が過ぎていった。時計を見ると深夜一時過ぎを回っていた。


「このまま、夜が明けると助かるんだが……」小川が呟いた。

それから十分が過ぎ、広末が尋ねる。

「そろそろ田中部長たちを起こしましょうか?」

「まだ何も起きてないから、このまま寝かせておこう」小川が答える。


 それから十五分ほど過ぎ、さらに風が強まってきた。

「ヒーターの温度をもっと強くしておこう」

佐藤がヒーターの温度設定を高くする。


松井が、その時、表情を変えた。

「何か……感じるわ」


 小川が身を乗り出す。

「どのくらいの場所なんだ?」

「少しずつだけど……少しずつ、近づいてる。今は、まだ遠くだけど」松井の声が緊張に震える。


 佐藤が浄化のお香を継ぎ足しながら、怯えた声で呟いた。

「やっぱり来たんだ……」

「落ち着け。まだ遠い。結界もある」小川が冷静に言うが、その表情も引き締まっていた。


 宮田が静かに立ち上がり、窓の外を見つめる。「数は?」

「分からない……でも、多い。すごく多い」松井が額に手を当てて集中する。


 広末が小さく息を呑んだ。


 さらに十五分過ぎ、松井が再び口を開く。

「岩のある場所からここまでの道を……進んでくる」


 小川が立ち上がった。

「佐藤、ベッドで寝ている部長たちを起こしてくれ。宮田さん、広末さんは、窓とドアの霊符を確認してください。松井さんは気配の監視を続けて」


「はい!」それぞれが動き出す。


佐藤がベッドに駆寄り、調査メンバーたちに声を掛ける。

「田中部長!峯川さん!起きてください!」

ベッドの中から、すぐに返事が返ってきた。祐一と峯川は既に目を覚ましていたようだ。


「何があったんだ?」祐一が素早く部屋から出てくる。

「何か……こちらに向かってきています」佐藤の言葉に、祐一の表情が厳しくなった。


 「分かった。すぐに出る。星川と鮎川も起こしてくれ」


 小川が小屋の中にある魔方陣の周りに新たな結界石を配置し始めていた。

時計は深夜一時四十五分を指していた。


 風の音に混じって、今度は何か別の音が聞こえ始めた。

遠く、微かに……無数の足音のような、ざわめきのような。

それは確実に、山小屋に向かって近づいていた。


***緊急会議***


全員がテーブルに集まり、直ちに会議が始まった。


 祐一が冷静に選択肢を整理した。

「第一案は、このまま小屋に待機する。今、午前二時。第二案は、車に乗って山を下りる」


 峯川が腕を組んで考える。

「小屋に残る場合、結界が頼りだ。ただし、結界を破られた後、どこまで対応できるか……未知数だな」


 星川が不安そうに続ける。

「車で山を下りるにしても、途中で追いつかれてしまう可能性もあります。車数台に分乗しても、山を下りるのに三十分以上はかかります」


 「このままの状態で、敷地内の結界、小屋の結界を破られて応戦するのと、どちらが良いか……」

星川が呟く。判断は難しかった。どちらの選択にもリスクがある。


 祐一がゆっくりと口を開いた。

「……このまま小屋に待機しよう」

全員の視線が祐一に集まる。

「小屋の結界を破られても、お香やお札、魔方陣もある。今の様子では、十分に夜明けまで耐えられると思う」


 峯川が頷く。

「車で撤収した場合、途中で追いかけてこられたら、バラバラで個別に対応するしかない。その方が力も守りも分散されてしまう」


「ここなら、全員で協力できる。それが最大の強みだ」祐一が力強く言った。

「分かった。小屋で迎え撃つ」小川が決意を固める。

「全員、持ち場につけ。霊符の確認、結界石の配置、浄化の準備。やれることは全部やっておこう」

祐一の指示に、メンバーたちが動き出した。


 松井と宮田は窓の霊符を確認し、広末と佐藤は予備の霊符を準備する。峯川と星川は結界石を追加で配置し、鮎川と織田は浄化スプレーと塩を各所に配置した。


 小川は魔方陣の中心に立ち、静かに祝詞を唱え始める。


 祐一は全体を見渡しながら、最終確認を行った。

「いいか、何があっても落ち着いて対応しろ。パニックになったら終わりだ。僕たちには結界がある。仲間がいる。必ず夜明けまで持ちこたえられる」

「はい!」

全員が力強く答えた。


 時計は午前二時十分を指していた。

窓の外、闇の中から無数の気配が迫ってくる。

風が一層激しくなり、木々が大きく揺れる音が響く。

そして──

最初の結界に、何かが触れた。

かすかに、結界が震える音が聞こえた。

戦いが、始まろうとしていた。


***襲撃***


敷地の外で何かがうごめく気配を強く感じられた。

「もうすぐそこまで来ているわ」松井が恐怖に震える声を上げた。

「大丈夫。敷地に入ってもいくつもの浄化グッズを設置しているから、簡単に通り抜けてくることはできないさ」祐一が落ち着いて答えた。


 その後、大きな音とともに結界が破られた様子だった。

結界は三十分ほど機能していた。時計を見ると午前二時四十分だった。

「ここから敷地を通り、小屋の結界まで……何分持つか」祐一は様子を伺っていた。

十五分後、敷地内を通り抜け、小屋の結界にぶつかった。

ガタガタガタ……

小屋全体が揺れる振動が伝わってくる。

祐一がお経を唱え、小川が浄化のお香を焚く。他のメンバーも浄化スプレーやお守り、お札を持って身構えていた。


 三時二十分──

ドアと窓が突然開き、黒い影が小屋の中に入ろうとする。

だが、浄化のお香で黒い影が触れると、影は浄化され消滅していく。

「小川、霊力で入ってくる悪霊を頼む!」

「了解!」

小川が呪文を唱え、入ってくる黒い影に向かって光の矢を放つ。

一体、また一体と確実に浄化していく。


 祐一も霊力を手に集中して、黒い影の一体に放つ。悲鳴とも聞こえる断末魔とともに黒い影が浄化される。


 峯川も浄化スプレーに霊力を込めて吹きかけると、黒い影が次々と浄化されていった。

魔方陣の中にいる広末、松井、宮田、鮎川たちも浄化のお香を焚いたり、浄化スプレーを吹きかける。

松井も霊力を込め、黒い影に向かって霊光を放つ。

次々と入ってくる黒い影を確実に浄化していった。

二十分が過ぎ、三時四十分になった。

「まだ、終わらないのか?」

佐藤が霊符を黒い影に向かって放ちながら話す。


「もう、霊符が尽きてしまう……」

「浄化スプレーを吹き付けながら、もう予備のスプレーが無くなってしまうわ」広末が焦りの声を上げる。


「そろそろ魔力が尽きてしまう……後は、このアミュレットで」小川も限界が近づいていた。

星川が額の汗を拭いながら叫ぶ。

「数が多すぎる!このままじゃ……」

織田も疲労で膝をつきそうになる。

「くそ、まだ来るのか……」

峯川も息を切らせながら、それでも浄化スプレーを吹き続けた。


 祐一は冷静さを保とうとしながらも、状況の厳しさを認識していた。


 霊符、浄化スプレー、霊力──すべてが底をつきかけている。

それでも黒い影は、まだ次々と押し寄せてくる。

「みんな、諦めるな!夜明けまであと二時間だ!」祐一が叫んだ。

しかし、その声にも疲労が滲んでいた。


 時計は三時四十五分を指していた。

果たして、彼らは夜明けまで持ちこたえることができるのだろうか。


***最後の切り札***


「みんな、魔方陣の中に!」

祐一が指示を出し、全員が魔方陣の中に入る。

テーブルに置かれていた浄化の香炉も燃え尽き、霊符もほとんど使い果たしていた。浄化スプレーも後一瓶だけとなっている。


 祐一たちの霊力も消耗し、後は魔方陣とお守りだけが頼りとなっていた。

「どれくらい浄化したんだ?」峯川が息を切らせながら尋ねる。

「少なくとも、数十体は浄化した」小川が答える。

他のメンバーも、これまで浄化した霊の数では一番多かった。


 祐一が、懐から何かを取り出しながら呟く。

「最後の切り札を使っていこう」

橘美紀の朱雀の霊符を放つ。

霊符は朱雀となり、浄化の炎で悪霊たちを次々と浄化する。


「よし!」小川が声を上げた。

しかし、十五分ほどして霊符の力が消える。


「あれだけ悪霊を浄化しても、まだダメなのか?」星川が絶望の声を上げた。

また、魔方陣の周りを囲む中、峯川が最後の浄化スプレーを吹きかける。

「諦めるな。少しでも時間を稼ごう」


 祐一は次に、春香の書いたお札を取り出し、お経を唱える。

お経に呼応し、春香の書いたお札は次第に光を放ち、小屋全体、敷地全体へと光が広がる。それと同時に、黒い影が一瞬にして浄化されていく。


 十分ほど、光が広がり続け、次々と悪霊たちが浄化されていった。

その間に、祐一たちメンバーは少しの間、休むことができた。

「すごいです、田中部長。さっきの二枚の霊符」佐藤が驚いたように話す。

「最後の切り札だからね。ただ、あれが最後だ。残りの霊符は普通の霊符で五枚と、僕の持っている浄化スプレーが一瓶、それと少し休んだことで、残り数回ほどの霊力かな」


 「調査用のリュックに予備の霊符と浄化スプレー、魔除けのお香が入っています」

織田がリュックを奥の保管庫から取り出してきた。


「あと少しで夜明けだ。最後のひと踏ん張りだ」祐一が全員を鼓舞する。

その後、光が治まり、また黒い影が近づいてきた。

残りの霊符と浄化スプレーを使い、次々と迫る黒い影をなんとか抑えることができた。

「もう、限界か……」

峯川が膝をつきそうになった時、黒い影が突然引き上げていった。

「どうしたんだ?」

外を見ると、朝日が昇り始めていた。

「なんとか……助かったみたいだ」祐一が呟いた。


***撤収***


 全員、夜中に起きた出来事に放心状態になり、昼前まで眠った。

目を覚ました祐一は、メンバーを集めて告げた。

「撤収の指示を出す。これ以上の調査は不可能だ」

誰も異論を唱えなかった。あの夜の激しさは、全員の限界を超えていた。

祐一たちは、午前から昼の間まで小屋に留まり、装備を整理して帰路についた。


エピローグ


 その後、寮も山小屋を訪れたが、それ以降、特別な怪奇現象は起こることはなかった。

ただ、それ以上、山の奥への調査は禁止されることとなった。

「よくやった。全員無事で何よりだ」寮が祐一たちを労った。

「あの数……寮さんが以前経験されたという、襲撃に匹敵するものだったかもしれません」

祐一が振り返る。


「ああ。だが、お前たちは全員生き延びた。それが何よりも重要だ」寮は静かに微笑んだ。

「あの山の奥には、まだ何か強大なものが眠っている。今回の調査で、それが明らかになった。だが、それを目覚めさせてはならない」


祐一は頷く。


 山の奥の祠、大木の下の石、広場……それらが何を意味するのか、完全には解明できなかった。

しかし、一つだけ確かなことがある。

あの山には、人の手に負えない何かが存在する。

そして、その封印は今も、辛うじて保たれている。

祐一たちの調査は、ここで終わりを告げた。


 しかし、山は今も静かに、その秘密を守り続けている。

いつの日か、再び誰かがその謎に挑む時が来るかもしれない。

その時まで、山は眠り続けるだろう。



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