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大学のアパードで起こる心霊現象

オカルト、心霊現象、風水、スピリチュアル……。こういった話題に触れると、「本当に信じてるの?」と疑問を持つ人もいるでしょう。一方で、「何か得体の知れないものに惹かれてしまう」という人も少なくありません。この物語は、そんなオカルトの世界に夢中になりながらも、冷静な現実主義者と奇妙な共闘を繰り広げる大学生たちの日常を描いた作品です。



 田中祐一(たなか ゆういち)は青空大学に通う事になった。平凡な大学生だが興味はオカルト、心霊現象や超常現象、スピリチュアル、風水、そしてその原因究明方法の調査だった。


 そんな祐一がオカルトに興味を抱いたのは子供の頃からであった。高校に入ってからはオカルト部で部長も務めた。「幽霊なんてただの迷信だろ?」といった意見から実際に廃校を探検し写真に写り込んだ謎の影に震えたり自室でお経を唱えて除霊の真似事をしたこともある。


彼自身は特別な霊能力を持っている訳でもなく、せいぜい軽い霊感がある程度だった。

「何か変な感じがする」と言った勘が働く程度で、実際に霊を見ることもほとんどなかった。それでも彼のオカルトへの興味は強く、次第に様々な除霊方法やスピリチュアル、風水についての知識を独学で深めていった。


 高校時代に知り合った陰陽師(おんみょうじ)橘美紀(たちばな みき)と知り合ってからは陰陽師の事にも興味を示し卒業の前に橘美紀から魔除けのお札を譲り受けた。「もし、何か困ったときに使えばいいよ」と言われ、大学に進学し住む事になったアパートに持ち込んでいた。


 祐一が青空大学の門をくぐったとき、彼の胸には高校時代からの夢と興味が詰まっていた。かつてオカルト部の部長を務めた彼にとって、大学生活は未知の心霊現象や不可解な出来事に触れるチャンスだと思っていた。


しかし、青空大学のオカルト研究会に入部した祐一が最初に直面したのは、活気の衰えた部室とわずか6人のメンバーだった。「ここまで人数が減っいるとは……」田中はため息をつきつつも、すぐに意欲を取り戻した。少人数でもオカルトへの情熱は変わらない。田中の新たな物語はここから始まる。


***つばき荘との出会い***


 祐一が住むことになったアパート「つばき荘」は、昭和の時代に建てられた古びた木造建築だった。耐震補強はされているものの、廊下の床はぎしぎしと音を立て、壁紙にはところどころ黄ばみが浮かんでいる。住人たちの人影も少なく、どこか寂れた雰囲気が漂っていた。


 引っ越し初日、部屋で荷物の整理を行っていると胸に微かな違和感を覚えた。静まり返った空間に漂う冷たい空気と、どこからか聞こえる微かな音。「気のせいだ」と頭を振り、荷物を片付け始める。


***最初の怪奇現象***


 つばき荘で暮らし始めて間もなく、田中は奇妙な現象に直面した。


夜中、突然聞こえてくる女性のすすり泣きの声。

窓ガラスに浮かび上がる無数の手形。そして廊下に現れる黒い影など、不思議な現象に見舞われた。


「ここは、本当に普通のアパートなのかな?」田中は、半分震えながらも、

これまでのオカルト知識を総動員して状況を分析した。


「もし、霊的な現象だとしたら、まず基本の対策は、、、」橘美紀から貰った受けた魔除けのお札を思い出し、祐一は急いで自室の壁に貼り付け自室の空気が軽くなるのが感じられた。


その後、部屋では不可解な出来事は感じられなくなった。


***掃除と清めの日々***


 つばき荘には、もう一人、大学生が住んでいた。

朝比奈桜(あさひな さくら)だ。彼女は肩まで伸ばした黒髪と端正な顔立ちの持ち主で冷静で科学的な考えだった。


 祐一は休日、アパートの外回りの掃除や庭木の剪定、新しい花や木の苗を植える作業をしていた。

桜が顔を出して言った。「田中君、ガーデニングが好きなの?」


祐一は「植物には場を清める力があるって聞いたんだ!それと、風水的にも場を整える効果があると言われているんだ」祐一が誇らしげに答えると、桜は腕を組んで冷たく笑った。


「植物や風水で成績が良くなるなら、テスト勉強なんて必要ないじゃない。それで良くなるなら私も手伝うわ」桜の皮肉には動じず「確かに成績が良くなるとかは不明だけど、とにかく場のエネルギーが改善されて来るそうなんだ。他にも埋炭法といった方法で住んでいる場所をイヤシロチにできる話もあるんだ」と、熱く語った。


 桜は少し驚いた顔をしたが鼻で笑って

「そんな非科学的な事に頼り過ぎない事も大切だよ」と去って行った。


 それから祐一がつばき荘での生活を始めて2週間が経ったある日、

彼はいつものように廊下の掃除を行い、古びたアパートの隅々まで埃を払い、玄関先に盛り塩を置く準備をしていると背後から声をかけられた。


「田中くん、また掃除してるの? そんなに毎日やらなくても変わらないんじゃないの?」朝比奈桜だった。


祐一は、「なんとなく、アパート全体の空気が淀んでる気がするから、こうやって掃除を行って清めているんだ」と、まじめに答えた。


「ふーん、でも、怪奇現象だとかオカルトの話とか正直信じられないわよ」

朝比奈桜は祐一をじっと見つめながら口元を少し歪めた。


祐一は「まあ、確かに普通、そうかも知れないね。僕だって、オカルトが全て本当だとは思ってないけど。ただ、これまでの経験から無視できない何かがあるかなと、思って。。。」


祐一は、これまで体験した怪奇現象について話したが朝比奈は笑って答える。


「夜中の足音? このアパートは古いから音が響きやすいんじゃない? 他の住居者の人たちだと思うわ。田中君、オカルト研究部に入っているそうだけど、現実と妄想を混同するのも程々にしないと」


祐一「でも窓ガラスに手形が浮かび上がったのは? あれ、どう説明するんだい?」


朝比奈桜「うーん……湿気で曇ったガラスに誰かが触っただけとかじゃない?」


田中が熱弁を振るうたび、朝比奈桜は軽く肩をすくめるのが常だった。


朝比奈桜「田中くん、非効率的な事をいくら頑張っても何も解決しない事もあるよ、程々にね」

そう話し去って行った。


***初めての異変に直面する朝比奈桜***


 その日の夜、朝比奈桜は、何事もなく一日を終えるはずだった。しかし、深夜、部屋で本を読み終え、眠りにつこうと布団に入った瞬間、異変が起きた。


「……帰れ……ここは……」


低く不気味な声が、部屋の隅から囁くように聞こえた。桜は凍りついた。


「……誰?」


恐る恐る電気をつけ、部屋の隅々を見回したが、何もない。しかし、冷たい汗が背中を伝い、足元から這い上がるような寒気が襲ってきた。


「嘘でしょ……そんなの、あり得ない!」


冷静で科学的な思考が自分の特徴だった彼女だが、この状況に理屈は通じなかった。パジャマのまま飛び出し、廊下に出ると、ちょうど廊下にいた田中祐一と鉢合わせした。


「どうしたの? 顔、真っ青だけど!」


祐一が驚きの声を上げる。


「田中君……部屋で、誰かの声が聞こえたの。低い声で『帰れ』って……!」


 朝比奈桜は震えた声で訴えた。


「本当か?」


祐一は目を輝かせた。「それ、ついに"きた”ってやつじゃないか! よし、僕が力になる!」


「……いや、普通に怖いんだけど。今日はあなたの部屋に泊めてくれない?」


***共闘の始まり***


 田中の部屋で事の経緯を説明した後、桜は「ストーカーの可能性」や「何かの音の聞き間違い」を疑ったが、祐一はすでに作戦を練っていた。


「この魔除けの札を部屋の壁に貼れば、少なくとも悪い気は払えるはずだ。それに、俺の盛り塩も追加しよう!」


翌朝、祐一と桜は二人で彼女の部屋を調査することにした。だが、誰かが侵入した形跡や、隠しカメラ、スピーカーなどの怪しい装置は何も見つからなかった。


「……聞き間違いだったのかな?」朝比奈桜は眉をひそめた。


「いやいや、それでもお札は貼っておいたほうがいい。場が浄化されるから!」


祐一は得意げにお札を壁に貼り付けた。すると、彼女の部屋の空気がほんの少し軽くなったように感じられた。


「これで少しは落ち着けると思うよ」と祐一は微笑んだ。


朝比奈桜は腕を組んで考え込んだ後、小さくため息をついた。「……まあ、心理的安心感にはなるわね。しばらくそのままにしておくわ。」


***つばき荘の浄化活動***


 こうして、祐一と朝比奈桜の共闘が始まった。祐一のオカルト知識と桜の現実的な思考が合わさり、つばき荘の怪奇現象解決に向けた活動が本格的に動き出す。


ある日、祐一は思いついたように桜に提案した。


「桜さん、部屋の入口に観葉植物を置くのはどうかな? 緑には空間を清める力があるって本で読んだんだ!」


「観葉植物? 別に興味はないけど……まあ、悪いことはないわね。」


桜は渋々同意し、二人で近所のホームセンターに行くことにした。購入した観葉植物を部屋の入り口に置くと、なんとなく、ほっとした。


祐一「いいじゃないか! これで空気も浄化された気がする!」


桜「そうかもね。でも、これで怪奇現象が解決するとは思わないけど」


***日本酒とホワイトセージ***


 祐一は、さらに「日本酒を使った清めの儀式」を提案した。


「これ、昔から神聖な儀式に使われてきたんだ! アパートの四隅に日本酒を撒いて、邪気を払うんだ」


「……ほんとに効果があるのかしら。」桜は呆れた顔をしながらも、少しだけ興味を示した。


祐一は意気揚々と日本酒を建物の四隅に「清め給え、祓い給え……!」と数回唱えて、右回りに撒いて行った。


だが、その様子を見た大家が顔をしかめた。

「田中君、酔っ払ってるのかい? こんなところに日本酒撒いて、何やってるんだ?」


「い、いえ、違います! 浄化の儀式です!」


桜は思わず笑いをこらえた。「祐一君、誤解されないようにね。」


さらにホワイトセージの葉を燻してみたが、その香りがアパート全体に広がり、住人たちから苦情が来る始末だった。


「ちょっと祐一君、その煙くさいわよ! これで幽霊よりも住人が出て行きたくなるんじゃない?」


祐一は頭をかきながら答えた。「うーん、浄化の道も険しいな……。」


***一筋の光明***


 それでも、二人の活動によって、つばき荘の空気は少しずつ変化し始めていた。アパートの玄関の観葉植物が生き生きと育ち、廊下の盛り塩も毎日交換し、以前と比べて怪奇現象が次第に少なくなっていくように感じられた。


「ちょっとだけ、このアパートが居心地よくなった気がするわ。」桜は小さな変化を認めるようになった。


「 やっぱりオカルトは信じてみる価値があるんだ!」と祐一が話すと「まあ、非科学的なことをすべて否定するのも、間違いかもしれないわね。でも祐一君、次のテストの勉強はちゃんとしておきなさいよ?」


祐一は少し照れ笑いを浮かべながら、「それは……まあ、そうだ」と返事をした。


こうして、田中祐一と朝比奈桜の共闘は、少しずつ形になっていった。怪奇現象の完全解決にはまだ遠いが、二人の友情と、どこか噛み合わない所もあったが、つばき荘の新たな日常を築いていく事になる。



***祐一のオカルト研究活動***


 アパートの怪異もかなり改善され、穏やかな日々が戻りつつあったころ。田中祐一は、青空大学のオカルト研究会で新たな活動に取り組むことになった。それは、大学の近くにある用水路で目撃されている怪奇現象の調査だった。


「その用水路さ、夜になると誰もいないのに『助けて…』って声が聞こえるって話なんだ!」

研究会の部長、沢田が部室で真剣な表情で話す。祐一の目は輝いた。


「面白そうですね!絶対に何かあるはずです!」

祐一は勢いよく立ち上がり、意気込んだ。


 用水路は住宅地の中を通っており、

以前から心霊現象の噂が絶えない場だった。


色々な事件や噂もあり、心霊スポットとしても噂されていた。




***桜との会話***


 祐一はアパートに帰宅し玄関で掃除を行っていると

帰宅した桜に会い、オカルト研究部の活動の話をした。


「へえ、田中君が調査するの?」

後日、祐一がその話を桜にすると、彼女は腕を組みながら冷めた表情で答えた。


「もちろん! オカルト研究会の名にかけて、解明しようと思っているんだ!」

祐一は胸を張る。


「いや、そもそもその用水路の声って、水の流れとか風の音が原因じゃないの?」

桜の言葉に祐一は笑顔を崩さず「それを確かめるのがオカルト研究会の役割なんだ!」と自信満々に返す。


「……ま、勝手にどうぞ。でも危ないことはしないでね。」

そう言い残して、桜は部屋に戻った。


***用水路の夜***


 調査当日、祐一はオカルト研究会のメンバーとともに、夜の用水路に向かった。街灯が少なく、あたりは薄暗い。不気味な静寂の中、遠くからかすかに水の流れる音が聞こえる。


「本当に声が聞こえるのか?」

メンバーの一人、河餅が不安げに尋ねた。


「落ち着いて。まずは状況を記録しよう。」

部員の一谷は懐中電灯を持ち、慎重に用水路沿いを歩く。足元には苔むしたコンクリートがあり、滑りやすい。


その時――。

「……た、すけて……」


かすかな声がどこからか響いた。メンバー全員が足を止める。


「き、聞こえたよな? 今の!」

河餅が慌てた声を上げる。


「落ち着いて! 録音装置にちゃんと記録されてるか確認しよう!」

祐一は冷静さを装いながらも、内心では心臓が早鐘を打っていた。


 部長の沢田が「今回の調査は、これで一旦終了にしよう」と、何かの気配を感じたのか、全員撤収した。


***現実的な解決? それとも…?***


 翌日、祐一は調査結果を持ち帰り、桜に報告した。

「本当に『助けて』って声が録音されてたんだ! 幽霊の仕業かもしれない!」


しかし、桜は少しも驚いた様子を見せず、録音を聞くと即座に言った。

「これ、水が石に当たる音が反響してそう聞こえるだけじゃない?」


「そんなはずはない! 他のメンバーも同じ声を聞いてるんだ!」

祐一は反論するが、桜は冷静に続けた。

「思い込みの力ってすごいのよ。声を聞くって先入観があれば、普通の音がそう聞こえたりするものよ」


「でもさ!」

祐一がさらに主張しようとした時、桜はふと微笑んだ。

「……まあ、幽霊かどうかは置いといて、その声が本当に何かのサインなら、見過ごすのもよくないわね」


「わかってくれる?」祐一は目を輝かせる。


「一緒に解明しようとは思わないけど。次は少し科学的なアプローチも試してみたら?」

桜は肩をすくめ、提案した。


***次なる調査の準備***


 祐一は桜のアドバイスを受け入れ、次の調査では音の発生源を科学的に探る機器を用意することにした。「これで用水路の声の正体がわかるかも!」と意気込む祐一。


 桜は呆れながらも

「調査の結果がどうなるにせよ、祐一君が怪我をしないことが一番重要ね」と言って微笑んだ。


祐一のオカルト研究は、科学と信念の交差点で、新たな一歩を踏み出そうとしていた――。



 


 本作をご覧いただき、誠にありがとうございました。田中祐一と朝比奈桜の二人が、つばき荘の怪奇現象や大学オカルト研究会での調査を通じて、少しずつ絆を深めながら謎を解明していく物語です。


 スピリチュアルズジャーニー寮、陰陽師戦記 美紀とも接点のある田中を主人公に描いたスピンオフ版になります。こっちのストーリー展開の予定は今の所、決まって無いです。


 お正月を開けて少し、ゆとりが出て来たら書けるかな程度で、のんびりとお待ちいただけると幸いです。他のストーリーの続きも考えたり、他の物語を考えたりで、中々決まって無いです。


 形式上は連載ですが、短編シリーズになる可能性もあります。


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