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オンラインゲームでおっさん相手に姫プ満喫していたはずが美少女たちに囲われていた  作者: 最宮みはや【11/20新刊発売】
イベントダンジョン攻略編

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第69話 公認ストーカーになりました。

 元々隠し事や嘘はあんまり得意なほうじゃない。心情的にもしたくないってのはあるんだけれど、つい口が滑ってしまうところがある。


 それは自分でもわかっていることだから、どうにか対策すればよかっただけのことなんじゃないのか。


 そもそもまず隠す必要がある事柄が、そんないろいろ起きているのが問題なのでは?


 鈴見総次郎すずみ・そうじろうやノノが起因でルルが暴走して、それを知ったアズキが追随してくる。そこでまたノノが――っていう悪循環の螺旋らせんができつつある気がした。


 どうにかしないと一生抜け出せないまま、三人に翻弄され続けるかも知れない。


 先のことはともかくとしても、今どうするべきか。


 思い返してみれば、キスのことは話していたし、耳を舐められたのも見られていた。だけどルルから、本格的に襲われかけていたことは話していなかった。――いや、話すもんでもないよね? パーティー間でそんなことが起きてるとか知りたくないし、聞かされても反応に困るし。


「あれだよ、アズキさん。多分私の言い方が悪かったんだけど、鈴見さんと比べるような感じのことじゃなくて、もっとカジュアルな……」


 カジュアル?


 果たしてそうだろうか。

 

 鈴見総次郎と違って、ルルに対して身がすくむような恐怖感や泣き出しそうになる拒否感まではなかった。


 でも実際にやられた内容に関して言えば――ルルのほうが絶対、一線越えてきているよね!? ……そもそも鈴見総次郎は顔と言葉が不愉快ってことを除けば、肩を触られたくらいだからなあ。比べるのもおかしいくらいなのかも。ルルには服脱がされながら、キスとかされているわけだし。


「訂正。カジュアルではないんだけど、誤解が発端でちょっと行き過ぎてじゃれ合ったみたいなものだから」

「……僕も同じ事がしたい」

「いや、だからそういうのはダメって! 今の話はダメな例で!」

「約束したはず。もうしないって。でもルルは破って、僕だけ守るのは不公平」


 そういうことが合意の元でする――という約束だ。これをわざわざ約束しないと守ってくれない倫理観がまず心配になってくるのだけれども。


 もっと問題なのが、ルルがこれを破っているということだ。私にも非があって、一方的にルルが悪いと言うつもりもない。


 しかし、事実としてルルに襲われかけている。一度目は約束の前ではあった。でも二度目に関しては、あとちょっとのところでいろいろマズかったし、本当はもっと取り沙汰すべきことかもってくらいだ。


 で、アズキは自分だけ合意の元でそういうことをするルールを守ることに不満があるらしい。――うーん、言いたいことはわかるんだけどさ。そもそも合意なしで、そういうことしたいって発想があっていいの? ダメじゃない? いるよね、合意?


「ごめん、私もルルさんに約束を徹底させられてなかったことは悪いし、ルルさんにもちゃんと言ったから……」


 ――あれ、言ったっけ? ルルの妹、穗純ほずみちゃんがいたこともあって、結構うやむやになっている気もする。なにより身の安全を優先していたから、どっちかと言えば私のほうが低い立場だったような覚えもある。……今度もっとはっきり注意しておかないと。


 冷静に考えると、もう二人で会わないほうがいいレベルなんだけど、ノートを返す約束があった。少し、気が重い。


「わかった。なら、僕も一度だけ」

「待って待って、一度ってなにするつもりなの!?」


 さっきまで平和にオムライスを食べていたはずなのに。


 アズキは会話の合間にもぱくぱくと口に運んでいたようで、もうほとんど食べ終わっているけれど――え、逆になんでこんな会話しながら普通に食事進めているわけ!?


「……ユズを脱がせる」

「絶対ダメ、脱がせないでっ!! オムライス食べながら変なこと言わないでよっ」

「食べ終わってからならいいの?」

「そういう話じゃなくてっ!!」


 だいたい私を脱がせて、なにが楽しいのか。なにをするつもりなのか。――いや、それは考えないでおこう。アズキのことはよくわからないけれど、ルルのとろりとした瞳には本能的にもなにか察するところがあった。


「あのさ……だからルルさんのことは私の落ち度でもあるんだけど、普通にダメだから、そういうの。だってほら、私達、ギルドメンバーだしね?」

「ユズと僕はギルドメンバー。……それだけ? ユズとルルも? ノノとも?」

「えっ!? それだけかって言われると困るけど……」

「僕はユズの特別になりたい」


 ――特別。


 膝枕してもらっているときも同じ事を言われた。あのときは深く考えないようにしていたけれど。


「特別って……その、一晩どうのっていう?」

「それだけじゃない。ユズと他の誰よりも親密でいたい。特別な関係」

「えええっと……」


 親友とか、恋人とか、家族とか、そういうことなんだろうか。


 ――親友か。あとの二つはさておいて、親友なら、わかるかもしれない。でもアズキが考えているのって、キスとか一晩とかそういうのだとしたら。……親友じゃないよね? つまりそうなると?


 すっかり手に持ったスプーンも動きを止めてしまって呆けていると、アズキがテーブル越しに顔を近づけていた。


 数センチ手前で、彼女の綺麗な顔が止まる。


「ユズ、僕は守るよ。ユズのことも、約束のことも」

「えっ、さっきはだって……」

「ユズが本当に嫌がっているならしない。倉庫のときも、ノノの家でも、本気では嫌がってないと思った。違う?」

「えええぇ!? 嫌がってたかっていうと……たしかにそんな嫌悪感があったわけじゃないけど……」


 アズキが美人だからなのか。ぐっと顔を寄せられるだけで、どこかドキドキしてしまう。嫌っていう気持ちよりも、驚きで反射的に避けている感情なのかもしれないけれど。


「脱がされるのは、ユズが本当に怖がっているみたいだから今度にする」


「……えっと、今度じゃなくて」


 それでも考え直してくれたのはありがたい。あとはその今度が一生来ないことを祈るだけだ。


「その代わり、ユズがやっぱり心配だからしばらく……最低でもイベントが終わるまでは近くで見守る」

「えっ!? 待って、そんなの宣言されても困るって!! 外出のときは、アズキさんがカメラもってつけてくるってことでしょ!?」

「鈴見総次郎がまた接近してくるかもしれないから、必要な対処」

「いや、そうかもだけど……」


 鈴見総次郎対策について、私もなにか具体的な解決案があるわけじゃない。


 仮にこれからもアズキが私のことをストーキング紛いのことで見守ってくれるなら、安全と言えば安全なのかも知れないけれど。


 ――でもそれ認めるのはどうなの!? ストーカー公認しちゃダメでしょ!!


「そうだっ……もしよかったらなんだけど、姫草打鍵工房のバイトとかどう? 時給とか普通だけど……ほら、あれまかないとしてご飯出すから……えっと」


 私の外出中、つまり私がお店の手伝いをしているとき、アズキも隠れてそばにいる。だったら隠れて見られているより、バイトとして一緒にいてもらったほうがいい。


 接客については怪しいけれど、パソコンとキーボードの知識なら文句ないし、お店としても戦力になってくれそうな気がする。


「ユズと一緒にバイト?」

「う、うん。ダメかな? 遠くで見守ってくれるのも嬉しいけど、せっかくならちゃんとね……」

「ユズのお店、人増やせるの?」

「そ、それはどうだろ……まあ、短期間なら?」


 おそらくバイト代くらいは問題ないと思うのだけれど、私と同じ時間帯しか働かないし、休憩時間も一緒に取る予定となると――どうなんだ? それは会社としてはどれくらい利点があるのか? というのは突っ込まれそうな気がする。


 ――イベント期間中だけなら、試験期間とか、そういうのでもいいかな。最悪、会社で雇うってわけじゃなくて私が個人的な手伝いを依頼しているていでもいいし。そうなるとアズキのバイト代をどこから出すかだけど……まあ、元々無給で私を盗撮していたわけだから、最低賃金でも大目に見てほしい。


「……ユズの会社には興味があるし、やりたい」

「ほ、本当? それならもう隠れて私のあとつけたり、写真撮ったりはしない?」

「うん。堂々と写真を撮っていいなら、隠れない」

「え? いや、そうじゃなくて……あれ?」


 一瞬、名案だったような気がした。


 でも、よくよく考えれば結局ストーカーを公認して、バイトとしても採用しようとしているだけなんじゃないだろうか。


 ――ま、まあ、イベントも今週中には終わるだろうし、なんとかなるかな?

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