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オンラインゲームでおっさん相手に姫プ満喫していたはずが美少女たちに囲われていた  作者: 最宮みはや【11/20新刊発売】
イベントダンジョン攻略編

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第58話 メイドからのお願いです。

 ルルの妹さん――穗純ほずみちゃんは二階の自室へパタパタと駆けていった。そういえば、忘れ物を取りに来たんだったか。


 残された私とルルは、一度リビングに戻る。

 さすがにこの状況でまた襲われることはない――と思いたい。穗純ちゃんの前であんなことしないよね? しない、よね?


「ユズさんが、わたしのことをご主人様って……」


 まだ心ここにありそうにないルルだったが、私が突然『ご主人様』なんて呼んだからだろう。


「ルルさん、……ごめんね? あのときは咄嗟で。穗純ちゃんの前でルルさんって呼んでいいかわからなかったから」

「いえ、すみません。わたしもうっかりしていました。ユズさんのことばかり教えていただいて……私はまだ名乗ってもいなかったんですね、大変失礼を……」

「別に謝ることじゃないよ。私は事情があったし、基本的にプライベートなことは必要がなかったらそんな話すことでもないし」


 固定パーティー、同じギルドだからといって、プライベートなことを包み隠さず話すものでもない。


 むしろなにがあるかわからないのだし、個人的には極力隠して置いたほうがいいとも思う。


 現に私も、姫草打鍵工房ひめくさだけんこうぼうの宣伝という事情がなければ、本名をそうそう教えることもなかっただろうから。


「で、でも! あの……よかったらなんですが、わたしはユズさんに、わたしのことを知ってほしいです。わたし、薬利くずりです。波佐見はざみ薬利といいます」


 ルルはそう改めて名乗ると、恭しく頭を下げた。


「クズリ? ……どういう漢字なの?」

「あっ、薬剤の薬に、利率の利です」

「ありがと。薬利さん、か。穗純ちゃんとか、ゲーム外の知り合いがいるときは呼ばせてもらうかも」

「は、はいっ! いつでもっ! ……その、いつでもユズさんがお呼びしたいときは、いつでも呼んでくださいっ」


 ルルを本名で呼びたいとき――あるかな?


 あまりそんなことは想定されないが、「ありがとう」ともう一度言っておく。私はユズと柚羽(ゆずは)で大差ないので、特段どちらで呼ばれてもあまり違いを感じないのだが。


 もしかすると、やはり名前で呼び合うと仲が深まるのかもしれない。


「……私のことも、柚羽でもいいよ? 一応、ゲーム中以外なら」

「ほっ本当ですか!? い、いいんです、わたしなんかが……ユズさんのことを……そんなお名前で」

「う、うん……一文字しか違わないし、別にいいんだけど」

「……う、嘘じゃないです!?」


 何故ここでそんな疑り深く確認するのか。もっと誤解していないか確認してほしい場面なら他にあったよ。――キーボードのときとか、さっきの服を脱がすときとか。


「私も呼ばしてもらうから」

「じゃああのっ! お願いがあるんですけどっ!!」

「じゃあ?」


 よくわからないが、上目遣いのルルに私は身構えてしまう。


「どうか、もう一度わたしのことをご主人様って呼んでくれませんかっ!!」

「……じゃあ?」


 どうしてそういう話になったのか。――本名を呼ぶって話だったよね?


 なんでそんな意味わからない要求が出てくるのか。


 ――だいたいさっきのことだって、穗純ちゃんがまだ二階にいるから言及していないけど、けっこう問題だよね? 私もさ、ギルドの仲間だし同性だしってことで今までもいろいろ飲み込んでるけど、そろそろ日本の法律も黙ってないんじゃない?


 まるで反省しているように見えない。そもそも反省なんてしていないのか。


 ――むしろ、逆なの? ……今は穗純ちゃんがいるから、正気をかろうじて保っているだけ? もしかして、穗純ちゃんが家から出たら直ぐ再開する気とか!?


「あ、あのさ……呼んでもいいんだけど、さっきのお仕置き? あれもう、やめてほしいな」

「なんでですかっ!?」

「どうして誤解されたのか私もよくわかってないけど、ノートのお礼は料理だからね! あとそれにお仕置きされるようなこと、そもそもしてないし」


 私の嫌な予感が的中したようだ。ルルはまるで懲りていない。


 今のうちに逃げ出したほうがいいんだろうか。でもノートをまだ見せてもらっていない。けっこうな数があるというので、ざっと私が見て考察に使えそうな部分を探す必要もあるだろう。


 いつも言い含める形で、対処していたが一向に改善していない。ゲーマーたるもの、効果を体感できないのに同じ攻略方法を続けるのは愚策である。


 ルルは唇をすぼめながら、小声でぼそぼそと何か言っている。


「ユズさんが……ユズさんが悪いんですよ。だってユズさんは直ぐ人のこと誘惑して……わたし以外の人にも色目を使って……」


 ――色目ってなんだろう。ピンク色のサングラスをかけているのはルルのほうだと思うんだけど。……よし、そんなに言うなら呼んであげようじゃないか。色目だかなんだかわからないが、私にも考えがある。


「お願いしますっ、ご主人様っもうお仕置きは許してくださいっ」


 ルルみたいに上手くできた気はしないけれど、精一杯の上目遣いと可愛らしい声をつくってみた。


 ――私にできる限りの全力、メイド服さんのお願いである。


 言って聞かせてダメなら、お願いするしかない。どちらかと言えば被害者の身の上で、なんだか腑に落ちないけれどこれでお仕置きとやらがなかったことになるなら構わない。


「はうわっ!? ゆ、ユズさんっ……うっ、そんな、そんな可愛くおねだりされたらっ、わたしまた我慢がっ」

「えええぇ!? 逆効果……っ!?」


 ――マズい、と思ったとき、もっとマズいことが起きていた。


「……お姉ちゃんと姫草(ひめくさ)さんってどういう関係……なの? 本当にただの友達なの?」


 二階からいつの間にか降りてきていた妹の穗純ちゃんが、唖然とした顔で立っていた。

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