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オンラインゲームでおっさん相手に姫プ満喫していたはずが美少女たちに囲われていた  作者: 最宮みはや【11/20新刊発売】
イベントダンジョン攻略編

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第41話 お仕置きから逃げます。

 変わらずタワーマンションの待合スペースではあるが、さっきまで泣いていたはずの美少女に抱きつかれて身動きが取れない状況になっている。


 私がここについてから、どれくらいたったろうか。


 約束時間の十五分前だったのは覚えている。


 アズキはいつも五分前につくから――どうしよう、最悪アズキが助け出してくれるかもしれないけれど、それはそれでまた面倒になるのもわかりきっている。


 できればアズキが来る前に、穏便に解決したい。


「えっと……ルルさん。まず特別な夜ってわけじゃなくて、普通にね、一緒にホテルでいただけで」


 私はそっと横目で抱きついたままのルルを見る。ほとんど髪のかかった耳くらいしか見えない。


「ホテル、ですか」

「普通のホテルだからね! えっと、普通のっていうか、高級なっていうか、とりあえず宿泊用のホテル!」

「一つベッドで一晩過ごしたんですよね?」

「……普通にね。普通に一緒に横で寝てただけだからね」


 今のところ正直にすべて話している。


 だけど。


「嘘つかないでくださいっ!! 一晩同じベッドにいて、なにもなかったなんて嘘です。わたしだったら絶対します」

「……いや、だから、キスはしたけど」


 なにを絶対なのか。


 怖いので聞かないでおくが、どこからその自信が出るのか本当に不思議である。


「そうです、キスはしたんですよね。初めて記念って言うのはどういう意味ですか? ノノさん言ってましたけど。それに無理矢理じゃないキスがどうとも。キスじゃない初めてのことも、したんじゃないんですか?」

「……えっと、それは記念なのはあくまでノノさんの話で。あと無理矢理じゃないのも、そのままの意味だけど」


 むしろルルが一番、身に覚えがあるんじゃないだろうか。無理矢理何度もキスしたのに、忘れたとは言わせない。


「そのままの意味? よくわからないんですが、わたしとユズさんのキスはどういうカウントなんですか?」

「それはだから」


 だからそのまま、『ずばり無理矢理のキス』なわけだけど、さすがに直接はっきり言うのは抵抗が――。


「えふぅっ!?」


 耳がなにか柔らかいものに挟まれた。優しい圧迫感と、少し後にそのまま軽く引っ張られるような。


 ――え、もしかして、私の耳、ルルの唇で挟まれている?


「ちょっと、ルルさん? ……なにして」

「はふぅ……可愛いです、ユズさんのお耳」


 ルルがしゃべったとき、一度自由になった耳は、また甘噛みされて今度はしっとりした何かが縁をなぞった。


 ――な、なめられてる!?


 すぐ耳のそばということもあって、ルルのちょっと荒くなった息遣いが続々と脳に響く。


「待ってって! そういうのだから、そういうのが無理矢理なやつだから!」

「ユズさんが悪いんです。目を離すと直ぐわたし以外の人といやらしいことをして……ユズさんはそんな人じゃないのに。だからわたしが満足させて、キレイにしてあげないと」


 なにか生温かいものが耳の内側をチャプチャプと触れていく。でこぼこをなぞるように、狭いところをねぶるように――。


「ちょっ、あっ、なんかくすぐったいしっ――だ、だから」


 無理矢理って言うのはつまり、私の許可なくこういうことを――そうだ、そもも。


「あ、あのね! ノノさんはちゃんと有料だったからっ」

「はふぃ……? はにょ、ふーほーって」

「ルルさん、耳加えたまましゃべらないで!! それも私の耳!!」

「すみません、可愛い耳なので念入りにお仕置きを……」


 耳に可愛いなんてあるんだろうか。

 確かにルルの耳は、キレイな形をしているし、顔の小ささと一緒で耳も小ぶりだ。可愛い――のかもしれない。けどそうじゃなくて!


「ルルさんが私のこと心配してくれてるのは嬉しいし、隠していたことも悪かったと思うよ。……だけどね、前もこれは言ったけど無料(タダ)じゃないからっ!!」

「で、でも、ノノさんとは……」

「ノノさんからは課金ガチャ装備もらったから。やりとりしてたとき、ルルさんもいたでしょ」

「わ、わたしも……そのガチャは最近してないですけど、持っているレアアイテムなら」


 ルルのレアアイテム事情を考えれば、ノノみたいにばんばん支払ってくることはないだろう。

 だから口だけじゃなく物を出せ、と切って捨ててもいいのだけれど。


「そういう話だけじゃなくて、まず私の意思を確認してってこと! 合意がないでしょ!? ルルさん全然私の話聞かないで、勝手にいろいろしてっ。ほら、もう満足したでしょ。一回離れて」

「はうっ……そんな」


 私は少し緩んだ腕の力を見逃さず、そのままルルの小さな体を押しのけるようにして離れた。


 紅潮した顔のルルは、私と目が合うと寂しそうに瞳を伏せた。


 ――そんな顔されると私がなにか悪いみたいだけど、……私、被害者だよね?


「とにかく! 何度も言うけど無料じゃないし、同意なしなのは本当ダメ! 今度から私の意思を確認しないでこういうことするの、やめてね」

「で、でもまだユズさんの唇が! レアアイテムで無理矢理ユズさんを自分のものにするような女に汚されたままで……っ」

「無料で無理矢理してる人が言わないっ!!」


 まともに話を聞くつもりはないけれど、お仕置きが耳で、それとは別にいつもの消毒があったということだろうか。


 ――末恐ろしい。


 ルルはやはり危険だ。もう二人きりにならないほうがいいかもしれない。


 私がそう思ってソファーから立つと、ちょうどアズキが見えた。スマホの時計を見ると、きっかり五分前だ。


 ――危なっ。でも五分前だったってことは、アズキは今来たところだし、ギリギリ見られてなかったってことだよね? セーフか。


 耳をなめられているところが目撃されていたら、また同じ事をされる危険がある。


 湿ったままの耳を、リュックから引っ張り出したハンドタオルで拭う。


 今更、合宿のことがいろいろ心配になってきた。


 ――ルル達と同じ家で二泊三日って、もしかして早まったかもしれない。

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