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オンラインゲームでおっさん相手に姫プ満喫していたはずが美少女たちに囲われていた  作者: 最宮みはや【11/20新刊発売】
ギルド難航編

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第20話 美少女がお店に来てくれました。

 予定が合う中で一番近い日にしていたので、アズキが姫草打鍵工房ひめくさだけんこうぼうに来る日は直ぐやってきた。


 ルルも店に来るということで、アズキとは別の意味で私の警戒心も上がっていたけれど二人きりにならなければ大丈夫だろう。


 もし次キスされそうになったら、レアアイテムをちゃんと請求しないといけない。――いやいや、ダメだって。ノノとのキスは特例みたいなもので、今後はもうしないんだ。


 今回のキーボードについても、真っ当に最強ギルドを目指すためのよい機会だ。


 アズキのプレイングレベルは元々申し分ないけれど、姫草打鍵工房のキーボードを使えばより高いレベルを目指せるだろう。


 ルルについては多少おぼつかない面がまだあるから、操作補助ができるようなキーボードをお勧めするつもりだ。


 またキーボードという、ゲーマーにとって必要不可欠なアイテムをみんなで一緒に選ぶというイベントで、パーティーの結束も高まるに違いない。


 ――そう、姫草打鍵工房のキーボードがギルド打鍵音(だけんおん)シンフォニアムの架け橋になるはずっ!!


「いらっしゃいませー。え、ルルさん」


 約束の時間の一時間前――というより、開店して直ぐルルが店へ入ってきた。


 長方形に二十畳ほどの店内には、棚に飾られたキーボードと私の他にはまだ誰もいない。


「……早かったね」

「楽しみにしていて……いてもたってもいられず、少し早く来てしまいました。すみません、迷惑でしたか?」


 ルルは品のある可愛いらしいワンピースに、ちょっと高そうなコートを着ていた。


 相変わらずフランス人形みたいな外見だ。天使みたい、とも思う。


「いや、そんなことないよ。よかったらゆっくり店内を見ててよ……まあ、キーボードしかないけど」


 ルルがまたなにかしてくるんじゃないかと疑うわけじゃないけれど、カウンターから外には出ないことにしよう。


 私はレジの後ろでにこにこしていることにした。


「ユズさん、そのエプロン可愛いですね」


 しかしルルは、キーボードの棚ではなくレジにいる私に向かってきた。冷やかしなら帰ってほしい。


「これは制服代わりだけど……可愛いかな?」

「可愛いです。ふふっ」


 濃いオリーブグリーンに渋めの黒いフォントで『姫草打鍵工房』と書かれているだけ、シンプル且つ無骨なデザインだと思う。


 ふわふわしたいかにも清楚な服装のルルに言われると小馬鹿にされているような気がしてしまうけれど、その純粋そうな笑顔からは悪意を感じない。


 ――でもこの子、急にキスとかしてきたしなに考えてるかわからないからな。


「ユズさん、わたし、恥ずかしながらキーボードに疎くて……もしお時間あったら教えてもらえませんか?」


 上目遣いというやつだろうか。私より少し背の低いルルが、遠慮がちに目を向けてくる。


「いいけど……」


 どっちみち、ルルのキーボードもグレードアップして今後のヴァヴァに役立てるつもりだった。アズキが来ていないけれど、先にルルのキーボード事情から改善するか。


「ルルさんって今はどんなキーボードつかってるの?」

「あの、買ったパソコンに付いてきたやつそのままで……あとヴァヴァだと、コントローラーを使ってます」

「え? ルルさん、パッドなの?」

「は、はい。家にあったゲーム機用のをそのまま使って……」


 ゲームパッドというのは、いわゆる従来の家庭用ゲーム機についているコントローラーのことを指す。


 ゲーム専用に作られたユーザーインターフェイスである。


 ユーザーインターフェイスというのは、とりあえずパソコンやゲームを操作するために人間が直接触る部分のことを言う。


 でまあ、ゲームパッドはゲームのために作られているだけあって、普通に考えたらゲームを遊ぶにはゲームパッドのほうがやりやすい――と思われがちなのだが、八十以上のキーを操作できるキーボードとマウスの組合せの前には、ゲームパッドでできる限られた操作では太刀打ちできない場合がある。


 もちろんこれはゲームにもよる。


 むしろ最新の操作性が洗練されたゲームほど、ゲームパッドにある限られたボタンだけでも十分どころか、プロのゲーマーであってもゲームパッドを推奨する場合も多々ある。


 だが基本的にはコマンド操作であるヴァンダルシア・ヴァファエリスにおいては、直ぐに入力できるキーの数というのはプレイングに有利となる面が大きい。


 二桁レベルでのスキルの連続発動や、複数のターゲットを瞬時に切り替える作業など、キーボードであったほうが操作しやすい場面が多くあるのだ。


 ――それなのに、パッド!? まことですか!?


「え、え? なんで、こだわりとかあるの? ゲームパッドが好きなの?」

「い、いえ……そういうわけじゃなくて……」


 目の前にキーボードでなくゲームパッドを使ってヴァヴァをプレイしている人間がいるかと思うと、私も正気ではいられなくなった。気づけばルルを圧迫するかのように、彼女を店の壁へと追いやっていた。


 壁ドンってやつだ。


「ち、近いですよ、ユズさん」

「ご、ごめん! つい、無意識に」

「謝らなくていいんです……ただわたしが緊張してしまっただけで」


 そう言って頬を赤らめるルルから、私は慌てて離れた。警戒していたつもりが、私のほうがルルにおびえられているくらいじゃないか。


 ダメだ、キーボードのことになるとつい我を忘れてしまう。


「せっかくだし、気に入るキーボードがあったら今度からヴァヴァもキーボードでやってみなよ」

「は、はい! わたしもユズさんにいいものを教えてもらって、是非そうしようかと思っていました」

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