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オンラインゲームでおっさん相手に姫プ満喫していたはずが美少女たちに囲われていた  作者: 最宮みはや【11/20新刊発売】
姫プレイ始動編

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第10話 逃げても逃げ切れません。

 崩れ落ちて、放心しているとまたルルが豹変した。


 さっきの顔が嘘だったみたいに、純情で不安げな表情を浮かべた。


「大丈夫ですかユズさんっ、そんなわたし……」


 目をうっすらとうるませて、私の肩に触れようとして、そしてギリギリのところで躊躇ためらうように宙で止めた。


 ルルの顔や仕草からは、おびえているようにすら見える。


「ごめんなさい、わたし……その……」

「ルルさん、あのね、いきなりこういうのは」

「初めてでしたので、上手にできなかったんですよね。それでユズさんをがっかりさせて……」

「え? ……あの、え?」


 てっきり突然キスしたことへ罪悪感を覚えたのかと思えば、まさかキスの上手さについて心配していただけ?


 ――この子、なんなの!?


 目の前に居るのが天使なのか悪魔なのかわからなくなる。純白そのものみたいな外見で、この子はいったい――。


 私はノロノロと部屋に戻って、放心状態のまま過ごした。


 ルルからも、他の二人からも何か言われたと思う。だけどあれからのことは、ほとんど何も記憶に残っていない。


 なんとか家に帰って、ベッドの中で泥のように眠った。



   ◆◇◆◇◆◇



 目が覚めるとすべてが夢で、やっぱり私はおっさん達に囲まれて姫プレイをしている――そんな風にどこか期待していた。

 私がおっさんを期待することなんてある? この先二度とないよ!?


 だけどギルド打鍵音(だけんおん)シンフォニアムのグループチャットには、しっかりとオフ会記念で撮った集合写真が残っていた。


 私が美少女達に囲まれている。


 アイドル九条乃々花(くじょう・ののか)ちゃんがいて、モデルみたいに美形なアズキがいて、まるで悪い事なんて今まで一回もしたことないってくらい無垢な表情の美少女ルルがいる。


 三人に囲まれて、私は完全に気の抜けた顔で魂が抜けかかっていた。


「はぁ……、大学は今日休みだし……」


 ぼやきながら、無理矢理体を動かす。


 私はパソコンの電源を入れて、オンラインRPGヴァンダルシア・ヴァファエリスを起動する。


 十三人の天使とも悪魔とも言えない異形の者たちが並び剣を構える。刀身はシンプルで洗練されたデザインだが、それぞれ異なる色と形状のオーラをまとっている。オーラがやがて十三人を包み込むと画面が一瞬白く光り、『ヴァンダルシア・ヴァファエリス』とゲームタイトルが表示された。


 いつもならスキップしているタイトルムービーを見てしまった。


 このまま放置していると、オープニングムービーまで流れてしまう。


 キーボードを操作して、プレイヤーデータをロードする。


 白銀魔操術士はくぎんまそうじゅつしユズ――私、姫草柚羽ひめくさ・ゆずはのゲームキャラクターだ。


 柚羽から取ってユズという安直な名前は今更ながらどうかと思う。


 ――ああ、ダメだダメだ。ゲームにログインしたら、俗世の事なんてすべて忘れろ。キーボードに触れる感覚、画面に表示されたすべての情報とヘッドホンから流れるすべて音を一つも見逃すな。


 最善の選択を常に計算しろ。それでいて、直感を忘れるな。


 ゲーム前の意識統一を済ませて、私は気持ちを切り替え終える。


 ギルドのメンバーのことを一回忘れて、今日はフレンドのおっさん達と適当にパーティーを組んでアイテム集めでもしよう。


 ――豆食べる小豆(あずき)からメッセージが届きました。


 ログイン完了からノータイムだ。


 フレンドのログイン通知を見てすぐ送ったのだろうけれど、それにしても早すぎるメッセージに嫌な予感しかしない。


 開きたくない。


 でもこのまま無視してほかのおっさん達と冒険に出ると、ギルドのメンバー表にステータス更新されて『ダンジョン進行中』と出てしまう。

 つまり未読スルーしたのがバレる。


 ただのフレンドならステータスをオフラインにできるのに。面倒な仕様をしている。


 開いたら私の家の住所と、私の隠し撮り写真とか出てきたらどうしよう。さすがに運営通報――いや、警察かな。


 警戒しながら開いたメッセージだったが、


『約束のレアアイテムを送る』


 という短い文面と、そのレアアイテムが送付されているだけだった。


 アイテムそのもののレア度もさることながら、ボス攻略までに一周一時間程度かかるダンジョンでドロップ確率0.05%という廃人御用達のアイテムだ。


 私は少し悩んでメッセージではなく、ボイスチャット――アズキ宛てに通話をかけた。


「アズキさん……アイテム、ありがとう」


 アズキはいつも通りマイクオフで、テキストメッセージを返してくるかと思った。けれど、


『約束だから』


 と声を返してきた。


「しゃべってくれるんだ」

『ユズが、そっちのがいいって言ってたから』

「……言ってたけど、だったらオフ会の前に話してくれてもよかったじゃない」

『それだと、ユズに直接会えなかった』


 感情のよくわからない声色だったけれど、オフ会しただけで本当にレアアイテムを貢いでくれるほどだ。


 本当に、私に会いたかったのだろう。どうして私なんかにという疑問と、それでもやっぱり少しだけ嬉しい気持ちにもなる。


「私もアズキさんと会えてよかったよ。……あっ、あれね、ギルドのメンバーと、って意味で!」


 ついつい柄にもないことを言ってしまって、慌てて誤魔化す。ちょっとだけ恥ずかしい。


『僕も嬉しい。ユズの情報が増えた。駅で解散した後にユズが乗った電車から住所の特定もだいぶ進んだ』

「……いや、だからそれは警察だからっ!!」


 やっぱり心を許してはいけない相手だった。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

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