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魔王合体エヴィルドライ  作者: 南ノ森
覚醒!!魔王合体エヴィルドライ
6/28

奮闘!!飛翔合体エヴィルツヴァイ・ファルケ(後編)

 時を同じく、関所での争いは苛烈を極めていた。

『ぐあああぁぁ!!』

『失せろ魔族ども!!』

『くっ、まだまだァ!!』

 戦いは数で勝るゴーレムライダー隊に対し、頑強で大きさのあるヴァルキリーヘッド部隊に部があるようであった。

 それでもゴーレムライダーたちは一歩も譲らず、どうにか関所を守っている。

『くっ……お前ら、頼むからいい加減に落ち着いてくれ!!』

 レンシアはどうにかヴァルキリーヘッド隊を宥めようと試みるも、どうにも手が付けられなくなり困り果ててしまう。

(クソっ……私は何のため隊長に就任したのだ!!これでは16年前と何も変わらない、何も出来ないままではないか!!)

 悔しさと無力さにレンシアは歯噛みし、遠い日の幼い記憶が脳裏に浮かび上がってくる。

『待てッ!!』

 その時、戦場に勇猛果敢な声が響き渡る。

『な、何者だ!?』

『誰だ!!』

 正気を失って争っていた者たちが、一斉にその声の正体を探る為に周囲を見回す。すると、ひとりの兵がその正体を関所の壁の上に見つける。

 そこに立っていたのは、黒い巨神……レイレスの駆るエヴィルアインであった。

『キサマ、何者だ!!』

『俺はレイレス・ヘルツ……魔王だッ!!』

 レイレスは声高らかに名乗ると、両者の間に入るように戦場のど真ん中へと飛び上がり地に舞い降りる。

『貴様ら、何を争い合っている!我々は協定を結び合ったばかりではないか!!』

『ならば問おう!貴様の国で襲撃があり、申し出無しに実行犯が処分された疑いがある……その是非を申せ!!』

 レンシアが獲物を突き出し、レイレスに問いかける。その問いに対し、レイレスは間を置いて答える。

『……ああ、そうだ。俺が殺した!』

『な……に、っ!!』

 それを聞いた一同は一斉に驚きの声を口にする。そして、問いを投げかけたレンシアは怒りに震えて再度獲物を突き出す。

『貴様……一国の王がその事に目を瞑るどころか、まさか自らの行いを安に口にするなど愚の骨頂!!協定に反する蛮行であるぞ!!』

『戯け!!その協定の最中に、機械を持ち出して侵略を行えばそうもなろう!!』

『何だそれは!どう言う事なのだ!?』

 一同は再び混乱に響めきを漏らす。しかし、その話に納得出来ない者がひとり居た。

『う、嘘を言うな!!俺の親父は商人なんだ、機械に乗って戦うなんて出来る筈がないだろ!!』

『落ち着けアクレ!今は私情よりも優先すべき事が……』

『アンタは黙っててくれよ!!俺はあの魔王に親父を殺されたんだぞ!!アンタはあんないい加減な言葉を信用するのかよ!?』

 アクレはレンシアの前に出て、剣を抜いてエヴィルアインに迫り首元に突き付ける。

『おいアクレ、いい加減にしろ!これ以上はお前も処罰の対象になるぞ!!』

 しかしアクレは聞く耳を持たず、更にレイレスに詰め寄る。

『おいテメェ、どうだったんだ?俺の親父を殺した気分は……この手で、人の命を踏み躙った感覚はよォ!!』

『…………』

 問い詰められるレイレス。それを、ヒューゲルが後ろで息を呑んで聞いていた。

(レイレス王子……お辛いでしょうに、わたくしは後ろで聞いている事しか出来ない……)

 気が気ではないヒューゲル。だが、レイレスは一度だけ彼女の方へ振り返って目配せし、前へ向き直って堂々と言ってみせた。

『俺の罪を問いたければ問うてみるがいい!俺は魔王として、国を統べる者としての責務を果たしたまでだ……!もしもこれを罪と呼ぶのなら、好きに呼ぶがいい!!俺は決して、引きはしない!!』

(!!)

『なっ!?』

 アクレはレイレスの放った言葉にたじろぐ。そして、その場にいた全ての者が口を噤んだ。

(レイレス王子……あくまでも、十字架を背負う覚悟をなさるのですね……)

 ただひとり、ヒューゲルはその胸の内を悟る。しかし、アクレはその物言いに次第に怒りを募らせて、その手に握った剣をエヴィルアインへと振り下ろした。

『ならば死ねエェッ!!』

「レイレス王子!!」

 その剣はエヴィルアインの首元へと降ろされた。金属と金属とがぶつかる激しい音。

 しかし……その漆黒の機体には傷ひとつ付かなかった。それどころか、剣には欠けた跡が付いてしまっている。

『なに……っ!』

『知れ者……失せろ!!』

 エヴィルアインがその剣を握り折ると、その場に居た全ての者が言葉の通りに身を引いた。

 ……かに、思えた。

 そこには、確かに1機青い機体が目の前に立っていた。

『貴様、今し方罪を問うてみろと言ったな……なら話が早い、そこから引き摺り出して問いただしてやろう』

 前に出たのは、意外にもレンシアの機体であった。

『レ、レンシア様!!いったい……』

『此奴はもはや自白したも同然。ここで捉えられねば尚更ややこしい事になる』

 レンシアは獲物を構え、エヴィルアインへと迫る。

『なんだ貴様!まだ用があるのか!!』

『当たり前だ!!貴様だけに語らせてはい、お終い!だなんて美味い話があるか!!こっちは仕事で来ているんだぞ!!』

『そうか……ならばこのレイレス・ヘルツ、堂々と相手になろう!!』

『我は暁ノ国視察隊隊長、青の騎士レンシア!駆るはエイススタークが相手をしよう!』

 お互いは名乗りを上げると、同時に構えを取る。

 しかし、ヒューゲルには一抹の不安があった。

「レイレス王子、相手は武器を持っています。それも……どうやら魔装!」

「ま、魔装?なにそれ??」

「魔装とは、魔石を埋め込んだ事によって人族であっても地下を通る魔脈から魔力を取り出し、魔力放出による戦闘技術『魔技』を放つ事が可能な魔法武装なのです!尚魔装には属性があり、放たれる魔技には属……」

「ちょちょちょっと!!今そんなに話なんて……!!」

 ヒューゲルが長々と説明している間にも、相手の機体は待つ事なく先制攻撃を開始する。

『うおぉおおッ!!』

 レンシアのエイススタークは、その手に持った薙刀状の魔装『カルト』を振り下ろし、エヴィルアインの脳天目掛けてかち割らんとしていた。

『うおっぶねぇ!!』

 それに対しレイレスはなんとか素早く反応し、その刃を両の手で挟み込んで押さえ込む。所謂、真剣白刃取りである。

『どうした!!威勢が良いのは口だけか!!』

『なんのォ!!魔装がどうしたかァ!!』

 レイレスは『カルト』を避けるよう慎重に横へ逸らそうと試みる。しかし、それによりガラ空きになった顔面に容赦のない裏拳が叩き込まれる。

『甘いッ!!』

『がッ……!!』

 頬に鈍い痛みが走り、機体が僅かに浮いて派手に吹き飛ぶ。レイレスにとってそれは、人が人に殴られたのと全く同じような感覚であった。

『ってェ……弾丸喰らうより痛いとか、どうなってんだ!!』

『無論、スタークフレームをそこら辺の機械と同じと思ってもらっては困る。そんな貧相な機械では尚更だ』

『なにィ……?』

 レイレスは母の残した機体を馬鹿にされたように思え、再び身を起こして飛び込む。

『はあっ!!』

『甘い甘い!!』

 しかし、その詰めの甘い動きは薙刀の殴打によって簡単に薙ぎ倒され、更に立ち上がり側に打ち上げられて後方に大きく吹き飛んでいく。

『ぐあァァッ!!』

『甘い!完熟の桃よりも甘ったるいぞ!!』

 再び『カルト』を構えるエイススターク。それに対しエヴィルアインも再び立ち上がって素手で構えを取る。

「無理をしないでください!!魔装使い相手にやはり武器無しでは部が悪いです!!」

「それがどうした!!俺は一歩も引かない!!引けば国に、何より君に申し訳が立たない!!」

「レイレス王子……」

(守られてる……一緒に戦っているつもりだったのに、わたくし……守られてるんだ)

 ヒューゲルはレイレスの熱い言葉に胸を打たれるが、それと同時に、何も出来ないもどかしさが込み上げてくる。

 そんな気も知らず、レイレスは彼女を背に硬く拳を握って立ち向かう。

(なんとか隙を見つけないと……このまま闇雲に突っ込んでも、おそらく簡単にいなされるだけだ)

 なんとか出方を伺う為ににじり寄るも、相手の構える薙刀とのリーチ差を見るに近接戦闘は難しいだろう。

 その時、足に小さな硬いものが当たる感覚を覚える。どうやら小さな岩が転がっていたようだ。

 レイレスはそれを気取られないよう目線を逸らさず睨みを効かせる。そして、タイミングを見計らってその岩を蹴り上げ、間を開けずに距離を詰めた。

『これで……ッ!!』

『その程度……』

 だが、薙刀はその岩を容赦なく弾き返し、その岩を逆にエヴィルアインの顔面へ直撃させ怯ませた。

『がッ、しまっ……』

 そして、エヴィルアインは顔面を掴まれ持ち上げられてしまう。20mのエイススタークに対し15m程のエヴィルアイン、肩の高さまで持ち上げられても容易に足が浮いてしまい、その様子に力の差を感じさせられてしまう……。

『やはり素人……こんなものなのか、今の魔王というものは!!つまらん!!』

『く……っ』

 エヴィルアインの首に、『カルト』の切先がジリジリと迫る。

「王子ッ!!」

 レイレスに迫る危機にヒューゲルが叫んだその時、エヴィルアインから眩い光が放たれ、天空へと放出された。

『なにっ!?』

 突然の事に一同は呆気に取られるも、それから何も起こらないのを悟ると次第に落ち着きを取り戻す。

『……なんだ、今のは。ただの虚仮威しか』

(な、何だったんだ今のは……)

「ヒューゲル!大丈夫か……!?」

 状況を確認するためレイレスが振り返ると……そこには、ヒューゲルの姿は無くなっていた。

「ヒ、ヒューゲル……!?」


 その頃当のヒューゲルは、エヴィルアインの操縦席と似たような、それでいて何処か違う空気の漂う空間の中に居た。

「えっ、なに……ここはいったい……はっ、王子!レイレス王子は!?」

 混乱して辺りを見回していると、突然謎の女性の声が聞こえてくる。

『……ル……ルケ……エヴィルファルケ……』

「エヴィル、ファルケ……もしかして今わたくし、別の機械の中にいるの……?」

 その言葉に返答するように、周囲の壁に光が灯る。そして、心臓が動き始めるかのように機械の駆動音が鳴り始める。

「……そう、か……わたくしに、力を貸してくれるのね……!」

 そう呟き、ヒューゲルは新たに覚悟を決めて立ち上がる。

「……さあ。行こう、エヴィルファルケ!!」


『くっ、これ以上やらせる訳には……』

 一方、先程の現象から程なく戦いは再開され、相変わらずエヴィルアインは苦戦を強いられていた。

 レイレスは再び出方を伺おうと試みるも、薙刀の間合いの長さに接近を許されないまま壁際に追いやられていた。

『さあ、大人しく投降して連行されたらどうだ』

『誰がするか!俺は国の長としてここを離れる訳には行かないんだ!!』

『なら……正義執行!!』

 エイススタークが構え、踏み込もうとしたその時、天空から颯爽と現れる黒い影が、エヴィルアインに掴みかかり再び飛び上がった。

『なにっ!?』

 そして、その影は関所の壁の上に降下すると、エヴィルアインを下ろしてその姿を現した。

『これは……いったい……』

 その姿は、まるで怪鳥と言うべき巨大な鳥の形をした機械であった。その大きな翼には、瞳のような水晶体が装飾され威圧感を放っている。

『王子、大丈夫ですか!!』

『その声……ヒューゲル、なのか?』

 レイレスはその怪鳥から聞き慣れた声が聞こえた事に驚いた。

『はい!わたくしヒューゲル、エヴィルファルケと共に戻って参りました!!』

 ヒューゲルは意気揚々と答えると、視線を下に居るヴァルキリーヘッド部隊へと向ける。

『徒党を組まねば顔も合わせられぬ雑兵共!!ここに有らせられる御方を誰と心得る!!この御方こそ、宵ノ国を守護する魔王であるぞ!!もし指一本でも触れたければ、わたくしが相手になる!!』

 ヒューゲルは高らかに宣言すると、立ち尽くすヴァルキリーヘッドたちを掻き分けてエイススタークへと向かって飛んで行く。

『なっ、飛んでいるぞ!?あの機械は魔脈に接続せずに動けるのか!?』

『化石燃料駆動ではないのか!?』

 一同は空飛ぶ怪鳥の上空からの強襲に、そしてその様相に戸惑う。それを見たレイレスは、以前ヒューゲルから聞いた事を思い出した。

(そうか、ヴァルキリーヘッドは地下の魔脈からエネルギーを供給しているから、必然的に陸戦型しか存在しないと以前授業で言っていた……だから航空戦力に警戒しているのか!!)

 そう思う間にも、エヴィルファルケはエイススタークへと翼を打ちつける。

『くっ……貴様、戦いに水を差すな!!』

『そっちこそ、あなた方が機械を持ち出さなければ王子が戦う必要なんかなかったのです!!王子が戦うから……王子に十字架を背負わせたのは、あなたたち人族だと言うのに!!』

 エヴィルファルケは旋回し、再び翼を打ちつけようとする。しかし、それを今度は薙刀で払って回避する。

『勝手を言うな!!その是非を問う為にもその男を連行せねばならんのだ!!』

 再び向かってくるエヴィルファルケに、今度は真正面から薙刀を振り回してぶつかってくる。

『それはッ、させませんッ!!』

 エヴィルファルケはエイススタークの手前で急停止すると、降りかかってくる薙刀を翼で打ち返して怯ませる。

『なあっ!!』

 そして、そのまま身を翻して翼でエイススタークを思い切って打ち飛ばした。

『でやぁッ!!』

『ぬうゥッ!!まさか……青の騎士である私が、ここまで押されるとは……だが!!』

 エイススタークが薙刀を正面に構えると、それを高速で回転させながら技を発動させる。

『魔技『カルト・ハーゲル・シュトゥルム』ッ!!』

 高速で回転する薙刀から竜巻が発生すると、次第に雹が混じり始めて周囲に撒き散らし始める。

『きゃあッ!!』

『ヒューゲル!!』

『どうだ!これで飛んでようが無関係、容易には押し通れまい!!』

 激しい雹の矢がエヴィルファルケに次々と襲いかかり、翼を凍結させ墜落させる。レイレスはそれをただ見ていられず、壁の上から降りてヒューゲルの元へと駆けて行く。しかし、激しい雹の嵐に手負のエヴィルアインでは太刀打ちが出来ない。

『ぐッ……があアアァ!!』

 それでも……レイレスは必死にヒューゲルの元へと手を伸ばし続ける。

『丁度いい、このまま共倒れするがいい!!』

『誰が……するかッ!!』

 諦めず、諦めず、尚も諦めず……友をこの手で守らんと必死で伸ばした手が、その額まで届いた。

 その瞬間ーーーーまるで爆発が起こったような衝撃が、2機を中心に巻き起こった。

『なにっ!?なんだ今のは!!』

 衝撃が起こった後、2機はまるでシャボン玉の中に閉じ込められたかのように、丸い球体の中で宙に浮かんでいた。

「これは……俺たち、浮いて……いるのか?」

「いや、それよりも……この、胸の奥から熱くなるような感覚……いったいこれって……」

 その時、2人の頭の中で再び謎の女性の声が聞こえてきた。

『実行せよ……ツヴァイユニオン……モーダス・ファルケ……』

「えっ何???」

「何って、分からないけど、迷ってる場合じゃないよな……!やり方知らないけど、やるぞ!!」

 レイレスはそう言って、再びエヴィルアインの手をエヴィルファルケの額に翳し、先程聞こえた言葉を復唱した。

「『ツヴァイユニオン!モーダス・ファルケ!!』」

 詠唱が轟いた次の瞬間、2機を囲っていた球体が爆ぜるように広がっていき、周囲に異様な空間を生み出す。そして、そのまま2機はその空間内で変形を始め、ひとつの存在へと合体していく。

『飛翔合体!エヴィルツヴァイ・ファルケ!!』

 それは、2つの魂を昇華させたひとつの姿。

 それは、天空を支配する禍々しき怪鳥の姿。

 それは、翼を得たる雄々しき魔王の姿。

 名を『エヴィルツヴァイ・ファルケ』。これこそ、魔王の騎馬たる黒き巨神の第二の力である。

『うお……なんだか分からないけど、俺にも翼が生えたみたいに感じる……!!』

 エヴィルツヴァイ・ファルケはゆっくりと地に足を付けると、大きく翼を広げてその姿を誇示する。

 一同が呆気に取られる中、レンシアのエイススタークは再び『カルト』を前方に構えて仕掛け始める。

『ふん、2つがひとつになっただけではないか!これであれば纏めて片付けられるというもの……魔技『カルト・ハーゲル・シュトゥルム』ッ!!』

 高速で回転する『カルト』から再び雹の混じる嵐が巻き起こると、ほぼ全方位に氷の礫が襲いかかる。何よりも、その竜巻は次第にうねりを伴いエヴィルツヴァイ・ファルケの周囲を取り囲んだ。

『『ハーゲル・シュプリッツェ』……!!』

 そして、周囲の竜巻から雹の矢が集中斉射され、渦の中心にいるエヴィルツヴァイ・ファルケを射抜かんとする。

 しかし、エヴィルツヴァイ・ファルケは全身を翼で多いそれを全て防いだ。

『こんなもの……ッ!!』

 否、それを防いだと同時に、更に風圧で周囲へ弾き返して反撃する。それを受けたエイススタークは『カルト』で防ごうと試みるも、全てを防ぎ切れずに多大なダメージを受けてしまう。

『うグオオォッ!!あ、味な真似を……ッ!!』

『まだまだだッ!!』

 レイレスが叫ぶと、エヴィルツヴァイ・ファルケは再び空中を飛行して旋回、風を巻き起こしてエネルギーを貯め始める。

『魔力充填……『ツヴァイ・ファルケ・ウンター・ヴェルト・アウフレーデン・ワインド・ライストゥング』……』

 ヒューゲルが詠唱を始めると、エヴィルツヴァイ・ファルケの翼が発光し始める。

 そして、その輝きが最高潮に達すると、再びレイレスが叫びを上げる。

『『ファルケ・ワインド・キリンゲ』ッ!!』

 エヴィルツヴァイ・ファルケが眩い翼をはためかせると、激しい風と共に無数の光の刃がエイススタークへと降りかかる。

『チィっ、『カルト・ハーゲル・シュトゥルム』!!』

 レンシアは再び技を唱えたが、発生させた竜巻は光の刃を防げず、また雹の矢は光の刃に打ち砕かれてしまう。

 そしてその刃は、そのままエイススタークの装甲を大破させ、全身に再起困難な程の深い傷を与えた。

『クソォッ!!私が……私がこんな無様を晒すなど……!!』

 地に倒れ伏すエイススターク。しかし、それでも戦うために必死で立ち上がろうと試みる。だが、既に勝負は付いたと言うようにエヴィルツヴァイ・ファルケは2つの姿に再び分離していた。

『さあ、大人しく去れ』

『ふざけるな!!私は、まだ……』

 軋む音を立ててなんとか自立するエイススターク。その姿を見たレイレスは悲しい顔をした後、静かにヒューゲルに指示を出した。

『……ヒューゲル、頼めるか』

『はい』

 そう言ってヒューゲルは、エヴィルファルケの翼を広げて満身創痍のエイススタークへと向かっていく。

 この時、レイレスは立てなく出来れば充分だという意味で指示を出した。しかし、それを見ていたアクレは嫌な想像をしてしまった。

(コイツら、まさか……親父たちだけじゃなくレンシア様まで手にかけるつもりなのか……!!)

 早とちりをしてしまったアクレは、向かい来るエヴィルファルケの翼を止めるために不用意にも間に割って入ってしまう。

『なっ!?ア、アク……』

 そして……その機体、アイゼンソルダートは無慈悲にも呆気なく、真っ二つに両断されてしまった。

 その不幸な事故とも言える状況にはレイレスも動揺を露わにしてしまう。

『なっ……あの機、なんて……なんて事を……』

『お……おい、アクレ……返事をしろ!アクレ!!』

 目の前で起こった惨劇を認められずに、レンシアは何度も何度も呼びかける。しかし、後ろから仲間の機体が彼女の機体を押さえる。

『……撤退しましょう。今の戦力では部が悪いです、ご命令を』

『し、しかし!奴らはアクレを……!!ここで引き下がれば……』

『これ以上は!!……騎士として、みっともないと言うのです……』

『……くっ、撤退だ。撤退しろ……!』

 歯噛みし、渋々撤退命令を出して関所前から去り行くレンシアとヴァルキリーヘッド部隊。その後ろ姿を、レイレスとヒューゲル、そしてゴーレムライダーたちはただただ静観していた。


 調査隊が関所での戦いから帰還しているその頃、暁ノ国の城内ではクレイとガーベラが内密に話している。

「なに、調査隊の派遣にヴァルキリーヘッドが持ち出されただと!」

「はい……確かに、格納庫からは10数機のアイゼンソルダートが出ていく所を確認されています」

 それを聞いたクレイは目が眩んだように眉を顰めて頭を抱える。

「ディステルはいったい何を考えているのだ……無闇に機械を持ち出せば拗れる可能性を考えんのか!!」

「それで……どうなさるのですか、兄様?」

 クレイは小さく頭を掻いて思案すると、一拍置いた後に鼻で息を吐いて口を開く。

「……この事は私の方で追及しておく。弟と思って大目に見ていたのがいけなかったのだ、私の責任だ……今から各所員へ聞き取りを始める。何か怪しい動きが無かったか、資料を集めなければな」

 クレイは襟を直し、城を出て颯爽と格納庫へと足を向かわせた。


 先の戦いの後、レイレスとヒューゲルは庭園の中央にあるガゼボの下で、紅茶を飲みながら戦闘の状況を振り返っていた。

「どうやら、あの黒い機械に乗って戦うと高圧的な気性へと変わってしまうみたいですね……」

「うん……最初は僕も驚いた。まだちょっと、あの頭の中がイガイガするみたいな感覚には慣れないよ」

 レイレスは紅茶をすすり、一息吐いてヒューゲルの方を見る。その時、初めて戦った時の感覚が蘇ってくる。

「……ヒューゲル、キミは大丈夫だったか?」

「はい?大丈夫、とは?」

「いや、その……ほら、キミにさ、少しばかり思い荷物を背負わせてしまったなと思って……」

 あの戦いで、ヒューゲルは初めて誰かの命を奪った。指示を出したのはレイレスだったが、尚更その事が気になってしまって彼女の手を取る。

 しかし、彼女はまるで何も気にしていないかのようにカラッとした笑顔を返した。

「いえ、わたくしは問題ありません。それもりも、王子はあれだけ長い時間戦っていたのです。アレに乗った時の疲れが溜まっておられるでしょう、暫しお休みになられてはいかがでしょうか」

 そう言って、ヒューゲルはテーブルの上の食器類をカートに片付けて去って行った。

「……ヒューゲル、僕は君の事まで巻き込んで、何をやっているんだ」


 それから、ヒューゲルは自室へと戻る。

 彼女は部屋の鍵をかけ、鼻歌を奏でながらラフな服装へと着替えていく。

 部屋の中に、傾いた日の日差しが、茜色の光を流し込んでいく。

 鼻歌が支配する部屋の隅にあるベッドに、少女は飛び込んでひとしきり笑う。

 そして、彼女の仕える王子の取った手を見つめながらにっと微笑むのだった。

「うふふっ……あはははっ!これで、あの人とお揃いだっ。お揃いの……」

 あの時、レイレスは敵の足を止めさせるために指示を出した。それは長年彼に従えていた彼女には容易に理解出来たであろう。

 しかし、彼女はそれに従って足止めを行うつもりだったのだろうか?

 もしかすると、あの事故とも言える状況は本当は……。

 その真意は、誰にも語る事は出来ない。

宜しければご評価、ご感想いただけれは幸いです。

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