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魔王合体エヴィルドライ  作者: 南ノ森
覚醒!!魔王合体エヴィルドライ
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覚醒!!魔王合体エヴィルドライ(前編)

「うぇへぇ……なんだか緊張するなぁ……」

 暁ノ国陣営の最後部にある侵攻拠点。栄光の七騎士はそこで戦闘に備えて準備をしていた。

 1万mほどの遥か遠方……宵ノ国側の第一防衛ラインで行われている各兵力の戦闘の爆音が、更に緊張を掻き立てていく。

「大丈夫っすよ!なんせ俺たちは栄光の七騎士!!どんな相手にも負けませんって!!」

 胸を押さえるシェフレラの背中をエンツィアが軽く叩く。

「ありがと……」

 シェフレラは微笑み、余裕を取り戻す。

 しかしその時、暗雲の立ち込める戦場に眩い緑色の閃光が瞬く。

「っ!?」

「ちょっ……アレなんだ!?」

 エンツィアが指を指す先、宵ノ国陣営の集結している方向にその光の正体はあった。

「あ……アレは……!!」


『『ドライユニオン!モーダス・トイフェル』ッ!!』

 騒めき出す戦場、その頭上で輝きを放つそれは、まるで漆黒の悪魔のような姿をしていた。

 その悪魔は、翼を広げてゆっくりと降り立つと、スリット状の目を光らせて暁ノ国の兵士の乗るヴァルキリーヘッドの部隊を睨みつける。

『コレが……16年前に国を襲った“漆黒の悪魔”…….ッ!!』

『すげぇ、本物は初めて見たぜ……!!』

『恐怖と興奮で震えやがる……!!』

 その漆黒の悪魔に臆しながらも、ジリジリとにじり寄る暁ノ国のアイゼンソルダート。

 彼らには敵前逃亡は許されない。何故ならそれは“死罪”を意味するからだ。

『怯むんじゃねぇ!かかれッ!!』

 兵士のひとりが槍を手に取りかかって行くと、それに続くように他の兵も槍を向けてかかって行く。

 しかし次の瞬間、突き付けられた槍は全て一振りの拳によってへし折られてしまう。

『なっ……!?』

『まだだ!!まだ剣が……』

 だが、兵が剣を取ろうとした瞬間にその兵の機体も殴り飛ばされてしまう。

『むがァッ!?』

『行けェ!!数で押せば行ける!!』

 その隙に剣を取った兵士たちが、漆黒の悪魔目掛けて切りかかる。

 しかし……どれだけ雑兵が徒党を組もうと、その悪魔には敵わない。

 剣を振れば弾き飛ばされ、また剣を振れば今度はへし折られる。そして盾で防げば、その盾もろとも破壊されてしまう。

 最早、その巨神の前に敵は無かった。


 戦いの前日、レイレスたち3人はゼーエンから話を聞いていた。

「エヴィルアイン、エヴィルファルケ、エヴィルウォルフ……現在3体のエヴィルが覚醒しているでありんす」

「うん……」

 大きさが同じ位の、形のまばらな石を3つ並べるゼーエン。それを3人は神妙な面持ちで見ている。

「エヴィルにはそれぞれ、乗り手の魂に呼応して能力を発揮する特性がありんす。それは各エヴィルに搭載された『ダークマタードライブ』と、エヴィルアインに組み込まれた魔心石ましんせきの共鳴によって成り立っているでありんす」

「えーと……どゆこと??」

「つまりは、3人仲良くおててを繋いで、両方の2人を真ん中の1人が引っ張ってお散歩してるって感じでありんすね」

「なるほど……なるほど??」

 微妙な例えを出され、納得したようなしていないような顔をするレイレスを他所に、今度は石を絶妙なバランスで縦に積む。

「そして、その力を倍加させるのがドライユニオン……『エヴィルドライ』の完成でありんす。この先の戦いに勝つには、3人にエヴィルドライを完成させて欲しいのでありんすよ」

「……それには、どうすればいいんだ?」

「簡単でありんす。心をひとつにする、ただそれだけ。それには、2人を引っ張る魔王さんの率先力が要になりんす」

「率先力……か」

 掌を見つめ、決意を確認するように固く握る。そして、心の中でクレイの言葉を復唱する。

(『ノブレス・オブリージュ』……魔王として、僕は成長しなければならない。そのタイミングはもう来ているんだ)

 だが、それを他所にゼーエンが話を続ける。

「しかし、3人の歩幅が合わせられない場合……」

 突然、積まれていた石が呆気なく崩れ落ちる。

「あっ…………」

 それを見つめるネーゲルの目は、目一杯の不安で満ちていた。


「くっ……思ったよりも体に負担がかかる……ッ!!」

 レイレスたち3人は、なんとかエヴィルドライを完成させて戦場に赴くも、その扱いに四苦八苦していた。

 迫り来る敵に対してレイレスは容易く薙ぎ払っていくものの、その度に四肢が千切れそうな負荷が襲って来るのだ。

「母さんはこんなものに乗って戦ったのか……!?まるで拷問じゃないか……ッッ!!」

 歯を食いしばり痛みに耐えるレイレスだったが、ヒューゲルにはその痛みの要因がまた別にあると考えていた。

「違う……違います!合体に負荷が掛かっているのは多分、乗り手の調和が乱れているからだと思われます!!」

「そっ、そりゃどう言う……」

『魔王、覚悟ッ!!!』

 その時、1機の青い閃光がエヴィルドライへと向かってくる。

『はあァッ!!』

『くぅ……ッ!!』

 その、閃光のように駆け抜けてくる機体の斬り払いをなんとか回避すると、その機影をしかと確認する。

『あれは……関所での時の……!!』

『『栄光の七騎士』青の騎士、レンシア!!駆るはエイススタークが、再び相手になろう!!』

 レンシアの駆るエイススタークが、薙刀型の魔装『カルト』をエヴィルドライに向ける。そしてそこに、もう1機の機体も駆けつける。

『お待たせッ!!『栄光の七騎士』赤の騎士、エンツィア!!駆るはフランマスタークが相手になるよ!!』

 エンツィアの駆るフランマスタークは、剣型の魔装『ファキュラ』を構えながら挟み撃ちの陣を取る。

『本当は2対1なんて卑怯な事したかぁないけど、恨み言なんて言ってくれるなよ!』

『そんなつもりは更々ない!!』

 レイレスは構えを取り、相手の出方を伺う。

 そして……レンシアのエイススタークが最初に動いた。

『でぁああアァ!!』

 エイススタークは『カルト』を突き出して突撃してくる。

 レイレスはなんとかそれを受け流すも、今度は後ろからフランマスタークが『ファキュラ』を振り下ろす。

『セヤあああァァァッ!!』

 レイレスはそれに素早く気付くも、体が反応出来ずに背中へモロに剣撃を受けてしまう。

『ッガアアぁぁ!!』

 その痛みはレイレスの背中へと伝わり、重ねて全身の痛みが加わり意識が飛びそうになる。

 しかし、どうにか胆力で堪えると、ささやかな抵抗としてフランマスタークを振り払う。

『っ……ッはあッ……はあっ……』

『どうした魔王!!以前の、合体前の状態の方がまだ戦い甲斐があるぞ!!』

『あーあ、こりゃあ俺ひとりでも勝てちゃいますね。後ろから斬り掛かったの、気が引けちゃうなぁ』

 膝を突くエヴィルドライを見て半ば申し訳無さそうに呟くエンツィアに、レイレスはキレ気味に反論する。

『るせェ!!こちとら常にキンタマ潰されるみてーな痛みに耐えてンだよ!!』

『え?キンタマ痛いの??』

『違げェよ!!全身が痛むッてんだよ!!』

『じゃあ全身がキンタマだ!あははは!!』

『こンのぉ……おちょくりやがって……』

『しょーもない事で言い争ってないで戦いに集中しなさいよ、ほら!!』

 ヒューゲルが注意を促すと、突然上空から矢が降ってくる。レイレスは促されたおかげでそれを回避する事が出来た。

『あっぶな!!』

『遅れてすみません!『栄光の七騎士』緑の騎士シェフレラのホルツスターク、黒の騎士バンブスのネルデスターク、参ります!!』

『…………』

 エヴィルドライを囲む2機から少し離れた所から、更に2機のスタークフレームが姿を表す。

 シェフレラのホルツスタークは、再び弓型の魔装『エルンテ』を構えて引く。

 次の攻撃が来るのを察知したレイレスは、再び回避を試みようと射線から逃れようとするも、そこにバンブスの駆るネルデスタークがハンマー型の魔装『アンムート』で動きを遮る。

『くっ……!!』

 そして、『エルンテ』から矢が放たれると、それを肩に受けてしまう。

『ッ……づアァ!!』

 痛みに耐えながらそれを引き抜くも、そこへネルデスタークとエイススタークが得物を構えて向かってくる。

『ッ、マズい!!』

『王子!!分離して逃れましょう!!』

『仕方ない、各員散開ッ!!』

 2機が得物を振りかぶった瞬間、エヴィルドライは3機に分離して難を逃れた。それと同時に、レイレスの身体を襲う激しい痛みも無くなる。

『くうゥッ……分離したはいいものの、この状況はちょっと苦しいな……』

 辺りを見回すレイレス。現状は3対4……その上、周囲には雑兵のアイゼンソルダートも囲んでいる。

 しかし、それよりも危惧していたのは……。

『ネーゲル!しっかりしなさい!!今は敵の前なのですよ!!』

『う……ぅ……』

 ネーゲルは、敵の前で恐怖に震えていた。

 彼女はレイレスやヒューゲルと違い、戦いを前に覚悟を決めるだけのタイミングが無かったのだ。

『あっれ、どうしたのかな?相手さんの様子なんか変っすよ?』

『無駄なことを考えるな。好奇があれば逃す手はない』

 レンシアは『カルト』をネーゲルのエヴィルウォルフへと向ける。

 レイレスは危機を察知し、素早くエヴィルウォルフの前に飛び出して盾になるように立ちはだかる。

『させない……ッ!!』

『ふん、足手纏いの盾となり散るか。キサマの命はそんなに軽いのか!』

『なに……?』

 レンシアの物言いにレイレスは怒りを露わにする。

『ネーゲルは足手纏いなどではない!!』

『でなければ、何故そこで怯えて震えているのだ』

『黙れ!!彼女は俺の戦友で、側近で、メイドで……そしてかけがえの無い友だ!!』

『レイレス……』

 ネーゲルはその言葉に救われた気持ちになるが、それと同時に無力さを突きつけられてしまう。

『……違うよ、レイレス。アタシは弱虫で、足手纏いなんだよ……』

『言うな!!』

『だって……こんな時になってまで、怖くて震えが止まらないんだよ……だからこんなアタシの事なんか放って置いてよ!』

『っ……!』

 レイレスは、かつて前向きだった彼女の口からは出ない言葉に唖然とする。

 しかし、目の前の敵はそんな事など気にせずに刃を振り下ろしてくる。

『戦いの最中にお喋りか!!キサマらにそんな余裕があるのか!!』

『小癪な!!話に水を指すんじゃあない!!』

 なんとか踏ん張りつつ、レイレスはネーゲルへ声をかけ続ける。

『ネーゲル!!ホイレン卿や故郷の村長が死んで、村もボロボロになって辛かったんだよな!!そんな時に俺は、自分の事でいっぱいいっぱいになって、構ってやれなかった!!すまなかった!!』

 呼びかける最中にも、敵は矢を次々と放ってくる。それをヒューゲルのエヴィルファルケが食い止め、レイレスを守る。

『王子!敵は任せてネーゲルを!!』

『ああ、助かる!!』

 エヴィルファルケはエイススタークを翼で弾き、エヴィルアインから引き剥がす。そして、目の前の敵へと立ち向かう。

『ここは一歩も通しません!!』

『ならばキサマを先に倒すまでッ!!』

 ヒューゲルが敵の相手をしている隙に、レイレスはネーゲルのエヴィルウォルフへと駆け寄って声をかけ続ける。

『なんで……アタシなんかに構ってないで、レイレスは戦ってよ……』

『ネーゲル!!キミは昔から、俺たちにとって大事な仲間だ!!合体に必要だからじゃない、ずっと一緒だったから……それに、誰にも傷付いて欲しくない……勿論、キミにも!!』

『でも、こんな意気地なしに何が出来るって言うんだよ……』

『なんだって出来る!!だってネーゲルは、ひとりぼっちじゃあないんだから……ッ!!』

『っ……!!』

 レイレスのエヴィルアインが、ヒューゲルのエヴィルウォルフを抱きしめる。機体同士の感覚が、乗り手の温もりを通してお互いの温度を感じさせる。

『さあ、行こう。3人で手を繋いで戦えば、何も怖いものはないさ!!』

『……うんっ』

 ネーゲルは涙を拭いて頷く。それを横目に見ていたヒューゲルは戦うのをやめて2人の元へと降り立つ。

『話は付きましたか?』

『おかげさまでね』

『それはどうもっ』

 そして、3人は再び敵機の前へと立ち向かう。

『ヒューゲル、ネーゲル。2人の命を俺にくれ!ちょっぴりじゃない、2人の全部を!!』

『勿論です』

『うん……今度こそ、覚悟を決めるよ……!!』

 3人が心を決めると、レイレスのエヴィルアインは2人の機体の額に手を当てる。

 すると、周囲に緑色の閃光が走り、3機の周辺を球状の空間が覆う。

『ヤツら、再び合体する気か!!』

『させません!!』

 シェフレラのホルツスタークが矢を放つも、その矢は空間の壁が全て弾き返して防いだ。

『なぁっ!?』

 そして、レイレスの口から合体の詠唱が放たれる。

『『ドライユニオンッ!!モーダス・トイフェル』ッ!!!!』

宜しければご評価、ご感想いただけれは幸いです。

読んでいただきありがとうございました!

後編もお楽しみください!!

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