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リント解放2


 「残念だったなァ!そこは袋小路ってやつさ!」


 冒険者達が聖騎士達を逆に追い詰める、そんな構図が展開されていた。


 「この異端者共めがぁぁぁッ!【散弾バックショット】!」


 追い詰められた聖騎士たちに、もはや良心なんてものはなく一般市民である冒険者達に対して攻撃を浴びせる。


 「【防楯シールド】」


 その攻撃を魔法の使える冒険者が魔法を行使して防ぐ。

 そして聖騎士達にできた隙を逃さず、仲間の冒険者が剣や槍を突き出し命を奪う。

 通常パーティを組んで仕事をする冒険者達ならではの連携だった。


 「えぇいお前達、この街は邪物によって汚染されている!焼き払ってしまえっ!」

 

 もはや正義にならない身勝手な大義を振り回して聖騎士たちは、街のそこここに火を放って回る。


 「アデリナ、ミア!火を消し止めろ!」


 イリーナの指示で彼女に使える二人は、手分けをしてそれを片っ端から火を消し止めに回る。


 「【水防楯アクア・シルツ】」

 「【凍結防御コンジェロ・オペクス】」


 アデリナは大量の水で消し止めミアは火ごと凍らせて行く。

 そしてイリーナは、ロムルスを縦横無尽に振り回し聖騎士達を視界に捉えた逃げ惑う聖騎士達の命を刈り取っていく。

 もはや、狩りだった。

 かつての人族と魔族との戦いがそこに再現されたような光景が広がっていた。


 『見てるだけでいいの?』


 そこにティリスが棘のある声で言った。


 『そうだな、そろそろ終わらせないとな』


 戦いが続いている現状、未だに住民達の身は危険に晒されていた。

 中央の広場付近に集まっている聖騎士達の上空に向かう。

 

 「「「【審判一矢ジャッジメントアーチャー】!」」」


 早速猛烈な魔法攻撃出出迎えされる。

 が、そんなものは痛痒にはならない。

 

 「なぜ、死なない!?」

 「吸魔の円環をつけてるんじゃ無かったのか!?」

 「同じ人間では無いッ!」


 口々に勝手なことを口にしつつも諦めずに彼らは魔法攻撃を繰り出す。


 「大人しく守られる存在であったなら良かったのにな?」


 彼らはかつて俺が身を呈して守った人族であるが、今は新しく出来た仲間に危害を加える存在でしか無かった。


 「楽に死ねるんだから許せ。【絶渦消失パニッシュ・アポコーヴォ】」


 住民達に被害が出ないよう威力と範囲をコントロールした第七階梯の魔術は、この空間の音を消し去り辺り一体を白い光に包みながら無音のままに数百の聖騎士達を文字通り消し去った。

 彼らの来ていた甲冑はおろか、肉片までも見当たらない。


 「さすがに疲れるな……」


 本日二度目の第七階梯の魔術の行使。

 反動でその場に崩れると口の中には血の味がした。

 地面には割れた吸魔の円環が落ちている。

 

 「燃やしたのね?」


 ティリスは、俺のしたことに気づいたらしかった。


 「あぁ、あれを使うにはそれしか無かった」


 本当は第七階梯の魔法攻撃なんかじゃない。

 そばで見ていたティリスを心配させないよう第七階梯の魔術に見せかけて、その一つ上の第八階梯の魔術を行使していた。

 吸魔の円環は、あくまでも俺が第七階梯までしか使えない前提で作られている。

 教団が俺の枷とした、魔法攻撃の威力減衰をさせるための特級呪物は、天災とまで評される第八階梯の魔術には耐えられなかった。

 

 「なんでそんな無茶するのよっ!他の人間の命くらいどうでもいいじゃないっ!この馬鹿アイヴィス!」


 神滅剣ディオス・リズィから管理人格の姿となったティリスは、俺の胸板に頭を埋めると泣き出した。

 でもそこまで意識を保っているのが俺の限界だった。


 「……悪いが少し休ませてくれ」

 「アイヴィス!?」


 心配そうな顔で覗き込むユミルをよそに意識を手放した。

 

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