#23-4 廃教会
『なぁティリス、確実に殺すと決めたのならもう英雄ぶらなくてもいいよな?』
俺の剣の師は、暗殺者だった。
だからとてもじゃないが、俺を大魔術師アイヴィスという英雄として見ていた人達の前で使うことは出来なかった。
英雄然とした振る舞いをするためには一旦は、師匠から学んだ暗殺者としての剣技を捨てた。
『こないだのラパスだっけ?あいつを相手にしたときは、そんなこと聞かなかったじゃない』
クスッとティリスは、笑う。
『あのときは、その余裕がなかっただけだ』
『別に、アイヴィスが使いたいなら使えばいい。私は、アイヴィスを勝たせるっていう義務を全うするだけだし、それに自分を偽っているアイヴィスは好きじゃないわ』
『偽ってなきゃ好きなのか?』
『偽ってるのを見てると何となく苦しく感じるの……ってどど、どうして私があんたの好きになるわけよ!』
ティリスは、取り乱して焦り出す。
この反応が面白いからついついおちょくって見たくなっちゃうんだよな。
『言葉の綾よ、言葉の綾!』
『あーはいはい、そういうことにしとくよ』
『それ絶対にわかってないやつ!』
必死になって否定してくるティリス、こうなっちゃうと面倒臭いというか執拗い。
『そんなこと言ってる暇があったらさっさとあの男を殺っちゃいなさい!』
『わかってるって』
俺は、気持ちを切り替えるために一つ深く息をした。
「来ないなら僕から行きますよ?」
【加速】によって加速した分銅と鎖があっという間に俺との距離を縮める。
真っ直ぐに迫る分銅の重心を見極めて神滅剣を突き出す。
「反射」
神滅剣の能力の一つである反射によって分銅は反転する。
「面白いですね、その能力。でも僕には効きませんよ?」
青年は、子供の一人を盾にして迫り来る分銅から自分の身を庇った。
「グズが!」
「なんとでも言ってくださいよ、あなたに僕は殺せない。このまま僕に捕らわれて子供達を殺した罪を背負って裁かれるんですから」
イリーナが青年の使役する子供達の剣をロムルスで払い落としている。
「まだまだ、行きますよ!」
青年は、そう言うと再び分銅を繰り出して来た。
「【極限加速】!」
【加速】の上位互換である【極限加速】によって分銅の速度は、数倍も速くなっている。
これを避けるのは、厳しいなという瞬時の判断で俺は、神滅剣で分銅を受けた。
金属と勤続がぶつかり合う硬質な音が礼拝堂に響く。
神滅剣は、見事に鎖によって絡め取られている。
だが、これでいい。
「神滅剣を取られた気分はどうですか?」
これ見よがしにゆっくりと神滅剣を絡め取った鎖を手元に引き戻す。
そこに隙が生まれるのだから――――
「【毒牙破斬】!」
闇色の二つの鋭利な突起が空中に出現、【極限加速】で加速していた分銅よりもはるかに速い速度で青年はに迫る。
そして【使役】によって子供達を肉壁にしようとしたその思考すらも圧倒的速度で置き去りにして青年の体を深く抉った。
「まさか……暗殺剣だった……とは……」
凄絶な笑みを浮かべて自身の血溜まりに倒れ伏す。
それと同時に使役されていた子供達もその場に糸を切られた操り人形のように倒れた。
術者を失ったことによって同時に【使役】の効果が途切れたのだろう。
「終わったな」
イリーナが血溜まりに沈んだ青年を見つめながらぽつりと言った。
あとは、子供達をギルドに連れ帰るだけだ。
これで、攫われた子供達の捜索と救出の依頼は完遂だ。




