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あとがき


 このたびは「キャスカル」にここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。


 いままでの作風とはちょっと違って、わりとシリアス風味が強めな本作ですが、いかがでしたでしょうか。お楽しみ頂けたのであれば幸いです。


 ご縁がありまして、これまでに数冊のポンチな恋愛小説を出版させて頂き、ありがたいことに、売れているとまでは言えないもののそれなりに好意的な反響を少なからず頂けていて、まだなんとかこの仕事を続けることができているのですが、思えばあとがきというのを書くのはこれが初めてになります。意外と緊張するものですね。なにを書けばいいのか、本文を書くときよりもずっとウンウンと悩みながら、いまこの文章を書いています。


 むかしから、空が好きでした。


 東から昇る輝かしい朝日も、西に沈む穏やかな夕陽も好きですし、夜の月も星も、もくもくと積み上がる入道雲も、雨も風も、空を飛ぶ鳥も、飛行機もヘリコプターもグライダーも、空を構成するすべての要素が好きです。いつか、空をテーマにした小説を書けたらいいなと、ずっと思っていました。


 夜、夕食も済んだダイニングテーブルで秘蔵の梅酒をあけながらそんな話をウダウダとしていたら、じゃあ書けばいいじゃないかと、実に気安く夫が言ったもので、おう分かったよじゃあ書いてやるよとモリモリ書き上げたのが本作になります。まあ、自分が好きでやっていることですから文句を言う筋合いでもないのですが、彼は小説を一本書き上げるというのがどれだけ大変なことなのか、まだいまいちよく分かっていないのです。


 これまでに書いた小説についても夫は「読んだよ」「面白かったよ」とは言っていましたが、どこがどう面白かったのかとか、そういう具体的な感想はなにもなかったので、本当にちゃんと読んでいるんだかどうなんだか。ああ、あの微妙な苦笑いみたいな表情。思い出すだけでも腹立たしい。そんなわけで、夫への意趣返しも込めて勢いでこの話を書きはじめたわけなのですが、それは同時に、自分にとっても苦しいものになってしまいました。やはり、下手なことはするべきではありませんね。


 書き進めるうちに、やっぱり自分にシリアスな話は向いていないのではないかとか、おとなしくポンチな恋愛小説を書いていればそれでいいのではないか、みたいな迷いがムクムクと膨らんできて、そのたびに筆が止まってしまいそうになったのですが、そんなとき、わたしの心を支えてくれたのが、読者さまからの感想の声でした。わたしが書いた物語を好きだと言ってくれる読者のみなさまがいてくださったからこそ、ウンウンと悩み、寝しなの布団の中で襲ってくる謎のフラッシュバックに身もだえながらも、なんとか最後までこの物語を書き上げることができました。本当にありがとうございました。


 この仕事をしていると、わたしはこれまで小説に書けそうな体験をたくさんしてきましたよ、なんて仰られる方とお会いする機会などもあるのですが、自分の体験を物語に落とし込むというのは存外、大変なものです。次はまた、肩のちからを抜いて気楽にポンチな恋愛小説などを書いてみたいなと考えておりますので、よろしければまたお付き合い頂けるとうれしいです。


 あと、この物語を書きはじめるきっかけをくれ、わたしの無知や勘違いに対して「それでどうやって飛行機を飛ばしていたの?」と呆れながらも的確な助言をしてくれて、わたしの文筆趣味を理解はしないまでも放任しておいてくれている憎たらしい夫にも、いちおうの謝辞を送っておきます。今ごろはたしか北極圏のあたりを飛んでいるはずですし、面と向かってお礼を言うのも恥ずかしいので、北に向かって拝んでおきましょう。


 いつも支えてくれる友人たち。特に、ウィルムフリーデ、イングリット、そしてエーコ、家族も同然の三人に最大限の感謝を。


 最後に、今これを読んでくれているあなたに。お読みくださいましてありがとうございました。なにか、あなたの心に届くものがありましたら、一言でも感想を頂けると筆者は小躍りをして喜びます。


 それでは、またみなさまにお会いできることを願って。





 毛を刈られて腑に落ちなさそうな表情のコブ羊たちを見下ろすハンザの丘にて。



                        


                            エルネスタ・キムラ


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