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間借りから始まる恋~彼が有名声優だと私だけが知っている~  作者: コイル@オタク同僚発売中
甘い甘い新婚さん

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神主伝承?! と俺が知りたいこと(隼人視点)


「隼人さん、おはようございます!」

「おはよう」


 劇団の新人、高梨たかなしが部屋の雑巾がけをしている。

 このおにぎり屋を劇団のみんなに貸そうと思った時、やはり実家なので淋しさがあったが、今は5人が同居していて、家自体に活気が戻った。

 二階は日向が寝起きする程度で、全く使ってなかったのだが、若い劇団員たちが集まって綺麗に使ってくれている。

 全く貼りなおしてなかった障子も綺麗にされているし、毎日雑巾がけをしてくれているので畳も美しくなってきた。

 家も生き返ったようで嬉しい。


「隼人くん、おはようー。今日はこっちは入れるの?」

「夕方から収録だ」

「了解~。相談なんだけど、月曜日の定休日無くしてもいいかな? 順番に休んでるから定休日要らないんだけど」

「好きにしてくれていい」

「ありがとうー! みんな食い扶持は多い方が良いからさ」


 美和子さんを中心にお店は回り始めていて、心強い。

 劇団や芸能関係は、それだけで生きて行くのは、ほぼ不可能だ。

 俺も同じ年代の男性と同じくらい稼いでいるかと問われたら難しい。

 収入の話も日向としたのだが「じゃあ私は会社をやめないように頑張りますね。一応有名企業なので保障は厚いです」とほほ笑んだ。

 俺も仕事を増やしたので、ここから5年くらいはかなり稼げると思うが、結局人気商売だ。

 どこかのタイミングで専門学校の講師などになる人も多いが、俺は人に教えることなど出来ないので、地道におにぎり屋を含めて、続けて行こうと思う。

 特に何にお金を使うわけでもなく、おにぎり屋を10年続けた結果、かなりの貯金が出来たのが幸いだった。


「隼人さんと日向さんの結婚式って、神社でやるんですか?」

 高梨が豚汁用の野菜を切りながら聞いてくる。

「日向ちゃんの白無垢が見たくてね~~ドレスが見たくてね~~隼人くんがごり押ししたの。……目が怖い!!」

 俺はペラペラうるさい美和子さんを睨んだ。

 結婚式は俺が日向の可愛い姿をみたいからやることにした。

 最初は「ええ……お金かかりますし……」と言っていた日向も、俺が可愛い姿をみたいと素直に伝えたら「えへへ、じゃあやります」とほほ笑んでくれた。

 可愛い、好きだ。

「ちなみに今、隼人くんは日向ちゃんの白無垢姿を想像してニヤニヤしてます、睨まないで! 本当のことでしょ?!」

 美和子さんには非常に感謝しているが、俺と日向が結婚してから「私はまるっとお見通しでしたけどね」と毎日言っている。

 しかし美和子さんが飲兵衛で酔いつぶれた日向を俺の背中に乗せなかったら、この恋は始まらなかったので、あまり強くも出られない。

 昔から勝てる気がしない。

 高梨は作業を続けながら話す。

「その神社って、なんか楽しい大会してるんですよね。僕も出てみたいです!」

「……死ぬぞ……」

「え?」

「……体力に自信はあるか」

「もちろんですよ!! 僕中高と体操やってて、結構運動神経良いんですよ」

「……そのレベルでは太刀打ちできない……」

「気になりすぎます!!」




 結局神主さんに聞きたいこともあったので、丁度行われていた初心者向けのハンター大会に高梨を連れて行った。

 初心者向けの大会には神主さんは出場されてなく、小学校低学年の子たちがメインでやっていた。

 俺はゴール地点の部屋で神主さんと結婚式の最終打ち合わせをする。


「まさか日向ちゃんの白無垢姿をここで見られるなんて……神主冥利に尽きます」

「天気が心配ですね」

「毎日祈ってますよ。どうしても、その日だけは晴れて欲しいと。参進の儀……5月だと本当に気持ちが良く行えると思うのです」

「楽しみです」

 

 俺がここで結婚式をしたいと思ったのは神社の美しさと立地が大きい。そしてこの神主さんに興味があるからだ。

 普段は朗らかで丁寧な対応をしてくれるのに、ハンターになった瞬間に恐るべき俊敏さを見せつける。

 表と裏がある人は芸能界でも沢山いるが、こういうタイプは居ない。

 あと単純に負けたのが悔しい。また樹くんたちが出る大会に出たかったが、日向が「舞台もありますし、もう顔とか身体に傷をつけるのはNGになったんですよ?? 顔出し始めましたよね??」と目が全く笑ってない状態で言った。

 残念だ。そう思っていたら、打ち合わせの場所に神主さんが、袋を持ってきた。なんだろう……みると神主さんと同じ全身を鼻下まで隠すことができる忍者のような衣装が入っていた。


「これ、僕が前に使っていたものですが、僕は新しいものを買いましたので、どうですか。体や顔に傷が残らないですよ」

「神主さん……」


 とても嬉しいが日向が真顔になりそうだ。でも俺はありがたく頂くことにした。

 一度でも樹くんを捕まえたいし、神主さんの後ろを走ってみたい。

 どんな顔をしても日向は笑いながら参加するんだ。そういう子だ。

 ポン……と現状報告がはいる。

『高梨、確保』

 どうやら高梨はハンター小学生に捕まったようだ。

 神主さんは時計を見ながら言った。

「開始60分……持ったほうなんじゃないかな」

「そうですね。また連れてきます」

「この場所の存在価値は多種多様な年齢や職業の人たちと接することが出来ることだと思っています。色んな人を連れてきてください」

「……はい」

 日向は「ブラック神主ですよぉぉ??」と怯え切っているが、俺はこの人をとても素敵だと思う。

 そしてずっと疑問に思っていたことを聞いてみる事にした。


「あの、日向のお母さんを知っていると楓さんに伺ったのですが」

「そうですね、僕の同級生で、幼馴染なのです」

「俺は日向から子供の頃に出て行った……としか聞いていないし、日向に聞いても『いやぁ~あの人はいいかな~~』というばかりで、気になっています」

「そうですね、僕からも同じ言葉を言いましょう『あの人はいいかな~~』です。多少変わった人で……平たくいうと日向さんを100倍ほど煮詰めたパワーの源のような人です。今は海外で社長さんをされてますよ」

「……なるほど」

 日向を煮詰めたと言われると想像しやすい気がする……いや、日向を煮詰めたら……危険なのでは……。

「元々こんな小さな町に収まるような格の人ではありませんでした。それでも幹太さんに惚れていたのですよ、僕は見てただけですが」

 神主さんは静かに目を伏せた。

 そこには日向のお父さんである幹太さんと離婚されたお母さん、そして神主さんの話が少しだけ見えて俺は黙った。

 神主さんは続ける。

「結婚式が終わったら、私のほうからメールを送ります。それで良いのだと思います。世の中にはそういう関係もあるのです」

「……はい」

 日向が我慢しているのではないかと思ったが、違うようだ。

 それならそれでよい。




「……隼人さん……地獄を見ました……」

「だから死ぬと言っただろう」


 ゴール地点に戻ってきた高梨は面白いほどボロボロだった。

 捕まえたのは小学校二年生の男の子で「追いかけたら転んで落ちてきた」と笑っていた。

 木の根っこでボコボコしているので、予想以上に走りにくいのだ。

 車に乗せた瞬間に眠りに落ちた。気持ちはよく分かる。

 

 おにぎり屋で高梨をおろして、家に帰る。

 LINEを見たら「ご飯食べられそうです」と日向から入っていた。

 昨日は魚にしたので、今日は肉にしよう。俺も疲れたので簡単に丼に……鶏肉があったな。

 元々料理は好きなので一人でもある程度作っていたが、食べてくれる人がいるとバランスを考えるようになる。

 特に日向はどれだけ食べさせても太らない。どうなっているのだ。

 野菜が足りないから、煮びたし。それに豆腐も付けよう。茄子もあったな。

 

 家に帰って親子丼と野菜の煮びたし、茄子の辛みそ炒めと豆腐の味噌汁を作った。

 お風呂に入った後、日向が帰ってきた。


「ただいまですー! お腹すきましたー。聞いてくださいよ、隼人さん今日ねぎゃあああああ!!!!」

「おかえり日向」

「ぎゃはははは!!!! どうして、ちょっとまって、ぎゃあああ怖い、なんで?! お腹痛い、足がつる!!」


 お風呂上りにとりあえず神主さんから頂いたハンターの服を着てみた。

 若干大きい所がまた悔しい。俺より体が大きいということだ。

 もっと鍛えなければならない……これは挑戦状だ。

 日向は廊下に転がって笑い続けている。

 俺がスッと近づいたら「いやあああああ」と叫んで逃げた。

 もう条件反射になっているようだ。


「何してるんですか、マジで、ちょっと、こっち向かないでください」

「今日用事があって神社に行ったら、頂いた」

「完全にブラック神主伝承してるじゃないですか。もう私ぜっったい行きませんからね!!」

「日向を捕まえたい」

「もう~~隼人さんったら、私を奥さんとして捕まえたじゃないですか~~……で、騙せませんか?」


 俺は無言で首を振り、日向はうな垂れた。

 楽しくなってきた。

 仕事が落ち着いたらまた出たい。

 俺は楽しくなって忍者のまま食事をしようとしたら、日向が脱がせてきた。

 その後自分で着ていたから、やはり日向は面白い。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 掛け合いが本当良いです、好きです。 [一言] 少し前までは食べても太らない体質だったんですが、それだけ意識せずに動いてたんでしょうね。
2020/03/10 13:41 退会済み
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