目覚め
「——————————」
声が聞こえる。
「————————さい。」
自分を呼ぶその声は誰だろう。
「起きなさいコメちゃん―————」
不明確な声はだんだんと明確になっていく。
「今日はあなたの16歳の誕生日よ—―————起きなさい―———」
その声に導かれるように、意識はゆっくりと覚醒に近づき・・・。
「・・・・・へんじがない、ただのしかばねのようだ。」
「ちょっと待てぇー!!!」
跳ね起きた。
危なかった・・・朝の穏やかな睡眠がそのまま安らかな永眠へと変わるところだった。
眠気眼をこすりながら声の発信源に顔を向ける、そこにはお母さんが・・・
「あらコメちゃん、おはよう」
「ダレダお前ー!?」
お母さんじゃなかった。
小さな身体には、そもそも顔がなかった。
マスコットキャラクターのような姿のその人物は「母」とでかでかと書かれているだけの顔をこちらに向けている。どう考えても自分の母に当てはまる箇所はない。
ベットの上で困惑する少年に対し、やっと気づいたように、
「私はお前の母親だ」
「嘘だぁぁぁぁぁぁ!!」
違うそうじゃない。
おれが言いたいのはそういうことではなく、
「へ?てゆーか何?どうなってんのおれ・・・」
ここがどこか、自分がだれか、そしてこの母もどきはなんなのか。全くと言っていいほどわからない。
どうやら俺は記憶を失っているらしい。
自分で記憶を失っていることに、こうも冷静沈着に対応できる自分に違和感はあったもののとりあえずは状況を確認しなければならない。
「今・・・この世界は大魔王に支配されようとしているの・・・」
「確認する暇もなく唐突になんか始まった!?」
「そしてある日・・・偉大なる予言者がとある予言を残していったわ・・・それは・・・」
こちらのツッコミを華麗にスルーして母(?)は続ける。
以下、預言者と母の回想である。
~三年前~
「ちょいと奥さん。お宅んとこの息子さんってね?どうやら三年後に世界を救う勇者になるそーよ?」
「あら~そ~なの~?ニートにならなくてよかったわ~」
~現在~
「と、いうわけ」
「井戸端会議!?」
そんな日常の一端のノリでなんてことをいうのかその預言者とやらは。
「まぁそんなわけだから、あなたは大魔王を倒しに行くのよ。」
「あ゛ーもー・・・わかったよ・・・いくよ・・・」
どうせ自分のこともわからないんだ、なるようになれってやつだ。
状況についていけず、判断をあきらめた少年に対し母(?)は、
「それじゃあ試験会場へ行って、勇者免許を取ってきなさい」
「免許いるの!?」
「そりゃいるわよ!免許なしで剣なんて持っちゃいけないし、免許無しでモンスターなんて倒せちゃったらブラック●ャックみたいじゃない!」
「ブラック・・・なんて?」
こうして少年、コメディは免許をとりに試験場へ行くことになった。
+++
「はい次の方ーコメディさーんどーぞ」
おれは勇者になった。