闇の中の企み
カーテンの閉め切られた部屋には、小さな蝋燭の光だけが揺れていた。
埃っぽい匂いが充満する中で、蠢く影が三つある。
一つが、焦燥に満ちた声を上げた。
「まさかあの貧相な娘が奴の発作を治めてしまうとは……!アイツは何者なのだ!?どこにそんな魔力があったというのだ!!」
「落ち着いて下さいませ、殿下」
もう一つの影が、猫撫で声で宥める。
「予想外の出来事ではありましたが、対処できないほどのものではございません。計画は着実に進められておりますよ」
「そ、そうか……そうだな……」
熱に浮かされたように、影が呟いた。三つ目の影が、口を開く。
「だが、どうするというのだ?あの娘をどうにかしないことには、レアン殿下の王位剥奪までこぎつけんぞ」
「あんな者でも、一応はこの国の魔道士だからな……迂闊には手を出せまい」
「心配ありません。既に策は考えてあります」
「なんと……それで、どうするのだ」
「失敗は許されんぞ!!もし失敗するようなことがあれば、俺の首が飛びかねん……!!」
押し殺した声に、影が薄闇の中でニヤリと笑う。
「ご安心下さいませ。殿下の御身の無事は保障致します……」
「おお、そうか……では、早急に計画を実行せよ」
「御意」
応えて、影はスッと部屋から出て行った。残された二つの影は、声をさらに落として話し合う。
「……殿下。本当に上手くいくでしょうか」
「彼奴が言うのだから、恐らく大丈夫だろう……それよりも急がねばならん。レアンめの正体を早く暴いてやらねば……」
蝋燭に照らされた男――アロガンは、奸邪に塗れた笑みを浮かべた。