恋愛の女神様
酔った勢いとは怖いものである。
俺の目の前には、自称・恋愛の女神様がいた。冗談で試したらなんか出てきたのだ。ボワンと。当然、酔いも覚めた。まるで召喚の代償のように。
ちなみに黒髪ツインテでオリエンタルな衣装を着た、自称・女神様は女神様と言うだけあってスタイル抜群で綺麗だった。その女神様は現在、手に持っている本をパラパラとめくって読んでいる。
「……あ。アンタの意中の彼女、他にも狙ってる奴いるみたいね」
……そういえば俺以外にも彼女に声を掛けてるイケメンがいたな。
女神様は尚も本をパラパラとめくって内容に目を通している。あの本、もしかしなくても俺らの個人情報だだ漏れじゃね?
「でもコイツ最っ低だわ。女の敵ね。……私が支援したげるからアンタ、彼女をモノにしなさいな」
と、言われてもなぁ……。決定打があればとっくに告白している。現状では、悔しいことにイケメンがリードしている。
「あの、何かいい道具とか無いんスか?」
キューピッドの矢的なやつ。
そう問うと彼女は眉を寄せた。
「あるにはあるけど、アレ結構威力あるわよ?」
なに、アンタ彼女を自分に従順な人形にしたい訳? 目に光の無い彼女を手に入れて満足なの?
とかいうトンデモ事実が飛び出してきた。他の道具も威力を求めすぎてやばいやつばかりらしい。
なにそれこわい。
というか何故に威力に拘ったし……。もうちょっと別方面にこだわれよ製作陣。
相談の結果。俺の株を上げるのは難しいので、イケメンの株を下げて相対的に俺の株を上げるという事で落ち着いた。
それからの数日間。俺と女神様はイケメンのストーカーと化した。そしてヤツの悪行の記録をバッチリ押さえた。彼女が引くこと間違いなしの大スクープの嵐である。あのイケメンまじで女の子の敵だったわ……イケメンだからって何でも許される訳じゃねーぞ、おい。
しかし結局、俺は振られた。そりゃまあ、彼女のためとは言え、やったのはイケメンのストーカーだったし? 彼女とイケメンがくっ付く未来を覆せただけでも良かったというか?
悲しくなんてねーぞこんチクショウ!
「ま、私が付いてるんだから、彼女の一人や二人すぐにできるわよ」
ぽんぽんと背を叩いて励ましてくれる女神様の気持ちがほんのりと嬉しい。でも一人はともかく二人は倫理的にやばいだろと内心ツッコミ入れるのは忘れなかった。
−−それが彼女との馴れ初めである。
当時は思ってもみなかった。まさか遠い未来に、この女神様とくっつくことになるだなんて。