【ソーセージ mari & mari】 〜#12 その時、彼女は⁈ みずたまりの選択とは
【その時、彼女は⁈ みずたまりの選択】
「あっ、痴漢! あのコピンチだわ」
通勤中の電車の中で、みずたまりは咄嗟に感じた。
周囲に人がいるにもかかわらず、スカートを抑え嫌がっている
女の子の服をまくりペタペタ触りまくる男がいるのだ。
「でも、もし間違ってたらどおしよう? なんかの撮影中とか。
そういう趣味のふたりがたまたまやってたりしてたら。
あたしが訴えられちゃう? どおしよどおしよ‥‥‥」
しかし、みずたまりはコブシをギュッと握り、
「いや、ここはあたししかいない! あたしがいかなくっちゃ。
彼女を助けるのはあたしだけなんだ」
ところが、みずたの脇を駆け抜けた者がいた。
『○○高校 卓球部』のロゴ入ったジャージ姿の小柄な女の子が
自分の体よりも大きなスポーツバックを振り回しながら男に向かって
いったのだ。
男は非力な女子高生の攻撃をうるさく感じつつも必死にバック振り回し
食らいついてくる迫力に気圧されていた。
そして、被害にあっていた女性も勇気付けられ、男を非力な力で
叩き始めたのだ。
その光景を少し離れたところからみずたは眺めていた。
「いいんだ、いいんだ。
助けたのがあたしじゃなくてもいいんだ。
結果オーライ結果オーライ。
助かったんだから、それでいいんだ。
助けたのがあたしじゃなくてもいいんだ」
自分に延々と言い聞かせていた。
決して、出て行くタイミングを逸してフリーズしてしまったとは
認めたくない、みずたまり24歳だった。