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狩り人96

昨夜の大山椒魚騒ぎはあったが、結局はペロリと料理を平らげたカリンは夢の中である。

そんなカリンとは違い、ダリルは薄暗い中にて既に活動を開始していた。

まずは己の鍛練である。

槍と剣、弓の鍛練を。

後は礫を放つ鍛練も加えている。

破竹が生えていた為に矢の補充は容易くはなっている。

鏃には石を使い、使い捨てに近い矢を量産。

この矢は殺傷能力は皆無に近い。

特にボアングに対しては全くダメージを与える事など出来まい。

出来るとしたならば、ヤツの目をピンポイントにて射抜ければダメージとなるであろう。

だが、大きな鼻頭らと頬から湾曲して伸びる牙が目への斜線を遮る。

とてもでは無いが狙うのは厳しいであろう。

それにダリルとて弓の名手と言える程の腕前では無い。

確かに多少離れた場所から獲物を狙い射り射抜く事は可能。

だがそれはピンポイントにて狙った場所では無く、体全体を狙って射抜いているに過ぎない。

無論、狙った場所近くへと矢は刺さるが、百発百中とは行かぬ物なのだ。

そうなると矢玉は絶対に余裕がある物とも言えぬ。

その際に皮袋へ礫となる小石を入れ持ち歩けば、咄嗟の際にソレを放つ事もできよう。

何より矢とは違い弓を引き絞る動作が要らぬ。

相手の気を引く程度であれば、礫は有用と言えるのである。

その様な鍛練を終えたダリルは着替えと布を持ち川へと。

川辺にて衣服を脱ぐと洗う下穿きと拭う布を持ち川の中へ。

ザブザブと分け入り身を清め川へと浸かる。

天然の温泉が川底より湧き出る此処にて湯に浸かるのは快楽(ケラク)である。

また日も昇らぬ薄暮の時にて、洞窟天井部へ空いた穴からは星空が瞬く。

そして光苔と月光石が織り成す洞内に現れる擬似星が天井と壁にて瞬き幻想たる空間へと。

それらを眺めつつ湯に浸かる。

そんな凄く贅沢な時を。

暫し湯を楽しみ、その後は朝飯の支度へと。

昨夜は些か調理し過ぎた為に料理は余っていた。

朝は、それを暖めれば良かろう。

衣服を纏ったダリルは、鹿肉を燻していた穴へと向かう。

流石に一夜にて焚き火の火は消えてしまっていた。

立ち昇る煙も絶えているが、熾火は残っている様であり薪を足せは火勢を盛り返すであろう。

そんな焚き火は、その侭で穴へと入る。

燻した食材を確認すると思った以上に燻されてはいる様だ。

だが、まだまだ燻し足りないと感じたダリルは、燻蒸作業の続行を決めた。

林にて薪を拾い集め熾火が燻る焚き火へと足していく。

そして焚き火の火勢を取り戻させるのだった。

その作業を終えて昨夜の料理に手を加え終えた頃、漸くカリンが目覚める。

何時もの様に身支度させた後で朝食を。

大山椒魚肉の正体を知った際には渋っていたカリンではあったが、現在は文句も言わずに喜んで食している。

現金なものである。

食事と食休みを終えるとダリルがカリンへと告げる。

「カリン。

 今日は鍛練は行わなくて良い」

その様な事を。

「えっ!

 なんで?」

己を鍛える事に納得し精進し始めたカリン。

出鼻を挫かれたじろぐ。

そんなカリンへダリルが説明を。

「今日はボアング討伐に挑んでみようと考えているのだ」

その様に。

「えっ!

 大丈夫なのっ!?」

鍛練を止められた事より、ダリルの身の安全に不安を覚え尋ねてしまう。

そんなカリンへ困った様に。

「絶対に大丈夫とは言えぬ」

「そ、そんなぁっ!」

驚くが、そんなカリンへ。

「だがな、カリン。

 何時までも此処へ居る訳にもいかぬ。

 故にボアングは除かねばならぬのだよ」

そう諭す様に。

「けど…

 危ないんだよね」

心配そうに。

「絶対に安全とは言えぬな。

 特に今回は格上の相手だ。

 武器も通じぬ」

「そんなん倒すの無理じゃん!」

悲鳴を上げる様に。

「いや、手が無い訳では無い」

「へっ?」

不思議そうにダリルの顔を見る。

そんなカリンへ天井を指差し告げる。

「あそこからヤツを此処へ落とす」

「へっ?」

天井の穴と、その下のガレ場を交互に見遣った後で、ダリルをマジマジと。

「昨日に狩った鹿と同様に落とし穴へ嵌めて狩るつもりだ。

 無論、絶対に安全とは限らぬ。

 そして落とした後に、ヤツが倒れる保障も無い。

 だが落とせば、倒せぬとも此処へ閉じ込める事は出来よう。

 さすれば後から討伐可能な武器を用いて倒す事も出来るやもしれん。

 そうなるとだ。

 おまえが此処に居る事は危ういのだよ」

そう告げられ、カリンもダリルが告げている意味を理解できた様だ。

「そんなの…

 上手く行くの?」

不安そうに。

「正直分からぬ。

 だが、この侭では埒が空かぬ故にな。

 多少の冒険は必要であろうよ」

そう断言するダリルであった。

その後で2人は荷物を纏めてから荷を上へと続く通路へと移動させる。

鹿肉の燻し作業も一時中断とする。

ソレも鹿革へと包み同じ様に移動させる。

これらは最悪、此処へ置いて移動するしかあるまい。

ボアングが死なず閉じ込めた状態となった際に、洞窟内へ放置すればボアングに漁られる嵌めになろう。

そう考えたならば、傷むか傷まぬかの賭けになるが、此処へ放置した方がマシと考えた様だ。

支度を終えたダリルはカリンへ言い聞かす。

「良いか、カリン。

 迎えに来る迄、此処を動くなよ。

 間違っても洞窟内へと入るな。

 良いな」

その顔は決戦を挑む決意した男の顔である。

「分かったよぉ、ダリル兄ィ。

 でもぉ、でもっ!

 大丈夫だよねっ、無事に帰って来れるよねっ」

縋る様に。

そんなカリンの頭を優しく撫で。

「無論だ。

 むざむざと遣られはせんよ」

そう告げ微笑むのであった。


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