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狩り人90

現在の町なのだが、見習いや序級のハンターも溢れている状態なのである。

それ故に町での安全な依頼は小遣い稼ぎの見習い達が浚ってしまっており在り付けない。

例え依頼に在り付けたとしても子供の小遣い程度の依頼なのだ。

多くを熟さねば生活としては成り立たぬといえよう。

では近場にて採取は?

それこそ序級ハンター達の奪い合いの場と言って良かろう。

採り尽くされ碌な物がありはしない。

何とか見付けても量が無ければ、此方も生活するには厳しい。

そうなると奥へと進むしか無いではないか。

それに、なまじ初級ハンターへ昇格したばかりに序級ハンターの採取場を荒らす訳にもいかぬ様に。

中々に辛い立場と言えよう。

そんな理由にてカリンは森の奥へと足を進めたのだが…

現実とは思ったよりもシビアであった様だ。

それ故に一念発起にて鍛練にも熱が入るといった所であった。

そんなカリンを快く感じつつ洞窟内へと降り立ったダリルは昼食の支度へと。

ロアンデトロスの干し肉は、まだまだある。

それを使用するのは良いが、折角、川が在るのだから昼は魚にでもしたい所。

その様に考えたダリルは川の水が澱み泉となった場所へと。

まだ未確認地帯であったが魚が跳ねているのは確認している。

音からして、そこそこの大きさだと思われた。

鎧は外した侭で剣と槍を持ち泉へと。

岩などが在ればガチンコ漁が出切るのだが、あいにく泉には岩などは存在していない。

無論、釣竿などは無い訳で、手掴みか槍で刺す程度しか手はあるまい。

この槍で刺すなどと言う遣り方だが、中々に高難度の技となる。

とてもでは無いが普通は成功するものでは無い。

だが相手の動きを予測して動く事で可能に。

これも長い鍛練により身に付けた技術の1つである。

容易く身に付ける事など出来はしないのである。

泉へと辿り着いたダリルは泉の中を確認。

水が澱んでいるとはいえ常に川より水が流れ込み、水が循環しては川へと流れ出している。

緩い流れであるが新鮮な水が常に供給されており、泉内部の水は澄んでいる。

故に泉底まで視認可能となっていた。

泉底には水草が生え小魚が群れている。

貝や川海老の姿も。

ザリガニ系の海老の姿もあり、亀も棲んでいる様だ。

それ以外には山椒魚の姿も見える。

そしてダリルが目当てとしている魚の姿も…

川の方へも回遊している魚は結構大きい様である。

1匹2匹ではなく、結構な数が泳いでいた。

天敵が居ないのであろうか?

全く警戒心を持たぬが如く、悠々と泳いでいる。

恰好の的と言えよう。

そんな魚の内で泉底にて留まっているヤツへと狙いを。

銛を突くが如く槍を魚へと突き入れる。

いや。

正に扱いは銛と言って良かろう。

槍の穂先は正確に魚を捉え貫く!

それと同時に魚を泉上へと。

80cm超えの大物である。

2人で食べるには上等と言えよう。

泉へと分け入り腰まで使って突き獲った獲物を持って、ザブザブと水を掻き分けながら岸へと。

焚き火前の拠点へと戻り暫し焚き火の面倒をみる。

少々火勢が弱まり不安定となっていた焚き火が火勢を盛り返し安定。

それを確認した後で獲ってきた魚の対応へと。

とは言え、焼くか煮るしか手は無いのであるが…

まずは魚を下ろす事から。

鱗を短剣を用いて剥がす様に取り去る。

大きな鱗は中々に頑丈である。

飛び散る様に剥がれて行くが、結構悪戦苦闘なダリルであった。

その後は内臓を取り去る。

此方は綺麗に取り去り除去。

後で川へと捨てる事となるであろう。

三枚に下ろし、頭も兜割りへと。

骨もぶつ切りにした後で塩を振り暫し置く。

身も切り分け同様に。

その間に林で食べれる野草などの調達を。

熾火を使った釜戸を用意し、採取中に鍋へ水をいれ掛けておく事も忘れない。

採取から戻ると塩をした魚を水で一度洗い流す。

これにより魚臭さが幾分か抜けるのである。

その下処理を終えた頭と骨を鍋へと。

暫くは、この状態にて煮やして出汁を取る事となろう。

カリンは数度目の休みへと入っている。

鍛練へ向かわせる時に持たせた干し肉と干し果物を噛んでいる。

体力造りの一環として食す事を意識しているのだ。

とは言え、一度に食べる量は少量としている様だが…

そんなカリンの元へ炊事にて発せられる香りが漂い始める。

朝から繰り返し同じ鍛練を黙々と行っていた彼女は干し肉などを噛んでいたとしても腹は減る。

そこへ良い香りが漂って来るのだから堪ったものではない。

香りに釣られる様に焚き火へと。

まぁ、仕方あるまい。

ダリルは苦笑しながら黙々と調理を。

切り身は4つの調理に分ける様だ。

1つは鍋へ野菜と共に投入する。

その前に煮えた骨と頭部から剥がれる身を取り去り、骨などは除去している。

此方は暫く煮やし放置する。

まぁ、灰汁を時々取り去ってはいるが、他の調理がメインとなる。

1つは串を刺し軽く塩をした後で焚き火へと翳しておくだけだ。

そして魚の切り身をフライパンにてソテー。

これは脂が乗った腹の部分を。

その後で脂が乗ったフライパンにて皮をチリチリに焼き上げ、一口大の切り身と野菜を投入。

更に穀物に類した実を投入して炒り、水を足して皿で蓋をし炊き上げる。

そう、パエリアである。

無論ダリルはパエリアなる技法は知らぬ。

ただ昨日作った乞食鳥にて自然と炊き上がった穀物にてヒントを得たに過ぎぬ。

(どうやら、この実は水を足して暫し煮やした方が美味そうだ)

などと思い、その発想を実戦したに過ぎない。

そして炊き上がった穀物は魚の旨みを吸って得も言えぬ味へと変化して行く事となるのであるが…

食す迄はダリルも知らぬ事であった。


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