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狩り人09

納品を終えたダリルは皆と別れ実家へと戻る。

ゼパイル、ヤムナ、村長とは村の宿屋で待ち合わせる事した。

先ずは実家に土産を持ち帰り、それから向かうのである。

土産はオコジョと白狐の肉だ。

布袋へ入れて担ぎ運んでいる。

筋っぽく美味くは無いが、農民には貴重な蛋白源と言えよう。

実家へ着き玄関ドアを無造作に開く。

「おや、ダリル。

 帰ったのかい。

 お帰り。

 無事で良かったよぉ~」

中年女性がダリルを見て告げる。

「母さん、ただいま。

 今回も結構狩れたよ。

 これ、売り物に成らなかった肉だけど、皆で食べてよ」

少し、ぶっきらぼうに告げる。

「まぁま、こんなに沢山かい。

 何時も悪いねぇ。

 でも…

 無事で本当に良かったよぉ~

 雪深い深山なんかに出掛けるなんて。

 あたしゃ心配で心配で…」

どうやら母親には狩人稼業を歓迎されてはいない様だ。

「う~ん…

 俺はハンターになりたいからさ。

 この程度はなぁ」

困った様に。

「それなんだけどねぇ。

 どうしてもハンターにならなきゃならないのかい?」

「その話は散々したじゃないか。

 俺はハンターになるため、長いこと修行してきたんだよ。

 今日、漸く師匠にハンターになることを許可して貰えたんだ。

 今更だよ」

ダリルが告げると…

「考え直すことは、できないのかい?」


不安気に告げてくる。

狩人も、決して安全な職業とは言えない。

だがハンターは、輪を掛けて危険な職種と言えよう。

農民や商人、職人と比べると、危険過ぎるとも言える。

そのため心配する母親から諫めが常であった。

「いや。

 もう決めたことだから。

 そうそう。

 今日は師匠が狩りの成功に対して祝ってくれるんだってさ。

 だから晩飯は要らないから」

そう言い残し、少し慌てた様に家を後にする。

この手の話を母とするのを苦手としているダリル。

逃げる様に移動を始めた。

親としては、そんな危険な職種に就いて欲しく無い。

そんな親心も分からなくは無い。

少し複雑な気分でもあった。

家を後にしたダリルは村の宿屋を目指す。

村の飲食店は1つだけである。

それは宿屋が行っている店。

いや。

どちらかと言うと、宿の方が付属と言えるだろう。

宿が活用されるのは、月に数度しかない。

泊まるのは村を訪れる行商人だけだ。

稀に旅人やハンターが訪れた場合に泊まる位だろう。

普段は食事処として営業しており、夜は酔客の溜まり場であった。

そんな宿屋。

今日も早い時間なのに酔客が数人程居る。

他に娯楽が無いとは言え、困った者達である。

とは言え、完全に日が陰る前に宿屋に入ったダリルも同様と言えるのかもしれないが…

宿の食堂へ入ると、既にゼパイルとヤムナ、村長が一画を陣取り待っている。

酒が来ている様だ。

無論、ダリルの杯もである。

ダリル待ちと言った所か。

「お待たせしました」

一声掛けてから席へと。

「いや。

 料理も来ておらぬ位じゃて。

 然程、待ってはおらぬわぇ」

楽しそうに告げる村長。

いやアナタ。

誘われていませんからね。

溜め息を軽く吐くダリル。

何か諦めた感じか。

「若いのに溜め息とは感心せんのぅ。

 幸せが逃げるぞぇ」

シレッと告げる。

「そうですね。

 では、乾杯しますか」

軽く流す。

「うむ。

 ダリルの狩りの成功。

 ハンター加入に向けて…

 乾杯!」

ゼパイルがダリルの言を受け、乾杯の音頭を。

「「「乾杯!!」」」

乾杯の声が上がり、杯を干す4人。

乾杯とは乾かす杯と書く。

乾く、つまり杯を空にする行為。

故に杯に満たされた酒を全て飲み干す。

これが乾杯である。

故に杯の酒を全て飲み干すのは正しい。

正しいが…

杯に注がれた酒は、村の地酒である【フォボス】である。

別名【豪炎酒】

火を翳せば燃え盛るとも言える程、度数の高い酒なのだ。

その酒を容易く飲み干す…

有り得ない男達である。

実は、この村の者達はアルコール耐性が非常に高い。

故に酒に滅法強かったりする。

しかも、この地の特産であるファルカ芋は糖度が非常に高く、【フォボス】酒の原料となる。

ファルカ芋は多年草であり、大量に収穫できる。

そのため、ファルカ芋を使用した酒造りが盛んとなったと言えよう。

その盛んとなった酒造りにて得た酒。

それを安価に村では気楽に飲んでいる。

そのためか、この村では酒豪が多い様だ。

騎士爵が村を治める様になった頃、地酒の蒸留酒造りを導入。

元々が度数が高い地酒が更に濃度が上がり…

今の【フォボス】となった訳で…

村では気楽に飲まれている。

なにせ酒を造るのに使った芋の滓が良く燃える。

コレを使用して蒸留するため、安価に大量生産可能なのだ。

故に村の名産である豪炎酒【フォボス】は、村の宿でのみ安価に酒飲可能なのだった。

ゼパイルは、この村の出。

ヤムナ、ダリルは言うまでも無いであろう。

だが村長は違う。

彼も元来酒豪と言えるが…

「プッファ~

 相変わらず、強い酒じゃて」

杯を卓に置き呟く。

ダリルは苦笑。

ヤムナ、キョトン。

「村長、酒量は御自分でワキマエてくだされ」

ゼパイルが忠告。

3人とっては味の良い飲料水。

殆ど酔ってもいない。

だから村長が杯を飲み干してから酔い始めた感覚は理解できなかったりする。

「ぬぅ。

 相変わらず…

 此処の村民は化け物か」

何時もの、お決まりセリフが出る村長だった。

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