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狩り人89

カリンを河原へと追いやったダリルは崖を見詰めて呟く。

「さて、行くか」

鎧と剣などは外し衣服とナイフのみ身に付けた軽装にて崖下へと。

焚き火をしていた場所からは林を挟んだ反対側であり、そこへ辿り着いたのは初めてであった。

蔦は崖下より壁面をビッシリと覆い頭上に空いた穴へと続く。

穴沿いには巨木の姿があり、その巨木にも絡み付いていた。

穴を抜けた先が森や林の中なのか開けた場所なのか…

それによりダリルが考えている策が行えるか変わってくるであろう。

だが現状は手詰まり故に何か行動を起こし打開せねば終わりと言って良い。

(なに、駄目だったら次を考えるさ)

その様に自分へ言い聞かす。

蔦に手を掛けグイグイと引いて強度を確認。

(うむ。

 これならば大事あるまい)

その様に判断した彼は蔦を伝いて崖を登る。

元々蔦が無くとも崖を攀じ登る事は可能。

だが高さが高さである。

容易く崖上へ到達できる距離では無いのだ。

だが蔦を使用する事により多少は楽に崖上へと…

……… ……… ……… !?

訂正しよう。

多少では無かった様である。

彼はヤモリか何かなのであろうか?

蔦の補助を得ているとは言え、スルスルと崖を這い上がって行く。

この真似は一般人には無理である。

自然の中で生き自然に揉まれて生きてきた野生児の如し御技とも言えよう。

数十分程度で崖上まで到ると蔦を伝い、そのまま蔦が絡まる木を登る。

結構な巨木である。

太く立派な枝も生えており、悠々とダリルの体重を支える。

そんな枝の1つに立ち辺りを睥睨するダリル。

そこは山頂より少々下がった場所であり、山頂と同様に開けた場所となっていた。

山頂からは林が遮り直接視認する事は危うかろう。

だが然程苦労せずに移動できる距離だ。

いや違うか…

ダリルにとってはと付け足すべきであろう。

カリンを伴い荷を担いでの移動となれば容易いとは言えぬ。

それでもボアングならば楽々と移動する程度であるのだが…

下はガレ場に下草が覆い茂っている。

そして広場の先には大小様々な礫が層となり重なる場所が山頂部と隔てる林の間にと。

それは巨大中小の礫が川の様に連なる筋となっている。

そんな礫の川が複数、此処へ到る間を遮っているのだ。

その層を越えて移動せねば此処へは辿り着けはせぬ。

そう言う意味では楽に移動はできぬであろう。

それはボアングであろうともだ。

そんな礫の川を越えて移動すると、漸く巨木が聳える広場へと到る事が。

そして到った広場も平らとは言えぬ。

先程も触れたが、此処は草が生い茂り足場は判別し難い。

上から見れば彼方此方に大小さまざまな石が散乱する礫地の隙間より草が生えているのだ。

更に確認せねばならぬが、大小様々な穴が穿たれていると思ってよかろう。

(ううむ。

 これは誘い込むルートを考えねばな)

その様な事を。

何を誘い込むと…

うむ、状況から判ずるにボアングか?

さすればボアングを、この地へと導き誘い込むと考えていると言う事だろう。

では、何のため?

考えられるのは…

そう、ダリルは彼が攀じ登って来た洞窟の天井に空いた穴。

あそこへヤツを落とす事を企んでいるのである。

天然の落とし穴を利用すると言っても良かろう。

警戒心の強く突進せぬ生き物であれば無理やもしれぬ。

だが獲物へは突進して来るボアング。

ヤツであれば丈の高い草に覆われ視界の利かぬ此処ならば躊躇わず突進するだろう。

ただヤツの勢いを殺してはならぬ。

故に大穴まで障害が無いルートを選定せねばなるまい。

広場はガレ場ではあるが比較的平らな場所も存在する。

それは上から確認する故に気付く場所とも言える。

そんな場所を確認しつつ、誘導ルートを複数想定していく。

ある程度の目処を付けると、ダリルは木を降りて想定したルートへと。

想定ルートを歩いて確認。

邪魔な大石を除去して整える。

大きな穴へと石を運び塞ぐ。

真っ平らとは言えぬ。

言えぬが、ボアングの突進を遮るものではあるまい。

その様なルートを複数用意する。

その様な作業を暫く続けると日が真上へと。

一度に全ては行える規模ではあるまい。

(ふむ。

 一度下へと戻るか)

その様に考え、蔦を伝い崖下の洞窟内へと。

崖下ではカリンが鍛練を続けている。

ダリルの目が無くとも真面目に行えていると見える。

(ほぉぅ。

 意外と真面目に続くものだ)

少々意外そうにカリンを見やる。

先日の河原では、キツクなったらサボろうとしたていた。

それ故その度にダリルが叱責したものだ。

だが蔦を伝いて降りる際に見た限りにおいては手を抜いている節は伺えぬ。

何やら心境の変化でもあったと見える。

さもありなん。

先の狼の件もあるが、この度のボアングの件もある。

正直、ダリルが一緒に居なければ判断も出来ずに死に至ったであろう。

いや、判断が行えても行動する体力も力も足りぬ。

例え予め危険を察知できたとしても避けられぬ危険とはあるものだ。

今迄は浅い場所にて採取を行っていた。

そこでは何時も事前に危険を察知して危急の場に遭遇する前に避けれていたのだ。

それにて自信を得て奥地へと分け入った訳だが…

結果はダリルと合わねば死んでいた所である。

仲間もおらず単独での行動。

何かあっても助けてくれる者などおらぬ。

そんな自分であるにも関わらず、お気楽に奥地へと。

(此処ままじゃダメだよね。

 町近くでは碌な採取も出来なくなってるし…

 この侭じゃジリ貧だもんね)

そんな事を思うカリンであった。

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