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狩り人87

朝日が昇る前にダリルの1日が始まる。

軽く顔を洗い意識を覚醒。

その後は剣と槍の鍛練である。

今日は丁度良い木立がある為、弓を射る鍛練も行う。

一頻り鍛練を行うと流石に汗が噴き出すと言うもの。

普段ならば布で汗を拭うのみ。

濡れ布であれば有り難いと言った所か。

幸いな事に此処には川が在り、川底からは湯が湧き出している。

身を清めるには最適と言えよう。

替えの下穿きを持ち川岸へと。

河原にて衣服を脱ぎ下穿きと布を持って川の中へと。

(うぅうむぅ。

 汗を流すだけのつもりだったが…

 これは…なかなかに乙なものだな)

軽く汗を流し上がるつもりだったダリルではあるが、風呂好きである彼は湯に浸かるという魅惑的な欲求に抗えなかった様である。

「ふぅ」

思わず溜め息が。

暫しの間だが目を瞑り湯を楽しむ。

その後は下穿きを清めて上がる。

身仕度を整えると採取へと。

茸を数種に苔と藻を。

河原にて貝を数種ほど掘り当てる。

林には木の実や破竹も見付かる。

(ほぉぅ、破竹が見付かるか…)

山深い場所にて得る事が出来る素材だ。

若い破竹は茹でて食べると淡白ではあるが爽やかな旨味を。

成竹は細くスラリと真っ直ぐに育つが、なかなかの強度を誇る。

然程手を加えなくとも篦として扱えるだろう。

木の枝には手頃な大きさの鳥が止まり囀っている。

肉もだが矢羽根の素材を得るにも手頃だろう。

ダリルは弓を用いて鳥を射抜く。

見事に目を射抜き、矢は反対側の目をも貫き通し絶命させた。

近場の鳥達が驚き慌てて飛び去って行く。

ダリルは獲た鳥を回収した後にて川へと。

首を切り血抜きを施しながら川へと。

ある程度の血が抜けると、鳥の足に綱を結び付け熱泉へと。

お湯へ浸す事により鳥の毛穴を広げ羽を毟り易くする為である。

鍋に湯を沸かし対応しても良いが、その際には鍋に収まらぬ羽が傷む可能性が。

矢羽根の素材を得たい事もあり、温泉を利用する事としたのである。

毛を毟り内蔵を抜き取る。

胆嚢などの食すに適さぬ部位は除去。

他の内臓は丁寧に下処理して行く。

内臓を調理する場合は下処理を入念に行わねばならぬ。

これを怠れば臭みやエグ味などの雑味が料理の味を台無しとするであろう。

逆に下処理をキチンと行った内臓は料理の味に深みを齎す。

本来内臓は栄養の塊と告げても良い食材である。

足が速く傷み易い故に扱いに注意が必要であるが、新鮮な物ならば使用すべき食材と言える。

その内臓の下処理を終えると、食材と素材を持ち焚き火前へと。

再度川へと出向き鍋へと温泉より熱湯を汲む。

早く湯が沸く利点だけで無く、温泉の成分が料理の味を上げる。

ダリルは昨夜の大山椒魚素材にて残っていた骨と皮を湯へと投入。

熾火を使った釜にて鍋を煮やす。

此方は暫し放置である。

無論、煮加減には留意しながらではあるが…

次に鳥の内蔵や茸、湯がいた破竹や木の実と野菜をフライパンにて炒める。

この際に小さな粒状の実を多めに投入して炒めている。

これは笹の様な植物の元に落ちていた物だ。

麦の実より小粒ではあるが、穀物扱いとして食せるとの判断を下した様である。

これは麦の実ではなく笹の実と告げた方が宜しいか。

まぁ笹の実は60年に一度しか実を結ばぬ。

同様に長き年月を経て実を成したかは解らぬが…

さて、その食材を炒め味を施したダリルは、それを鳥の腹へと詰め始めた。

その処理が終わると大振りの葉に包み、更にカリンが嵌まった沼の泥を粘土代わりに葉包み鳥を泥粘土にて覆う。

それを焚き火へと。

所謂、乞食鶏と呼ばれる調理法であるが、ダリルは猟師仲間に教わった調理法に過ぎず調理法の由来などは知らない。

ただ美味く調理できる技法として認知しているに過ぎない。

調理が終わり、後は待つのみである。

ダリルは羽根より矢羽根を大量に作り始める。

無論、料理の具合を確認しながらであるが。

スープから良い香りが立ち上り始める。

朝日も登り日の光が洞窟内へも届き始めた。

月光石は輝きを潜め存在を薄め…やがて存在を見失った。

その頃になって漸くカリンが目覚めた様だ。

「う~ん…

 おあよ」

ぼぉ~っとした顔で頭をボリボリと掻いた後で大欠伸。

うん。

少女としては非常に残念と言える。

だが、この様な行動がカリンをより少年らしく見せてもいる。

身を守る為に少年らしく振る舞った弊害か?

いや。

どうやら地であると思われる。

困ったものだ。

そんなカリンへダリルが告げる。

「ほら、顔を洗って来い」

そう告げ布をカリンの顔へと放る。

見事な顔面キャッチだ。

「わぷっ!

 酷いや、ダリル兄ィっ!!」

そんな事をブチブチと呟きながら河原へと。

その間にダリルは料理の盛り付けへと。

焚き火から鳥を取り出し、固まっ粘土を砕き去る。

葉を剥き鳥を切り分ける皿へ。

スープも椀へと。

スープの具は皮のみであるが、骨も皮も温泉成分の影響か大部分がスープへと溶け出している。

故に皮は大変小振りとなってしまっている。

鳥の方であるが…

穀物ぽい実が、鳥肉や内臓、茸や野菜に木の実などの味と水分を吸い取りながら程良く炊けていた。

ホクホクで少しネットリと。

少し味見をば。

「うむ、良かろう」

満足そうに頷くダリル。

肉にも包んだ葉の香りと成分が染み込んでいる。

鳥の臭みが消え、なかなか芳醇な芳香を放っている。

そんな香りが漂い始めたため、カリンが慌てた様に河原より戻って来たのだった。

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