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狩り人79

少々足場が悪いが幅は広い棚である。

その棚に途中で隣接しる別棚がある。

そちらとの段差は歩いて行ける程度である。

その棚を進むと壁際へ洞窟が現れる。

此処までの歩みは正直速くはない。

カリンが脅えて遅々と進まなかった為だ。

さもありなん。

その棚には安全柵などは存在しない。

一歩間違えれば崖下へと転落。

小高いとはいえ山なのだ。

その高さは推して知るべしかと。

しかも結構な強風が吹いているのだ。

カリンでなくとも恐怖を覚えるであろう。

そんなカリンをダリルが宥め賺し誘導しての道行きであった。

漸く辿り着いた洞窟だが…

ダリルは頭を屈めて漸く入れる高さ。

横幅は2人が並べる程度には広い。

浅い洞窟では無く、奥まで続いている様だ。

「ほへぇ~

 こんな所があったんだねぇ」

カリンが目を輝かせて洞窟を見やる。

子供は洞窟と言う物に興味をそそられるもの。

だが洞窟と言うのは危険の宝庫でもある。

素人が安易に探索するものでは無い。

「ダリル兄ィ。

 奥は、どうなってんだろ~ね?」

興味津々に。

「探索はせぬぞ」

空かさず告げる。

「なんでさ?」

不満そうに頬を膨らませ、拗ねた様に。

「カリン。

 未見の洞窟と言う物は危うい物なのだ。

 崩落や滑落、病の呪いに陥る事もな」

ダリルが告げる病の呪いだが、身体に害となるガスや虫や蝙蝠から伝染した病など…

科学が未発達であるこの世界では原因が分からぬのに洞窟内にて発生する病の事だ。

我々の世界では空気と言う概念が一般化しており、病原菌の存在も既知となっている。

だがダリルが住まう世界には、その様な情報は知られてはいない。

故に呪いとして扱われているのが現状である。

「けど…

 大丈夫かもしれないじゃん」

諦め切れないとみえる。

「そうかも知れぬが、探索するメリットが無かろう」

ダリルとしては、ボアングが立ち去る迄の一時避難に使えれば良い程度の認識だ。

危険と労力を考えるならば、無用な事を行う必要を感じないのである。

なのでカリンが告げても取り上げ無かったのだが…

「ねぇ、ダリル兄ィ」

「なんだ?

 探索はせんぞ」

入り口を毛皮にて遮り、なんとか風除けを設置し終えたダリルへとカリンが話し掛けた訳だが…

今迄に何度も探索へ向かう話をして来るカリンへの応えは素っ気ない。

「ぶぅ。

 その話じゃ無いやいっ!

 確かに探索にも興味があるけどさぁ…

 今度は違うんだよぉ~」

そんな事を。

「ふぅ。

 それで何なんだ?」

困った様に。

そんなダリルへ嬉しそうに告げる。

まるで子犬が、ご主人様に構って貰えたが如く。

見えぬ尻尾が振られている様にも。

そんなカリンがダリルへ手に持っていた物を見せる。

「へへんっ!

 良いでしょ、これ。

 そこで拾ったんだよ」

そんな事を。

ダリルは最初、微笑ましそうにカリンを見て、カリンが見せる物を見る。

それは石。

いや、鉱石である。

しかも…

「それを…か?」

マジマジとカリンを見るダリル。

「うん!

 キラキラして綺麗だよね。

 思わず拾っちゃったよ、オイラ」

そんなカリンへダリルが呆れた様に。

「本当に…おまえと言うヤツは…」

「えっ?

 なにさ?」

カリン、キョトン。

「それはな、プラティオンと言う稀少鉱石だ。

 桂香木の時といい…

 何で簡単にレア素材を容易く見付けれるのだ、おまえは?」

完全に呆れ顔。

だが、その顔が思案顔へと。

「プラティオンは滅多にお目に掛からない稀少鉱石だ。

 俺は村の村長が資料としてプラティオン鉱の欠片を持っていたから見た事がある。

 見分け方も習ったのでな、だからプラティオン鉱と解ったが…

 普通は見分けは出来まい。

 通常のハンターなら綺麗な石で済ませるやもな。

 しかし…プラティオン鉱かぁ…」

ダリルの視線が洞窟奥へと注がれる。

旨味の無い探索は危険を冒してまで行う謂われは無い。

だがプラティオン鉱ともなれば…

これが銅や鉄ならば話は別だ。

そこ迄は食指を誘われぬであろう。

金銀レベルなら興味位は。

だがプラティオンとなると超レア素材である。

危険を冒すだけの価値は十分にあると言って良かろう。

その様に思案を纏めたダリルはカリンへと告げる。

「探索は考えて無かったのだが…

 プラティオン鉱石が見付かったとなると話は別だ。

 これ程までに稀少な鉱石、普通は見付からぬ。

 危険を冒す価値はあるだろう」

その様に判断して言うと…

「ヤッタァ!

 そう来なくちゃっ!」

カリンは大はしゃぎ。

だが…

「無論、探索は俺1人で行う」

その様に。

すると。

「やだ、やだやだ、いやだぁぁぁっ!」

カリンが蒼くなって拒絶。

そこ迄嫌がるとは思わなかったダリル。

驚いてカリンを見る。

「もう1人で置いてかれるの…や、だぁ…」

蒼い顔で半泣き。

震えている様だ。

ハッとするダリル。

先程、山頂へカリンを1人残してボアングに襲われたばかりではないか。

それを鑑みるとだ、カリンが1人を嫌がるのも仕方あるまい。

ハッとして気付いたダリルはカリンの頭を軽く撫でて宥める。

「分かった、分かったよ。

 一緒に行こう」

優しく告げる。

ただ未見の洞窟は危険である、慎重に行動せねばなるまい。

気を引き締めて準備を始めるダリルであった。

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