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狩り人78

状況を把握し洞窟へと赴くのを決める。

後は行動するのみ。

崖はダリルの背より高い。

だが、その程度とも言える。

ボアングがチョッカイを仕掛け様とはするが、届く距離では無い。

襲う為に跳び降りるには、ボアングを支える程の足場は無い。

即座に崖下へと滑落してしまうであろう。

ヤツも、それは解っている様だ。

故に悔しそうに此方を威圧しながら睨んでいる。

一方カリンだが、彼が跳び降りるには少々高低差が過ぎる。

へたり込んでいるが、良く怪我をしなかったものだ。

ダリルは彼へ近付き告げる。

「怪我は無いか、カリン?」

先ずは確認を。

一見無事に見えて実はダメージを負っている場合もある。

故に確認は必要だ。

「う、うん…

 だだだ、だい、大丈夫だよ」

随分と脅えている。

当たり前だ。

明らかに格上の獣に狙われたのだ。

良く怪我も無く無事に退避できたものだ。

「1人にして済まぬ」

そう告げ、優しくカリンの頭を撫でる。

よほど怖かったのだろう。

ダリルに抱き付く。

「ダ、ダリル兄ィィッ

 こわ、怖がっだぁっ。

 怖かったよぉぉう!」

泣きじゃくる。

仕方ないと言えよう。

身を守る術を持たぬカリンにダリルさえ敵わぬ獣が襲い掛かって来たのだ。

ダリルと合流でき身の安全を確保できた今、気が弛んで泣き出すのも仕方あるまい。

暫く泣いたカリンだが、漸く落ち着いたと見える。

恥ずかしそうに顔を上げ、泣き止んだばかりの赤く少し潤んだ目でダリルを見る。

泣いて抱き付いた事が恥ずかしかったのか、顔は薄く染まり上目でダリルを。

うむむっ。

カリンは男、男の子。

その筈である筈だが…

この世界には無い言い方で告げるならば男の娘。

それも飛び切りの美少女レベルでのだ。

思わずドキリとするダリル。

直ぐに頭を左右に振る。

(カリンは男だぞっ!

 それに幼い。

 うむ。

 シッカリと守らねばな)

庇護欲を(ソソ)られるダリル。

優しく宥める。

「もう大丈夫だぞ。

 此処ならヤツも手は出せん。

 しかし…

 良く無事に逃げられたものだ」

感心するダリル。

「えへへへへっ。

 オイラさぁ危険が察知できるって言ったじゃん。

 それでヤバいって分かったんだぁ~」

実は現在もバリバリに感じていると見える。

毛が逆立たんばかりに震え脅えている。

さもありなん。

頭上では未だにボアングが諦めずにカリン達を狙っているのだから…

それでもダリルの存在がカリンに安心感を与えてはいる。

それでも危険察知で感じる危機感は拭えぬと見えた。

そんなカリンが続けて告げる。

「オイラ、なんだかヤバいヤツが来るって分かったんだ。

 けどさ。

 隠れる場所も無いし荷物も放って行けないじゃん。

 だから必死に此処へ荷物を落としたんだよ。

 そんな事をしていたら…

 アイツが現れて…

 オ、オイラに向かって、突進、し、し始めて…」

思い出したのか、顔が蒼く…

「慌てて跳び降りたんだよぉ~」

再びダリルへと抱き付く。

うむ。

あの巨体が猛スピードで突進して来る…

例えば道にて大型トラックがスピードを緩めずに突進して来たら…

無機物でも恐ろしいが、更に殺意を込めた目で睨み付けながらだ。

それは怖かろう。

ダリルはカリンの現状を鑑みて、無事だった理由を推察。

どうも、先に落とした荷物の上に落ちた事が幸いしたと思われる。

荷がクッションの役割を果たし怪我を防いだのだ。

背嚢には硬い荷もぶら下げている。

槍も弓や矢筒さえ背嚢に。

引き摺って無理矢理に落下させたのだろう。

その際に硬く重い荷が裏側へ。

表側として背に接する側が上へ向く形にて棚へと。

そこへと跳び降りた形となった様だ。

運が良いと言えよう。

荷を落下させた被害としては、鍋が多少凹んだりはした。

矢筒に傷みが有りはしたが、既に(トウ)が立った様な品。

害は無い。

弓や槍に問題が無かった事の方が幸いと言える。

何時もは肩に掛ける弓も、ロアンデトロスの燻し革を背嚢へ括り付けた為に持ち運び難くなり、その故に背嚢へ括り付けていたのだが…

それが幸いしたと言えよう。

まぁ現在の矢筒へは、矢が然程は入っていない。

ロアンデトロスを狩る際に消費した分が補充されていないからだ。

多少は薪などから篦を削り出してはいる。

だが肝心の矢となる物は少ない状態だ。

だから現状にて弓は無用の長物に近いと言えるが…

それでも手元に武器が残るのと、そうで無いのでは大分違う。

あの状態で良く荷が無事だったものだと、胸を撫で下ろす心持ちに。

カリンの状態と荷を確認したダリルが告げる。

「此処は風が強く少々寒い。

 長居すれば体調を崩す可能性もあろう。

 だから、この先の洞窟へ向かうぞ」

その様に。

「えっ!

 洞窟なんてあったのっ!?」

途端に興味を引かれ食い入る様にダリルを見る。

まぁ…

危険察知能力にて脅えてはいるのだが、それを忘れようとするが如くである。

「うむ。

 だが奥へ向かうかは状況を判断してからだがな。

 では行くか」

そう告げ荷を背負う。

カリンも自分の荷を背負い、2人は洞窟へと向かうのだった。

崖上ではボアングが悔しそうに声を上げ、地面を蹄にて削りつつ2人を睨み見送るのだった。

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