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狩り人07

倉庫前へ移動し村長を待っていると、男がダリル達の所へ近寄って来た。

服の上からも分かる筋肉が発達した、無精髭を生やした男だ。

筋骨隆々ではあるが、動きに淀みは無く力自慢に有りがちな愚鈍さはない。

ダリルは男に気付き声を掛けた。

「師匠、戻りました。

 納品後に伺うつもりだったんですが…

 良く俺が帰ったのが分かりましたね」

ダリルが告げる。

「ああ。

 村の連中が騒いでたからな。

 嫌でも耳に入るさ」

その様に応じる。

どうやら、この男がダリルの師匠であるゼパイルらしい。

「それで成果はどうだったんだ?」

一応、春先とは言え冬期の深山を1人で過ごして来たのだ。

それだけでも1人前の狩人と言えよう。

だがダリルは狩人では無くハンターになりたいのだ。

ハンターは竜種とも戦う職種だ。

ある程度の戦闘力は必要であろう。

故に、何も狩って来れなかった場合はハンターギルドへの加入申請を許可しないつもりだ。

そんなゼパイルの思惑を知ってか知らずにか、気楽にダリルが告げる。

「そうですねぇ。

 狩った獲物ですが、雪兎が27羽に雷鳥が31羽。

 オコジョ7匹と白狐1匹に白狼1頭と言った所ですね。

 無論、メルス樹液とガソラ樹液にラマユラ樹液も採取してますから」

少し自慢気である。

樹液に関しては村長から習った知識である。

夏の間に樹木の当たりを付け、葉や樹皮を採取して持ち帰っている。

それを村長に見せて確認もとっているのだ。

中にはザルトとギュルムの葉や樹皮も混ざっており、違いについて詳しく教わっている。

本来、狩人は採取は余り行わない。

狩猟がメインだからである。

そう言う意味ではイレギュラーではあるが…

ハンターは狩り以外も行うため、ハンターを目指すダリルとしては妥当な働きと言えよう。

「ううむ…

 メルスにガソラ、ラマユラの樹液か…

 なかなかどうして、良い着目点と言えような。

 うむうむ。

 しかし…

 白狐に白狼か…

 よもや、夜間に狩りを行ったのではあるまいな?」

ギロリとダリルを見る。

「まさか!

 禁じられているのにしませんよ」

「なら、何故狩れた?」

懐疑的にダリルを見る。

「白狐は、たまたま昼間に現れたんですよ。

 飢えてたんでしょうね。

 兎の通り道を見付けたので張ってたんです。

 そしたら木陰から伺う様に現れたんですよ。

 運が良かっただけです」

慌てて告げる。

だがゼパイルは胡乱気にダリルを見詰め更に告げる。

「白狐の場合、その様な事もあろうな。

 だが…

 白狼もか?」

完全に疑っている。

「それは下山して野宿している時に現れたんですよ。

 1頭で飢えて力を失っていたので、返り討ちにできただけです」

驚いてダリルを見るゼパイル。

深山の更に先、夏でも遠征が厳しい場所に現れる種である。

この辺りに現れるのは稀有。

有り得るのは白狼のテリトリーが何物かに荒らされた場合か…

夏ならハグレ竜種の可能性もあるだろう。

だが今は冬。

いや。

冬の終わりにて春先の端境期。

とは言え、竜種が活動できる時期では無い。

熊は元々居着いている種。

これにて追われるとは考えられないであろう。

そう考えるとだ。

虎などの大型肉食獣が現れたのか…

(まさか…

 獣竜ではあるまいな)

チラリと、その様に考えるゼパイル。

獣竜などが現れたたら、村人達で対処など不可能である。

騎士爵の村長達でも討伐可能かどうか…

(ふむ。

 村長には話を通しておいた方が良いか…)

そう考える。

問題は弟子のダリルである。

大型肉食獣にしても獣竜にしても、まだ討伐へ参加させるには早いと言える。

だが…

(ハンターになれば、遅かれ早かれ通る道。

 皆伝祝に村長と共に用意した武具もある。

 それを装備させ参加させるのも良かろうか?)

ふと、そんな事を考え…

軽く頭を振り、フッと笑う。

(何を考えとるんだ俺は。

 まだ、そうだと決まった訳ではあるまいし…

 しかも、この地に出没すると決まった訳でもあるまい)

そう考え、先走って考えた自分に苦笑する。

「あのぉ~

 師匠?」

いきなり挙動不審となったゼパイルに、おずおずと尋ねるダリル。

この件で不興を買いハンターギルドへの加入申請を許されない。

そんな事になっては、目も当てられないであろう。

もっとも、ゼパイルの許可が無くともハンターギルドへの加入申請も加入も可能だ。

だが10年も自分を厳しく鍛え上げてくれた師匠の言を無視する気には毛頭ならないダリルであった。

「いや、何でも無い。

 ふむ。

 この成果ならばギルド申請しても良かろう。

 確か来月が、お前の誕生日であったな。

 誕生日を迎えてから町へ向かうと良い。

 明日より出立の準備をせねばな」

その様に。

「はい!」

嬉しそうに応えるダリルである。

そんな師弟の遣り取りを見ているヤムナ。

その横には何時の間にか現れた村長も微笑ましそうに2人を見ていたりするのだった。

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