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狩り人69

カリンが香木片を片手に森へと分け入って行く。

森には危険生物も居り、襲われたらカリン1人では太刀打ち不可能であろう。

それでもカリンを1人で薪拾いに行かせたのは、カリンの危機察知能力を信じたからだ。

昨夜に発生した獣の襲撃。

カリンは熟睡していたにも関わらず飛び起きて対応できていた。

それは半覚醒状態のダリルより早かったのである。

それを鑑みて1人で行動させても大丈夫と判断した訳だ。

そんな彼を見送り、ダリルは只管(ヒタスラ)に燻し窯を管理し続けるのだった。

日が陰る兆しが…

ダリルは窯の火を落とし、残り火にて(クス)ぶる煙で燻す事にする。

カリンは、まだ帰らない。

少々心配になって来た。

もう少し待ち、それでも帰って来なければ迎えに行った方が良かろう。

ダリルは待つ間に夕食の支度へと。

熾火にて煮ていた骨と、途中にそれへ加えた内臓を叩いて作った肉団子からは良い出汁が。

これに根菜類や葉野菜などを加えた物が今晩の食事となる。

先ずは根菜類を加える事に。

根菜類も煮え難い品なので、早めの投入となる。

それが終わり、カリンを探しに向かう為に立ち上がると…

合わせた様に森からカリンが現れた。

汗だくになり、ヒィーヒィ言いながらも何かを引き摺って来た。

今朝方と同じく、葉付きの木枝へと薪をロープにて括り付けと引き摺っている。

いや。

朝の木枝よりは大きい様だ。

薪も今朝よりも増して運んでいると見える。

カリンが運べる量を逸脱した感が。

(何を遣ってるんだ?)

ダリルが呆れた様にカリンを見る。

だが手伝う事はしない。

これは鍛練でもあるのだ。

手伝っては鍛練にならぬではないか。

その様な理屈にて、ただカリンを見守るのみ。

カリンとしては、野営地まで来ればダリルが手助けしてくれると思っていた。

だが、その思惑は外れる。

ダリルはカリンが現れると関心を無くした様に作業へと。

(ちょっ!

 手伝ってくんないのっ!)

内心にて悲鳴を。

だがダリルは無関心を貫く。

(くっ、分かったよぉっ。

 オイラ挫けないもん)

気合いを入れてラストスパートである。

何とか燻し窯の近くまで運び終える。

途端に大の字で横に。

ゼェゼェと息が荒い。

森の中での移動もキツかった。

だが河原の移動もゴロゴロした石に引っ掛かって、動きが阻害された為にキツかったと言えよう。

力尽きた様に寝転ぶカリンへダリルが近寄る。

椀へは水が。

それをカリンへ差し出し告げる。

「ご苦労様。

 良く頑張ったな。

 しかし欲張った物だ」

「えへへっ。

 だってさぁ、香木に似た木が一杯あったんだもん」

含羞(ハニカ)んだ様に応える。

だが…

「う~む…

 残念だが、大半が香木では無いな。

 一部のみ…

 !?

 こ、これは…」

ダリルが慌てて取り上げた薪…

いや、化石化した様な代物である。

「あっ、それ?

 綺麗だから拾っちゃた。

 えへへっ」

嬉しそうに告げるカリンを、ダリルはマジマジと見る。

「カリン。

 おまえって、実は凄いヤツなのかもな」

重々しく告げる。

「えっ?」

ダリルの口調が変わり戸惑うカリン。

そんな彼へダリルが告げる。

「俺も話にしか聞いた事がない品なのだが…

 桂香木(ケイカボク)と言う香木(コウボク)の中でも最高級品がある。

 琥珀色の石が散りばめた様に嵌まった樹木は、このサイズでも屋敷が建つ値が最低でも付くと言う。

 出す所へ出せば、それ以上にはなるだろうさ。

 これはカリン、おまえが採取した品だ。

 おまえが持ってな」

その様に。

だが…

「えっ!?

 そんなに価値があるのぉっ!

 い、いいよ。

 オイラ、そんな高価なモン持って歩きたく無いよぉ~

 ダリル兄ィが確認しなかったら綺麗な木としか、オイラ、思わなかっただろうし…

 ダリル兄ィにあげるよ、あげる」

いや、あげると言われても…

困ったダリルは暫し考えてから告げる。

「分かった。

 暫くは俺が預かろう。

 換金時に分け前をどうするか考えれば良かろう」

その様に。

「うん。

 オイラ、それで良いや」

(良いのか?)

欲の無い無邪気な返答に戸惑う。

(まぁ、換金でカリンの口座にでも振り込めば良かろう)

そう判断。

因みに口座とはハンターギルドで行っているサービスの1つ、預金サービスの事だ。

ギルドで発行する通帳にて、国を跨がり預け入れた金を引き出せるのだ。

国を跨がり活動するハンターにとっては、無くては困るサービスだと言えよう。

似た様なサービスは他のギルドでも行ってはいる。

だが国家間を跨ぎ通用する貯蓄サービスを行っているギルドは少ない。

ハンターギルドは、その少ない内の1つなのである。

カリンが拾って来た桂香木を仕舞い、持ち帰る香木を選別する。

品質的に悪い香木は燻し作業にて使用する事とするが、それでも持ち運べ無い程の香木が残る事に。

破棄するには、余りにも勿体ない品だ。

故にロアンデトロスの骨を隠す時に、同様に隠す事に決めた様だ。

無論、特に品質が良い品は持ち帰る事にするのだが…

それは後の事とし、先ずはカリンの面倒をみる事に。

疲れ倒れ込んでいるカリンへ、椀へ水を入れて差し出す。

カリンは椀を受け取ると、ゴクゴクと音を立てながら飲み干すのだった。

「プッファ~

 生き返るよぉ~」

そんな事を。

ダリルは苦笑しながらも、水を飲み干し落ち着いたカリンへ先程に残った料理を温め直した品を皿へと盛り差し出す。

受け取ったカリンは、思わず無言で食べ始めるのだった。

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