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狩り人68

取り敢えず、熾火を取り出した焚き火へ新たな薪を焼べておく。

カリンが追加で薪を拾って来た為、遠慮なしに焼べておいた。

まぁ、今晩もある事から火が絶えない程度には加減してだが。

その後で燻し竈の方へ薪を焼べて行く。

火勢が強く成り過ぎない様に注意しながら焼べ、煙りが十分に立ち上る様に調整。

そんな作業を行っている中で…

(んっ?)

ダリルが何かに気付いた様だ。

煙りの臭いが…匂い…いや、香り?

いや、薫りと称した方が良かろうか。

(こ、これはっ…

 香木!!)

カリンが採って来た中に混ざっていたのである。

香木はダリル達の世界だけで無く、我々の世界でも嗜好品として高値で取り引きされる品だ。

伽羅などが有名だが、他にも種類が存在する。

その高価な香木が薪の中に混ざっていたものと思われる。

(これは、また豪勢な燻製になりそうだな)

軽く頬を指で掻き困った様に燻し窯をみるダリル。

そんなダリルを余所に、夢中で料理を食べていたカリン。

今は皿に装われた料理を平らげ、少し苦しそうに横になっている。

お腹ポッコリ迄は行かぬが、明らかに食べ過ぎである。

だが、これはダリルが画策した事。

食べ過ぎにより胃は拡張して行き、徐々に食べれる量が増えて行くだろう。

思惑通りに進み、カリンをチラリと見てほくそ笑んでいる。

そんなダリルは燻し窯の火が消えぬ様に、また、逆に火勢が増し素材に火が回らぬよう気を付けて火を見張っている。

そうしながら、カリンが採って来た薪を調べる。

確認すると種類は1つだが香木が混ざっていた。

それも結構な数だ。

(どうやって見付けたのだ?)

場所はカリンが薪を拾いに向かった方向であろう。

だが、容易く見付かる品では無いのだが…

ダリルも修行時代に一度だけ木片を見付けた事がある。

それだけでも大騒ぎになったものだ。

あの香木の等級が高かった事もあるのではあるが…

カリンが拾って来た香木の等級は低い。

その為、ダリルが過去に拾って来た香木ほどの高値は付かない。

それでも、同じ大きさの水晶石よりは高値で取り引きされる品なのだ。

だが…

これだけの香木を持ち運ぶのは困難と言える。

勿体ないかも知れぬが、革と干し肉を燻すのに使用する事に。

ロアンデトロスの革は無論であるが、狼と兎の革でさえ香木煙にて燻す事で価値が数倍に跳ね上がるだろう。

燻す事で香木の薫りが移った品は高級素材として取り扱われるのだから。

ダリルが慎重に煙番をしていると、カリンが復活して近付いて来た。

「ねぇ、ダリル兄ィ」

「んっ?

 なんだ?」

燻し窯から目を離さずに告げる。

自分を見ずに告げられた応えに戸惑いながら続けて言う。

「ダリル兄ィは食べないの?」

フライパンには料理が残っている。

自分だけ食べた事に罪悪感を覚えた様である。

「俺は十分に食べたからな。

 残りはカリンが食べて良いぞ」

それを聞き、慌ててカリンが告げる。

「そんな、悪いよぉ。

 それに流石にお腹いっぱいで、もう入んないや」

へへへっと告げる。

「そうか…

 なら、食べれる様になったら食べろ。

 おまえの修行の1つは身体を作る事。

 それには食べて動く事だ。

 だから食べる事も修行と思うんだな」

「へっ?

 食べる事が?」

不思議そうにダリルをマジマジと見る。

「ああ、そうだ。

 だが、無理矢理食べる必要は無い。

 それで体調を崩しては、本末転倒と言うヤツだからな」

「うん、分かったよ。

 それじゃぁ、オイラは何しようかな?」

辺りをキョロキョロと。

「そうだな。

 また薪を拾って来て貰おうか」

そう告げられ、カリンはキョトンとダリルを見る。

「えっ?

 さっきは、もう要らないって無かったっけ?」

首を傾げて告げている。

「うむ、それなのだがな。

 ロアンデトロスの肉が大量にある。

 明日はおまえの鍛練日として、食べて鍛練を繰り返して貰おう。

 1日2日では容易く体力は付かぬが…

 これだけ余る程の食材を抱える事など稀だろう。

 最高の環境だとは考えられんか?

 故に予定を変えて、明日は鍛練日とする。

 良いか?」

諭す様に。

するとカリンは元気良く頷いて応える。

「うん、わかったよ、ダリル兄ィ。

 あっ、だから大量に薪が要るんだねっ!

 オイラ、ひとっ走ら採って来んねっ」

そう告げて走り出そうと。

そんなカリンをダリルが止める。

「ちょっと待て!」

走り掛けていたカリンが慌てて止まる。

「えっ?

 何さっ?」

戸惑うカリンを見て、フッと笑いながら…

「先程おまえが拾って来た薪の中にコレが混ざっていた」

そう告げ、カリンへ香木を見せる。

訝しく思いながら、それを見るカリン。

「何か拙かった?」

「ある意味な」

「えっ?」

戸惑う彼に教える。

「これは香木だ。

 等級は低いが、それなりの値段で取り引きされる品。

 出来たらで良いが、同じ物が見付かれば拾って来て欲しい」

そう告げ、サンプルとして香木片をカリンへ。

「へぇ~

 これが香木かんだね。

 オイラ、初めて見たや」

当たり前である。

そう容易く手には入る品では無いのだから。

それをゴロゴロと拾って来たカリン。

恐るべし。

まぁ、今度も拾える保証などは無いが。

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