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狩り人67

「良し、先ずは調理して食べるか」

その様な事を。

「えっ?

 まだ食事には早いよ?」

長丁場となる作業にて、作業の途中に肉を軽く食べている。

量が少ない為、数度に分けて食した事によりカリンが何時も食べる量よりは多かったりする。

それを食した事で昼食としたダリルだが、カリンの食す量が増えた事には気づいていた。

故に調理だ。

とは言えダリルは十分に食しており、自分は食べるつもりは無い。

時間を見ながら少量ずつカリンに食べさせるつもりなのだ。

天日干ししている肉は、まだその侭で良かろう。

此処は焚き火をした場所と違い、干すには適度な風が吹いてもいる。

出来るだけ天日干しを行ってから燻す事にしたい様だ。

なので干している肉から調理ように取る。

鍋は砕いた骨を煮出している為に使えない。

背嚢にぶら下げていた小型のフライパンを外し、それにて調理を。

熾火を焚き火より選り出す。

それを簡易に組んだ石釜の窪みへと置く。

それへ薪を焼べて調理し易い竈へと。

フライパンへは干し野菜と香草に肉を入れ炒める。

軽く塩と調味料を加えて整えれば完成だ。

この調味料は、香辛料や骨粉、乾燥肉粉、乾燥木の実の粉などをブレンドした品である。

ダリルの村に住む猟師達オリジナルの品で、村人にも教えていない秘伝の品となる。

製法も秘伝ではあるが、ダリルは猟師だった事もあり当然製法は習ってある。

この調味料であるが、長期保存が利くだけでなく、時間を置くと味が熟れて旨味が増す様だ。

ダリルも既存の調味料へ材料を継ぎ足しながら長年愛用している。

この度もロアンデトロスの骨と肉の粉を継ぎ足す予定であった。

ロアンデトロスの背脂を溶かし回したフライパンにて炒めると、良い香りが辺りへと漂う。

カリンの目は、先程からダリルが炒めるフライパンへと釘付け。

目が離せないっと言った所か。

ロアンデトロスの肉は癖が無く、しかも生でも食せる。

故に忙しい事もあり、干すのに加工していた肉を、その侭食していた。

その時は生肉との事で抵抗はあった。

だがダリルに諭され口に。

意外とイケル。

いや。

ナイフで切りながらではないと食べれ無い歯応え十分な肉。

何時までも口に残るが…

噛めば噛む程に味が…

何度目かは干した物を。

乾燥野菜も意外と甘く感じたが、固い干し肉を(シガ)んでいくと野菜の甘味に肉の旨味が口内で…

調理していなくとも、そのレベルの味が堪能できるのである。

その肉を調理したら…

腹は減って無かった筈なのに、知らず知らずの内に期待は高まる。

そんなカリンを見て、ダリルは内心ほくそ笑む。

この調子ならば、少量を数回に分けて食べさせる事が出来よう。

(明日には立とうと思っていたが…

 もう1日滞在を延ばすか)

その様にも。

急ぐ旅でも無い。

食料は十分だと言える。

逆に肉と骨は調理して減らしても良い位だ。

無理して運べば運べない量では無い。

無いが…

旅装として考えるに、少々過ぎる量と言えよう。

骨の一部は処置してから森に隠す予定ではある。

後に回収すれば良かろう。

だが肉と革は持って行きたい。

特に革は必須。

これを誰かが見付け持ち去られては堪らない。

骨や肉などとは価値が違うのだ。

無論、爪や牙も持って行く対象だ。

後は小腸か。

爪と牙は武具にもだが、様々な加工品へと。

骨も加工品として人気ではあるが、此方の方が価値が高い。

大きさも嵩張らず重さも苦にはならぬ程度だ。

小腸は丁寧に洗い流して干してある。

此方は食用では無く、弓の弦などに使用される。

これも人気が高く高価で取り引きされる品だ。

これらからは値が下がる肉と骨ではあるが、それでも高級素材には違いない。

捨て去るなどは論外。

まぁ、この度の狩りで得た一番の高級素材は、雷晶石と水晶石ではあるが…

これこそポケットにでも放り込んでおける大きさ。

荷物になる事は無い。

そう言う意味では肉と骨が問題なのだが…

(カリンに大量に食させれば良いか)

などと考えている。

自分も食べるが、2人で食べれば結構減る筈だ。

特にカリンには少量を小刻みに与えながら鍛練すれば良い。

動けば腹は減るだろう。

食えば動ける。

また、動けば…

そんなに単純には行かないであろうが、遣らぬよりは。

その様に。

ダリルが、そんな事を企んでいるとは知らないカリン。

純粋に調理される皿を見る。

そんなカリンへ出来た料理を皿へと移し渡す。

「良く噛んで食えよ」

「うん、分かったよ」

受け取った皿から料理を木串で刺し刺し口へと。

「こ、これ…

 ほま、いや、ふまぁっ、違う、美味ぁぁっ!

 何、何なの、これっ!

 こんなん食べるの、初めてだよ、オイラぁっ!」

当たり前である。

ロアンデトロスの肉は高級食材。

元来庶民の口へと至る食材では無いのだ。

大概は上級貴族あたりへと納められる品。

若しくは富豪レベルの商人か。

狩ったハンターが食す場合もある。

だが大事な商品である。

大概は全てを納品する。

一部地方では完全に殺さずにギルドへと納品。

肉の鮮度を保った侭納める究極の納品と言えよう。

ただし激闘となり怪我人や死者が絶えないとか。

ロアンデトロスの皮もズタボロとなり、まさに皮を得るのを度外視した猟法と言える。

そんな肉を秘伝の調味料とロアンデトロスの背脂で炒めてあるのだ。

美味く無い筈が無いではないか。

夢中で食べるカリンを置いて、ダリルは作業の続きへと。

先ずは干していた肉を燻し竈の上へと。

何層にも積んだ間、間に肉を置いて行く。

全てを置いたら、骨も何個か置く。

その後、ロアンデトロスの革を竈の上部を覆う様にセット。

準備が整うと燻し竈へと熾火を移した。

いよいよ燻し作業の開始である。

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