狩り人66
解体にて皮を剥ぐ。
尻尾の先迄、余す所無しに丁寧と。
肉を骨から剥がし、筋を除ける。
大量の肉は燻して燻製へと加工する事になる。
そうやって水分を除かないと、重くてとても運べないであろう。
だがそれは後程行う事とし、先ずは解体を進めて行く。
ただ肉は、ある程度の厚さに削ぎ切りにして、天日に干す様だ。
この作業はカリンに手伝って貰っている。
ダリルが思っていた以上の活躍を見せるカリンだった。
皮から余分な脂を削ぎ落とす。
そして川にて叩きながら清める。
その後布で丁寧に拭い、猟師が使う鞣し材を塗布して行く。
これは本鞣しではなく仮鞣しとなる物だ。
狩った獲物の皮は、放置していると乾いて硬くなったり、腐敗したりするものだ。
それを防ぐのが鞣し処理といわれる処置なのだが…
キチンと処理しようとすると施設も時間も必要となる。
とても狩り先にて行える作業では無い。
だが狩った状態の侭で放置すれば、当然傷む事となる。
そうなれば売り物にはならないであろう。
また鞣し作業も早ければ早い程に良いと言える。
故に猟師は狩った獲物の毛皮を剥ぎ、剥ぎ取った皮を清掃し、鞣し液を塗るのだ。
この処理を行っているからこそ、本職の職人達により、より良い革製へが産み出される事となる。
逆に未処理にて持ち込まれた品は、腕の良い革職人であっても3流品にしかなり得ない。
または粗悪品か…
故に、狩った後の処置は重要とも言えるのである。
その為に鞣し作業には時間が掛かる。
ダリル1人ならば、肉を干す作業、食す内臓の下処理から骨からの出汁取りまで行わねばならない。
その一部とはいえカリンの手伝いが入る事は非常に助かる。
故に、簡単に準備を済ますと、カリンに作業を任せてしまう。
無論、フォローは入れる。
だが何時もよりも余力が得られたダリルは、より丁寧に皮を鞣していく。
(ロアンデトロスの皮を此処まで丁寧に一次鞣しを行えば、かなりの高値で引き取って貰える筈だ)
そう確信を。
満足な鞣し作業が行え、ご満悦なダリル。
処置した革を干し、カリンの作業へと合流。
ある程度の作業を終えると、カリンには燻す為の薪を集めに行って貰う。
ダリルは引き継いだ作業を引き取り続けたが、カリンが戻る前には作業を終えてしまう。
だが遣る事は、まだまだあるのだ。
燻すにしても、直接火が肉に当たっては困る。
焼く訳では無いのだ。
故に大きめの石を組み合わせ、下で焚いた火が直接当たらない様に簡単な竈を作っている。
とは言え、ごく簡単に組んだに過ぎない。
ちょっとした衝撃で崩れさる脆い代物ではあるが…
まぁしょせんは短期間ほど日持ちを良くする程度の目的に過ぎない。
本格的に燻すつもりなどは無いのである。
ダリルが作業を終えて暫くすると、カリンが薪を枝木へと括り付けて引き摺りながら戻って来た。
「これは随分と大量に拾って来たなぁ」
呆れた様に。
「だってさ。
燻製するんだったら、これでも足んないよ」
呆れられるとは思ってなかったカリン。
憮然とした感じで告げる。
「いや…
今のは俺が悪かった。
済まんな。
ただな。
本格的な燻製を造るには数日…
下手をしたら週単位となろうな。
流石に、そこまでの日数を掛けるつもりは無い。
だから数日ほど持つ程度に燻せれば良かろう。
故に、そこ迄の薪は要らなかったのだが…
説明不足だったな」
そう謝罪を。
「そうなんだ。
オイラさ、当分は此処に居るのかと思ってたよ」
その様に。
「何故だね?」
意図が分からず困惑気味に。
「だってさ。
此処での鍛練途中じゃん」
そう告げたのだが…
ダリルが唖然とし、次に爆笑。
「何さっ!
何が可笑しいんだよぉっ!」
カリン、お冠。
そんなカリンにダリルが謝りながら告げる。
「済まん、済まん。
だがなカリン。
おまえの筋トレに関しては数日で終わる内容じゃない。
下手すれば年クラスだぞ。
その間、この河原で過ごすのかね?」
その様に告げられ、カリンが唖然とする。
「先ずはだ。
栄養不足で成長が滞っているんだろうな。
とても10歳児の身体とは思えん程に痩せとるではないか」
そうダリルが告げると…
カリンが一瞬唖然とした後に、烈火の如く怒って言う。
「違わいっ!
オイラ、15だいっ!
10歳児と間違うなんて、酷いやっ!」
いや…
逆に、それを聞いたダリルの方が仰天。
目を見開いて、マジマジとカリンを見る。
「マジでか?」
絞り出す様に。
「知らないっ!」
完全に拗ねてしまう。
だが…
ダリルは顎にてをやりながら。
「う~む。
それが本当ならば、方針を変えねばなるまいな」
その様に。
「えっ?」
それを聞き、カリンが不安そうに。
(もしかして…
見捨てられる?)
見込み無しと判ぜられたかと…
だが違った様で。
「カリンは栄養不足で肉体が成長していない。
此処が大きな問題だ。
そうなるとだ。
先ずは食して身体を造る。
此処を重点に考えねばなるまいて」
その様に。
(良かったよぉ~
見捨てられたかと思ったよぉ~)
内心にて安堵したカリンであった。




